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「秘密」の歌姫-元天才子役の私、負けヒロインに転生したので歌で運命を書き換えます。  作者: A Melon


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6

ノクティス先生が全てをお見通しだったなんて。

あの8小節程度の、しかも新曲視唱の歌声で。

本当に、あの人は何者なんだろう。


「好きだよ。」


不意にまた先生の言葉をまた思い出して心臓が高鳴る。

違う、あの時先生は…


「好きだよ。」

「君の声。」


「でも、届かない。」


はぁ…

そうだ、結局ダメ出しだったんだ。


待って。


「好きだよ。」


何が?


「君の声」


そうだ、この言葉が後に来たから、私は一瞬勘違いをしたんだ。


何か大事なことに気付きそうで、譜面に意識を戻した。


Sub velamine, dulce lumen,

nomen meum lente solvis.

Oscula seris in silentio,

ut mane surgat sine me.


これは、「婚礼」の2番の歌詞。


「ヴェールの下で、甘やかな光に包まれながら

あなたは私の名前を、そっとほどいていく

静けさの中で交わされる口づけ

やがて朝が、私なしでも訪れるように」


ー あなたは私の名前を、そっとほどいていく


「名前をほどく」?


人の名前が「ほどかれる」

つまり、名が変わるのは…

結婚をするときでもあり、

結婚を解消するときでもある。


そしてこの歌には、「そのどちらかである」とは明言されていない。

続けて歌詞をじっくりと読んでみる。


III

Anima mea, tibi cedo,

sicut unda linquit litus.

Non est dolor—sic cantamus—

sed umbra crescit in luce.


III

私の魂は、あなたに委ねられる

まるで波が岸を離れていくように

痛みはない——そう歌いながら

光の中で、影だけが伸びていく


IV

Si me vocas, audiam te

in alio nomine tacito.

Sponsa sum—vel somnium—

ubi finis, ibi initium.


IV

もしあなたが呼ぶのなら、私は応えるでしょう

ただし、それはもう別の名前で

私は花嫁——それとも、ただの夢

終わりの場所で、すべてが始まる


Refrain

Ave, ave, foedus tenue,

flos in manu, ventus in corde.

Tene me—vel mitte me—

unum “ita” duas vias aperit.


リフレイン

祝福を、かすかな契りに

手には花を、胸には風を

抱きしめて——あるいは、手放して

ひとつの「はい」が、ふたつの道を開く


そうか、この歌は

結婚の喜びを歌う歌

としても歌えるし、

相手の愛が自分に無いことを知って、

解放のために別れを告げる歌としても歌える。


どちらが正解、ということでもない。

そのどちらにも、「愛」が根底にあるから。


この歌が昔から結婚式で歌われるのは、

愛する気持ちの多面性を、人々がこの歌に共感していたからかも知れない。


今の私が、

愛される喜びに満ちた歌を歌えないなら。


だったら


「Lumen oris, in me cadis,」


(お母さん)


「vincula rosae, lenis nodus.」


(私、お母さんのことを嫌いになったんじゃない)

(でも)


「Manus tua, mea fit via—」


(今は、私が強くなるために)

(ほんの少し、お母さんと距離を置きたい)


「in uno filo, duo vota.」


(さようなら)


私は、この歌を、愛を込めた別れの歌にしよう。


いつもは完璧なリズムが、後半になるごとに少しずつズレてしまった。

悲しさと寂しさを込めた声が、少し震えている。


でも、なんだろう。

このスッキリとした感覚は。


練習室の棟の廊下は、いつの間にか無音になり、

私の歌声だけが静かに響いていた。


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