どうも、復活祭ってやつですね
「………………一体、どこに消えたのかしらぁ?」
晴れた煙の先を見てマシットが呟く。
「それにぃ………………」
マシットは視線を少し視線を逸らしこじ開けられた扉の先を見る。
「………………あれは一体何なのかしらねぇ?」
四角い枠の奥に見えるのは何もない空間、だがしかしよく見ると中央に紫のきゅたいがフワフワと浮いている………………。
「……魔力の結晶……」
「………………メリッシュの体を覆ったのと色も一致するな」
アルク達はそれを見た瞬間、心臓の鼓動が速くなるのが分かった。
それは本能的に恐怖を感じたというのもあるが、それよりも………………。
「……メリッシュの魔力を感じる……」
「………………私でも分かるぐらいにねぇ」
「………………行く、か」
アルク達のその言葉に二人は無言でコクリと頷き、そして三人は横に並んでその大部屋に入る。
「……広い……」
ざっと見渡すだけで龍種の頂点が五体は入りそうな広い空間、床は魔力の球体を中心に円状に赤黒いレンガが敷き詰められており、ところどころ隙間から草が生えている。
アルク達はところどころ隙間が開いている床に歩きにくさを感じながら魔力の塊に近づいていく。
「……やっぱり……この球からメリッシュの魔力を感じる……」
最初に魔力の球体の目の前に立ったのはコープル、アルク達はその後ろで何が起こってもいいように身構えている。
「…………それがメリッシュなのか?」
「……違う、けど……これを解析すればメリッシュの場所が分かるかも……」
そう言ってコープルはその魔力の球体に直接触れようと手を伸ばし………………たところで甘ったるい声がした。
『あんまりそれ触んない方がいいと思うけどね~~~』
コープルは唐突に強大な存在に声を掛けられ、体が凍り付く。何とか恐怖を押さえ、コープルは声のした方に顔を向ける。
「……魔王軍の吸血鬼……!」
『どもども~~~、魔王軍最高幹部、四天王の一人………………ヴァンプちゃんで~~~す!』
顔を向けた先には蝙蝠の翼をはばたかせてコープルの横を飛ぶヴァンプが笑顔でコープルに自己紹介をする。
「…………ふざけてる……?」
『違うよ~~~、大真面目に言ってるの』
ヴァンプの表情はにこやかだが、真剣にそう答える。
「この球体に触れたら何か不都合な事でもあるのかしらぁ?」
『不都合は私にはないけどね~~~、不都合があるのはあなた達だから~~~』
「………………へぇ、一体どんなかしらぁ?」
マシットの言葉を聞いたヴァンプは指を鳴らし、そうした次の瞬間にもう一度同じ音がどこからか聞こえてくる、その瞬間にはヴァンプはアルク達の視界からは消えていた。
「ッ!? 一体どこに行―――」
『不都合って言うのは~~~あなた達が死ぬってことぐらいだから~~~』
「「「ッ!?!?!?!?!?」」」
いつの間にかヴァンプはマシットの後ろから肩に手をのせていた。
「何をしたのかしらぁ!?」
そう叫んでマシットは手に持っていたハンマーを使って、振り向きざまにヴァンプに殴りかかる。しかしヴァンプはその降りかかる腕を掴み、そのままマシットを後ろの壁へと投げつける。
「ッ! マシット!?」
吹きどぶマシットの方へ視線を向け、そちらに駆けていこうとするアルクだが、その動きが止まってしまう。
『つれないことしないで話をしましょ~~~? アルクちゃん』
ヴァンプが自分に背を向けて走るアルクの首を後ろから掴んで語り掛ける。
『こっちは積もる話もあるんだからさ~~~』
「積もる話だと………………一体どういうことだ?」
『だ~~~か~~~ら~~~………………うっとおしいな~~~』
ヴァンプはアルクに対して何かを話そうと口を開けるが、その内容は話さず心底面倒くさそうに悪態をつく。
それはアルクに向けたものではなく、自分の腕に巻き付いた紫の髪の毛に対してのものだ。
「……一体何の話かは知らないけど……私の事を無視しないでくれる……?」
巻き付く髪を目で追いかけると、その先にいるのはコープル。
ヴァンプは自分の話を邪魔したコープルを睨みつけながら、巻き付いている髪の毛を無理矢理掴む。
『へ~~~面白い魔法ね、この力は「神罰」かな~~~?』
「…………だったら何……?」
「いや~~~ただ………………「神罰」を使う者が勇者の仲間だなんてなんて皮肉なのかな~~~と思っただけ!」
そう言ってヴァンプは腕を引っ張り巻き付く髪を自分側に引き寄せる、コープルは髪がひかれたことによって宙へと浮かびあがった。
『空中で身動きが取れるのかな~~~?』
「……大丈夫……あなたの腕に巻きつけてるから……」
コープルは巻き付けている髪を起用に動かして空中で姿勢制御をし、自分の指先をヴァンプに向け、そして爪を打ち出すがヴァンプは高速接近するそれを翼ではじく。
「………………!?」
『こんな攻撃なんてことないよ、あんまり四天王を舐めないで欲しいかな~~~』
そう言いながらヴァンプは掴んだ髪を思いっきり地面へ叩きつける。
「………………ッ!?」
コープルは自分の髪に引っ張られて地面へと叩きつけられ、そこにはちょっとしたクレーターが出来ている。
「ッ!? コープル!?」
『ふ~~~、ざっとこんなもんかな~~~?』
「お前!」
『ま~~~そんな睨まないでよ~~~、それにこっちが忠告してあげてるのにあっちが攻撃してきたんでしょ~~~?』
「………………それは」
『ま~~~敵なんだから当たり前だけど、それでなんでアルクちゃん、君は君の力を使って何でヴァンプちゃんの事を攻撃しないのかな~~~?』
「ッ!?」
アルクはヴァンプの言葉に喉を詰まらせる。
「(完全に詳細を掴まれているのか?)」
『別に君の力を全て分かった気はないけれども~~~使わない理由ってもしかしてだ―――』
「―――もしかして相対する対象の力が強すぎると、対象が出したもの以外でも消し飛ばしてしまうんじゃないかい?」
ヴァンプの言葉を遮る声がした、その声の主は虫のような羽音を鳴らしながら二人の間にいつの間にか浮いていた。
「ッ!?!?!? リーク!?」
『ッチ、聖竜か~~~』
リークの姿を目視したヴァンプは、心底嫌なものを見たような顔で舌打ちをする。
「ン? 久しぶりだね、四天王の蝙蝠じゃないか。蝙蝠が蝙蝠らしく地下に潜ってコソコソ何かをしてるんだね」
『あなたは今完全に竜としての力は無くなって、今は下級妖精程度の力しか無いのは知ってるのよ~~~? 今~~~ここで~~~殺してあ・げ・る』
ヴァンプはアルクの首を掴んだまま、もう一方の手の爪をむき出しにしてリークに襲い掛かる。
「ははッ、怖いね」
リークは全力で迫りくる吸血鬼から離れ、紫の球体へと近づく。
『ッ!? あなた一体何をする気なのかしら~~~!?』
「何って? この球体に触れるだけだけど?」
『正気? そんな不安定な魔力の塊に触れたらこの国だけじゃなくて、あなたまで吹き飛ぶのよ~~~?』
ヴァンプはリークの事を奇妙なものを見る目で見つめる。
「残念ながら、この球体を作ったのは僕だ。そして魔力が不安定に見えるのも全部僕が細工してそういう風に見えるようにしておいたのさ」
『………………どういう事かしら~~~?』
「君は知らないかもしれないけどね、その子達は今僕が作った試練を受けていた最中なのさ、そしてこの球体の中には勇者が入っている、まあそこで倒れている紫髪の『巫女』もいい線はいってたんだけども、中にいないように見せかける僕の細工にはどうやら気づけなかったみたいだね」
リークは笑いながら言う。
「そういえばアルク君達は僕の愛娘に会ったんだよね?」
「………………『運命の聖女』か、お前はどうして今の今まで姿を現さなかったんだ?」
ヴァンプに振り回されながらも、辛うじて意識を保っていたアルクがリークに問いかける。
「まあ僕の愛娘は今反抗期中だからね、あんまり一緒にいない方がいいかなって思ったのさ」
そう言ってリーク魔力の球体を撫でる。
「まあ理想の十分の一程度の出来だけど、今の状況で開放するのが一番面白そうだからね」
リークは球体の表面から内部へと手を突き刺した後その手を引き抜く、手には何か黒いドロッとしたものが付着しており、リークはそれを地面へと塗りたくり魔法陣のようなものを描いていく。
「"解放"」
リークが呟いた、その瞬間どす黒かった魔法陣は金色の光を放ち部屋全体を覆いつくす。そうして光が晴れた時、魔法陣があった場所は魔法陣が消え、代わりに少女が一人佇んでいた。
佇む少女は少しだけ周りを見渡した後、ぽつりと口を開ける。
「………………ここってどこ!? 何でコープルとマシットは倒れてるの!? 大丈夫なの!? ていうかなんでアルクは首を掴まれてるの!?」
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