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「秘密」の歌姫-元天才子役の私、負けヒロインに転生したので歌で運命を書き換えます。  作者: A Melon


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「……。」


寮まで、あと少しだけ距離がある。

歩きながら、ふとユリウスに聞いておきたかったことを思い出す。


「…ユリウス様は」

「ノクティス先生をよくご存知なのですか。」


「……ええ。」

「個人的にというよりは…お互いの家族同士で関わりがある、と言ったところでしょうか。」


確かに、劇場の運営や興業を家業とする家と、初代エトワールを輩出した家となるとそのような関係になるのだろう。


「…ノクティス先生って、意外にわかりやすい、ですよね…。」

私は周囲を見渡して恐る恐る呟いた。


「……そう、でしょうか。」

ユリウスは足を止めた。

本気で意外そうに、こちらを見ている。


つられたように私も目を大きく開き、首を傾げた。

「はい。表情や仕草で繕っても、声に機嫌が全て出ていませんか?」


「…いいえ。全く。」

「あの家の者は、全員、何を考えていたのか…」


ユリウスの声は、途中から独り言のように小さくなった。

私は聞こえないふりをしたが、その言葉の意味が気になって仕方がなかった。

 彼は再び歩き出し、気を取り直したように話し始めた。


「…セレナさんはきっと、耳が良いのでしょうね。」


「わずかな声の高低、速さのブレ、リズム感の癖…」

「それを瞬時に聞き取れる力を持っている。」


「…えっ。」


——思い当たることはあった。

ノクティス先生の欠伸。

ヴェロニカの楽屋での捨て台詞。

人が隠そうとしていた“声”を拾っていたのは、私だけだった。


それに——

(今日のエトワールの演奏の違和感に、気が付いていたのは私とノクティス先生だけ…)

(今のユリウス様の独り言も…)



「今まで、思ったこともありませんでした。」

「ありがとうございます…ユリウス様。今後の演奏に、活かします。」


ユリウスは優しく頷くだけで、無言だった。


——そして。


「ああ、思い出しました。」


再びユリウスが口を開く。


「エトワール制度を考案した人を、知っていますか。」


私は小さく首を振った。

そう言えば、今まで一度も聞いたことがない。


「——セラフィーヌ・ド・リュミエール。」

暗闇の中でも、ユリウスが真っ直ぐこちらを見ているのがわかった。


(…女性の名前?)



「ミレイユ・ノクティス…初代エトワールの母親です。」

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