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どうも、どうやらあいつ一体になりました

 アルクはコープルと共に街中を走っていた。

 避難が完了し終わった跡なのか街中は閑散としており、普段の賑やかでごちゃごちゃとした知っている雰囲気とはかけ離れた印象を与えられる。


「しかし、知ってる街並みがこうも違うと緊迫感が与えられるな」

「……空には竜がうようよといるし……」

「早くいつも通りに戻さないと」


 アルク達はギルド長のいるギルドへと戻って来た、他の避難誘導組のメンバーも仕事を終えたのか戻ってきているが、事態の深刻さにみな俯き黙り込んでいる。


「あ、コープル! こっちこっち!」


 一人を除いて………………メリッシュが手を振りながら近づいてくる、元気よく。


「……空気が読めない……」

「ひっどい! というかアリアちゃんいたの?」

「……いた、というかそのことでギルド長に話したいことが出来た……」

「ギルド長ならぁ、ギルド長室で作戦を立ててるわよぉ」


 マシットが二階を指さして言う。


「……ありがとう、ちょっと行ってくる……」


 コープルとアルクはギルド長室の前へと訪れ、ノックをする。ノックをしたら入れと言う言葉が帰って来た。部屋にはギルド長以外にも聖徒界(ヘブンズ)のメンバー全員がいた。


「一体どうした?」


 ギルド長が二人の焦った様子を見て聞く。


「街でゴブリンを見かけました」

「!? いつの間に入り込んだんだ! 外からモンスターが入らないようにネズミ一匹見逃さない体制が出来ているはずだぞ!」


 ランシアが言う。


「外から入ったんじゃなくて、街の中に現れたんですよ」

「………………一体どういうことだ?」

「ギルド長、人間をモンスターに変える魔法とかって心当たりありますか?」


 ギルド長は最初アルクが何を言っているのか理解が出来ない様子だったが、冗談を言っているわけではないと理解し、深刻な面持ちへと表情を変える。


「まさ、か……人間がゴブリンへと変えられているのか!?」

「はい、俺が泊っている宿の人がそれを見かけたみたいで今それを保護しているんです、『マスト』っていう宿のアリアっていう娘なんですけど」

「………………なるほど、な」


 ギルド長は頭に手を当ててしかめっ面をしている。


「………………人間をモンスターに変える魔法は知らないが、それに似たことが出来る存在なら知っている」

「一体それは何なんですか?」

「………………吸血鬼だ」

「………………吸血鬼?」

「それについては聖徒界(ヘブンズ)から説明してもらおうか」

「任せてくれ!」


 ランシアがギルド長の声にこたえる。


「いや、ランシアじゃなくてだな」

「私っすね」


 両手を上げ前に出てきたのはキチリーという少女だ、血走った目玉の装飾がされたカチューシャを頭に装飾し、両手の親指と人指し指、それに小指に指輪をつけ、右の袖は手が隠れるほど長く、左の袖は肩が出るほどに短いアンバランスな服を着、それでいてスカートは長いランシアと同じぐらいの背丈の少女だった。


「えっとだすね、私達聖徒界(ヘブンズ)が、というか全てのSランクパーティーが遠征に出ている理由が、魔王軍が復活したからなんっすよ」

「………………それ一端の俺みたいな冒険者が聞いていい事なんですか?」

「さあ? しろって言われたから説明してるだけですしぃ? いいんじゃないんっすかねぇ?」

「まあ後で全体に公開することだからいいんだ」

「という事っす、まあその遠征が偵察なんっすけどね、そこに吸血鬼がいたんっすよ」

「……ん……?」


 吸血鬼、この国『ヴァリアント』の数ある勇者伝説の中に出てくる、魔王軍の四天王の一角。


「で、吸血鬼がいたんっすけどどっか行っちゃったんっすよねえ! ね、ランシアさん!」

「すまなかったと言っているじゃないか」


 一体何があったのか顔を膨らませてそっぽを向くランシア。


「という事は吸血鬼がこの街に来てるっていう事ですか?」


 アルクはキチリーに聞く。


「さあ? 別に確定ってわけじゃないんっすかねえ? ギルド長?」

「そうだな、別に知らない魔法なんていくらでもあるだろうしな。というかコープルも何かいう事があって来たんじゃないのか?」


 ギルド長の問いかけにコープルは頷く。


「……吸血鬼と言ってたけど、もしかしたら本当に来ているかもしれない……」

「………………どういうことだ?」

「……伝説の中の吸血鬼には確か、魅了という洗脳能力がありますよね……」

「………………まさか!?」

「……はい、それに近しい精神汚染を受けました……」

「なるほど……この状況は……」


 ギルド長は顎に手を当てて遠くを見ている。


「そういえば、何で聖徒界(ヘブンズ)のメンバーがギルド長室にいるんですか?」


 考えるギルド長を放っておいてアルクがランシアに聞いた。


「ん? ああ、そういえばまだ誘導組には報告をしていなかったな」


 そう言ってランシアはギルド長室の窓を開けて空を指さす。


「空を見てみろ」


 アルクとコープルは指示に従って窓から首を出す。


「……一体しかいない……」

「………………まさか、もうそんなに倒したのか!?」


 流石ギルドの精鋭だという風に余りの驚きに砕けた口調でアルクは言ったが、ランシアの反応は芳しくない。


「………………違うんだ、まだ倒せていない」

「………………だったら他のやつらはどこに行ったんだ?」

「………………あいつが」


 ランシアは少し息を溜めて言った、まるで避けてきた現実を直視するかのように。


「あいつが他の個体を全て食い尽くした」

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