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『ええと…ソリストは…』
『まず器楽部門、
鍵盤、レオン・ヴァイスハイト。
フルート、エリゼ・フロラン。
チェロ、マティアス・グラーフ…』
(……やっぱり、名前を聞いたことがある人ばかりだ)
(鍵盤、木管、弦……器楽の層も厚い)
『作曲部門、カミーユ・ルグラン』
(作曲専攻まで選ばれている……)
(演奏だけじゃない。この学年は、本当に層が厚いみたい。)
『で、歌の部門…』
息を小さく飲んだ。
『アリア・フェリス』
「……そうですか」
驚きは、なかった。
(……やっぱり)
どこかでわかっていた。
むしろ、納得の方が大きい。
『ちなみに言っておくけど、私は君を推した』
「……え?」
『”婚礼”のあの解釈、見事だった。』
『あそこまで辿り着けるなら、すでに舞台に立つ資格はある』
『だから推した。あと中間試験の成績』
『正直、あれで選ばれないのはおかしいよ。』
…初めて聞く先生の声。
珍しく少し早口で…熱がこもっている。
先生は一息ついて、落ち着いた声に戻った。
『アリアさんの底知れない可能性については、私もわかってる』
「……はい。」
『それでも、今は流石に勉強不足が過ぎる。正直、成績も…特待生としてギリギリだったし。』
本当に、親身になって悩んでいるように聞こえる。
『まだ、脚光を浴びるに早過ぎる』
ほんの一瞬だけ、言葉が途切れた。
『音楽家は——』
僅かに、先生の息を飲む音が混じる。
『……消費される存在じゃない』
『そして、私たちも』
『ステージを、消費する側じゃない』
さっきまでの軽い調子とは違う。
この人の声は、今、何も纏っていない。
同時に、
この言葉は、子役時代の私を抱きしめて、
守ってくれたような気がした。
あの時——
誰かが、こう言ってくれていたら。
『…はぁ。それが通じない人がこの音楽院にも増えちゃって』
『平民や一般家庭出身の生徒に活躍の機会を、って声もあってね』
軽く言っているけど、
背後の大人の事情は軽くなさそうだ。
『と言うことで、彼女の出演については、私から条件を出しておさまったんだけど。その条件は…』
『アリアさん歌の伴奏者をセレナ・ルクレツィアさん…あなたにすること』
「……えっ」
一瞬、言葉の意味が、すぐには理解できなかった。
伴奏者。
その単語だけが、遅れて頭の中に落ちてくる。
——伴奏者?
私が?




