第28話「ノエラvsカイル」
## 第28話「ノエラvsカイル」
### 【あらすじ】
ついに始まった模擬戦。
先鋒戦リネアVSリディア。
ユージの知らぬところで何やら因縁がありそうな二人。
勝負は危なげなくリディアが勝利した。
次はカイルがノエラを指名して条件付きの戦闘が始まる……。
### 【本文】
「しっかり三分計ってくれよ?」
カイルは肩に担ぐように立派な装飾のある大剣を構える。
一方ノエラは素朴なデザインの杖を構えている。
「あれ、ノエラってあんな杖持ってたか?」
彼女が持っている杖には見覚えがない。
この模擬戦のために用意したのだろうか。
「基本的に彼女のような魔術を主体に戦闘に参加するものはその魔術を拡張する魔術具を使用するのが一般的です」
そう言って近づいてきたのはマルティナだ。
「そ、そうなんですね」
「彼女が持っているのは私が以前使っていたものです。彼女にお譲りさせていただきました」
「えっ?いいんですか?」
「良いも何も。勝敗がどうあれあのままでは魔術師としてどうこうなる以前の問題ですから」
なんというか、本当にどういう感情で話しているのかが読めないなこの人は……。
「それでは……開始!」リディアの掛け声で勝負が始まる。
「それじゃあ遠慮なく行くぜ!!」
カイルがノエラに向けて突進する。
(すごい迫力だ――でも、あの程度なら私が訓練でノエラに向けた攻撃と大差ない。これなら大丈夫だ。)
「い、行きます!」
ノエラは自信を中心に防護の結界を展開する。
「うおおおおおおおお!」
カイルはその結界に真正面から斬りつけるが、結界はうまく攻撃を吸収している。
(す、すごい攻撃――!でも、ユージさんの脳筋アタックに比べたらなんともないです!)
の、脳筋アタック!?彼女は私の攻撃をそんなふうに考えていたのか……。
この水晶、戦闘中の二人が考えていることがわかるのは良いのだが知りたくないことまで知れてしまうようだ。
(クッ……正直訓練の様子を見いてた時からキツいかもと思っちゃいたが予想通りメチャクチャな防護結界だな)
カイルは元よりノエラの魔術を高く買っていたようだ。
(とはいえ、団長は論外としてこのお嬢さんにあの腹黒メイド、もしくは用務員のサイコジジイの相手をさせるわけにもいかねえしな――!)
一瞬、隣のマルティナがぴくりと反応した気がしたが、き、気のせいだろう。
この対戦カードの後、残ったのはマルティナと用務員のハンクという老人。
やはりカイルにここまで言わせるだけの強者なのだろう。
「やるな嬢ちゃん!だがまだ時間はたっぷりある!まだまだ行くぜ!」
そういうとカイルは再度突進し、今度は猛烈な連続攻撃を繰り出す。
(一撃のパワーに賭けてこの結界を突破するのは不可能だ。なら、手数で押すッ……!)
結界を目の前にベタ足で連撃するカイル。
(そ、そう来ますよね……連続した衝撃に晒された方が決壊の維持は難しい――)
ノエラはそう言いながらも果敢に結界魔術を維持している。
……一分ほど経っただろうか。
問題はカイルのこの勢いがどこまで続くかだ。
(クッ……!キツいなぁ……!なんでったって三分なんて設定にしちまったんだ俺は――!)
おや?なんだかいけそうな気配がしないか?
それに……なんだ?結界を維持しつつ、ノエラがジリジリとカイルに接近しているような……。
(カイルさんは攻撃に集中してる……。このまま攻撃を続けられたら三分持つかわからないし、“アレ“を狙うしか……)
“アレ“とはなんのことだ?
しかし、カイルの心理状況がわかるのは外野の私と恐らくマルティナだけ。
彼女の判断が功を奏することを祈るしかない。
「い、いけぇ!」
若干気の抜ける叫び声を出すノエラ。
その杖はカイルの方を向いており――
「な、なんだ!?」
凄まじい爆発が起こると、カイルは後方へ吹き飛ばされた。
◇◇◇◇◇◇
「あちゃ〜。折れちまったか」
カイルは爆発をなんとか大剣で防いだようだったが、その大剣は訓練用だからか衝撃に耐えられずポッキリ折れてしまったようだ。
「一本。ノエラ嬢の勝ちだな」
リディアが宣言する。
「や、やりました!」
無邪気に喜ぶノエラ。
「い、今のは一体……」
「ノエラさん。見事ものにしたようですね」
そう言うマルティナはどこか誇らしそうだ。
先ほどのリディアとリネアといい、ここ数日別行動が多かった間に一体何があったと言うのだろうか。
「ユージさん!私やりました!」
嬉しそうに戻ってきたノエラの様子は微笑ましい限りだが、今の攻撃については是非聞いておきたい。
「お、おう。お疲れ様。よくやったな。」
「はい!」
「それでだな……最後の爆発、あれは一体……」
「あ、そうですね。ユージさんにはまだ言っていませんでした」
ノエラはそう言うと、近くにいたマルティナを呼ぶ。
「いつも訓練が終わった後、こちらのマルティナさんが自主練に付き合ってくれていたんです」
「自主練……それであの攻撃魔術を?」
「はい!」
「そ、そうか……でもどうして――」
「こちらの陣営も団長が随分とお世話になっていたようなので」
マルティナが粛々と言う。
「お世話にって……」
いや、身に覚えがないわけではない。
訓練初日の夜、ついリディアと手合わせに熱が入ってしまったことを彼女が知っているなら――。
一方的なメリットの享受を不平等であると判断し、今回のような行動に出ると言うこともあり得る……のか?
「おおかた予想の通りです。それだけが理由ではありませんが」
な、何も言っていないのに彼女にはお見通しのようだ。
あの水晶といい、彼女は油断ならない。
「……そうでした。カイルさん?」
マルティナは思い出したようにカイルの方を向く。
「ん?なんだ?」
「団長と同じく私からも“お話“がありますので後ほど」
「……具合が悪くなってきた」
なるほど、あのカイルという男の騎士団での扱いがよくわかってきた。
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