第82話「シスターと守るべきもの」
## 第82話「シスターと守るべきもの」
### 【あらすじ】
時は遡り、ザハリエルによる孤児院襲撃。
ノエラに子供達を託したクラリスは……。
### 【本文】
「ザハリエル様。どうしてこんなことを……」
ノエラさんがすぐに行ってくれてよかった。ザハリエル様の攻撃は、流石のノエラさんでも防ぎきれない。
「シスター・クラリス……教皇の娘よ」
ザハリエル様は杖をこちらに向けている。
「教皇は……どんな男だ」
…………言えない。今、ザハリエル様が迎えにきたと言う子供達。
その一人、レクト君が呪いに苦しむ姿を見て、父は。
――何もしなかった。それどころか、私の成長の糧にでもしてやろうと言う態度。
そんなこと、言うことができるはずも――
「そうか……奴は相変わらずだな」
背筋が凍る。考えが読まれた?
杖の先が光る。攻撃が来る!
――放たれたのは見たこともない魔術の攻撃。恐らく聖属性であることは間違いないが、そこに乗っているのは紛れもない殺意。
「ッ…………!!!」
武器が手から離れ、弾かれた。ただの一撃で……!
――もう、防ぐ手段はない。
無力だ。時間稼ぎもできないなんて。
ザハリエル様……子供達を、守るために――
この王国すら、敵に回そうと言うのですか?
◇◇◇◇◇◇
目を覚ますと、見覚えのない部屋。
ベッドに寝かされていた私は辺りを見回す。
誰もいない。
外が、騒がしい。
体が、軽い……?
私は、ザハリエル様と対峙して、それで……。
窓から外を見る。
目に飛び込んできたのは、王都を駆ける賢者様の姿。
――その賢者と呼ぶにはあまりにも荒々しい戦闘。
私の目に映るその姿は……もはや賢者様と呼ぶべきではないと知った。
「救世主様……」
思わず、そう溢れるようにつぶやいた。
王都に溢れるモンスター。その脅威を薙ぎ倒していく救世主。その彼を支えるように隣で戦うのは、美しい英雄の女騎士。
「私も……こんなことをしている場合ではありませんね」
そう呟いて部屋を後にする。
ふと、窓に映った自分の姿が目に入る。真紅に染まった眼。女神様のために尽くす私の心を映し出しているはずの眼……その色は、いつもより情熱的な色に見えた。
「……あら?」
ふと気づいた。いつの間にか服はいつもの修道服から簡単な服に着替わっている。そして私の首元には、見覚えのない紋が……。
触れてみると、救世主様の暖かさが感じられるような気がした。
「これは……!救世主様……こんなものをつけたままにして、いけないお方ですね」
これは救世主様からの期待。彼の下僕として、女神様、お父様ではなく自分に尽くせという彼からのメッセージ……?
子供達を守るためには、自分についてこいと。そう仰るのですね……!
――見ていてください。必ずご期待に応えて見せます!
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