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異世界筋肉〜筋トレがしたいだけなのに異世界が放っておいてくれない〜  作者: プロテイン長田
第6章「訓練」

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第23話「二人の剣士 リネア編」

## 第23話「二人の剣士 リネア編」


### 【本文】


 模擬戦に向けた訓練初日。


 私はアイツに攻撃を一度も当てることができなかった。


「こんだけ動けるってわかったのに釈然としないわね……」


 そう毒づきながら湯船に浸かる。


 騎士団の古くなった建物を宿舎として、大浴場は騎士団のものを使わせてもらっている。


「荒れているな。まあ、あれだけコテンパンにされれば無理もない」


 いつの間にか、騎士団長のリディアが隣にいた。


「い、いつの間に……」


「まあ良いじゃないか。女同士裸の付き合いといこう」


 この女はユージを自分たちの都合のいいように使おうとしている。


 それに私と戦う可能性だってあるというのに呑気なものだ。


「あんた、ユージの優しさにつけ込むのもいい加減にしなさいよね」


「おや、随分と敵対視されてしまっているようだ。彼を騎士団に誘った時もそうだったが、君たちは一体どういう関係なんだ?」


 どういう関係……?そう聞かれると少し困る。


「……仲間よ。」


「仲間……か。彼は危険を冒してまで騎士団の庇護を外れて何を成そうとしているんだ?」


「あんたには関係ないでしょ。どのみちすぐ関係なくなるんだから」


「そうはいかない。彼の動向はもはや騎士団にとっても無視できないんだ」


「そう。そっちも負ける気はないってことね」


「無論だ」


「どのみちユージと私はどうなろうが何も変わらないわ」


「どうだろうな。彼が騎士団に残る場合、君が引き続き彼の隣にいられるかはわからんぞ」


 この女、いちいち癪に触ることを言ってくるのはなんとかならないのだろうか。


「関係ないわよそんなの」


「ふむ、その根拠は?」



 ……この際わからせてしまった方がいいか。



「私とユージは契約で結ばれてるのよ。どうなっても一蓮托生。わかった?」


 私は首元の契約の証を見せる。


「……これは驚いたな」


 流石のリディアもこれには驚いたらしい。


 私のそれを見るとしばらく黙ったまま何かを考えているようだった。


「これはますます頑張らなくてはならないな」


 そう言うと彼女は立ち上がる。


 よく見てみると、腹立たしいぐらいのプロポーションを持つ彼女の姿に圧倒される。


「あんた、さっき入って来たばっかりじゃない」


「野暮用だ。気にするな」


 そう言うと大浴場から去っていく。


「なんなのよ全く……」


 静寂が戻った大浴場に一人。彼女と比べて貧相さが際立つ私の体を確認する。


「アイツもああいうスタイルの方が好きなのかしら」


 そんなことを考えた。


 でもあの女の言う通りだ。


 ユージが騎士団に残ることになったら。


 アイツに到底及ぶことのない実力の私が今まで通りの関係でいられるかはわからない。



 もしかするとアイツの隣にはあの女が――




「ああもう!考えてもしょうがないじゃない!」


 そう気合を入れ直した。


◇◇◇◇◇◇


 翌日の晩。


 あの女はまた私の入浴時間に合わせて現れた。


「――何か言いたいことがあるなら言ったら?」


「おおよその見当はついているだろう?皆まで言う必要もあるまい」


 やはりこの女は私を煽ることをやめる気は無いようだ。


「はあ……まあ、あんたが私より強いってのは認めるわ」


「おや、随分と簡単に負けを認めるのだな」


「負けってわけじゃないでしょ、模擬戦まではまだ時間あるんだし」


「……君は私と戦うつもりでいるのだな」


「どうだか。でもあんたもそのつもりなんじゃないの?」


「それについてはこちらもノーコメントだ」


 わざとらしい。


 こいつはユージを手に入れようとしている。


 私がそれを阻もうとしていることは分かりきっているはずだ。


「まあその時が来たら覚悟しておくことね」


「楽しみにしているよ」


 そう言うとリディアはまたすぐに大浴場を後にした。


「……あいつちゃんと風呂入ってるわよね?」


 そんな不安がよぎりながらも、明日は訓練の最終日。


 さらに気合が入る。何があっても負けるわけにはいかないのだ。


◇◇◇◇◇◇


 さらに翌日の晩。


 私は堂々とした気持ちで大浴場の湯に浸かっていた。


「今日は機嫌がよさそうで何よりだ」


「あんた、毎回私がくるのを待ってるわけ?私そっちの気はないけど」


「君もとても魅力的だが――彼には及ばないな」


「…………」


 とうとう隠す気がなくなったリディアに呆れる。


「彼に攻撃が通ったようで何よりだ」


「そうね。これであんたと同じ」


「同じなものか。少し小突いた程度で」


「いい加減その喧嘩買うわよ?」


「いいのか?」


 嘲るような態度が気に入らない。


 でも、決着は明日つく。


 それでまでは――


「……今日くらいはお互いゆっくりに湯に浸からない?」


「……それもそうだな」


 それ以降、私たちの間に会話は無く、ただ時間だけが過ぎていった。

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