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異世界筋肉〜筋トレがしたいだけなのに異世界が放っておいてくれない〜  作者: プロテイン長田
第13章「龍里嶽へ」

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第51話「筋肉と二人旅」

## 第51話「筋肉と二人旅」


### 【あらすじ】


 リューネ村の状況は深刻だった。またいつ賊が襲ってくるかわからない状況は予断を許さない。


 ドラゴンの調査に向かう戦力や役割を巡って会議が行われ、ユージは女神の予言で見たあの惨劇を回避するためにもリディアを決して一人にしてはならないと決意するのだった。


### 【本文】


「君は教会の宣教師として生きていくことにしたのか」


 北へ向かう馬車を操りながらリディアは言う。


 荷台には野営の道具や最低限の食料だけ。文字通りの二人旅だ。我々はドラゴンの調査に王国最北部、龍の伝説がある龍里嶽の入り口に位置する村を目指す。


「どうだろうな……正直何とも決まりきっていない状態だと思う」


「あの教皇は何と言って君たちを送り出したんだ?」


「『頑張って騎士団より活躍しろ』ってさ」


「そんなところだろうな」


 き、気まずい――!


 先日の告白まがいのやり取りは記憶に新しい。


 そのことについて話すのも十分気恥ずかしいが、逆に何の言及もないというのも気になって仕方がなくなる。


「君たちの使命とやらはどうなったんだ?騎士団の隊長という地位を拒むほどのものだったと記憶しているが」


 あれ……?なんか怒ってる?


「今回は緊急事態だ。それに関してはリネアたちの了承も得てる」


「彼女たちはよっぽどでもない限り君から離れることはなさそうだがな」


「……そうか?」


「そうだろうとも」


 この後もリディアと他愛もない話を続ける。旅路は長い。


 このまま何事もなく無事にみんなのところに帰ろう。


 そして騎士団も教会も、何やかんやうまい具合に着地して筋トレをしながら仲間たちのために旅をするんだ――


◇◇◇◇◇◇


「……ん?あぁ、すまん。寝ちゃったのか」


 精神的な疲れが祟ったのか、あるいは出発までほとんど寝付けなかったからか、私はいつの間にか寝てしまっていた。


 頭部に大変心地よい弾力のある何かが当たっている。


「う〜ん……?」


「お、おいっ……あんまり動くな……っ!」


「え?ああ!すまん!!」


 艶っぽいリディアの声に驚いて飛び起きる。


 どうやら私は彼女の立派な大腿四頭筋(いわゆる太もも)を枕にしてしまっていたようだ。彼女のいつもの立派な装備ならいざ知らず、今は長距離移動用の重量の軽い装備になっていたため気持ちよく眠れてしまったようだ。


「全くお前は……随分と快適そうに寝ていたな」


「悪かった……」


「……その、なんだ。言ってくれればいつでも――」


 そこまで言って、リディアは黙ってしまった。


「……重くなかったか?」


 気まずい沈黙を破るため私は口を開く。


「鍛えているからな。このくらい何でもない」


 何だかしおらしくなってしまったリディア。


 見上げると太陽はすっかり真上にある。ガッツリ数時間寝てしまったようだ。


「そうだ――」


◇◇◇◇◇◇


「驚いたな。君は馬も心得があるのか」


 出発からここまでリディアに馬車を任せてしまっていたので御者の役割を交代してみた。


「心得って言っても多分スキルレベル1とかだけどなぁ」


「では私が手ほどきしようではないか」


 そう言うと、リディアは私の両手を上から握るようにして覆いかぶさってくる。


 彼女の美しいブロンドの髪が視界に入る。何故か少しいい匂いもするような……。


 それから数時間はなかなかに優雅な時間だった。


 異世界転生した男が異世界のブロンド美女と馬のお稽古……。


「なかなか筋がいいな!」


 リディアは興奮してそう言う。


 恐らく“マッスルメモリー”の効果であろう。私の馬術はみるみるうちに成長していく。


 その様子を見て教え方にどんどん熱が入るリディア。心なしかボディタッチも多くなっているような……。


 結局、陽が傾くまで特訓は続いた。おかげでかなりいいペースで北上できているようだ。


◇◇◇◇◇◇


 標高が高くなってきたからだろうか。出発した王都に比べ気温が低くなってきている気がする。


 このまま行けば恐らく目的地は氷点下近くになるかもしれない。


 だが幸いなことに騎士団御用達のテントがあるらしいので安心だ。極寒の地でも暖かく過ごせる優れものらしい。


 再びリディアの手ほどきを受けテントを張ると、今日はここで野営をすることになった。


「リディアが先に休んでくれ。俺は午前中ガッツリ寝てるからな。」


「ああ。そうさせてもらうよ」


 リディアは自分のテントへと向かう。


 傍から見ても豪華なテント。


 私にも同じものを持ってきてくれたらしい。その性能に期待しよう。


◇◇◇◇◇◇


 さて、村の時とは違って今回はこの付近だけを警戒すればいい。


 私はリディアのテントの付近でスクワットをしながら時間を潰すことにした。


「……すまん。一体さっきから何をしているんだ?」


 すっかり寝ているかと思っていたが、数十分するとリディアがテントから顔をだす。


「スクワットだ」


「聞き方が悪かった……なぜ私のテントのすぐ側にいるんだと言っている」


「ああ……これはな……」


 私はノエラやルノアのように索敵や警戒に使えるスキルを何一つ持っていない。


 偉そうなことを言ったが自身が対象になっていない攻撃を察知することはできないのだ。


「索敵は専門外だからな。あんまり離れるのも違うと思って」


 リディアは怪訝な顔をする。


「それに、俺が最初の標的なら確実に敵の攻撃に気づける」


「お前は……まさかとは思っていたがかなり頭が悪いのか?」


「随分な言いようだな……」


「いいから少し離れていろ」


「だが――」


「着替えるから離れていろと言っているんだ!こんなこと言わせるな!」


 怒られてしまった。


 まぁ、少しくらいなら大丈夫だろ。渋々距離を置くことにした。


 しかし、リディアと過ごす時間に少しずつではあるが心地よさを感じてきている。


 いまはただ、この束の間の安らぎを良いこととして受け入れるほかあるまい。

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