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『記憶を喰らう暗殺者の冷徹な復讐劇』  作者: beck2026
第1章:【王都暗闘と、悪逆の契約 編】

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第16話:「灰からの新生と、夜鴉の産声」

王都東区の裏路地にひっそりと建つ、石造りの巨大な修道院跡。

かつてバルガス男爵が非合法な商品の隠し倉庫として使っていたその場所は、ルナの手回しによって、わずか数日の間に完璧な『孤児院(アジト)』へと改装されていた。

深夜、その地下広間に、教会の研究施設から救出……いや、『回収』された数十人の孤児たちが集められていた。

彼らは怯えた獣のように身を寄せ合い、広間の奥に座る一人の少女を凝視していた。

豪奢なドレスを纏い、扇子を優雅に揺らすルナ・ローゼンバーグ。

孤児たちにとって、豪奢な服を着た貴族とは、自分たちをモルモットとして教会に売り飛ばした『搾取する側』の人間だ。警戒と恐怖で、子供たちの体が小刻みに震えている。

「……汚いわね。ひどい悪臭だわ」

ルナは扇子で鼻を覆い、氷のように冷たい声で言い放った。

その言葉に、孤児たちがビクッと肩を跳ねさせる。

「勘違いしないでちょうだい。私はあなたたちを可哀想だと思って助けたわけじゃないわ。……あなたたちのその命、私が公爵家の金で『買った』のよ」

ルナはゆっくりと立ち上がり、彼らを見下ろした。

同情など一切ない。ただ、極めて冷徹な、対等な取引を持ちかける支配者の瞳。

「あなたたちの体には魔石が埋め込まれ、真っ当な社会ではもう生きられない。……でも、神様の喉笛を噛みちぎる猟犬としてなら、最高の価値があるわ。私の牙として役に立つなら、極上の衣食住と、復讐を遂げる力を与えてあげる」

ルナはパチンと扇子を閉じ、悪逆令嬢としての最高に艶やかな笑みを浮かべた。

「ここで惨めに泣き叫ぶか。ローゼンバーグの影として、あの白豚どもを喰らい尽くすか。……好きに選びなさい」

哀れまれることに慣れ、大人に絶望していた孤児たちにとって、ルナのその『一切の同情を排除した冷酷さ』は、むしろ圧倒的な信頼感として響いた。

誰一人として、逃げ出そうとする者はいなかった。

彼らの瞳に、暗い復讐の炎が灯るのを確かめ、ルナは満足げに微笑んで背後のノアへと視線を送った。

「あとはよろしく頼むわよ、ノア。……彼らのボスは、あなただわ」

「ああ」

***

数時間後。

地下広間には、湯を浴びて汚れを落とし、真新しい漆黒の戦闘服(公爵家が用意した特注品)に身を包んだ孤児たちが整列していた。

その正面に、同じく黒いスーツを着たノアが静かに歩み出る。

十歳の少年でありながら、その背中には、彼らを地獄から引きずり上げた絶対的な『死』と『暴力』のカリスマが漂っていた。

ノアは、最前列に立つ一人の少年の前に立ち止まった。

教会の地下施設で、真っ先にノアに傅いた少年だ。彼の右腕には、実験によって埋め込まれた魔石の生々しい痣が広がっている。

「名前は」

「……ない。物心つく前に、教会に連れてこられたから……」

少年がかすれた声で答えると、ノアは感情の読めない深海の瞳で彼を見据えた。

「なら、今日からお前は『アッシュ(灰)』だ。……教会の炎に焼かれ、すべてを失った灰の中から、俺の牙として蘇れ」

「アッシュ……」

少年は、自らの右腕の痣を強く握りしめ、その暗い瞳に確かな忠誠の光を宿して深く頷いた。

「俺がお前たちに与える任務は一つだけだ。光の教会の暗部を探り出し、一人残らず首を刈り取ること」

ノアの声が、地下広間に冷たく響き渡る。

「教会の連中は純白の法衣を着て、光を騙る。……ならば俺たちは、王都の闇に紛れ、神聖な死肉を喰らい尽くす【夜鴉(クロウ)】だ」

夜鴉。

それが、のちに王都の裏社会を完全に支配し、光の教会を恐怖のどん底に叩き落とすことになる最強の暗殺部隊が、産声を上げた瞬間だった。

「訓練を始める。お前たちには魔石の耐性があるとはいえ、正面から魔法を撃ち合えば勝ち目はない。……だから、魔法を使われる前に『物理的』に殺す術を叩き込む」

ノアはアッシュに向かって、ゆっくりと構えをとった。

かつて路地裏の暗殺者から簒奪した、無音の歩法と、人体の急所を確実に破壊する殺人術。それを今、ノア自身が『教官(ボス)』として彼らに伝授していく。

「詠唱の隙を突け。距離を潰せ。目を潰し、喉を砕け」

夜の闇の中、黒い鴉たちの地獄の特訓が、静かに幕を開けた。

***

同じ頃。

本邸の執務室に戻ったルナは、窓辺で王都の中央にそびえる大聖堂を見つめていた。

「ふふっ……」

自然と、残酷な笑みがこぼれる。

教会の隠し研究施設が、何者かによって物理的に完全に粉砕された。

長年進めてきた人体実験のデータも、魔石も、そして孤児という重要な『素材』も、すべてが一夜にして消え失せたのだ。

「さあ、どう動くのかしらね。枢機卿ザカリー」

焦り、怒り、必ずどこかでボロを出すはずだ。

その隙を、ノアの育て上げた『夜鴉』たちが絶対に見逃しはしない。

復讐鬼から影の指導者へと覚醒したノアと。

貴族社会の表側から教会を真綿で首を絞めるように追い詰めるルナ。

最強の共犯者たちによる国家規模の盤面(ゲーム)は、今、新たなフェーズへと突入しようとしていた。

お読みいただきありがとうございます!

ついにノア直属の暗殺部隊『夜鴉(クロウ)』と、そのリーダーである『アッシュ』が誕生しました。

ルナの「同情しない(対等の取引として命を買い取る)」という悪逆令嬢らしい態度が、逆に孤児たちの心を救う(掌握する)というロジックを描いてみました。

ここからノアは、圧倒的な個人の武力だけでなく、組織のトップとしての冷徹な指揮能力も発揮していくことになります。

教会側(ザカリー枢機卿)も、研究施設を潰されたことでいよいよ本格的に動き出します。表と裏、両方から教会を追い詰めていく二人の覇道をお楽しみください!

もし「部隊名かっこいい!」「アッシュの活躍に期待!」「ルナ様のカリスマしびれる!」と少しでも思っていただけましたら、

ページ下部の【☆☆☆☆☆】から、星を入れて応援していただけると、めちゃくちゃ大きな執筆のモチベーションになります……!

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