第22話「筋肉と仲間、そして成長」
## 第22話「筋肉と仲間、そして成長」
### 【あらすじ】
訓練一日目の夜、リディアにボコボコにされてしまったユージ。
相手を超成長させてしまったことに危機感を覚えながらも二日目の訓練を行う……。
### 【本文】
訓練二日目の夜。
私は再び訓練場を訪れていた。
昨晩はリディアに乗せられ筋トレができなかったからだ。
「やあ、また会ったな」
しかし、この日もリディアは現れた。
「ど、どうも……」
「なんだ、随分と元気がないな」
そりゃあ、昨日あんだけボコボコにされれば元気に挨拶とはいかないだろう。
「どうかな?今日も手合わせと行こう」
リディアは挑発するような目線でこちらを見ている。
これも何らかのスキルなのだろうか?私の闘争本能とリンクするようにやる気がみなぎってくる。
「ちょ、ちょと待ってください!」
このままでは昨日と同じ轍を踏むだけだ!そう思いリディアを制止する。
「む、なんだ?君らしくない」
「えーっと……あ、そうだ」
言い訳を考えていなかったため、少々言い淀んでしまった。
「今日、リネアに怒られてしまったんですよ。『対戦相手に手の内を見せるなんてあんた馬鹿ぁ?』って」
少々の脚色が入ってはいるが、大筋は間違いない。
「あの剣士のお嬢さんか。彼女もかなりの使い手だったな」
きっとリディアにとっては格下なのだろう。その声色からは余裕が伺える。
「そうか……君と彼女は随分と信頼しあっているのだな」
そう言うリディアの目線に妙な違和感を覚える。
「私から言わせれば、年頃の男女が“そういう契約”を結ぶのは随分と大胆なことだと思うが……」
な、なんだって……?
「えーっと……“そういう契約”というのは?」
恐る恐る聞いてみる。
「とぼける必要はない。何せ本人から聞いたのだからな」
リネアさん――!?あまりそういうことは人に話さない方が良いのでは!?
「彼女の年齢であそこまで剣術の真髄に近づくとは何かあるとは思っていたが……まさか君とそのような関係だったとはな」
「リネアの強さと契約に何か関係が……?」
「その様子だと知らずに契約したのか……?全く――」
リディアは呆れた様子でこちらを見る。
「一蓮托生の契約は死のリスクを互いに負う代わりに、その戦闘能力を共有することができるのだぞ」
し、知らなかった。グラートの書物にそのようなことは書いていなかったはずだが……。
「ますます理解できん。そのメリットを知らずに契約を結ぶにはそれ相応の理由というのがあるはずだ」
「リネアから聞かなかったんですか?」
「ああ。彼女は話さなかったな」
それなら、私から話すことはやめておこう。
「……この話はここで終わりにしましょう。語るほどの話じゃありません」
彼女の過去は、決して気楽に語れるものではない。
「ほう、そうなのか。では――」
リディアはそこまで言うと、
珍しく少し動揺したようなそぶりを見せる。
「――私ともその契約を結ばないか?」
「……え?」
「リネア嬢と契約した理由はたいした事ではないのだろう?」
「い、いやいやいや!先ほどご自分でこの契約はおいそれと結ぶもんじゃ無いって――」
「君と私の間にこの契約が成れば、もはやこの国に、いや、この大陸に敵などいなくなるだろう」
な、なんと大胆不敵な――これ以上私が国のゴタゴタに巻き込まれるのはゴメンである。
ここは丁重にお断りせねば……。
「光栄な話ではありますが、我々は模擬戦に勝ってここを出るつもりなので」
「……ここに残るのはそんなに嫌か?」
「嫌という訳ではありません。ただ、我々にはやらなくてはいけないことがあるので」
「そうか」
リディアはそう言うと、少し悲しそうな表情を見せる。
「わかった。模擬戦を楽しみにしているよ」
そう言ってリディアは訓練場を去っていった。
今日のワークアウトは、胸に何かがつっかえたような感じがしてあまり集中できなかった。
◇◇◇◇◇◇
「おりゃぁぁぁっ!」
「っ――!」
翌日。
今日が最後の訓練日。
遂にリネアの剣が私の緊急回避を打ち破った。
「あ、当たった……?」
「おお!今のはすごかったな!」
軽く小突いた程度ではあるが、今まで一度も通らなかった攻撃が通じたのは事実。
「これって、少しでもあの団長に近づけてるってことよね!」
興奮するリネアの様子はとても微笑ましい。
「そうだな!これで模擬戦も――」
そう言った瞬間。危機察知が何かを感じ取る。
(何か来る――!)
直後。私の腹部に鈍い衝撃が走る。
「ぐ……な、何なんだ……?」
両手で握った何かが腹部に押し付けられている。
それは恐らく――短剣の類だ。
「ユージ!」
リネアが叫ぶ。
その直後、襲撃してきた黒い影はものすごいスピードで姿を消す。
「ユージさん!そんな……!」
ノエラも血相を変えて駆け寄ってくる。
「い、一体どうなって……」
反射的に腹部を抑えていた手を離す。
「よかった……刺さってはないみたいだ」
相手の攻撃は確実に腹部を捉えていたが、外傷は見られない。
「二人とも気を抜くなよ!」
再度の攻撃に備え周囲を警戒する。しかし、その緊張はすぐに解かれることとなる。
「いてっ!」
後頭部を何かに小突かれたような感覚。
直後目の前に現れたのはルノアだった。
「ご主人様、ゆだん、いのちとり」
謎の襲撃者の正体はここ丸一日姿が見えなかったルノアだった。
◇◇◇◇◇◇
「それで……その“闇の盗賊団”って人たちのところに居たのか?」
「ん。ルノア、つよいって」
ルノアは騎士団施設に侵入しようとしていた“闇の盗賊団”とやらと会い、その首領である“暗殺キング”という人物と接触していたらしい。
「いやいやいや!それって結構やばいんじゃないか?騎士団に侵入って――」
またものすごく厄介な問題に首を突っ込んんでしまっていそうな気がするが、ルノアはそれ以上の情報を何も持っていなかった。
「ま、まあ特に何の被害も出てないみたいだし、今のところはこのままそっとしておけば良いんじゃない?」
リネアはそう言いながらも、ルノアの自由奔放さに面食らっているようだ。
「ていうか、普通にあんたのこと攻撃してたけど」
……確かに。
危機察知で何とか攻撃の気配を感じることはできたが、緊急回避スキルを持ってしても避け切ることができなかったようだ。
「これぞ、あんさつのごくい」
ルノアはそういうと、エッヘンと自慢げな様子を見せる。
その姿は大変可愛らしいが、いかんせん内容が物騒なだけに笑えない。
「ま、まあとにかく!訓練成果は上々ってことだな」
明日は運命の決戦。必ず勝利するぞ!
◇◇◇◇◇◇
その日の晩。
リディアは訓練場に現れなかった。
私も、明日のために早めにワークアウトを切り上げた。
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