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EPISODE9.偽りの2対1

「希々。すまなかった。色々と本部も立て込んでた」

「そう、でしたの。本部もまた襲撃されてるとか、ではないですよね?」

希々が弓を片手剣に戻しながら地面に降り立った。

「なかなかにやってくれたね、蓮唯。もしかして君の差し金で本部も襲撃したのかい?」

「何を言っている?遥斗。本部襲撃は今、関係ないだろ?それに・・・用事は希々にあるんだ。あんたには関係ない」

「関係はあるんだなこれが」

遥斗がもう一振りの刀を抜く。

「二年前から中部支部のリーダーと手を組んで敵組織に干渉していた理由と、なぜ敵組織に入ったか。蓮唯がついた嘘を、同じ初期メンバーの僕は見抜ける。故に、教えてもらう。僕たちの勝利をもって!」

一歩踏み出し、蓮唯との距離が縮めた。

「二対一は卑怯。俺はそう思う。故に、希々。貴様にはこの場から消えてもらう」

蓮唯が片手で持っていた剣で遥斗の攻撃を軽々受け流しながら、希々の立っている位置で能力のような何かを発動させた。

「強制書き換えプログラム!?なぜ蓮唯が知っているんだ!?」

遥斗が希々に手を伸ばそうとするが。

「一秒、遅かったな」

プログラムが発動し、希々が消えていった。

「希々をどこへ飛ばした?それに、なぜ強制書き換えプログラムを使った」

「希々を飛ばした場所に関しては、さあなしか言えない。あと、なせ強制書き換えプログラムを使ったか。いちばん手っ取り早くて、遥斗とのタイマンに持って行けるから。ただそれだけ」

強制書き換えプログラム。

一部の裏社会で流通しているプログラム。

簡単に言えば、発動する前に印を打った座標へ対象者を強制的に転移させるプログラム。

使用目的はターゲットをバレないように誘拐させるためとか色々万能。

なお、藍翔が持つ能力である転移は一日に複数回使えるが、強制書き換えプログラムは一回しか使えない。

故に、使い捨てである。

価格もさほど高くなく、一回あたり五千円かからないと言われているが真偽は不明。


「・・・だとしても、蓮唯をここで倒して、希々の居場所を問い詰めるまで」

「一度も勝てたことがないのに挑むのか?」

「・・・確かに。僕は一度も蓮唯に勝てたことはない。でも。昔の僕は捨てた。そして、僕は変わった!」

遥斗が刀を構えて一直線に駆け出す。

「遅い」

蓮唯がかわそうとするが、遥斗の刀が蜃気楼のように揺らぎ、蓮唯の右肩を斬り裂いた。

希々が与えた切り傷だけでなく遥斗が与えた右肩の攻撃により、血がとめどなく出続けるが、当の本人は気にしてない。

「・・・あれだけの出血で驚かないのか・・・」

「俺はすでに半分人やめてるんで。これくらいでは死にやしないさ」

冷や汗を拭いながら、蓮唯を見据える。

「改めて聞くけど、一体何があった」

「いいよ。しつこく聞いてくるから、話すよ。その代わり、ここで倒れてくれ」

蓮唯が持っていた剣が消えた時、直感で垂直に跳躍した遥斗だったが、跳躍した時には遅かった。

「かはっ・・・!?」

遥斗の右足が切り落とされていた。

「空間変化・零」

静かに、技名を唱えた蓮唯に対し、遥斗は無意識に止血しながら驚いた。

「その技、僕の前では一度も見せなかった」

「そうだろうな。ここで初めてお披露目したからな」

片足でバランスを取ること自体、遥斗は経験しているが、やはり辛い。

「ここで蓮唯を倒す・・・。そして本部へ連れていく」

「片足失って動きが制限されているのにか?」

蓮唯の指摘はごもっともだが、遥斗は既に勝ち筋を見つけていた。

蓮唯に藍翔、そして希々、それだけじゃない。

ЯEBIRTH CODEにいる全員すら知らない秘密兵器が発動しようとしていた。

初めに遥斗が握っていた右手の刀が眩い光を放った。

「なんだ、その光は!?」

蓮唯が飛び退くのを視認した遥斗が刀を地面に突き刺す。

遥斗の普段の声だけでなく、知らない誰かの声も重なる。

「全てを覆せ、我が主よ。今ここに、審判を下せ────」


現実からかけ離れた真っ白な空間。

そして刀から現れたのは・・・着物を纏い、刀を差している淡いピンク色のストレートヘアの女。

『主の声、聞き受けた。よろしい。我が力、存分に使いな』

「ありがとう」

『ところでひとつ聞く。何の目的で我を呼び起こした?』

目の前の女の問に遥斗が平然と答える。

「大切な仲間を元に戻したい。なにせ、あいつは進んでは行けない道に自らの意思で進んだ。だけど」

『?』

「僕は確信してる。心のどこかで助けを求めてるってことを。そして、今ならあいつの気持ちもわかると思うから」

『────ほお。それがお主の理由か』

目の前の女が面白そうに拍手を送る。

「なんの拍手ですか」

『いやいや。褒めてるんだよ。仲間を救いたいその思い、とても強い思いだ。それでいて、かつての我と似ている。まあ無駄話はここまでにしよう。さあ行ってこい。その力で大切な仲間を救ってこい』

「・・・行ってきます」

遥斗が目の前の女の手に触れたその時、景色は一変した。


眩い光が収まった。

蓮唯が目を開け、遥斗のいた場所を見ると驚愕した。

「なぜだ。なぜ切り落とした足が戻っている?なぜだ・・・!」

そう、遥斗の右足が戻っていた。

変化はそこだけにとどまらない。

服もさっきまでのЯEBIRTH CODEの制服とは違い、着物を着ており、目も淡いピンク色になっていた。

先程まで持っていたごく普通の刀には、桜の花びらの模様が刻まれていた。

「ずっと隠していた。この刀には、伝承が残されている。その伝承を呼び起こしただけさ」

「伝承を呼び起こすだと・・・ふざけるな。ふざけるな!そんなの」

「ありえない、ってきっと蓮唯は言う。でも、有り得るんだよ。僕(私)は、命をかけてまで戦い抜く!」

遥斗の背後にうっすらといる人物の姿を見て蓮唯は初めて恐怖を覚えた。

「負けるのか・・・俺が・・・遥斗に?」

「これが、道を違えた蓮唯に送る、軌道修正の光だ」

遥斗が遠い距離から刀を振り下ろしながら技を叫ぶ。

「朧影斬・桜式」 

その声が、蓮唯に届いたかは知らない。

桜の花びらを纏った斬撃が蓮唯の体を斬った。

はずだった。

「・・・そんなもので負けるほどやわな身体じゃないんだよ!」

蓮唯が斬撃を確認してからわずか一秒、片手剣を地面に突き刺し、禍々しいオーラを発生させ、オーラを壁として変形させ、桜式を防ぐ。

さすがの蓮唯もこれまでの戦いで傷が深いのを確認し悔しそうにしながらも、淡々と身体を確認をする。

「少し身体への損傷が激しいな。ここは退散する」

「待ってくれ!」

「希々の所在に関しては言えないが、希々はこちらで管理させていただく。精々探し出すことだな」

遥斗が何か言いかけたが、蓮唯は音もなく消えていった。

「・・・希々が敵に渡ったら最悪だったのに・・・僕はどうやら運が悪い」

そう、元の姿に戻りながら遥斗がすぐ近くに置いてあった希々のバッグをそっと手に取った。

「これは・・・!」

バッグの中身を見て、遥斗は確信する。

「希々・・・どうやら君は、策士なのかもしれないね・・・」

バッグの中に本来ならあるはずの“あれ”がないことを理解した遥斗。

「大至急本部へ。居場所を特定してもらいたいメンバーがいる・・・」


遥斗がやろうとしていることは、行方不明になったメンバーの居場所を探し出すこと。

探し出す方法は至ってシンプル。

メンバーが持っているGPSの番号もしくは、メンバーの名前を本部に通知し、本部から大まかな座標を教えてもらうことが可能。

そして希々は、不測の事態に備えて自身の腕にЯEBIRTH CODE特製のGPSを内蔵したスマートウォッチを嵌めていた。

ちなみにだが、スマートウォッチに関しては、本部に無茶を言って作らせていただいた経緯がある。


そして今、希々の対策が功を奏する時がやってきた。

「全てを話す余裕はないから、端的に言う。希々が連れ去られた。いや正しくいえば強制書き換えプログラムで飛ばされたと言うべきか。そして、心して聞いて欲しい。強制書き換えプログラムを使ったのは、蓮唯だ」

さすがに蓮唯の話になると本部も騒ぐだろう。

「話はここからだ。希々の居場所を探し出して欲しい。わかり次第連絡してくれ」

そう、本部に言い残し、通話を切る。

遥斗は知っている。本部の周辺も同時に攻撃を受けていることを。


遥斗が希々の元へ駆けつける七分前。

「藍翔さんに、楼梨さん。事情が事情ですので手短に。本部の近辺で襲撃がありました。敵は幹部レベルが一名と部下レベルが三名。その他生物が数十体です」

夏帆が住民から送られてきた情報を元に敵の戦力を瞬時に把握、伝達を行う。

「さすがに二人で大丈夫なわけがない規模ですよ」

「俺も行く」

藍翔の肩を叩くほど親交のある人物は極わずかだが、そのうちの一人である璃音だった。

「妙な雰囲気を感じるんだよな。多分、二年前のあの事故と同じ感じだ」

璃音の言葉に楼梨は首を傾げ、藍翔は冷や汗をかく。

「なぜわかるんだ」

「さあな。ただ、幹部レベルの敵の雰囲気があの時と変わらないからだな」

「一つ言うが、幹部レベルの敵との戦いで三人は安全マージンとは言われている。しかしあの画像に写っている敵が本当にあいつなら、戦力は三人でも足りないだろうな」

藍翔と璃音は身をもって知っている。

「そんなに強い敵なの?」

楼梨の問に二人がどう答えようか悩んでいると、新たな人物がやってきた。

「藍翔に璃音。それに、楼梨ちゃん。おひさ」

「お前・・・誰だっけ」

藍翔の渾身のボケに泣き出す人物。

「ふぇえええええん。いくらボケでも酷いですよぉおおお」

「お、落ち着け落ち着け。大丈夫だ。俺が悪かった」

藍翔の慰めがなんの意味もなさない中、璃音が名前を呼ぶ。

「久しぶりじゃねえか。姉貴じゃなかった。瀬奈」

そう、やってきたのは璃音の姉、瀬奈だった。

「帰国してたのか」

「まあね。ところで襲撃の話はこっそり聞いてたよ。私も行く」

瀬奈が武器を取り出すが、今まで瀬奈が使っていた武器とは何かが違っていた。

瀬奈の武器を見た藍翔と楼梨は「「え!?」」と驚き、璃音は平然としながら、遥斗をどうするか聞いていた。

「ところで、遥斗はどうする?」

「あいつなら、希々からのメッセージを受けてそっちへ向かうってさ。どうやら新入りじゃなかった。希々は嫌な予感するけど。まあ、遥斗ならどうにかしてくれるでしょ。ってことで出発」

瀬奈が緊張感もなくうきうきに歩き出すのを三人が着いていく形になった。


本部を出てすぐ、敵を見つけた。

「いた!」と楼梨が指を指す。

「本当にあいつと姿が似ているじゃねえか」と藍翔が苦笑い。

「雰囲気があの時と変わってない。大変な戦いになりそう」と璃音が警戒をする。

「もしかして、みんなビビり?ビビり?そんなんじゃダメだよ?」と瀬奈だけが楽しそうにする。

「少しは危機感持ってくれねえか?姉貴」

「璃音はうるさいわね。そんなんじゃ嫌われるぞ?」

璃音の警告に瀬奈があっけらかんとしている。

「とにかく、周囲の雑魚を倒さないと」

「瞬殺すればいい、でしょ?」

瀬奈が右手を振りかざすだけで周囲の雑魚敵が消えていった。

「「「は?」」」

開いた口が塞がらない。

「ん。雑魚敵これだけ?つまんな」


────阿久津瀬奈。見た目は優しい金髪の帰国子女。というのは肩書き。本当の瀬奈は、戦闘に置いて発揮する。

敵を見下す癖がある戦闘狂。

圧倒的実力と知力を兼ね揃え、挙句の果てに任務失敗率はゼロ、そして敵組織との戦いは負け無し。

戦闘解析でもその力を発揮する。

メンバーの戦闘シーンを見て、最適解を導き出し、的確にアドバイス。

隠れた勝ち筋すらものにする彼女は、ЯEBIRTH CODE唯一の天才と言われるらしいが真偽は不明。

それこそが、阿久津瀬奈である。


「運が悪かったな・・・あいつらは」

憐れむ璃音。

「瀬奈さんが楽しそうに戦うのいつぶりだ?」

藍翔がイキイキとしている瀬奈の姿を見て首を傾げる。

「瀬奈さん、やばい」

楼梨だけが目を輝かせていた。

何だこの空間はと言われてもふさわしい言葉が見つからない。

「雑魚敵退治~」

ノリノリの瀬奈を食い止めれる人はЯEBIRTH CODEの中では誰もいないし、こうなったら見守ることしか出来ない三人だった。


幹部はどこかなと探していると、部下レベルの敵と先に遭遇した。

しかしながら、瀬奈は同じく右手を振りかざすだけで部下レベルの敵を瞬殺してのけた。

「これは勝ち確か・・・?」

「それフラグですよ」

璃音の発言に藍翔が珍しくツッコミを入れる。

「空気が変わった」

瀬奈が立ち止まった瞬間、周囲から独特な匂いを感じ取れる。

「そこにいるんでしょ」

瀬奈が右手を振りかざして、周囲の住宅地を粉々にする。

「バレてしまいましたわね」

真っ白なストレートヘアに透き通った藍色の瞳を持つ女性。

雰囲気でわかる。常人ならざるこの雰囲気。

一般の人なら怯む。

でも逃げることは許されないのだから。

「名前を名乗りな」

「では名前を。私の名前は、アイウィス。精々、足掻いてくださいまし」

そう、目の前の女は笑みを浮かべながら能力を発動させていた。

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