第1章 1話
「勇者はね、実在するの」
「は?」
俺は急に話しかけて来た少女に困惑する。
「皆が信じていないだけで、彼は世界を救ったの」
気にした様子もなく、ただひたすらに話しかけてくる。
「約二千年前、神をも超える悪竜がいたの。
勇者は、悪竜を倒すために」
「ちっょ、ストップ!」
「なに?」
困惑した表情をする少女に、俺は疑問をぶつける
「俺と貴方、初対面だよな?」
そう、全く持って話した事も見た事もない少女に初対面で勇者はいるって言われても恐怖しか感じない。
「ええ、初めてですね」
少女は笑みを浮かべている。なんで、笑顔でいられるのかな!?!?!?
ちょっ、怖いんだけどぉぉ
「名前は?」
頭がパニックになりながら、少女に名前を聞く。少女は先程と同じ笑みを浮かべながら名乗った。
「私は神凪 澪椏」
「俺は神木 暦」
ひとまず、名前をしれてホッとした。
「で、さっきの話なんだけど…」
俺はこの後約1時間ほど話に付き合った。
「はぁ、一体なんなんだ。今となってはもう、誰も信じていないだろ」
彼女が話したものは全て書物に載っている話だ。約二千年前、ある日突然、異世界からの移転者が現れた。その者は世界の危機を救ったというよくある話だ。しかし、今となっては誰も信じておらず。教会が作った創作話となっている。
「まあ、本当なんだけどなぁ…」
えっ?何故かって?それは勿論!俺が救ったからだ。正確には前世ではだが…」
(しかし、悲しいものだな。命を投げ打って救った世界でこんな風に伝わるとはな)
仕方ないといえばしかないか。二千年前の話など誰も信じはしないだろうし。だからこそ、あそこまで信じてくれている人を見ると嬉しくなるけど。
高そうな家が立ち並ぶ通りを抜け、一際大きい家の前に着く。俺は門を握ると、勝手に門は開かれていく。完全に開き、俺はそのまま玄関のドアまで歩き、そのまま開ける。
「おかえりなさいませ。暦様。」
「ただいま。親父は?」
身体がごつく、顔がとても怖い執事ーセバスは、俺の上着をさりげなく取る。
「御当主は、ギルドへ向かわれました。奥様は、お茶会へ」
「いつも通りか。ありがとう」
セバスは静かに着いて来てくれる。
「して、暦様。本日はどこへ?」
「いや、気晴らしに散歩をな。そうそう」
俺は人差し指にしていた指輪から、セバス達へのお土産を取り出す。
「これ、美味しかったお菓子。皆の分買ってきたから食べて。」
「これはこれは、有難く頂戴いたします」
セバスにお菓子を渡し、そのまま部屋へ向かう。
「じゃあ、セバス後はみんないつも通りしといてくれたらいいから」
「承知いたしました」
部屋の前まで着いてきてくれたセバスにいつも通りの事を頼み、部屋に入る。
「ふぁぁぁ〜なんか疲れたな。ひと昼寝でもするか」
ベットに横になり、うたた寝を誘う睡魔に身を任す。俺が起こされたのは数時間後の事だった。




