第25話「ルノアと闇の盗賊団」
## 第25話「ルノアと闇の盗賊団」
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闇の盗賊団。
それは王国に、そして師に裏切られた者たちの集まりだ。
元々は師である奴隷冒険者ながらSランクに到達したハンクという男によって組織された戦闘奴隷による攻撃部隊。
当時まだ幼かった我々はハンクの暗殺術を叩き込まれ瞬く間に敵から恐れられる存在となった。
我々は戦いの中で成長し、多くの出会いと別れを経てついに王国の独立まで戦い抜いた。
しかし、王国が我々に課した運命は残酷なものだった。
新たな家族となった我々を再び奴隷として引き離すという王国の決断に我々は反旗を翻した。
その直後、ハンクは消えた。
我々は王国の追跡を逃れ、僻地に拠点を構えた。
師から見捨てられた私は与えられた名前を捨て“暗殺キング”を名乗った。
仲間からは反対されたが、私は家族を裏切った男からもらった名など名乗るつもりはない。
そうして組織のリーダーとなった私は、家族を養うために仕事を始めた。
暗殺は元より、盗賊行為や人攫いなど金になりそうなことは何でもやった。
そのうち闇の盗賊団と恐れられるようになった我々は再び王国騎士団から狙われる身となった。
しかし、黙って脅かされる我々ではない。
着々と騎士団襲撃計画を立て、偵察を送り様子を伺った。
◇◇◇◇◇◇
今日は騎士団訓練施設襲撃のために偵察に来ている。
噂ではあるが、ここには王国独立に一役買った伝説の兵士が用心棒として雇われていると聞いた。
ある予感がして私自らがここに来てみたはいいものの、特に何の変哲もない訓練施設のようだ。
早々に引き上げようとすると、思いもがけず何者かに捕捉されてしまった。
「おじさん、だれ」
その者は幼い獣人だった。
施設を囲う高い塀の上にいるということは騎士団の関係者……?
いや、この時間にこのような子供を出歩かせる理由はないはずだ。
では一体……。
「お、おじさんは仕事中なんだ。危ないから早くお家に帰りなさい」
「……おうち、ルノアのおうちもうない」
なんということだ。
この幼女は家無し……いや待て。
この暗闇の中でもわかる。この子の首元にあるのは奴隷であることを示す紋。
この子は逃走奴隷である可能性が高い、か。
おおよその事情は分かった。
この子が私の暗殺術を見抜き私を見つけ出したことの説明もつく。
間違いない。我々の師、ハンクはここにいる。
◇◇◇◇◇◇
「……なぜついてくる」
施設を撤収しアジトへ戻る道すがら、先ほどの少女は私の後をついてきていた。
「ルノア、つよくなりたい」
なるほど、察するにこの子はハンクによって暗殺術を叩き込まれたいわば我々の後輩であろう。
でなければこの私の移動速度や気配隠匿について来れるはずがない。
「なぜ強さを求める」
「ご主人様、きしだんとたたかう。ルノア、まけられない」
騎士団と戦う……!?ハンクは王国に下ったのではなく、騎士団の配下につくことで内部からその破壊を狙っているのか?
「そのご主人様とやらは強いのか?」
「ご主人様、とてもつよい。ルノアのびょうきもなおした」
ハンクは冷酷であるが、同時に仲間への慈悲深さもある。
間違いない。この子はハンクの新たな弟子……。
「わかった。君のご主人様とやらと我々は知らない仲ではない。ぜひその騎士団との戦い、協力させてくれ」
◇◇◇◇◇◇
「キング!誰ですかいその子は。人攫いはここ最近金にならねえですぜ」
アジトに戻ると数人の団員が集まってくる。
「まあ聞け。おそらくハンクの居場所がわかった。」
「ほ、ホントですかい!?」
団員たちが騒ぎ出す。
「静かにしろ。ハンクは我々を裏切ったわけではないようだ。騎士団内部に潜入し近々攻撃を仕掛けるらしい。まずは全員叩き起こせ」
私は騎士団の施設とこの子から得た情報を団員に伝える。
「それで……この嬢ちゃんがハンクさんの新しい弟子ってことですかい?」
「そのようだ。でなければ我々と同じ、門外不出の暗殺術スキルを持っている説明がつかん。我々の誰もこの子を知らないということは――」
「ハンクさん以外考えられねえってワケですね」
「……で、その騎士団と戦うってのはいつなんですかい?」
「わからん。その辺の事情は詳しく知らない様子だ」
「なんだかよくわからねえ子ですね」
「言っていても仕方あるまい。ハンクがこの子を騎士団から逃したのは我々にコンタクトを取らせ、この情報を伝えるためだ。もとよりあの騎士団施設は襲撃する予定だ。準備に取り掛かるぞ」
◇◇◇◇◇◇
「ッハァ!キング!この嬢ちゃんものすんげえ強いですぜ!!」
翌日の昼。
このハンクの弟子は、団員の中でも随一の使い手を簡単に捻ってしまった。
正直私とも全力でやり合ったらどうなるかわからないほどの逸材。
“強くなりたい”と言っていたがもうすでに完成形に近い実力があるではないか。
なるほど、ハンクがこの子を我々に接触させたことも納得できる。
「おいお前ら、この子のことはこれから“姫”と呼べ」
「ひ、姫ですかい……?」
「そうだ。何か問題があるか」
「い、いえ。まあキングがいいなら問題ないですぜ」
何か引っ掛かる物言いだが、力あるものにはそれ相応の名を与えるのがこの団のしきたりだ。
なぜか他の団員たちはその名前を使いたがらないが……。
「ルノア、ひめ?」
「ああそうだ。この団でこのような名を冠するのは名誉あることだぞ」
「ルノア、ひめ。とてもえらい」
彼女は気に入ってくれたようで何よりだ。
その後も近く訪れる決戦のために訓練に熱が入る。
姫もその暗殺術スキルを披露し、間違いなく団随一の使い手と言っていい実力を見せつけていた。
その、あまり喋らないが実直に訓練に打ち込む姿は、団員にも良い影響を与えているようだ。
そしてその日の翌朝……。
「……姫の姿が見当たりませんぜ」
彼女は忽然と姿を消した。
ハンクとの記憶が蘇る。しかし――
「あれ、キング。背中になんかついてやすぜ?」
い、いつの間に――。
その紙にはこう書いてあった
『ひめ、つよくなった。ありがとう』
彼女ほどの猛者がいれば、騎士団施設の一つや二つ容易く陥せるであろう。
それに今回はハンクが関わっている。
師との再会は我々団の念願でもある。師の裏切りが誤解であったのなら尚更だ。
「おいお前ら!決戦は明日だ!!気合い入れて準備しろ!」
団員は今までにない結束を見せている。
我々の未来を奪った王国に一矢報いるのだ。
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