第59話「一方その頃リューネ村では」
## 第59話「一方その頃リューネ村では」
### 【本文】
「嬢ちゃん、やっぱあんた普通じゃねえな」
「あら、そう?それはどうも」
リューネ村に残ったカイル、マルティナ、リネア、ルノア、ノエラ、そしてクラリスは三日三晩続く盗賊やならずものたちの襲撃から村を守っていた。
「俺だってよ、まぁまぁ腕には自信あんだぜ?この年で騎士団副団長ってのは前例が――」
「ん、わるいひとたおした」
「うおっ……ってルノアちゃんか……」
ルノアが村の集会所に報告に来た。
防衛の要所はマルティナ、ノエラの結界で、そのほかのほとんどの場所はカイルの指揮で村の駐在騎士団員や村人と協力して警備している。
ルノアは森に入り、盗賊たちを倒しては報告に来ている。
そのあとすぐ、騎士団の馬車で巡回し気絶したならず者たちを捕え、王都に送るのだ。
「正直えげつないぜ、これ」
カイルはドン引きしながら言う。
「この三日でいったい何人王都に罪人として送られたのか……」
「あら、いいじゃない?罪人は奴隷として働かせるんでしょ?労働力よ」
「そういう問題じゃねえよ……」
カイルは罪人でパンクしているであろう王都の騎士団施設のことが気になるようだ。
「流石にもう盗賊たちも襲ってこなくなってきたわね」
「というよりも、この国にこんだけ盗賊がいるって方が驚きだ」
「騎士団の取り締まりが甘いからじゃない?」
「おぉ、言ってくれるな」
「冗談よ」
「まぁ、パンデム商会に奴隷の買取を絞ってもらったから人攫いに関してはだいぶ減ったんだがな」
「……パンデム商会?」
「ん?ああ。そうだ。この王国のすべての奴隷商売を仕切ってるヤベェ大店さ」
「……そう」
「ん?どうしたんだ」
「私、外見てくるわね」
「ルノアも。みまわりさいかい」
「お、おお。助かるが……」
(一体なんだってんだ……?)
リネアとルノアは拠点にしている集会所を後にする。
「……パンデム商会。そこがこの王国の奴隷商売を仕切ってる。それなら……」
(私のお母さんも、おそらくその商会に)
ふと、リネアは体に違和感を感じる。頭の先から力が抜けるような……。
(ルノアもなんとなく分かってるみたいね。この一件が片付いたら……ユージと一緒に……)
直後、リネアの視界がぐらりと揺れる。
カランカラン……と剣が落ちる音。
「……リネア?」
ルノアがリネアに駆け寄る。
――返事はない。
さっきまで元気に話していた彼女の面影はどこにもない。
まるで抜け殻のようになってしまった彼女に触れるルノア。
――やはり返事はない。
「ッ……!」
幼いルノアでもわかる。リネアがなんの前触れもなく倒れた。
その理由は一つ――。
◇◇◇◇◇◇
「お、おい!?なんだ、どうした?」
集会所に飛び込むやいなや、物凄い勢いでカイルの腕を引っ張るルノア。
「なんだなんだ……?っておい!大丈夫か……!?」
外に出ると、倒れているリネアの姿が目に入る。
「し、死んでるわけじゃねえよな……」
カイルはリネアの容体を確認する。
「大丈夫だ。息はある……。だが何でったって……さっきまで普通に話してたじゃねえかよ」
「……リネアをおねがい」
「え?……おい!どこいくんだ!?おい!」
そう言い残すと、ルノアは消えた。
「……今の顔、ただ事じゃねえな。いったい何が……」
(ご主人様……しんじゃだめ……!)
ルノアは北を目指す。
自分を救ってくれたご主人様が危ない。
今動けるのは、自分だけだ。
今はただ、馬車の跡を辿って、北へ――。
痕跡はほぼ消えかけている。だが、それだけが最後の頼みの綱。
ご主人様の元へ行かなくては。ルノアの決意がみなぎる。
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