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異世界筋肉〜筋トレがしたいだけなのに異世界が放っておいてくれない〜  作者: プロテイン長田
第19章「王都大動乱」後編

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第84話「王都防衛戦 大聖堂編」

## 第84話「王都防衛戦 大聖堂編」


### 【あらすじ】


 王都にモンスターが跋扈し始めた頃、偶然同じ持ち場となったカイルとルノアは避難民の保護とモンスターの駆除に奔走していた。


 騎士団本部にタイタン・ゴーレムが出たのとほぼ同時刻。ここ大聖堂付近にも不穏な影が……。


### 【本文】


 カイルは考えた。この采配は正解だったのかと。筋肉の賢者パーティーで彼が実は最もやばいと思っている存在。夜葬姫こと猫獣人のルノアが加勢に来たことは、カイルにとって難しい判断を強いた。


 カイルは王都ですでに数度ルノアの戦闘を見ている。それは、間違いなく騎士団襲撃を起こし消えた闇の盗賊団。そして確実にその関係者であろうハンクと同じスキル。


(疑ってるわけじゃねぇ。この子は王都の民を救うために頑張ってる。疑う気なんざ微塵も起きやしねぇ)


(現に、今も大聖堂に避難した人たちのために大量のモンスターを狩っている)


「ん、あっちからまたモンスターたくさん」


「おう!助かる」


 Aランク相当のヘヴィコア・ゴーレムはユージの活躍でほぼ殲滅できている。


 際限なく湧き出てくるグールやスケルトン兵士の殲滅も、ルノアの索敵とカイルの広範囲を殲滅する剣技が噛み合い二人だけで大聖堂の防衛を担っている。


(だが……いくらルノアちゃんが強いとはいえ――他の団員、みんな他所にやっちまったのはやりすぎた……)


 カイルは大聖堂の入り口前、その周辺を見回す。


(いや、そうでもないか)


 大聖堂の周りの広場は魔水晶がゴロゴロ転がっている。カイルとルノアで殲滅したモンスターの量がそのままこの異常な光景を作り出していることは言うまでもない。


「カイル」


「ん?おお、どうした」


 カイルがそんなことを考えていると、ルノアが珍しくカイルの名前を呼んだ。


「くる。じゅんびして」


「え?なんだ?何が来るって?」


 ルノアの言葉を聞いて焦るカイル。


(……まじか、そういうことかよ。)


 不気味な生暖かい風が流れてくるのを感じる。


 その先を見上げると……


「なんだぁありゃ……」


 ――大聖堂の上空、空間が裂けていくのが見える。


 裂け目の向こう側には紫色の不気味な空間が広がっていた。


 そこから出てきたのは――


「アビス・セラフィムってやつか。ダンジョンじゃ“見たら全力で逃げろ”って有名なモンスターだぜ?」


「ん、ルノアもゆうめいじんだからいっしょ」


(ルノアちゃん、冒険者殺しの異名を持つこいつを見てもこんな調子か……!)


 【アビス・セラフィム】

 天使のような見た目をしたSランクモンスター。

 人型だが、目や鼻、口などの器官は一切存在しない。

 敵を認識すると、“同じ姿の分体”を生成し、襲いかかる。

 魔力で生成した剣で攻撃を仕掛けてくる。

 本体は予知のような回避性能を持ち、単純な攻撃は全て躱されてしまう


「大聖堂にこいつがお出ましとは……皮肉なもんだな」


 顕現したその神々しくも禍々しいモンスターは、ゆっくりと上空から降りてくる。


(てっきりすぐに突っ込んで行くかと思ったが……ルノアちゃんも警戒してるみたいだな)


 しばらく睨み合いが続く。


 しかしその静寂はすぐに終わりを迎えた。


 ――グゥオオオオアアアアアアア!!!!


「来るぞ!」


 カイルは叫ぶ。


(まずは三体に分裂しやがったか。この中で本物は一体。だがこれは……)


 カイルが見上げると、大聖堂、そのはるか上空から見下ろすように一体。


(あれが本物だろうな……だがこりゃ、高すぎて届かねえぞ)


 そう考える間に、襲いかかってきた分体に向かってルノアが攻撃を仕掛ける。


 ――ギィオオオオアアアアアアア!!!!


 分体がこの世のものとは思えぬ悲鳴をあげる。ルノアが魔力の剣を持つ片腕を斬ったようだ。


(さすがだな、分体とはいえSランクモンスターなんだが……簡単にやってくれるなぁ)


 カイルは大剣を構える。


 彼の一家は王国の独立戦争時代に戦果を残せなかった没落貴族。そんな家をカイルは剣術一本で立て直した。独立を勝ち取った王国内でのしあがり、騎士団副団長までたどり着いたのだ。


(親父に託された家宝のこの剣。Sランクモンスター相手がちょうどいいってもんだ)


「いくぜ!“蒼炎”っ!!」


 カイルの剣に青い炎が宿る。


「喰らいやがれッ!!」


 彼の剣が襲いかかるアビス・セラフィムの分体を捉えた。その剣は、斬るというよりも“叩く”ような衝撃を与え、分体は青い炎に包まれ吹っ飛んだ。


「カイル、いまのなに」


 ルノアはそう言いながらカイルのそばに戻ってくる。


「ん?あぁこいつは俺のスキルだな。剣に属性を乗せてぶった斬る。まぁ奴さんが硬すぎてぶっ飛ばすような格好になっちまったが」


「かっこいい。ルノアもそれやりたい」


「えぇ!?あ〜そうだな……ルノアちゃんなら闇属性とかか?だがそう一朝一夕でできることじゃ――」


「ん、わかった」


「あ!おいっ!」


 カイルの呼び止めも虚しく、ルノアは腕を切り落とされた分体に再度向かっていく。


 彼女の短剣には……黒いオーラが宿っていた。


「嘘だろ……?」


 一瞬ルノアの姿が消えたかと思うと、分体の背後に現れた。直後、ルノアの短剣が分体の首を捉える。


 ――グォォォォォ……!!!


 その切り口から闇のオーラが分体を蝕むように広がっていく。やがて、完全に飲み込み分体を消滅させた。


「なんかカイルのやつとちがう。ルノアそっちのほうがいい」


 いつの間にかカイルの横に戻ってきていたルノアは不満そうにそう言った。


(な、なんなんだ今のは……!!まるで……)


 カイルはそこまで考えて思考を止める。


 アビス・セラフィムが再度四体の分体を出してきた。


「チッ!やっぱそうくるよな……ルノアちゃん!いいか!」


「ん、ひとまずこれでがまん」


「あ、いやそっちじゃなくてだな。アイツはあの一番高いところにいる奴が本体だ。本来はダンジョンとかの閉鎖空間に出てくるからあんな高いところに逃げるなんてことはしてこねぇ」


 ルノアはカイルの説明を聞いてるんだか聞いてないんだかわからない様子で短剣をいじっている。


「だから、このままじゃ無限に奴と戦わなくちゃならなくなる。何としてでも本体を叩くぞ」


「わかった」


 そう言うとルノアはものすごい勢いで大聖堂に突っ込んでいき、外壁を登っていく。


「あっ!おい!まじか……分体の相手は俺一人ってわけか?」


 カイルはすぐにルノアを見失ってしまった。彼女の“暗殺術スキル”による隠密は他者からの観測を完全に拒んでいる。


◇◇◇◇◇◇


「さっすがに四体相手はッ!骨が折れるぜ!」


 カイルは襲い来る四体のアビス・セラフィムの分体を捌く。魔力で生成された剣の攻撃を躱し、いなし、反撃する。


 再び突っ込んできた一体の攻撃を身を捻って回避。その勢いを使って回転しながら大剣を薙ぎ払う。


 蒼炎を纏う剣が舞い、その回転に巻き込まれた分体が炎に巻かれた。


(本体は予知能力があると言われてる。攻撃を予測して避けやがるから、“避けた先に攻撃”するのが正攻法だ。ただそれもタイミングが完璧じゃなきゃ通らねぇ。それこそSランク冒険者の集まりが一晩作戦会議するレベルだが……)


 カイルは再び追加され五体になった分体と激しい戦闘をしながら考える。


(ルノアちゃんがトドメを決めるとして、俺がなんとかして奴の予知回避を誘発しなきゃなんねえってことだろ――)


 カイルは戦闘、思考を同時進行させながら一瞬、大聖堂のはるか上空にいるアビス・セラフィム本体をチラリと見る。


(――あの距離にか……!?それこそこの剣をぶん投げても届くかどうか……クソ、ルノアちゃんもどうにか攻撃の機会を伺ってくれてればいいが……)


◇◇◇◇◇◇


 カイルはその類稀なる戦闘スキルでアビス・セラフィムの分体を撃破していく。しかし、倒しても倒しても追加される分体。全く戦況に進展はない。


(どうにかして、一瞬。一瞬でいい。隙があれば本体に仕掛けられる。)


(まぁ、この大剣をぶん投げたとして、外したら終わりだ。丸腰でこいつらの相手をしなきゃならなくなる)


(チャンスは一回。問題はどうやってその隙を作るかだが――)


 その時。


 ――ウォォォォォォォォン!!!!!


 サイレンのような音が王都中にこだました。


 分体を含め、その場にいたすべての存在が一瞬、止まった。


 アビス・セラフィムは何かに怯えるように高度を下げる。


(今だっ!!)


 「行けェェェェェッ!!!!」


 カイルは賭けに出た。降りてきた本体に蒼炎纏う大剣をぶん投げる。


 アビス・セラフィムは予測していたかのように攻撃を躱す。しかし、躱した先は奇しくも“大聖堂の方向”だった。


(よし、あとは任せたぞ!)


 カイルがそう思った瞬間。アビス・セラフィム本体の背後にはすでに小さな猫獣人の少女の姿があった。その手には、闇のオーラを纏った短剣。いつの間にか敵の背中を捉えていた。


  ――グォォォォォォォォ!!!!!!


 悍ましい断末魔が広がる。


 敵はその短剣から広がる闇のオーラに蝕まれていき、さらに苦しそうな叫び声をあげた。


「ん、うるさい」


 ルノアはそういうと、アビス・セラフィムの背中から短剣を引き抜き、その勢いそのまま回転しその首を狙う。


 もはや、敵にそれを避ける力は残されていなかった。


◇◇◇◇◇◇


「さすが、俺が本体に剣を投げるタイミングを見計らってたんだな」


 カイルは戻ってきたルノアを迎えるとそう言う。


「ん、そのとおり。ルノアはかしこい」


 ルノアは自慢そうにそう言うが、どこか目が泳いでいる。


(……まさか、適当に俺を囮にしてなんとかしようとしてたわけじゃないよな?だとしたらさっきのは奇跡的な連携ってことになるが……)


(ま、考えてもしょうがないか。こりゃ、アビス・セラフィムの最小人数討伐記録になるだろーな。また家の名が記録に残せるんなら、それに越したことはないわな)


「それにしても……さっきのキモいサイレンみたいなのはなんだ?Sランクモンスターの動きを止めるなんざ……考えたくもねえが、もっとヤバいやつが出たのか」


「ん、ご主人様がいるからだいじょうぶ」


「そ、そうなのか?あ、いや……ルノアちゃんが言うならそうなのか……?」


 カイルは考えたが、事態はそれどころではないようだ。


 またどこからか、グールやスケルトン兵士たちがぞろぞろと現れ始めた。


「……ぶん投げちまった剣、拾ってくるわ」


「ん、しんわざいっぱいおためし」


 カイルとルノアのタッグはもはや敵なし。大聖堂の避難民を守るための戦いは続く……。

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