どうも、伝説が史実って興奮しますね
「……この液体は……………………」
そう言ってコープルは深紅の液体が流れている水路に顔を近づけ匂いを嗅ぐ。
「おい、大丈夫なのかそれ? ていうか………………この流れてるのは血なのか?」
「……多分、そうだと思う………………」
「………………リーク、これはいったい何なんだ?」
アルクは水路に指を向けてリークに問いかける。
「この水路に流れてるやつ?」
「そうだ」
「これは竜の血だよ」
「……竜の……血…………?」
竜の血という単語を聞いた瞬間、コープルが顔を曇らせる。
「そう、この地下大水道に眠る竜の血だよ」
「………………何でこんなところに竜の血が流れてるの……!?」
「どうしても何も………………君達だって『三伝説』ぐらい知ってるでしょ?」
『君達は一体何を言っているんだい?』とでも言いたげな顔でアルク達を見る。
「……勇者伝説、聖女伝説、聖竜伝説の三つをまとめて言ったやつでしょ……」
「私でも知ってるわぁ、それがどうしたってのぉ?」
「知ってるなら答えはおのずと出てくると思うんだけど、僕がここで『三伝説』の話をしたんだからさ」
そう言ってリークは壁に掛かった松明に虫の様に近づいては離れてを繰り返している。
「(あいつの口ぶりから察するに、それしかないよな。でも、まさか……そんなことがあるのか?)」
そのリークの行動を見ながらアルクは頭に浮かんだバカげた考えを否定しながら、だがしかし否定しきれずに言葉にする。
「まさか………………聖竜伝説が実際にあった話だって言うのか!?」
「まさかまさかのそのまさかだよ!」
「…………………………………………」
コープルが深刻そうな表情でリークの話を聞く。そのコープルの隣に立っていたマシットが話始める。
「聖竜伝説の話もそうだけどぉ、そもそもこの流れてるのが竜の血だって言うのも信じ難い話だしぃ、それに………………」
水路の方を見ていたマシットが顔をリークの方を見て何かを言おうとして、そして押し黙る。その表情には驚きが現れている、だがしかしそれの驚愕はリークに向けたものではない………………。
「なに……かしらぁ…………あれはぁ?」
リークの後ろのさらに奥、水路を流れる深紅の液体の上流を指さしてマシットは顔を青ざめさせる。
「…………どうしたんだ?」
アルクはそんな様子を見てマシットに声をかけ、アルクはマシットの指さす方向の方を見るが、何も見つける事が出来ない。
「そんな訳ないでしょぉ! よく見なさいよぉ!」
そう叫んでマシットは見たものをもう一度見ようとするが………………。
「………………見間違いだ……った、のかしらぁ?」
視線を向けた先には何も存在しない、マシットは幻覚でも見ていたのかといった表情で安堵するが、その安心をコープルが崩す。
「……………………違う、見間違いじゃない……!!!!!!」
コープルは言いながらマシットを横に突き飛ばしながら自分も反対側へ飛び跳ねる。
「ッ!?!?!?!?!?」
「……ッ……!」
二人が回避をした瞬間、目に見えない何かが風を立て高速でコープルとマシットの居た場所を通り抜ける。
「ッゥ!?」
アルクもその行動から危険を察知し自分も回避を取った、だがしかしアリアを背負っていたのが災いし、少し遅れたせいでアルクの頬に透明なものが傷を付ける。
「………………さっきの奴がやったのかしらぁ!?」
マシットが巨大なハンマーを両手で持ち上げ、攻撃された方向を見る。
「さっきの透明な何か、あんな攻撃尋常じゃないぞ………………マシット、一体お前は何を見たんだ!?」
アルクが頬の血を手の甲でぬぐい取りながらマシットに聞く。
「………………巨大な触手の塊よぉ、薄く透けた紫色のねぇ」
アルクはそう言われてメリッシュが消えた時のことを思い出す、薄く透けた狂気の紫。
「……また来る……!!!!!!!!!」
そう言ってコープルは髪を目の前の通路に張り巡らせる。
「コープル!? あなたの髪でさっきのが防げると思わないんだけどぉ! 避けなさぁい!」
「……違う、防ぐためじゃない……」
そう言ってコープルはさらに隙間なく、網の様に髪を張り巡らせる。
「……見えないから躱しにくい……」
コープルは髪を張り巡らせ、張り巡らせ、張り巡らせる。
「……だったら見えるようにすればいい……!」
その場にいる全員の視界が紫色で覆われ、全員がそれに注意を払う………………だがしかし。
「……………………………………!?!?!?!?!?」
コープルの張り巡らせた紫の網が突然破られた。
「ッ!? どうやって躱せって言うのかしらぁ!?」
透明な何かに髪が絡まり、その正体が現される。
「考えてる時間なんて無いだろ!」
透明な何かの正体は無数の棘が付いた球体であった、先程アルクの頬を傷つけたのも同じものだろう、だがしかし、見えてなかったとしても、先程とは決定的に違うと分かる部分がある………………サイズだ。
「走れ!!!!!!!!! 全員潰されるぞ!!!!!!!!!」
アルクが後ろに向けて走り出し、その場にいた全員がアルクに続く。
髪が絡まった巨大なそれは、水路を完全に埋めアルク達に向かって来る、幸いなのは先程よりも巨大になったことで速度が落ちているというところだろうが………………。
――――――――――――
どれだけ走ったのだろうか、走っても走っても景色は一切変わらない、あるのはまっすぐ伸びる水路と、後ろを延々と追いかけてくる球体だけだ。
周りを見渡すと、リークはいつの間にかいなくなっていた。
―――周囲を検査したところ異常を確認。
一体いつまで逃げればいいのだろうとアルクが考え始めた時、まっすぐ伸びる水路の先に黒い何かが見えた。
―――勇者の仲間を確認。
「ッ!? 何だあれ!?」
アルク達が走り、走った先にあったのは四体の竜が描かれた大きな扉だった。
―――竜の魔力を検知………………同期完了。
コープルが扉の取っ手に髪を巻きつけ、思い切り引っ張る。
「……ッ…………開かない…………!」
鍵のかかっている扉に苦戦している間にも球体は背後から迫って来る、その場にいる全員が顔を強張らせる。
―――世界との同期率………………八十七パーセント、十分起動可能です。
そして、迫りくる圧倒的な質量が、開かずの扉に阻まれたアルク達をひき肉に―――
『―――運命の聖女を起動します』
―――する直前、アルクの背中で眠っていたアリアがそう呟き、同時に水路を神々しい光が埋め尽くす、そして次の瞬間には………………。
『―――光神の守護剣』
………………次の瞬間にはその光が一本の剣の様に形どられ、球体を粉々に切り裂き、その残骸が水路の地面に滅茶苦茶にぶちまけられる。
「「「ッ!?!?!?!?!?」」」
目の前でその凄まじい魔法を目撃したアルク達三人はアリアへと注意を向ける。
アリアは既にアルクの背中から離れ、宙に浮かんだ状態で直立している、目には幾何学的な模様が浮かび上がり
「………………今の魔法はぁ、アリアちゃんがやったって事でいいのかしらぁ?」
全身から金色の粒子が溢れ出し水路の天井へと向かってフワフワと浮き上がっている。
「―――その認識で間違いはありません」
アリアは感情のこもっていない、ただただ平坦な声色でマシットの質問に答える。
「―――訂正する点があるとすれば、私はあなたが思っているアリアではありません」
「………………一体どういう事かしらぁ?」
「―――私の正式名称は聖女零四式『運命』、人を依り代とし世界崩壊の運命に立ち向かうために作られた精霊のようなものです」
「………………だけれどもあなたはさっきぃ、自分の事をアリアと名乗っていなかったかしらぁ?」
「―――いわゆる偶然というものです、依り代とした肉体が偶然私の呼び名と同じ『アリア』だったのです」
『運命の聖女』は普段のアリアではしないような、何を考えているのか分からない虚ろな目で辺りを見渡し、小さく口を開け。
「―――しかし何故、あなた達はこのようなところにいるのですか?」
その生気のない顔でアルク達を見つめて問いかける。
唐突に自分たちの事を虚ろな目が捕えたのを察知し、アルク達は一瞬思考が止まって、返答が遅れる、その間に『運命の聖女』は続ける。
「―――それに勇者の姿が見えません、どういうことですか?」
まるで勇者………………メリッシュが狂気の紫に包まれて消えたのを知らないような口ぶりで。
「―――勇者の仲間であるあなた達だけでは意味が無いのです、私“達”はあくまでも勇者を導くのが使命な―――」
「―――導くのが使命なら何で知らないんだ!?」
淡々と続ける『運命の聖女』の言葉を遮ってアルクが声を上げる。
「―――……? どういうことですか?」
『運命の聖女』の顔に表情は何も浮かび上がっていない、だがしかし、アルクは自分の言葉に聖女が鉄仮面のまま困惑しているのが分かった。
「メリッシュは勇者の試練で消えて、ここに飛ばされてきたんだろ!?」
「―――………………そのような導きは勇者の運命には存在しませんが」
「……でも私達はそう聞いた……」
「―――………………一体どのような者からそのような話を聞いたのですか?」
「………………リークっていう青い………………ッ!?」
リークという名前を聞いた瞬間、表情の無かった『運命の聖女』が顔に不快の色を表す。
「―――………………今、誰から聞いたと言いましたか?」
「………………リークってやつからだ」
「―――なるほど、分かりました」
『運命の聖女』は脱力したように虚ろな表情に戻り、鍵のかかった扉を見据える。
「………………なあ、リークって言うのは、一体どういう存在なんだ?」
アルクは『運命の聖女』に問いかける、背を向けた『運命の聖女』が一瞬何かを考え、口を開ける。
「―――リーク………………真名はアリアーラ・ホテク、聖竜の一体です」
そう話す『運命の聖女』の周りに、光の粒子が集まっていく。
「―――自らの欲望に支配され、魔王すら凌駕する力を手にし、魔王を倒した勇者の前に立ちはだかり、相打ちになった」
光神の守護剣、聖なる一撃、数ある魔法の中でも最上位に位置する術。
「―――そして………………」
『運命の聖女』は扉に出来上がった光剣の切っ先を扉へと向け、少し言い淀む。
「―――………………そして、私の父でもあります」
そう言った瞬間、光神の守護剣を鍵のかかった扉へと向けて放つ。
「「「ッ!?!?!?!?」」」
立ち込める煙に『運命の聖女』の姿が完全に巻き込まれる。
「―――どうかおきおつけて、勇者の仲間よ」
煙がだんだんと晴れてゆく。
「―――幸運あれ」
完全に煙が晴れた先にあったのは無理矢理こじ開けられた扉だけであり、『運命の聖女』の姿は完全に消えていた。
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