どうも、忘れていました
アルクはマシット達三人に連れられて壊れた街の中を歩いていた。
「わかってはいたが酷いな、人が住んでいたとは思えない」
ちょっと見渡すだけで、壁が崩れ去り中が丸見えの家、比較的形状はとどめてはいるものの屋根が横、入り口が上にあるような転倒した家などが見られる。
「そうねぇ、まあでもすぐに元道理になるわよぉ」
「それもそうだな、既にちょくちょくゴーレムが動いているし」
崩れた家の周りをレンガでできたゴーレムが動き回っている、冒険者がこんな惨状なのに帰ってもいいという指令が出たのは、このゴーレムの起動が終わったからというのも大きいだろう。
「……ついた……」
「………………嘘だろおい、狂ってんじゃねえか」
目の前の喫茶店は宙を浮いていた、冗談でもなんでもなく。どういうバランスなのか浮いている店の下には一本の木があり、それが支えているようだった。そして店の壁は完全になくなっており、屋根も崩れているが、店に散乱している崩れた屋根が、コップを拭いている白髪の爺さんの周りに突き刺さっている。
「……やっぱり平常運転ですか……」
「おやおやこれはこれは、いつもの顔ぶれに一人追加されているではないですか」
「………………何でこの状況で平然としていられるんだ? あんたいつ死んでもおかしくなかっただろ」
「この店を置いて避難することは出来ませんよ、この店は僕の妻ですので」
「………………は?」
爺さんはほっぺたをカウンターに擦り切れんばかりにこすり付ける。
「スリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリ」
「うわぁ………………」
擦り付けながらスリスリと高速詠唱する爺さんを見てついひいてしまった。
「………………すまない、つい声に出してしまった」
「いえいえ大丈夫ですよ、皆さん最初はそういった反応をするんですよ」
「最初はじゃなくてぇ、今もですけどもねぇ―――バラの茶をいただくわぁ」
マシットはそんなことを言いながら椅子に座る。
「うーん、いつも見てるから慣れたけどお茶を持って来るときにも同じことしながら近づいてくるのはやめてほしいかな―――私は緑の茶で」
メリッシュも一緒に座って注文する。
「……紅い茶……」
コープルもそれに続いて注文する。
「………………メニュー表無いの? 俺来るの初めてだからわかんないんだけど」
アルクは何か忘れてるよなと思いつつ、席に座る………………忘れ物の答えはすぐに分かった。
「ああ、メニューならそこにあります………………あ、今日はお客さんが良く来ますね。いらっしゃいませ」
こんな明らかにやばい所に入ってくるやつ俺達以外にいるんだと思いながら、アルク達が後ろを振り返ると。
「アルクさん酷いです!」
忘れていたのはアリアだった。
「………………忘れてた、ごめん」
「ごめんで済んだら憲兵はいらないんですよ!」
「いや、ギルド長に伝えてたから大丈夫だとは思ってたんだけど、終わった後に会いに行くべきだった」
マジで怒りながら詰め寄って来るアリア。その後ろには聖徒界のメンバーがいた。
そして説教タイムが始まる。
「きみー、女の子おいてお茶は良くないと思うっすよ?」
「はい、おっしゃると通りです」
「我の見てきたランシア行動でもここまで酷いのなかったですよ?」
「はい、申し訳ございませんでした」
「はっはっは、ジャンニャーいってくれるなぁ。まあ私でもこれは看過できないな」
「申し訳ございませんでした」
こってりと絞られた後、アリアには謝り倒した後今度ちょっと高い店で奢る約束をし、何とか許してもらうことが出来た。
「………………というか子供達はどうなったんだ?」
「子供達ならギルドで保護してくれました!」
少し怒気を含んだ声でアリアが答えてくれる。
「本当に申し訳ございませんでした」
「まあ、しっかりと保護しておいたよ。ギルド長が全体に指示を出してね、君が言ってる子達のほかに四人いた」
ランシアの回答にアルクは深刻な顔つきになる。
「治す方法はあるんですか?」
「分からない、ただ、Sランク三位山の仙空のリーダーなら何とかなるかもしれない、とギルド長が言っていた」
「………………そうですか」
アルクは忘れていた癖にその言葉で胸をなでおろし安堵する。
「まあというわけでこの子……アリアだったかな、から話を聞くついでに私達も茶を飲みに来たんだ」
ジャンニャーがランシアの言葉に続いて話す。
「それで来たらあなた達が先客でいたというわけです」
ランシアたちはアルク達が座っているカウンターの後ろの、四人席に座ってメニューを開ける。
メニューにあらかた目を通したランシアは口を開けた。
「……酒は無いのか?」
「あなた来たら絶対それ言いますよね」
ジャンニャーがそう言ってから注文をする。
「我は紅い茶で」
アリア、キチリー、ランシアはその注文に続く。
「「「じゃあ私もそれで」」」




