どうも、味がしないようです
「で、お前のその『呪い』っていうのは一体何なんだ?」
ランシアが届いたお茶を一気に飲み干してアルクに尋ねる。
「敵が強い時ほど問題だと言っていたが、一体どういうことだ?」
「………………対象が弱い時はその対象しか飲み込まないんですけど、強い時は関係のない人も物も全部飲み込んでしまうんですよ」
「………………ほう、なるほどな。つまりお前が人に話したがらないのはその力を利用されたくないからという事か」
しばらく茶をすする音が空間を支配するが、アルクが口を開ける。
「いや、そういうわけではないんですよ」
「?」
「……ただ怖いだけなんです。話したら、話してしまったら昔みたいに巻き込んでしまうかもしれないから」
「………………巻き込む?」
「別に話したところでそうならないという事は分かってはいるんですよ、だからいざとなったら使うし話もするんですけど、やっぱり平時だと難しいですね」
その後沈黙。
「………………キリオンと会ったのは引っ越した後なんですよ」
「………………」
「………………引っ越す前に住んでたところで何だったかな、やばいモンスターが出てきて」
「やばいモンスター?」
「あいつが何だったのかは分からないんですけど、ただそいつが―――」
アルクが続けて言葉を出そうとした時、悲鳴が上がった。
「キャあああああああああああああああアアアアアアアアアアア! こぼしたああああああああああああアアアアアアアアアアア!」
アリアが茶をこぼして叫んだのだ、その調子で立ち上がったものだから机に当たってしまい、コップがすべてひっくり返ってしまった、そして………………。
「ッつ!? あっつ! 熱すぎるっす! 何でこんな熱いんすかジャンニャーさん!?」
ジャンニャーのお茶を頭から被ってキチリーが転がっている。
「? 普通では?」
「バッカ! 賢い癖に馬鹿! 常識的ではない熱さっすよ! 風呂以上!」
「誰が馬鹿ですか、それにあなたに常識を言われたくないです異常な格好をしてる癖に。その喋り方も変えたらどうですか?」
「アイデンティティ!!!!!!!! それに格好は意味ある! 知ってるでしょうが!」
取っ組み合いが始まったが、そんなことは気にも留めずにアリアがまたやらかす。
「ごごごご、ごめんなさい!」
アリアが走ってキチリーとジャンニャーに駆け寄るが、足が机に引っかかりひっくり返す、そして上に載っていた菓子類がすべて三人に降りかかる。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!!!!!!!!!」
―――
―――
―――
降りかかったお菓子を片付けて、床を拭き後片付けをし終わた後、一息ついた後にランシアがアルクに顔を向けて口を開く。
「で、やばいモンスターっていうのはどんな奴なんだ?」
「そいつの……見た目や……魔法、そういうのは覚えていないんです」
アルクは何故かと付け加え下を向く。
「……何でだ? お前の住んでいたところを襲ったんだったら、印象強く覚えていない方が不自然じゃないか?」
怪訝な顔をしてアルクへと質問を投げかける。
「いえ、そうじゃないんですよ。そいつ自体は問題じゃないんですよ」
「どういうことだ?」
「……住んでいたところは、俺の両親は……俺がそいつに『呪い』使ったせいで、巻き込んで消えてしまったんです」
さらに沈黙、沈黙、沈黙。その言葉を聞いて口を開くものはいなかった、後ろの方でわちゃわわちゃしていたアリア達ですら黙り込んでしまった……が。
「ですが、何か理由があったんではないですか?」
静寂の空間を打ち破ったのは、アリアでも、メリッシュでも、ランシアでもなかった……打ち破ったのは。
「……………………変態爺」
「……………………あまりにも酷い言い草だと思いますけどね」
目を細めて喫茶店のマスターがアルクに言う。
「それに私あなたの事をどこかで見たことがあったと思っていたんですよ」
マスターはアルクの顔を見て言う。
「失礼ですがあなたの両親のお名前は“ジキリル”と“セリアル”ではありませんか?」
マスターはアルクに何かを重ねて見る。
「……何で両親の名前を知っているんだ?」
“ジキリル”と“セリアル”という名前を聞いた瞬間、聖徒界のメンバーの顔に驚きが生まれる。
「……“ジキリル”と“セリアル”って言うと、救世の徒にいた伝説の冒険者じゃないですか! それがあなたの両親ですって!?」
ジャンニャーは持っていた掃除用具を落としてアルクに詰め寄る。
驚いた顔をしている聖徒界のメンバーとは対照的にメリッシュ達は一体何の事やらといった顔をしている。
「ランシアさんランシアさん」
「どうしたんだメリッシュ」
「いや、何であんなにジャンニャーさんがあたふたしてるんですか?」
「ああそうか、そういえば君達の世代だと知らない子も多いのか」
ランシアは遠い過去を思い返すように目を細める。
「あれは………………私達がSランクになりたての時だったか」
「多分十五年前っすね、あなたまだ駆け出しだったはずっすよ」
キチリーによる訂正が少し入るが、無視してランシアは続ける。
「そもそもだ、何で私達が魔王軍の復活を予見して調査していたのかというとだな、救世の徒が一度魔王軍の復活を阻止していたからなんだ」
「……一体どういうこと?」
「……十五年前に魔王は復活しているはずだったんだ」
中身の無いティーカップを指でクルクルと弄び、話を続けるランシア。
「Sランク第九位、予知夢のパーティーリーダーは知ってるか?」
「知らない」
「そうか……奴は外すことのない予知が出来るんだ、未来を見ることが出来る。それは十五年前でも有名な話だった」
「………………」
「そして十五年前、こう予言した」
ランシアは飽きたのかティーカップを机に置く。
「三十日後、魔王が復活する、と。だがそれは起こらなかった」
「……一体どういうことですか?」
「単純な話予知が外れたんだ」
「予知が外れた? 外すことが無いのに?」
「そうだ、正確には予知は外されたんだよ、救世の徒によってな」
ランシアは菓子を摘み口に運ぶ。それと同様にメリッシュも手を伸ばす。
「これは私のだ、誰にもやらん!」
「………………え?」
「………………ランシアさん、それメリッシュちゃんのやつですよ?」
キチリーが「あほかこいつは」と言いたげな顔でランシアを見つめる。
「………………私のだ、誰にもやらん!」
「………………それでいいです」
ランシアが菓子を口にほおばり喉に詰まらせ水を飲む。
「……で、救世の徒の話だったな」
「………………はい」
「しかし、当時は大変な騒動だったよ本当に。予知が外れたとな」
「………………?」
「そりゃあそうだろう、奴はそれ以降も以前も外したのはそれきりだったからな」
「救世の徒に外されたという話だったんですが、一体どうやったんですか?」
「知らん、ただそれを知るために奴は冒険者になり、予知夢がというパーティーが出来たのさ」
ランシアは手持無沙汰なのか自分の髪を人差し指で弄ぶ。
「まあ結局魔王は復活してしまったし、先延ばしに出来ていただけだったんだな」
「………………でもたしか、さっき魔王の復活の予言が出たからSランクは出払ってたって言ってませんでした?」
「ん? あぁそうだな、再び奴が予言してなそれで行ったのさ、結局救世の徒の様に先延ばしにすることも出来んかったし、何の成果もあげれなかったがな」
ランシアにしては珍しく、自虐的に彼女はそう口に出し、中身の無いティーカップを口に運んだ。
「………………何で味がしないんだ?」
「………………何言ってんのこの人……?」
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