第42話「騎士団長リディアのその後」
## 第42話「騎士団長リディアのその後」
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言ってしまった。言ってしまったと言うより、やってしまった。
私は彼を良く思っている。
彼と一緒に騎士団として共にいれば、間違いなく国に安寧をもたらすことができるだろう。
だがそれだけではない。彼と過ごした時間は今まで感じたこともないほど素晴らしいものだった。
私が遠慮なく打ち込める相手など国中探してもそうはいない。
それに、私に遠慮なく打ち込んでくる彼の攻撃は思い出すだけでもゾクゾクするような感覚があった。
だから……彼が私たちの前から走り去っていく姿を見るのは辛かった。
そしてその直後にあの失態。
情けない私のことなど放っておけばよかったと言うのに、彼は私を救ってみせた。
国からの追求は免れなかったが何とか彼が盗賊団襲撃と無関係だと言うことは証明できた。
……あの時私の体を見て、彼はどう思っただろうか。記憶は曖昧だが、見惚れているようにも見えた。そうだったら良い。と思う。
しかし、次に彼を見たのはあろうことか大聖堂の目の前。
厄介ごとの巣窟であるそこから出てくる彼を見るのは正直堪えた。
彼は騎士団ではなく教会を選んだのだ。と、本気でそう思った。
彼は私を失望させまいと振る舞ったが、それは単に私を気遣ってのことだろう。
このままではいずれ彼は遠くに行ってしまうかも知れない。そう思うとどうしようもなく感じる。
マルティナの勧めで彼と二人になると、とうとう抑えが効かなくなる。
私のことを知って欲しい。何を期待したか、私の過去を彼に話している自分がいた。
長年、かけてもらいたかった言葉。
私は騎士団長であると同時に一人の人間だ。
国と人の命を天秤にかけられた時、国を選べない自分の弱さは自覚している。
本来その弱さを持っている人間に騎士団長は務まらない。
そのはずだったが、剣術保守派は私を“シンボル”として担ぎ上げた。
私は強い。訓練や模擬戦では向かう所敵なしだ。
しかし、実戦ではそうはいかない。
人はそんな私を見て慰めの言葉をかける。
これから頑張ればいいと成長を促す。
おそらくその通りなのだろう。
しかし、彼は違った。
正直もう自分の気持ちを抑えられなかった。
私は彼と一緒にいたい。
願わくば、生涯を共にする伴侶として――
◇◇◇◇◇◇
「団長?彼からの返事はどうだったのですか」
「……聞けずじまいだ」
「そういうところですよ。しっかりしないとリネアさんにとられちゃいます」
「私と彼の会話を聞いていたのか」
「……何のことだか」
大丈夫だ。リネア嬢は様子を見る限りまだ自分の気持ちを伝えてはいないだろう。
それに関しては私が先だ。それにいざとなれば第二婦人でも――
「いや、この心の弱さが私の良くないところだな」
「その意気ですよ団長」
先ほどからマルティナに見透かされていることが少々気がかりだが、彼と一緒になるためにも、より気合を入れ直さなければ。
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