EPISODE10.過去を清算するために、動く者
お久しぶりです。
先月は忙しすぎて更新する余裕がなく、更新できませんでした。
申し訳ありません。
次は8月中にちゃんと公開できるよう、頑張らせていただきます...
しばらく月一更新になりますがよろしくお願いします。
では本編、どうぞ
アイウィスが笑みを浮かべながら発動していた能力に嫌な思いがある藍翔と璃音が楼梨と瀬奈を引き連れて能力の有効範囲外に逃げる。
逃げ終えると同時に、「よく範囲をご存知で」と褒める。
「この嫌な感じ、変わらない。何も変わってない。むしろあの時より力が増えている・・・ここで倒さないといけない」
藍翔が銃を取り出そうとするが、瀬奈が止める。
「それはやめな。こいつは私が片付ける」
「姉貴。ひとりで大丈夫なんだな?」
璃音の心配に瀬奈はグッドポーズをして敵の方へ歩みをすすめた。
「あ、一つだけ。雑魚敵まだいるかもしれないから気をつけてね〜」
右手をヒラヒラさせながら進んでいく瀬奈に、もはや驚かない三人だった。
「いくらなんでもひとりでいくとは思わなかった」と藍翔が珍しく心配そうな顔をする。
「姉貴なら大丈夫だろ」と確信を持っている璃音。
「まあ、それはよくわかったけど、いつの間にか雑魚敵うじゃうじゃいるよ。なんなら部下レベルの敵も残ってるよ。うへぇ・・・」と再び雑魚敵や部下レベルの敵がいることを見てしまった楼梨。
「とりあえずこっちから片付けるぞ。まあ、瀬奈ひとりでどうにかなると信じて」
そう、藍翔は断言したかった。
────藍翔は、瀬奈を知りすぎている。
というよりかは、ЯEBIRTH CODEの中で誰よりも瀬奈を知っている。
それでも弟の璃音には劣るかもしれないが。
初めて知ったのはЯEBIRTH CODEに入ってすぐだった。
初期メンバーは少ないとはいえ、全国各地から呼び寄せられたからかどうかは分からない。
だが、周りが緊張していて、当時高校生だった藍翔自身も緊張していたということは確か。
この時の藍翔は通信制高校に通っていた。
通信制高校に通っていた理由は特に無いが、全日制高校だけは行きたくなかったかららしい。
そんな中で瀬奈は緊張せずグイグイやってきた。
「初めまして。阿久津瀬奈です。良ければお名前、教えていただけますか?」
一方的にあっちから距離を詰めてきたから、藍翔の第一印象は、フレンドリーな女性ってところだろうか。
「藍翔。柊藍翔。それが名前」
「藍翔・・・うん。いい名前」
瀬奈が満足気に頷く。
「俺が怖くないのか?」
思わず口にしてしまったが、瀬奈は笑い出す。
「怖い?まっさかー。んーたしかに顔というか表情は怖いけど、根はいい人だと思うんだよね」
「そ、そうか」
瀬奈の話すペースに飲み込まれそうになる藍翔。
「でも。君の本心がよくわからないんだよね」
「どういうことだ?」
瀬奈が藍翔の目を覗きながら、首を傾げる。
「普通の人は色々な感情を目に宿すけど、今のところだけど、藍翔は妙に引っかかる。なにせ、目を覗いても感情が読めない。まるで自分の中にある何かがバレたくない感じ。もしかして図星だった?」
瀬奈が首を傾げる。
藍翔の沈黙が図星であることを表していたのだった。
「教えろ。なぜわかった」
「んー。気になるなら、これから行われる入団式が終わったあとにここに来て。隠し事はなし。以上」
瀬奈がウキウキで場所が書かれた紙を藍翔のポケットに差して消えていくのを見届けた藍翔が誰にも聞こえない声でつぶやく。
「なんなんだよ、あいつ」
藍翔も腕時計で時刻を確認し、入団式の会場へ向かった。
入団式が二十分程で終わって、会場を出る時、遥斗に声をかけられたが藍翔は断って、ЯEBIRTH CODEの屋上へ向かう。
「来たぞ・・・っておい、なぜ服を脱いでいる」
藍翔が屋上のドアを開けて真っ先に目に入ったのが制服を脱いで景色を見ている瀬奈だった。
「私の場合、服脱いでる時が1番楽なの。あ、予定通り来たね」
「いやそれ服脱いでいる答えになってないし」
「何?そういうの興味あるの?」
瀬奈がキョトンとする。
「ない。ないけど!流石に着てくれないか」
藍翔のお願いに渋々従う瀬奈だったが、着替えている途中で首筋の黒い模様が藍翔の目に入った。
「これでいいでしょ?ん?どうしたの藍翔。固まってるけど」
「さっき、首筋の黒い模様が見えた。あれは一体なんだ?」
藍翔の指摘に驚かず首を傾げる瀬奈。
「なんの事?」
「惚けるな。いかにも禍々しいあの模様、全部話してもらうぞ」
「はぁ・・・わかった。話をしてあげる。一つ言えば、二ヶ月前の話」
瀬奈が淡々と話を進める。
「・・・その時の私は、普通に友達とゲームセンターに遊びに行ってたんだよね。それで、帰り道だったかな。今となってはニュースで日々話題になっているけど、その頃は話題にすらならなかった例のよく分からない物体に襲われた。その時にできた傷みたいなものだよ」
「傷・・・?傷にしては生きているみたいだが・・・」
「そこなんだよね」
瀬奈が食い気味にのってきた。
「この黒いのがなにかの寄生虫かもしれないって、組織を立ち上げた人が言ってた。まあ詳しいことは、近々研究させてくれって組織の研究チームに言われたから、そこには従うつもり。それで良くなるならなんだって受けるつもり」
「あんたは、大人だな」
藍翔の褒め言葉(?)に照れる瀬奈。
「これで説明は終わりでいいかな?んじゃあ本題入ろうか。なぜ私が藍翔のことがわかったのか。教えてしんぜよう」
「急に口調変わったな」
「ああ、気にしないで。癖みたいなもん」
瀬奈が背伸びしながら藍翔との距離を詰める。
「近い近い近い近い」
「あーごめんごめん。まあ、いっか。では改めて。なぜ藍翔が隠し事をしてるかがわかった理由は、正直、直感が七割だけどね」
藍翔が「は?」と声を出す。
「冗談冗談。けど、直感と言ってもいいかもしれないね。まあ端的に言えば、藍翔の目を見て見えた、かな。どんな仕組みかは自分でもよくわかってない。そして、藍翔。私の前では隠さなくていい。どうか教えて欲しいな。隠し事の内容を────」
スムーズに話を流す瀬奈だが、藍翔が瀬奈の両肩を掴みながら聞く。
「目を見て、見えた・・・?」
瀬奈が「あー、うん」と言って、続けて藍翔の知らないワードが出てきた。
「私の能力。相手の目を覗いて、思考や心理を読むことができる」
「能力?なんだそれは」
「知らないなら簡単に説明するけど・・・人間の中には特殊な体質を持つ人がいるらしくて、その人たちが使える現象を能力って呼ぶらしいよ。まあどうやって能力が発生するかはわかってないけどね」
瀬奈が満足でしょ?と言わんばかりの顔をする。
「ということで教えてくださいな。藍翔の隠し事を」
瀬奈が懇願するが、そこで屋上のドアを開けてやってきた人物がいた。
「遥斗・・・それに、夏帆・・・話を聞いていたのか?」
帰ったはずの遥斗と、遥斗の妹の夏帆がいた。
「藍翔?この人達誰?知り合い?」
「あー、うん。遥斗はなんやかんやで長い関係で、遥斗の隣にいる女の子が遥斗の妹だ」
藍翔の説明に「なるほどね」と瀬奈が頷きながら遥斗の目を覗く。
「んー?なんだろう、これ・・・。なるほどね・・・理解した」
瀬奈が万遍の笑みを浮かべながら遥斗と夏帆から距離を置く。
「遥斗さんのことを少し探らせていただきました」
「な!?」と遥斗が驚きながらも、先程まで目の前の瀬奈に目を覗かれていたのを思い出す。
「どういうことですか」と怒りを露わにする夏帆。
「私の能力だよ。そこの藍翔にも同じことをした。そして遥斗って言ったっけ。君も面白い子だね」
「僕が?」
遥斗が首をかしげた。
「多分だけど、みんなに言ってないだけで、既に能力があるんでしょ?それも、結構大掛かりな能力」
「よくおわかりで」
遥斗が肩を竦める。
「そうですよ。僕は能力があります。妹にも、藍翔にすら言ってません。でも、正直バレるのは時間の問題と思いました」
「ん・・・気をつけな。能力は使い方次第で毒になるから。あとは、藍翔。明日の夜、通話できるなら紙に書いた電話番号に電話してきてね。じゃあ、おつしたー」
瀬奈がそう言い残し、眠そうに屋上を去っていく。
「なんだったのでしょうか?」
「なんだったのかはわからないが、彼女はいい人だと僕は思う」
遥斗が夏帆と一緒に消えていくのを見届け、藍翔も屋上を去った。
それからというもの、瀬奈と度々遭遇しては互いのことを話す。
通話もする。そんな日々が続いた。
時に練習という名前で本気の戦いを行い、時にお互いの技を見せてアドバイスを行うことを繰り返した。
その結果、藍翔は瀬奈を知りすぎた。
瀬奈が留学行く時も、藍翔は空港に駆けつけて挨拶をした。
それくらい、お互いの中は深まっている。
故に、藍翔は心配している。
瀬奈ひとりでアイウィスを倒せるか否か。
答えはまだわからない。
瀬奈が眠そうに右手をかざし、アイウィスを攻撃しながら問いかける。
「そちらの名前を名乗って貰えるかな」
「アイウィスですわ。服からして、ЯEBIRTH CODEのメンバーでしょうか?あら嬉しい。ЯEBIRTH CODEの方と戦えるのを心待ちにしていたの」
恍惚とした顔で瀬奈を見ながら、攻撃をかわすアイウィス。
「そうですか・・・なら、尚更ここで倒さないとね」
瀬奈が再び右手をかざす。
「八割程のパワーは残しておきますか。では行ってらっしゃい」
地中からゴーレムが複数体生成し、攻撃する。
「ゴーレムを生成できるのね。あらすごいわ。でも残念」
アイウィスが無意識にギターを弾く時に使うはずのピックを投げ飛ばしてゴーレムを倒す。
「使い方間違ってませんか?」
瀬奈があっさり倒されたゴーレムを一瞥し、アイウィスと向き合う。
「間違っているかなんか関係ないのよ。私の愛用する武器に変わりはないから」
再びピックを投げ飛ばすが、今度はピックのまま投げてきた訳ではなかった。
ピックがナイフに変形し、瀬奈の元へ飛んできた。
「物質変形でしたっけ。あなた方の中にいる人が使えるって噂で聞いたわ。能力の内容と使い方をそちら側の内通者経由で盗ませていただいたわ」
「やっぱり、内通者はいたのね!」
瀬奈が少し怒りを抑えながらナイフをかわす。
「ええ。内通者はいましたとも。内通者の情報が欲しい?ならここで倒してみて」
「挑発、ですか?」
瀬奈の怒りが限界を迎えていた。
「挑発かもしれないわね。とにかく、本気で戦わないとあなたは負けますよ?」
「・・・わかった」
瀬奈が覚悟を決めた。
「おいで」
瀬奈が何もない空間に手招きをすると、現れた純白の刀身を持つ剣が音もなく現れた。
「眩い輝き。もっと見せて?」
瀬奈が音も立てず剣を片手で握り、1歩踏み出す。
「スピードが早い!ええ。ええ!ようやく本気で戦える。もっと、もっと攻撃してきなさいな」
「塵となれ。星々の四重奏」
瀬奈が一言、技名を唱えただけでアイウィスの身体が真っ二つになった。
「いかなる効果も受けず、いかなる効果も無効にする最強の一撃。悪は消えて滅ぶべき」
瀬奈の言葉の通り、アイウィスが塵のように消えていった。
────はずだった。
「最終兵器、起動」
瀬奈が嫌な気配を感じ取り、すぐさま距離を取る。
その瞬間、最後の足掻きでアイウィスが発動していた能力が周囲の住宅を粉々にした。
それだけでなく周囲にいた人物が突然、気を失う事案が発生した。
もちろん瀬奈も無傷という訳ではなかった。
かろうじて気を失うことはなかった。
身体中の力が奪われる感触と身体の至る所でできた傷。
さらに強い風で近くの壁に衝突した。
能力が収まって、目を開けるとそこは更地になっていた。
「なによ、これ」
さすがの瀬奈でも、最後の高威力攻撃の被害を震える足で立ち上がりながら見る。
「瀬奈!」
「姉貴!」
藍翔と璃音が駆けつけてきた。
「倒したのか?」
「わからない・・・。でも、ここまで広範囲の攻撃、見たことない・・・」
藍翔の問いかけに確信を持てない瀬奈。
「能力の気配は消えてるけど、一応確認しよう・・・」
瀬奈が恐る恐る、最後にアイウィスがいた場所を見ると、真っ二つになったアイウィスがいた。
「生きている気はしないわね」
「ところで、楼梨ちゃんは?」
今更ながら楼梨がいないことに気づく瀬奈。
「楼梨なら、周囲の住民への避難指示と怪我人を運ぶ作業しているが」
「了解。じゃあ、本部に帰って説明しましょうかね」
瀬奈と藍翔が歩いて本部へ向かうのを見届けた璃音がアイウィスの死体をみる。
「これは・・・レプリカなのか・・・?ということは、本体は・・・」
その答えにたどり着いた瞬間、璃音の背後から聞こえて欲しくなかった声が聞こえた。
「そうですわ。本体は既に別の身体へ移しておいてましたの。この姿なら、あなた方は倒せない、でしょ?」
声は聞き覚えあるのに、口調が・・・違う。
「嘘、だろ・・・」
アイウィスの本体は、眠っていたはずの沙奈に移っていた。
つまり沙奈は、二年前の攻撃から今に至るまで依代としてその時が来るのを待っていた、ということになる。
「この身体も悪くはないわね」
感触を確かめるアイウィスを見ながら、璃音が覚悟を決めた。
「お前を倒す。倒して沙奈を手に入れる。それだけだ」
「やれるものなら、やってみればいいじゃないですか?まあ、あなたが大事なお仲間を傷つけることができるかにかかってますよ?」
戦いたくない、傷つけたくない。そんな気持ちが浮かび上がってくる。
でも、ここで戦わずどうする?そんな気持ちも聞こえてくる。
静かに深呼吸をして、沙奈を見据える。
「覚悟は決めた。姉貴や藍翔がいなくても、勝つ」
ナイフを三本抜いてすぐに、沙奈目掛けて投げ飛ばす。
「単調な攻撃はわかりやすいわ」
「沙奈の声でそんなことを言う貴様を許さない」
璃音がナイフをさらに五本取り出して投げながら能力を発動させた。
「固有能力、起動!」
ナイフが光りながら不規則な軌道を描く。
「少しだけ、本気で行くぞ」
指を動かすと、ナイフもその軌道で動く。
「ここでこの物語を終わらせないと、俺がЯEBIRTH CODEにいる意味がない」
ナイフの攻撃を受けながらも余裕そうな顔をする沙奈。
勝ち筋がほぼないと言われる戦いを繰り広げていることを瀬奈に藍翔、そして楼梨すら知るよしもなかった。




