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異世界筋肉〜筋トレがしたいだけなのに異世界が放っておいてくれない〜  作者: プロテイン長田
第20章「王都大動乱」エピローグ

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第92話「筋肉と覚悟」

## 第92話「筋肉と覚悟」


### 【あらすじ】


 ザハリエルの死後、調子を失っていたユージはリネアとの合トレで新たな覚悟を決める。


 後悔するのはこれで終わり。


 強くなって、大切なものを守ろうと決意したユージ。


 トレーニングに熱が入り、王の呼び出しに遅刻してしまうという大事故が発生。急いで王城に向かったが……。


### 【本文】


「……貴殿、ここには褒賞のために呼んだのだがな」


 ここはグラシオン王国の王城。謁見の間。二度目の訪問だ。


 その時とは正反対の威圧のオーラに満ちた様子で玉座に座るのは、国王レグラディス・グラシオンだ。


「も、申し訳ございません……」


 私とリネアは謁見の間で土下座している。ここに来る前にリネアに教えた転生前の現代日本に伝わる最大級の謝罪方法だ。


「……妙な真似はよせ。今更、時を違えたぐらいで貴殿の功績が揺らぐこともあるまい」


 王はそう言うと、そのオーラを緩めた。


 恐る恐る顔を上げると、王は満足そうな様子でこちらを見ていた。

 

(どうやらビビらされただけみたいだ……)


 ほっと胸を撫で下ろす。


「評議会には席を外させている」


「……そうなんですね」


「貴殿の働きで我が王国は計り知れないほどの魔水晶を資源として蓄えることができた。まずはその取り扱いの最終確認をしようではないか」


「魔水晶……?」


「……王都を襲ったモンスターたちを討伐した時に残った魔水晶のことですね」


 ぽかんとする私に、リネアが助け舟を出してくれた。


「左様。騎士団の一人が貴殿に騎士団で処理するように言われたと言っておってな。まことか」


 あ、あ〜確かにそんなこと言った気がする。わざわざ確認してくれるなんて律儀だな。


「Aランク相当の魔水晶が大量に……それもほぼ損傷なし。話では一撃でヘヴィコア・ゴーレムのコアを破壊して回っていたようではないか」


「い、いやぁ〜まぁ……はい」


「それに各地で討伐されたSランクモンスターたち。多少外傷はあるがSランク相当の魔水晶は一つのダンジョンから基本的に一つしか取れん。複数取れれば儲け物というレベルのものが四つ」


「そして極めつけは貴殿らが討伐したモンスターからのSSランク相当の魔水晶」


 あ、あの最後に戦ったモンスター、そんなに強かったのか……SSランクってことは“銀翼災龍”の一個下のランクか?


「全ての戦場は奇しくも貴殿らのパーティーと騎士団との共同戦線だったようだ。ここでまとめて、その魔水晶の配分を決めようではないか」


 私は考えた。


 今までなら、面倒ごとはごめんだと言って……ノエラの実家に仕送りする分だけをもらってトンズラしようとしたかもしれないが……今は違う。


「わかりました。ここは五分五分……でどうでしょうか」


 

 私がそう言うと、時が止まったような静寂が謁見の間を包む。



「フフ……」


 こ、国王が笑った?


「フハハハハハ!!!」


 な、なんだ?俺なんか変なこと言ったか?


「貴殿!王国を前にして自らを五分と申すか!」


 王はご機嫌で言う。み、見たことないテンションだな。


「アンタ何言ってんのよ!!!」


 リネアはブチギレながら私の頭を下げさせようとしたが絶妙に手が届かず、背中をぶっ叩かれた。


「良い良い!貴殿の言うこと満更でもない」


「……え?」


 予想外の反応だったのか、リネアは驚いた様子だ。


「では……交渉といこう。王国としては此度の魔水晶。その莫大な資源を使って一計あるのだ」


「よって……ある代償をこちらから差し出すことに加え、貴殿には三割分の価値を金貨で支払おう」


 王はこちらの出方を伺うように様子を観察している。交渉していると言うより、獲物を狙う獣の眼だ。


 しかし……この条件は悪くない。と思う。多分。


 勢いで五割くれと言ってみたものの、魔水晶をそんなにもらっても使い道がない。せいぜい拠点の噴水や空調を動かすくらいだ。


 それが現金なら話は別。今後好きな時に好きなところに行けるようになるかもしれないし、ノエラの実家への仕送りも滞りなく行えるだろう。


 あとは王が差し出そうという代償が何なのかだが……。


 ――その代償は、条件を飲まないと教えてくれない……感じか?


 リネアを見ると、どうやら彼女も同じ感想のようだ。


 ……ここは先立つものとして、現金を手に入れるのが良いか……!


「――わかりました。その条件、飲みます」


 私のその返事を聞いて、王はさらに機嫌を良くした。


「そうかそうか!話のわかる男だ。それに――」


 王はその眼で私の値踏みするように見る。


「面構えが変わったな」


「そ、そうでしょうか?」


「ああそうだとも。今日、どうして評議会の連中を同席させなかったかわかるか?」


「いえ……忙しかったからとか?ですか?」


「……評議会よりも貴殿を頼る方がよっぽど国のためになると思ったからだ」


 予想外の言葉に身がすくむ。


 これは……紛れもなく国家権力からの接近。私の存在が国家レベルの意向に巻き込まれる前兆。


 だがしかし――!今の私は……もう逃げない。


 元より、今までのどっちつかずのスタンスが勢力争いを激化させたのだ。


 ――もう腹は決めている。


「ありがとうございます」


「……ほう」


 そう返事した私を王は興味深く観察した。


「最後に問おう。貴殿は王国の味方か?」


 きっとこれが最後の問いだ。


「はい」


「承知した。では、こちらから差し出す代償を」


 そう言うと、王は手を叩いた。


 謁見の間の扉が開け放たれる。


 そこにいたのは……リディア!?何だかいつもと違う服装だな……まるで――何かめでたい席に出るような……?


「……何よあれ」


 そう呟いたのはリネアだ。


 リディアは恥ずかしそうに顔を伏せている。


「まず、筋肉の賢者、ユージ・タカハラよ。王家の名において貴殿を子爵に叙す」


「「……は?」」


 私とリディアは似たような返事をする。


「次に、王命により、我が王国が誇る騎士団が英雄。騎士団長リディアとの婚姻を認める」


「……はい!?」


 次の王の言葉に反応したのはリネアだけだった。


「どうりで……!そんな服を着て……」


 な、なるほど、この世界では婚約するときにはああ言った服を着るのか……?


「って婚姻!?」


 そ、それって俺と……リディアが……か!?


 入り口で固まったまま動かないリディア。


「フム、どうやら緊張しているようだな」


 王はそんなリディアの様子を見て言う。


「無論、彼女は第二婦人として受け入れることも認めよう」


 王がそう言った瞬間、リネアの頭からボフンと湯気が出た……気がした。


「……これで貴殿はこの王国が新興貴族。王家を後ろ盾とし、勇者と英雄を伴侶に持つ……な」


 そう言いながら王は玉座を立った。


「交渉は成立だ」


 してやったりというような表情をする王。いやいや!別に俺にはまだ拒否する権利が――!


 そう思った瞬間。



「ちょっと待ってください!」



 声が響いた。


 リディアの背後から聞こえたその声の主は――


「ク、クラリス!?」


 最近姿を見ていなかった、クラリスがいた。


 リディアの脇を通って謁見の間に押し入ってくる。


「申し訳ございません!!!この者が無理やりっ……!何人かかっても勢いが止まらず!」


 王城の守備隊と思しき数人がボロボロの状態で後を追ってやってきた。


「良い。下がれ」


 王が言い渡すと、男たちは速やかに部屋を後にした。


「……教皇の娘か」


 一体何が何やら……しかし、クラリスの眼は記憶に新しい“新・断罪モード”になっている。


「王よ!私の願いもお聞き入れください!」


 クラリスは懇願するように王に跪く。


「――なるほど」


 王は何かを察したように呟く。


「好きにするが良い。しかし、親を捨てるというのは茨の道であるぞ」


「…………」


 クラリスは跪いたまま静かに頷いた。


 な、何の話をしているんだ?


「さて……妙な収穫もあったが、最後に……」


 去り際に王は私を見た。


「これで貴殿は名実ともにこの王国の貴族だ」


 ぞくりとするような圧。だが悪意や敵意はない。


 これは――


 “期待”だ。


 私は大事な仲間の使命を果たすために、我々の居場所を守るために、強くなることを誓った。


 この子爵位は、その第一歩だ。


 固まっている二名とこちらをじっと見つめる一名。そして私を残して王は退室した。


 これが、王都を巻き込んだ大動乱、その幕切れだ。

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