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「秘密」の歌姫-元天才子役の私、負けヒロインに転生したので歌で運命を書き換えます。  作者: A Melon


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聖セシリア音楽院に入学してから1ヶ月ほど経った頃。


私は何かに取り憑かれたような熱心さで、

勉強やレッスンに打ち込んでいた。


中間試験では学年トップの成績を取ることができたが、

何かモヤモヤとした気持ちは残っている。


(アリアの成績、どうだったんだろう…)


話しかけて、聞けば良いだけの話なのに。



あの子と仲良くなりたい。

でも、才能の差を思い知らされて、嫉妬してしまう自分もいる。



(…私、怖いんだ)


音楽院のロビーを通って

寮に帰ろうとした時、

声をかけられた。



「失礼します。」

「少しお時間よろしいでしょうか。」


爽やかな男性の声。


名前を呼ばれたわけではないのに、

自分に向けられた声だと、なぜか直感した。


振り向くと、

白金の髪をきっちりと整えた青年が立っていた。


制服の皺一つない。

2年生の校章。

靴も、手袋も、すべて丁寧に手入れされている。


——貴族。


一目でそうわかる。


「セレナ・ルクレツィアさん。中間試験、見事でした。音楽院始まって以来の成績です」


「……ありがとうございます」



(どうして、私のことを——?)


成績は個人にしか開示されていないはずだ。

それなのに、この人は迷うことなく私に声をかけた。


「申し遅れました。ユリウス・ヴァルツェン・ド・アルディエと申します」


やはり、貴族の名前だった。

そう思うと同時に、

その名前と、彼の出立ちに既視感を覚えた。


「専攻は芸術運営です。家業が劇場の運営や興行に関わっておりまして」


「学院、教会、劇場——国内ほぼすべての公演に目を通しています」


「ですから、各学年の成績優秀者についても把握しているだけです。ご安心を」


(……なるほど。)


要するに、

この人は“舞台を作る側”の人間。


音楽に関わる、ビジネスマン。

この世界に必要な存在。


ふと、彼のことを思い出した。

ユリウスはゲーム「秘密の歌姫」の攻略対象キャラで、

配布されるキャラだった。


彼とのイベントを進めるすることで、

稽古や公演など、育成の制限が解放されるはず。


(関わらなければいけない人、ということ?)



「改めて、おめでとうございます。」


「あなたは、あの学年の中で、最も”エトワール”に近い」


その言葉は、

昔の私が、一番——


(……あれ)


何も、感じない。


あれほど欲しかったはずの賞賛なのに、

一つも心が動かなかった。


「……光栄です」


礼だけは、きちんと返す。


ユリウスはわずかに目を細めた。



「ところで」


「お近づきの印に、一つ」


「貴方が知りたいことがありましたら、情報を差し上げましょう。」


「成績を知りたい方、いらっしゃいませんか?」

「それとも、新入生コンサートのソリスト出演者でしょうか?」


一瞬、息が詰まる。


(…どれも気になる…)


(アリア……)


知りたい。

でも——


「……いえ」


「あの…正直、とても気にはなるのですが…」


こういう形で知りたくはない。

彼にも失礼じゃないように、断らなければ。


私が困っていると、

彼は優しく微笑んだ。


「……冗談ですよ。やはりあなたは、良い方だ」


(……この人、本当に隙がない)



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