第19話「一方その頃騎士団では」
## 第19話「一方その頃騎士団では」
### 【本文】
「団長。トレヴィルの詰所から連絡です」
「……なんだこれは」
「イシュルドが賊を征伐するために向かっていると」
「それは見ればわかる。なぜ奴はそんなことを?」
「話によれば“筋肉の賢者”絡みと」
「前日報告にあった者か」
「はい。なんでも、教会とは無関係で女神の祝福によって与えられるスキルが使えるとか」
「教会は?」
「問題視しているようです」
「面倒なことになったな……奴がこの一件を収めればまた教会がこちらに言いがかりをつけてくるやもしれん」
「どうされますか?」
「もとよりトレヴィルは奴の管轄外。それに、奴が最初に動き出していることもきな臭い。私が行こう」
「ご武運を」
◇◇◇◇◇◇
「イシュルドの処遇は?」
「王国上層部によって今回は第三隊の任を解くことで決着しました」
「そうか。しかし、そのような会議に団長である私が出席できんとはな……」
「王国の政治も不安定な状態が続いています。保守派に担ぎ上げられているあなたがそう簡単に顔を出すわけにもいきません」
「わかっている。それで、例の男は?」
「調査の結果、なにやらちょっとした器具を作るために屑鉄を集めていたようです」
「イシュルドは嵌められたわけか――」
「しかし奇妙なのはイシュルドに『トレヴィルに賊あり』と情報を流した者の足取りがつかめないことです」
「今回の結果を見るに、我々の敵対勢力ではないだろう。イシュルドの台頭は魔術派の連中からしたら都合が良かったはずだ」
「我々もその存在に踊らされた形になりますかね」
「そうだな。それに、あの男もそうだろう」
「あの男……ですか。そもそもイシュルドと素手で渡り合うというのは可能なのでしょうか?」
「それに関してはこれからわかることだ。彼を王都に呼ぶ。“手筈”を整えるぞ」
◇◇◇◇◇◇
「団長、残念でしたね」
「なんの話だ」
「そんなにあの男に騎士団に入って欲しかったんですか?」
「――そのように見えるか?」
「はい。それはもうしょんぼり団長です」
「妙な言い方をするな。それに、模擬戦で勝てば奴はここに残る」
「ほらやっぱり。団長がここまで固執するのって珍しいですよ」
「いい加減にしないか……」
「まあ、団長が負けるとは思っていませんから。それに、精鋭部隊の皆さんも」
「他人事だな。お前も戦うんだぞ?」
「え、ええ!?」
(もし我々を倒すようなことがあれば、彼らは我々の庇護などなくても魔術派を簡単に打ち破ってしまうかもな。彼にはそんな可能性を感じずには……)
「団長、乙女の顔になってますよ」
「ええい!うるさい!」
(団長に……ついに春が……!)
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