どうも、ここどこの水路ですか?
「アリアは俺が避難所に連れて行っておく、メリッシュ達は先にギルドに行っておいてくれ」
「うん、分かった」
メリッシュは賛成し、身支度を始める。
アルクもそれを見てアリアの元へと行き、肩をゆすり起こそうと試みる。
「……起きないんだけど……背負って行かないといけないのか、問題あると思うんだよなそれは」
アルクが寝ている女の子を背負って行っても、後で怒らないかどうかを考えているとき後ろから声を掛けられた。
「……アルク、ちょっと……」
その声の主はコープルだった。
「ああ、やっぱり問題あるよな。好きでもない男に緊急事態だったと言っても、寝ている間に体を触られるのって嫌だよなぁ」
「………………あなたは一体何を言っているの……?」
「後で殴られないか殴られるか」
「……そんな事気にしなくても大丈夫だと思うけど……」
コープルが本当に理解が出来ないような顔でアルクを見るが、本題はそんな事ではない様だ。
「……そんな事よりも気になることがあ…………………………メリッシュ……?」
コープルが異常なものを見たような様子でメリッシュに声を掛ける。
「え? どうしたの?」
いたって普通の様子でメリッシュが答え、強張った顔のコープルへと駆け寄る。
「おいおい、滅茶苦茶険しい顔してどうしたんだよコープル」
アルクはコープルの異常を感じて声を掛ける。
「………………アルク、気づかないの………………?」
「何の話だ? いたって普通だとおも……」
コープルが指で指す方向をアルクは話しながら目で追いかけ、そして驚愕し言葉を詰まらせる。
「ッツ!?」
指さされた先はメリッシュの足を示しており、そして、その足が、半透明となっていたのだ………………見たものを狂気に染める様な赤黒い光を放ちながら。
アルク達の反応を見てメリッシュは自分の足元へと目を落とす。
「な……に、これ?」
自分の足の惨状を視界に入れたメリッシュはフラフラと後ろへと下がり、椅子へと座りこみ顔へと手を当てる。
「ッツ!?」
だがしかし、そこでアルク達は気づく。
半透明なのは、消えかけていたのは足だけではなかったのだ。その狂気じみた赤黒い光はメリッシュの両手からも放たれており、徐々にそれは腕へと広がり胴体へと体を消しながら近づいていく。
「……メリッシュ……!?」
「一体私の体に何が起こってるの!?」
そしてメリッシュの顔にまでその狂気が至り、そのすべてを包み………………そして。
「あ、あ、あ、あああアアあアアアアアアァアァアアアアアアアあぁぁあぁああああアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そして目を開けてられないような極光を放ち、気が付いた時にはそこには光も、メリッシュの姿も………………何も残ってはいなかった。
「「「メリッシュ!?」」」
コープルとマシット、そしてアルクがそう叫んだ。
「いったい、いまのは何なんだ!?」
アルクがメリッシュが先程までいた場所へ走る、それと同時にコープルが取り出した杖を床へと突き立てる。
「………………メリッシュの魔力を感じない………………完全に消えてる……」
「………………メリッシュに一体何が起こったっていうのかしらぁ?」
「……分からない、けど完全にいなくなってる……」
コープルは杖に頭をつけ嘆く。
「メリッシュはどこかに転移させられたって事か?」
アルクが床を撫でながらコープルへと向き直る。
「……違う、いなくなってるのはこの場所からだけじゃない……」
「………………何か嫌な言い方ねぇそれってぇ」
「……そう、本当に……」
「一体どういう事なんだコープル!?」
コープルは現実から逃げるように目を閉じ顔へと手を当てる。
「……メリッシュは……………………」
コープルは、衝撃的な現状に頭が追い付かないのかうまく言葉にすることが出来ないようだが、何とか言葉を喉から捻りだす。
「……メリッシュは……この世から……存在が―――」
「メリッシュちゃんはこの世から存在がなくなってる、君の推測はあっているよコープルちゃん」
コープルが言葉を続けようとした時、誰かの声が言葉を遮った。
「「「!?!?!?!?!?!?!?!?!?」」」
その声は中性的でつかみどころがなく、聞くものを不快にするような調子で三人に話しかける。
「まあそう言っても完全に消えてなくなったわけじゃないんだけどね」
「一体誰だ! 今すぐメリッシュを返せ!」
アルクは声の主を探すため周囲を見渡すが、それらしき人物はどこにもいない。
「返せって言われても僕がやったわけじゃないから返せないんだけども」
「……一体どういうこと……?」
「そうだね、まずは挨拶から始めようかな?」
そう言ってその声の主は現れた………………天井からフワフワと。
「やあどうも初めまして、こちらからすると初めましてではないんだけどもね」
そいつは全身青に透けた半透明で全体の大きさは人差し指ぐらい、そして背中から生えた蝶々のような羽でアルク達の目の前で鱗粉をまき散らし話を続ける。
「僕の名前はリーク、見てわかると思うけど種族は妖精だ。よろしくね!」
リークは空中で踊るように舞い上がり、アルク達の頭上で手を胸に突き立て上品にお辞儀をする。
「名前を聞く前に自分が名乗るのは礼儀だという思想があると思うけど、その考えだと僕は無礼な奴になってしまうのかな?」
「………………一体どういう意味だ?」
「言っただろう? こちらからすると初めましてじゃないってさ、僕は君達の事を知っているんだよ、ずっと見ていたからね」
「……見ていた……?」
コープルが杖をリークへと向けながら問い詰める。
「そうさ、君達を見ていたのさ……といっても君達の中にアルク君は含まれてはいないんだけどね」
「私達を………………いや、メリッシュを監視していたって事かしらぁ?」
マシットが両手にハンマーを持ち臨戦態勢に入る。
「メリッシュを………………監視していた? 何のためにそんなことを?」
「……アルク、あいつはメリッシュが消えたのと同時に出てきた、それに加えてあの口ぶり………………多分知っていたって事なんだと思う……」
「………………メリッシュが消えるってことをか」
「あれ? もしかして僕滅茶苦茶疑われてる? 悲しいなーーー」
リークは心底傷ついたような様子で目に手の甲を当てて泣いているふりをするが、表情は心底愉快そうにニタニタと表情を歪ませている。
「……いい加減にしないと殺す……」
コープルが杖の先端を紫色に光らせ、魔法をリークへと放たんとした直前―――。
「―――地下大水道」
「……なんの話……?」
リークの発した言葉に反応し、ギリギリのところで放とうとした魔法を中断する。
「メリッシュちゃんの今いる場所さ、僕が連れて行ってあげるよ」
「何であなたがメリッシュの居場所を知っているのかしらぁ、やっぱりあなたが消したんじゃないのかしらぁ?」
マシットがハンマーを握りしめ問い詰める。
「別に僕の言葉を信じなくてもいいよ………………メリッシュちゃんにつながる糸口があるんならだけどね」
「……ッ! それは………………ないけど……」
「でしょ? だったら僕の事を信じるしかないんじゃない?」
リークはコープルの周囲を飛び回り心底楽しそうに語り掛けている。
コープルはちょこまかと自分の周りを飛び回るリークを虫でも払うように手をパタパタとし、何かを考えている。
「……分かった、信じる……」
「私も信じることにするわぁ」
『信じる』という二人の言葉を聞いたリークは心底満足したように腕を組みながら頷き、アルクの方へとフワフワと寄っていく。
「さて、コープルちゃんとマシットちゃんは僕の事を信じてくれた見たいだけど……アルク君、君はどうするのかな?」
アルクの肩へ腰かけたリークは顔を覗き込み問いかける、ニタニタと笑顔を作りながら。
「………………俺もついていくよ」
「……アルク、本当に私達についていってもいいの……?」
「二人はこいつを信じてついていくんだろ?」
「……そうだけど…………こいつからは危険な感じがする、アルクも分かってるでしょ……?」
コープルはリークを指さして警告する。
「……はっきり言ってついてこない方がいいと思う……」
「私も同意見よぉ、今日あったばかりの人間の為に危険に足を踏み入れるなんて馬鹿だと思うわよぉ」
二人がアルクに警告をし……その後少々の静寂が生まれた。
―――アルクはその静寂を打ち破るように。
「―――メリッシュは………………」
―――話題の中心である少女の名を口に出す。
「………………俺がキリオンにジョッキを投げつけられたときに庇って守ってくれた、俺はその場から逃げだそうとしていたのに」
「……それは……………………」
「俺がメリッシュと会って一日もたっていないのと同じように、メリッシュだって俺と話したのは今日が初めてだったのに」
アルクは続ける。
「だから時間なんて関係ないんだ」
「……そう、だったら何も言わない……」
アルクの方を見ていたコープルが、アルクの言葉にこれ以上は何も言わないと言った態度で視線をそらしリークの方を見据え、アルクとマシットもそれにつられてリークを見る。
「君達本当に僕の事疑い過ぎだよね? 流石に僕でも傷つくよ?」
三人の視線を受けたリークは心底楽しそうにそう言った。
「じゃあ君達も覚悟が決まったみたいだから今すぐ向かおうか………………地下大水道に」
リークがアルク達に宣言した後に、アルクがリークへと質問をした。
「で、その地下大水道にどういう理由でメリッシュがいるってことになるんだ?」
「そうだね………………」
リークはアルクの方へと飛んでいき肩に座り、コープルやマシットに聞こえないように耳元で話す。
「僕は君達を導くのが役目だから当然答えを知っているけど」
「………………役目?」
アルクの言葉も意に介さず、リークはアルクの肩で青く透けた足を交互にパタパタとする。
「それを教えてしまうと君達が超えるべき試練を手助けしてしまうことになってしまうからね」
リークは羽をはばたかせリークの方から飛び立つ。
「試練ってなんだ?」
「試練は試練だよ、これから行く地下大水道も、メリッシュちゃんの件もその一環さ」
リークは笑いながら言う。
「教えられるのはここまでだね、後二人には教えちゃだめだよ………………教えたら、ね」
「おい!」
アルクが肩から離れるリークを引き留めようとしたが、無視して飛んでいく。
リークが離れた後、コープルがアルクの元へ近寄って来た。
「……なんの話してたの……?」
「いや………………リークが言ってい―――」
そうしてリークから聞いたことをコープルへ話そうとした時、リークの顔が頭によぎる。
『教えたら―――』
その言葉を放った時のリークの顔は、コロコロと変わっていた表情が一転して無表情だったのだ。その顔を思い出しゾッとしたアルクは少し言い淀んでコープルに濁して言った。
「―――メリッシュの事を聞いたんだけど、同じ調子で流されただけだったよ」
「……そう、やっぱり…………というかアルクはアリアの事どうするつもりなの……?」
「え?」
「……避難所に連れて行かないと……」
コープルはアリアを指さして言う。
「あー、今からちょっと避難所に担いで行ってくる」
アルクは寝ているアリアを背中におぶって立ち上がる。
「あとギルド長にメリッシュの事を説明してから戻って来―――」
『―――転移魔法、発動』
話ながら出口に向かって歩いていたアルクの言葉を遮ってリークの声が頭に響く。
「おい、ちょっとま―――」
アルクが言葉を言いきる前に神々しい光がアルク達を包み、景色が目も明けられないような眩しさで埋められた。
「あ、うまくいったみたいだね」
そのリークの言葉でアルク達が目を開き視界にまず入って来たのは、神秘的な模様の壁、次にその壁にかかった松明、そして後ろを向けば地下大水道なのだからあるのは当たり前に推測出来る水路だった………………ただし。
「ッ!? なんだこれ!?」
「…………………………………………」
「気分が悪くなってくるわねぇ」
………………ただし、水路というにはあまりにも流れている液体は赤過ぎるのだが。
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