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こうして全員の声域チェックが終わり、
合唱の声部分けをした。
セレナの声はどう考えてもソプラノだが、
私はハーモニーや色々な音を聞く勉強をしたい、
と思い、先生にそれを正直に伝えてメゾ・ソプラノにしてもらった。
アリアは、今まで担当したことがなかったから、
やってみたい、という理由でアルトに入った。
「えっと、下の方が、声が混ざる感じがして…」
それでやってみたい、ということらしい。
言語化が苦手な子なのか、感性が独特なのかはよくわからない。
ノクティス先生は相変わらずニコニコしていて、
私たちの要望を全て通してくれた。
(でも…全部、見てる)
「…アリアさん」
他の人の声部分けをしている最中に、私はこっそりと話しかけた。
授業中の私語なんて、はじめてのことだった。
先ほど歌った時よりもなんだか緊張する。
「セレナ様…」
お互い、歌の話をしたいけど話し出せないような、そんな空気。
「……」
少し気まずい沈黙の後。
「婚礼、素敵な曲ですよね。」
私は当たり障りのない話題で話を続けた。
「はい、でも、私にはちょっと難しくて…」
アリアは正直にそう言った。
初見の曲の譜読みに苦戦することが多いらしい。
「確かに、難しかったです。でも、私は、今日の授業、楽しかった。」
「自分の言葉、声で歌えた気がして」
彼女にこのことを、どうしても伝えたかった。
アリアの存在があったから、私は…
ーそうだ、今度一緒に、視唱練習でもしませんか?
と言葉を続けようとした時、
アリアは言葉を被せるように私に言ってきた。
「え……?」
「みなさん、そうして歌ってるんじゃないんですか……?」
「違い……ますか…?」
——その問いに、すぐに答えられなかった。
ああ、そうだ。
私がこうして苦しんで得た答えを、
この子は最初から、持っている。
少し彼女との距離が縮まったと思ったのに、
触れられない場所へ、あっという間に引き離された。
アリアは良い子ですが、残酷な一面があります。




