第83話「王都防衛戦 騎士団本部編」
## 第83話「王都防衛戦 騎士団本部編」
### 【あらすじ】
ついにザハリエルによる王都襲撃が本格化する。
騎士団本部に現れたのは推定Sランクモンスターのタイタン・ゴーレム。さらには小型モンスターを大勢引き連れた大群が騎士団本部を襲う。
迎え打つはクラリスを救うために居合わせたユージと、元々本部を防衛していたリディアたち騎士団。
クラリスも目を覚まし……。
### 【本文】
「ウォォォォォォ!!」
「ユージ!いちいち叫ぶな!」
「スマン!」
戦闘は苛烈を極めた。
なんとあのゴーレムはコアからビームのようなものを打てるらしい。さっきの爆発音の正体はこれだ。
定期的に飛んでくるビームをダイナミックに避けながら叫んでいたらリディアに怒られてしまった。
「いいか!?あれに当たったら流石の君でも跡形もなく……」
そんな会話をしながら、我々は動線上の小型モンスターを薙ぎ倒している。
腕をぶん回せばスケルトン兵士は粉々に、グールもワンパンで消し飛ばせるのでなんということはない。
リディアと私のコンビで絶えずゴーレムに攻撃し、ゴーレムのヘイトを集める。
幸いゴーレムということで知能はそこまで高くないらしく、我々を無視して人々が大勢いる建物を爆撃することはないようだ。
「しかし、コアを割ったら大爆発とは……とんでもないモンスターだな」
「――君のようにお手軽にコアを破壊できるやつが異常なだけだ。苦節数年。初めてこのゴーレムに勝利したにも関わらず、悲惨な最期を遂げた冒険者たちに感謝するんだな」
先ほど、いつも通り投擲であのゴーレムのコアを破壊しようとしたらリディアの剣が飛んできて止められた。あのゴーレムはコアを破壊されると、その破滅的なエネルギーを制御できなくなって周囲をとんでもない爆発が襲うらしい。
「ダンジョン内ならあれだが、外にいるんだから引き離して遠距離から爆発させればいいんじゃないか?」
「君は王都に修復不可能な大穴を開けたいのか。もしかしたら有名な湖になるかもな。その時は君の名前をつけるよう打診してみよう」
「そんなにか!?そりゃダメだな……」
「討伐例は一つ。奴の体が再生しなくなるまでコア以外の部分を破壊しまくるしかない」
「いや、さっきから壊しまくってるが……」
小型モンスターをぶっ飛ばしながらゴーレムの足に接近。“パンチ”スキルでその巨大な脛(にあたる部分)を粉々に砕く。
「何回壊しゃいいんだこれ!」
ゴーレムは器用に片足でバランスを取ると、すぐに破壊された足を再生させて見せた。
「私に聞くな!今は建物に近づかれないようにこれを繰り返すしか――!」
その時。
――ドゴォォォォン!!!
轟音が響く。
「なんだ!?ゴーレムの頭に……なんか刺さった!?」
あれは……見覚えがあるぞ!
「ぐえっ!!」
そう思った瞬間体に衝撃が……いや、衝撃というか、何か柔らかいものが突っ込んできた?危機察知が反応してないから敵ではない……?
「おい!貴様っ!」
リディアが叫ぶ。
突っ込んできて抱き抱えるような状態になったそれを見ると……。
「クラリス?」
「はい……救世主様……!」
……それは完全に“断罪モード”になった状態のクラリスだった。
――いや、何か違う。
その眼の紅はいつもより黒く澱んでいて……。
「救世主様……ご命令を!」
クラリスは私に抱きついたまま上目遣いでそう言った。
「いいかげん離れないかっ……!」
リディアはものすごい剣幕で言い寄っている。絶対にそんな場合ではないと思うが……。
「あ、これやばいかも」
そんなやり取りとは対照的にものすごいアラートが聞き察知スキルから発される。ゴーレムのビームだ――!
「チッ!」
リディアはいち早く察知してその場を離れる。
私もクラリスをそのまま抱き抱えて回避に専念した
――ドゴォォォォォォォン!!!
ビームの着弾点で小型モンスターごとまきこむ大爆発が起こる。
「ク、クラリス……!具合は大丈夫なのか?」
「はい……!救世主様のおかげで私は生まれ変わりました!」
なんか、キャラが変わってないか?色々と。
「私は救世主様の忠実な下僕……何なりとご命令ください♡」
あ、あれ……これって……。
「ユージ。彼女の奴隷契約を解除してやれ」
回避を終えたリディアが戻って来た。
「あ、そうか!これ契約の効果なのか?」
「わからん。だが彼女は明らかに……変じゃないか?」
抱えたクラリスを丁寧に立たせる。
「変だなんて……私は正常ですよ?」
「いや、どう見ても……」
「私はこの世界の救世主、ユージ様の下僕となったのです」
「……冗談だよな?」
「本気ですよ♡」
……判断がむずいな!クラリスを救うために交わした奴隷契約。それをそのままにしてしまっていることを怒って私を困らせているのか。それとも……。
彼女の女神への信心が私に入れ替わって……?
「と、ともかく!今はゴーレムだ!!クラリス、戦えるか?」
「はい、ご命令とあればこの命を捧げても……!」
「違う違う!!ひとまず今は……そうだな」
私は少し考えた後続ける。
「ゴーレムが再生不能になるまで、ここにいる仲間と協力して戦うんだ。でも自分の命や仲間の命を第一に戦うこと!いいな!」
「はいっ!」
……よし。これで大丈夫……だよな?
◇◇◇◇◇◇
それからしばらく。リディア、クラリス、私の連携でゴーレムを虐め続けた。
「なんか……再生、遅くなってるか?」
「……どうだろうな?」
き、キリがないな……討伐歴があるってことは倒せないなんてことはないはずだが……。
そんなことを考えたその時。
――ウォォォォォォォォン!!!!!
サイレンのような音……いや、何かの“叫び声”が王都中にこだました。
視界に入っていた小型モンスターたちも一瞬その動きを止めた。
――ゴーレムさえ、その声に“恐れ”たように一瞬、固まった。
「……何だ」
リディアは小さくそう言った。
……何かが現れた。
この感覚は……龍里嶽で“銀翼災龍”が現れた時の感覚に近い。
リディアもその感覚があったのだろう。
その声の方角は……。
「……王立学術院の方角だ」
リディアは言う。
王立学術院……。
――リネアが様子を見に行った場所だ。
「確実にこのゴーレムより格上のモンスターが出たのは間違いない」
「…………行ってくれ」
リディアは言う。
「……スマン」
「謝るな、もうこのゴーレムは私とシスターで十分だ。時間はかかるだろうがな」
「……?」
クラリスは相変わらずの様子だ。
「……とぼけた顔をしても無駄だぞ。彼を誘惑するための演技だろうが、私には通用せん」
「……なんのことやら」
何やらリディアがクラリスに何か言ったようだが、よく聞こえなかった。
「君に任せる形になってしまって申し訳ないが、王立学術院にも大勢避難民がいる。」
リディアはそう言うと、私の手を握った。
「……頼んだぞ」
「ああ」
ここは、より強いモンスターのところに私を送るリディアの采配に従おう。
なぜかしれっとクラリスも手を握ってきたが、ツッコむのはやめた。
そうして、ゴーレム退治に戻る二人に背を向け、夜も更けてきた王都を行く。
その先には、この事件の結末が……待っている気がする。
◇◇◇◇◇◇
「…………行ったな。さて、我々は貧乏くじだぞ。愛しの男を送り出してゴーレム崩しだ」
ゴーレムと対峙したリディアはクラリスに言う。
「せっかく救世主様といい感じでしたのに」
「何がいい感じだ。無理やりくっついて彼を困らせていただけじゃないか」
そんなことを言いながら、リディアはものすごい勢いでゴーレムの足を断ち切る。
「あのお方には少しくらい強引に行った方が良いのです。そんなだからいつまでたってもあのお方は独り身で――」
クラリスも負けじと体制を崩したゴーレムの頭からモーニングスターを回収し、頭をかち割った。
「それで、なんのつもりだ。まさか彼をモノにしようなどとは――」
「とんでもございません。私は“あのお方のもの”です」
「それはどう違うんだ?」
「ふふっ……騎士団長様も初心なのですね」
「教会の修道女がいうことではない気がするが」
「いえ、何もやましいことは……」
その後、リディアとクラリスはそんなやりとりを繰り返しながら、ゴーレムを破壊し続けた。
明け方、その再生が止まった後も、二人のユージに関する“話し合い”はしばらく続いたらしい。
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