第35話「マルティナとカオスな病床」
## 第35話「マルティナとカオスな病床」
### 【本文】
団長の為なら、この命など惜しくはない。
私は団長の意思に惹かれ、ここまでついてきたのだ。
でも、こんな所で呆気なく終わってしまうのは少し寂しい。
あぁ――叶うのなら、次もまたあなたの側で……。
◇◇◇◇◇◇
物凄い音がしたことに気づき目が覚めると、私は騎士団訓練施設のベッドに寝かされていた。
そうだ。私は盗賊団との戦闘で……。
ふと横を見ると、団長が上裸で硬直している。
「団長……?」
私は恐る恐る声をかける。
「なっ……!?マ、マルティナか!」
団長は我に返った様子でこちらを見る。
「誰だそこにいるのは!ものすごい音がしたぞ!」
外から団員の大声が聞こえ、私は咄嗟に結界で部屋を覆い隠す。
壁の方に目をやると、部屋の窓は突き破られていた。
「ちょ、ちょっと!あの、あれ?おかしいな」
あの男の声がする。なぜ奴がここに?いや……この状況と奴の存在を考慮すると――
体を確認すると、すっかり傷は塞がっているようだ。傷跡は痛々しく残っているが……。奴の“賢者”としての能力だろう。
「団長……とりあえず服、着ましょう」
「あ、ああ。そうだな」
私も何故かはだけている服を直そうと手をかけると、ある違和感を感じる。
「……なんですか、これ」
私の服は無惨にも背中から破かれ、どうしようもない状態になっていた。
「それは恐らくユージの仕業だな。賢者のスキルを発動させるために、彼は我々と奴隷契約を結んだんだ」
ポカンとなる私を見て、団長は付け加える。
「ほら、あるだろう?あの背中に紋を刻むやつだ」
「……は?」
思わず、団長に向かって失礼な口の聞き方をしてしまった。
「スキルの発動にはなんらかの契約が必要らしい。急を要したからな。近くにあるもので済ませたのだ」
周囲で騒ぐ団員たちのせいもあるが、何を言っているのか理解に苦しむ。
「まあ、心配することはない。こうして回復したのだ。すぐ彼に契約を解除して貰えばなんの問題も……」
「「……あれ?」」
私たちは一様にして同じ気づきを得る。
あの男がするべきは、契約して我々を回復したのち、“解除して全て元通りにする”こと。
このままでは……。
「マルティナ――」
「はい団長。」
一刻も早くあの男を見つけなくては――!
「「“筋肉の賢者”を探せ!」」
私たちが叫ぶと、騎士団員たちの大捜索が始まった。
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