どうも、なんの話でしょうか?
変態爺こと、バーのマスターの発言によりジャンニャーに問い詰められることになったアルクは圧に押されていた。
「一体どういう事なんですかアルクさん! 早く我に説明してください!」
「いやだからなんのことか分からないんですけど! 両親が救世の徒なんて言うのだったなんて初めて聞きましたし!」
アルクは一向になんのことだかわからないと言った様子で、困惑している。
「あなたのご両親は救世の徒の中でもぶっちぎりで知名度が高いんですよ! 絶対にどこかで聞いたことがあるはずです!」
「知らない知らない! 確かに馬鹿みたいに強い冒険者だったけどそんなの初めて聞いた!」
「そんなバカな………………!? あの“ジキリル”と“セリアル”ですよ?」
「俺はあの“ジキリル”と“セリアル”っていうのが分からないんだ、一体俺の両親は何をしたんだよ」
「………………良いでしょう、説明してあげましょう!」
ジャンニャーは得意げな顔で話し始める。
「“ジキリル”と“セリアル”はですね、勇者です」
「………………は?」
「そう、正確には勇者だったなんですが、歴代の勇者の中でもトップクラスの実力だったと私は考えていますね」
「………………勇者?」
「そう! 勇者です! 神が選んだ人の上位存在にあたる勇者です、勇者ぐらいなら知っているでしょう?」
「………………そりゃ知っているが、それはおとぎ話の話だろ? 勇者伝説の」
「………………ですが勇者伝説が本当の話だというのは魔王の復活というイベントで分かっていることでしょう?」
「そりゃそうだが」
「そういう事です、だからぶっちぎりで有名で、超ホットな話題なんですよ」
ジャンニャーが息を一息ついた。
「で? 結局何をしたんだ?」
「ん? 知りませんよ?」
「は?」
「知ってるわけないじゃないですか、まあでも恐らくですが魔王を倒したんじゃないんですかね、トドメはさせてなかったみたいですけど」
ジャンニャーはカウンターに座りカップを手に取る。
「しかし、話は戻るんですが」
そして一呼吸。
「……その二人が一体どうしてどういう経緯で」
―――言葉の手札を揃えて。
「あなたの『呪い』で消すことになったんですか?」
―――話の核心へと手を差し込む。
「………………父さんと母さんは……お、俺を庇って」
アルクは俯く。
「俺が、『呪い』を使って捨て身で倒そうとした時に、間に入って………………そのまま……」
「………………なるほど」
アルクの言葉、態度、声、目線などで大体の事情が分かったのか、はたまた気遣いからか、それ以上ジャンニャーはその話をやめた。
「しかし残念です、まさかお二人が死んでしまっていたとは」
変態爺はやめなかったが。
「………………」
「あ、いえいえ。聞く限りではあなた様の事を守ってとの事なので攻めているわけではないのですよ……ただ―――」
変態爺はカウンターの下に手を伸ばし真っ赤な小さい箱を取り出す。
「ただ、お預かりしていた物をお返し出来ていないのが心残りでして」
「その箱は………………一体?」
「分かりません、ただ、来る時まで預かっておいてくれとお二人に言われ、預かっていたのです」
その箱は時折カタカタと小刻みに震え、異様な雰囲気を醸し出している。
「……それ、ミミックとか何かですか?」
ジャンニャーが聞く。
「いえ……先程までは動いたりという事は無かったのですが……あなた様が……アルク様が入って来たと同時に動き始めたのですよ」
『へ~~~、人間ちゃん面白いもの持ってるね~~~』
アルクのすぐ後ろで、先程聞いた甘ったるい声が聞こえてきた。
「ッ!?」
アルクは後ろを振り返る……そこには居た。視界にそいつが入った瞬間、アルクはバッと立ち上がり距離を取る。
『酷いな~~~、そんなに怖がられたら傷ついちゃうんだけど~~~』
そこには赤と黒の豪華な装飾のドレスを着て、綺麗なショートの金髪に金色の目を持ち、そして背中にはどデカい蝙蝠の翼が生えている四天王の一人、ヴァンプがいた。
「貴様! 一体いつからいた!?」
ランシアが槍を手に持ち、ヴァンプへと構え尋ねる。
『ん~~~? ちょっと黙っててね~~~』
ヴァンプがランシアへと手を向けて指を鳴らす。音が鳴った瞬間、ランシアは壁へと吹き飛ばされる。
「ッ!?」
『あ~~~らら、死ななかったか』
ランシアは壁にぶつかる瞬間に槍を床へと突き刺し何とか持ち直す。
「ッつ、貴様ぁ! やってくれたな!」
ランシアは突き刺さった槍を抜き、投げつけ、それに続いて剣で切りかかる。
『ふ~~~ん、じゃあこんなのとかどうかな~~~?』
ヴァンプが蝙蝠の羽を広げ風をおこし槍を薙ぎ払う、結果、槍はランシアに向かって飛んで行く。
「ふん!」
剣で槍をそらしてヴァンプを間合いへと招き入れる……が。
『じゃあね~~~』
いつの間にかヴァンプはランシアの後ろへと回り込み、頭を鷲掴みにしてドガーン! と床へとめり込ませる。
『………………へ~~~頭を完全に潰すつもりだったんだけど、頑丈だね~~~』
ヴァンプはアルクへと向き直り話しかける。
『別にヴァンプちゃんは今は争う気はないんだけどね~~~、ね、アルクちゃん?』
「………………何を言っている」
『ん~~~? お話をしに来てるだけなんだけどね~~~』
ヴァンプは少し困った顔をしてさらに話を続ける。
『そうだね~~~、まあ結論から話そうかな~~~』
ヴァンプはアルクへと近づき手を差し出す。
『君、魔王ちゃん側に着く気はない?』
「………………なんだと?」
予想外の言葉にアルク数秒硬直してしまい、そしてしばらくして口を開ける。
「俺に魔王軍に入れだと? 一体何のつもりだ?」
『言葉の通りだよ~~~、君を魔王軍に誘いに来たのさ』
ヴァンプは張り付けたような笑顔で続ける。
『単純な話、君のその力は言ってしまえば魔王ちゃんにとって脅威だからね~~~。だったら、いっそのこと、味方にしてしまえばいいと思ってね~~~』
アルクの沈黙……。
「……そんな話、はいそうですかってのるわけないだろ!」
『……じゃあ~~~、君の両親を生き返らせることが出来ると言ってもかな~~~?』
「ッ!?」
アルクは言葉を詰まらせる。
「………………母さんと父さんを生き返らすことが出来るだと?」
『ん~~~とね~~~』
ヴァンプはカタカタと小刻みに振るえている箱へと指を向ける。
『それ、天魔結晶っていうんだけどね~~~』
ヴァンプは一際邪悪な笑顔でアルクの心に言葉を突き刺す。
『死んだ魂を三人まで現世に引き戻すことが出来る、つまり蘇生させることが出来るってわけ~~~』
アルクは指さされた『天魔結晶』へと目を落とす。
「………………………………」
『どう? 魅力的だと思わない? 聞いてた話だと君が殺したんでしょ?』
しばらくの呼吸音………………後に。
「お前が本当の事を言っている証拠は無いだろ」
『もちろんそうだけど、嘘であるという証拠もない』
「………………」
『それに君は既にこの話に魅力を感じちゃってるんでしょ~~~アルクちゃん?』
「そんな事はない!」
『だったらどうしてすぐに断らなかったのかな~~~?』
「っ!?」
困惑しているアルクに対してヴァンプは語り掛ける。
『それに~~~その天魔結晶は魔王ちゃんしか使えないんだよね~~~』
「………………もし、俺が魔王軍に入ったら俺はどうなる」
『そうだね~~~、まあひとまず人間はやめてもらうかな~~~』
「………………どういう事だ」
『単純な話~~~、私の眷属になってもらうって事。ま~~~悪いようにはしないかな~~~』
「………………そうか」
確かに魅力的な提案だとアルクは思う、魔王軍に入るだけで両親と再開でき謝ることが出来る、別に人間というものに執着も無い。
だが、しかし、果たしてそれは両親を裏切ることにならないだろうか? 両親は魔王の復活を阻止した勇者らしい、ただ自分が両親と再開したいからという理由で、魔王軍に属するのは勇者の息子として正しいだろうか? いや、そこは問題ではない………………そこは問題ではないのだ。
「………………お前の提案は魅力的だ」
『でしょ~~~、だったら―――』
「だけどな、もしお前の言っていることが百パーセント本当だったしても、俺は絶対にその話には乗らない」
『………………ふ~~~ん、そっか~~~』
アルクの答えを聞いたヴァンプの張り付いた笑顔が崩れ落ち、代わりに狂気じみた笑顔が出来上がる。
『だったら………………』
ヴァンプは羽を広げ、メキメキと爪を伸ばす。
『死ね』
冷たい声と共にヴァンプがアルクへ急接近する。
「っく!?」
対してアルクはヴァンプの真正面へと向けて『呪い』の球体を放つ。
「(ッつ! 一体どう躱す、上か、横か、下か!)」
アルクはヴァンプの動きを伺い次の行動を考える、だが………………その意味はなかった。
「!?!?!?!?!?!?」
躱す素振りもなくヴァンプが『呪い』へと飛び込み、消え去ってしまったのだ。
「ッ!? 一体どういうことだ」
困惑しているアルクの耳に甘い声が届く。
『な~~~んてね、争うつもりはないって言ったでしょ~~~?』
「っく!?」
『ま、君の力もしっかりと体感できたことだし~~~、目的は達成できたかな~~~』
「一体どういうことだ!!!!!!!!」
『そうだね~~~、君が魔王ちゃん側に着いたら教えてあげるよ~~~、また来るから精々首を洗っててね~~~』
その言葉を最後に、完全に声が途切れた。
続きが気になる方、『評価』と『ブクマ』をどうかよろしくお願いします。
この下の星マークで評価できるので、していただけると幸いです。
☆☆☆☆☆→★★★★★
という感じに。




