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異世界筋肉〜筋トレがしたいだけなのに異世界が放っておいてくれない〜  作者: プロテイン長田
第8章「落とし前」

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第32話「逃走する筋肉」

## 第32話「逃走する筋肉」


### 【あらすじ】


 ユージVSマルティナの決着がうやむやなまま模擬戦は女神教の教皇の登場で中断となった。


 唐突にリネアを“勇者”とする宣言をする教皇。


 ユージたちが魔術派である教会に吸収されることを避けたいリディアはユージに逃走を促す。


 訓練施設の壁を自慢の怪力でぶち破り逃走すると、“闇の盗賊団”がなだれ込んできて……。


### 【本文】


「それじゃあ、今の状況を整理するか」


 私たちは騎士団の追跡を覚悟しスキル“カタボリック”を使用して獲得した超スピードで王都を逃走したが、存外追手はかからず人気のない酒場で卓を囲んでいる。


 この場所は人が少ないが、無人ではない。


 冒険者だろうか……?明らかに日陰者のような風貌の男が数名酒をあおっている。幸い、こちらに興味はないようだ。


「王都に出入りできるのは入ってきた時の大きな正門の一つだけね」


「流石に素通りってわけにはいかないよな」


「そうね。事の重大さ的に騎士団が張ってる可能性が高いわ」


「あ、あの。私の馬車もそこにいるんですけど……」


「ルノア、どうだった?」


「ん。ノエラのうま、げんき。」


「よ、よかったぁ……」


 やはり、今のところ我々を大々的に捜索していると言うことはなさそうだ。


 おそらく、入れ違いで訓練施設に雪崩れ込んで行った“闇の盗賊団”たちを第一に捜索しているからだと思うが……。


「それで?一個ずつ整理していきましょ」


 リネアが言う。


「まず、あの盗賊集団は何?」


「い、いやそれがな……実際のところルノアもよく知らないらしいんだ」


「ルノア、しゅぎょうしてきただけ」


「それがなんであんなことになるわけ?」


 リネアの言う通りだ。騎士団の施設に侵入していたことを考えればすでに襲撃が計画されていたと考えるのが自然だとは思うが……。


「あのハンクって人がその盗賊団の師匠ってのは確定なのよね?」


「ああ。それは間違いないはずだ」


「あ、頭が痛くなってきたわ。じゃあそのハンクが私たちの模擬戦に合わせて盗賊団の襲撃を手配したってわけ?」


「ていうか、そもそもなんでそんな奴が騎士団の用務員してるのよ?」


「お、俺に聞くなよ」


「マルティナさんたち、大丈夫でしょうか……」


 ノエラは心配そうに言う。


「それなら大丈夫よ。あの女が盗賊風情に遅れをとるなんて考えられないわ」


 周囲を見回すと、いつの間にか黒装束の男が酒場のカウンターについていた。しかし後ろを向いているため、人相まではわからない。


 ルノアとリネアは気づいているようだ。しかし、ここで騒ぎを起こすわけにもいかない。今はこのまま静かに話すしかあるまい。


「……で、リネアはこれからどういう扱いになるんだ?」


「私が聞きたいわよ……」


「そもそも勇者ってのは何なんだ?」


「ユージさん、知らないんですか?」


「ああ、コイツ色々その辺ワケありだから。この国とか国同士の情勢ほとんど知らないのよ」


「そ、そうなんですね……」


 さて、リネア、ノエラによるとこの世界には“勇者”と呼ばれる存在がいるらしい。


 国家レベルの権力者が誕生を宣言することで指名されるのだが、ただ宣言すれば良いというわけではなく、その者に勇者の素質がなければ成立しないらしい。


「私、そんな素質あると思う?」


「お、俺に聞かれても」

 

「まあ教皇の宣言から逃走したってことは、まだ正式に勇者ってわけじゃないわよね」


「それってやっぱり捜索されてると考えた方がいいよな?」


「さあ?どっちにしろアンタが“筋肉の賢者”様として狙われてるんだしそこはいいんじゃない?」


 そうだった――!色々起こりすぎて、もともと教会から狙われている身だということをすっかり忘れていた。


 酒場の外は静かだ。しかし一歩外に出れば誰がどこで我々を見ているかわからない。そんな状況だ。


「……模擬戦の件はどうなるんだろうな」


「あ!そうよ!最後のあれ!一体何がどうなって――」


 リネアが思い出したように追求してきたので、結界の中で起こっていたことを説明する。


「ふーん……自爆攻撃って、大した忠誠心ね」


 リネアはすこし安心した様子を見せる。


「それであのメイドを助けるのにかこつけて押し倒したと」


「ひ、人聞きが悪いな。不可抗力だ」


「まあいいわ。で、勝敗は付いてないってことね」


「まあ、そうなるか」


「それなら、今後も騎士団の干渉は避けられないでしょ。盗賊団との繋がりも疑われてるでしょうし」


「そうだよなぁ……」


 頭を抱える。その様子を見て、先ほどの黒装束の男は席を立った。


 コインをカウンターにパチンと置くと、わざわざ我々のテーブルを掠めるように出口へと向かう。


「我々は敵ではない。だが、味方でもない」


 男はそう言い残すと、酒場の外の夕暮れへ消えていった。


 ……闇の盗賊団は、我々をどう見ているのだろうか。


 我々が王都に来てから、今の今まで。ずっと監視されていたなんてことはないよな……。


 ――例えそうだとしても、遅かれ早かれ彼らとは再び接触しそうな気がする。


◇◇◇◇◇◇


 騎士団、教会、そして盗賊団。王都を抜け出すことは容易ではなさそうだ。


「ま、まあ!みんなの使命を果たすために行動するって目的は変わらないしな。とにかく今できることをやろう!」


 多少無理はあるが、空元気を出すくらいしかこの空気を変える方法が思いつかない。


「じゃ、とりあえずはお金をなんとかしなきゃね」


 リネアは冷静にそう言う。


「すみません、私、実家にもうお金送っちゃってて……」


「いやいや!それで謝る必要はないぞ。俺の筋トレと一緒でそれがノエラの使命だからな」


「やっぱり冒険者ギルドかしらね?私たちが手っ取り早く稼ぐなら」


 ノエラの馬車が自由に動かせなさそうな今、どうやら稼ぐにはそれしかないかもしれない。


 どうにかして冒険者ギルドの様子を確認しなければ。

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