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どうも、協力してもらっていいですか?

 アルク達が駆け出した時、ランシアを貫いた槍が二人へと向かって伸びた。


「ッつ!?!?!?!?!?!?!?」

「……射程距離に制限はないのね……」


 アルクは拾った剣で、コープルは髪でその槍をいなして躱す。


「……完全に初見殺し、来るとわかってたら簡単に躱せる……」

「………………これならいける!」


 アルク達は黒い槍を躱し、いなし、そしてランシアとの距離を詰める、が。

 龍種の頂点(ドラゴンロード)はランシアに向けて槍を伸ばした。


「……後五メートル……」


 それは槍とランシアの距離でもあり、アルク達とランシアの距離でもある。


「五メートル……そのぐらいだったら!」

「……何か作戦があるの……?」

「コープル! 頼んだ!」

「……分かった……」


 コープルは髪を使ってアルクを投げ飛ばす。


「助かる!」


 槍とランシアの間に突撃するアルクは、剣を使って槍を弾き飛ばし、ランシアを庇う。コープルもまた髪を使いアルクの隣に着地する。


「……で、ここからどうするの……」


 アルクの顔を覗き込みコープルが聞く、そのすぐ後ろで足音が近付いてきた。


「なかなかやるっすねぇ、君らが少し遅れてたらランシアさん刺殺されてたんじゃないっすかねぇ」


 肩に刺し傷を負ったキチリーが岩をどかしながら現れた。


「全く、しかし困ったことになりましたね。我は我ながら情けなくなりますよ」


 足に刺し傷を負ったジャンニャーがフラフラとした足取りで現れた。


「で、ランシアさん起こしたいんっすけどジャンニャーさん、回復魔法」

「我の魔力はさっきまでのやり取りですっからかんです」

「……だったら私が……」


 そう言ってコープルはランシアの頭に手を当てる。そうするとアルクにした時と同じように緑の光が頭を包む。

 そんな様子を見たキチリーはぽつりと呟いた。


「………………………………そのままランシアさんの頭も治してもらってもいいっすかねぇ?」

「キチリー」

「すいません、流石に言い過ぎm―――」

「馬鹿は死んでも治らないですよ」

「確かにそうっすねwww」

「はっはっはっは! 貴様等言ってくれるなぁ!」


 ランシアはバッと飛び上がりジャンニャーとキチリーの頭を鷲掴みにする。


「後で覚えておけよ? どつきまわすからな?」

「ええ、我はそれでも構いませんよ」

「え? 私は普通に嫌なんs―――」

「あいつを倒して生き残れるなら何でも」


 ジャンニャーは龍種の頂点(ドラゴンロード)を指さして言う。


「………………あんなものは初見殺しだ、次は躱せる」

「………………外的魔力が増えています、次の火球はどうしようも無いですよ」

「………………それは裏返せば残機が減っているという事だろう? なら希望はある」

「………………内的魔力も確かに減っていますが、単純計算で五十は残っていますよ?」


 本当に殺し切ることが出来ますか? そう言ってジャンニャーはランシアに聞いた。回答は………………。


「出来る出来ないじゃないんだよジャンニャー」

「………………」


 ジャンニャーは沈黙する。


「私達はSランクパーティーだ、そんな私達が諦めてしまったらおしまいなんだよ、そうしたらここに居るものは全員死ぬ。ここだけじゃない、あいつが他の場所で暴れ回ったらさらに被害が拡大する………………だから」


 だから私達は諦めちゃいけないんだよ、そう言ってランシアは笑いながらジャンニャーとキチリーの顔から手を放した。


「………………そうですね、確かに我は弱気になっていました。すいません」


 ジャンニャーはそう言って覚悟を決めたかのように顔を引き締める。キチリーはというと………………。


「うーん、顔が痛いっすね、形変わってないっすよねぇ心配だなぁ………………」


 そう言って顔をまさぐっている………………同じ話を聞いていたはずなのにこの差である。


「行くぞ! 二人共! 何としてもあいつを五十回殺し切る!」


 そう言って槍を抱えて突っ込もうとしたランシアだったが、アルクはそれを制止する。


「ちょっと待ってくれ!」


 そう言って足を地面から放していたランシアの足を掴む、当然ランシアは顔面から地面に叩きつけられた。


「何すんだ!」


 ランシアが起き上がってアルクの顔面を掴む。


「す、すいません! すいません! でもちょっと聞いてほしいことがあるんですよ!」


 泣きそうな顔でアルクは訴える。


「そんな事関係あるか! おまえええええ! 顔が痛いだろうが!」

「まあまあ、ちょっと話を聞こうじゃないですかランシア」


 ジャンニャーが怒るランシアを制止する、そして。


「で、聞いて欲しい事って何なんですか?」


 ジャンニャーはアルクに聞く。


「実はですね―――」


 そんな平凡な語り口から、『呪い』という異常について話し出した。そんな異常を聞いた聖徒界(ヘブンズ)三人の反応は………………。


「「「へー」」」


 いたって軽い物であった。


「というかそんな話を何で急に私達にしたんすか?」

「あいつを倒すのに協力してほしいからです」

「………………そんな強力な力ならぶっ放せばいいじゃないですか」


 ジャンニャーは当たり前の事を言う。


「………………それは―――」

「察するに他人にばれたくないって事っすよね? アルク君?」


 キチリーが軽く言った。


「………………その通りです」

「………………まあ分からないこともありませんが………………緊急事態ですよ?」


 ジャンニャーの語気が少し強くなる、それは人死が関わっているのに、自分達にはない力を持っているのに力をそんな理由で使おうとしないアルクに憤りを感じているからだった。


「………………ジャンニャーさん、人の心って言うのはそんな簡単に切り替えられるもんじゃないっすよ?」

「………………それは知ってます、これは八つ当たりみたいなものです」


 それは非力な自分への、何もできずにここに立っている自分に対しての苛立ちだった。


「………………で、協力して欲しいというのはどういう事なんだ?」


 ランシアは本題に入る、表情は優しい、まるで過去の自分を見ているかのような感じだ。


「………………ランシアが協力するならまあいいです、あの時の我ならあなたの様に行動することも無かったでしょうし」


 ジャンニャー背中の鞄に少し気を使い、話を聞く体制に入る、過去を思い出し、過去を思う。


「(魚食いたいっすねぇ………………)」


 食の事以外、なーんも考えてない馬鹿がそこにはいた。

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