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異世界筋肉〜筋トレがしたいだけなのに異世界が放っておいてくれない〜  作者: プロテイン長田
第25章「聖統国決戦」前編

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第120話「筋肉と信仰と商業の街」

## 第120話「筋肉と信仰と商業の街」


### 【あらすじ】


 再び聖座宮を目指し始めた一行は、道中でオークの大群に遭遇する。


 モンスターたちが向かった先はリグネリアという街だった。オークの大群になす術がない戦場を救ったのは……。


### 【本文】


「本当に助かった!あんたたちが来てくれなかったらどうなっていたことか……」


 結果的に我々が向かったのは良い判断だった。


 目的と直接関係はないが、ひょっとしたら加勢がなければこの街は……いや、考えるのはやめよう。


「あの馬車……もしかしてパンデム商会か?」


 戦いに参加していた冒険者の一人が言う。


「え?あ、あぁはい。そうです」


「そうか……やっぱり国をまたにかける商売してる奴らは強いんだな」


 冒険者はまじまじと私を見た。


「その大剣、とんでもない代物だな」


 その冒険者の言葉で、周りの人たちがどんどん集まってくる。


「その紫の石は魔水晶だよな……?」


「魔術師の子が何か魔術をかけていたように見えたが……」


 口々に色々と聞いてくる。


 その背後では……戦いで傷ついた人たちを回復するノエラと、フードを深く被ったままの僧侶の女性。


 中には手遅れだったのか、そのまま運ばれていく人も見える。


 この惨状は、リューネ村の一件を思い出す。


「あ、はい……この剣には魔水晶が埋め込まれています。魔術をかけることで、色々できるんですよ」


 そんなこんなでしばらくみんなの質問に答えながら、タイミングを伺って、気になることを聞いてみる。


「……それで、すみません、あそこで治療をしてる女性は――」


「あぁ、“癒しの女神様”だ。彼女もいてくれて助かった。彼女がいなけりゃあんたたちが到着する前に全滅だった」


 “癒しの女神”……。


 少しだけ、嫌な予感がした。


 その直後、治療にひと段落ついたのか、こちらの話題に気づいたのか、その女性はこちらに近づいてきた。


「…………」


 女性はまじまじとこちらを見ている……気がする。


「あなた……」


「は、はい」


「…………ありがとう。あなたたちがいなかったら、この街はオークに蹂躙されていた」


 その女性は深々と頭を下げた。


「いえいえそんな……ただの通りがかりです」


「でも……」


「でも?」


 女性は少し何かを考えた後続ける。


「すぐに、この国を出た方がいいわ。なるべく早く、穏便に」


「……理由を聞いてもいいですか?」


「詮索もだめ。とにかく、この国を出て」


 女性はキッパリとそう言う。


 ――やはり、この人は何か知っている。


 続けて質問しようとしたが、その女性は逃げるように去っていく。


 その去り際に――


「警告は、したわよ。お願いだから従って――」


「命の恩人に、死んでほしくない」


「えっ……?」


 最後のほうは何を言ってるのか聞こえなかったが……何か不穏な空気が漂う。


◇◇◇◇◇◇


 その後、我々はオークから守ったこの街、リグネリアの歓迎を受けた。


 やはりここでもパンデム商会は景気の良い買い手として認知されており、情報収集にも大いに役立ってくれた。


「……で、あの女の人がそんなに気になるわけ?」


 日が傾きつつある夕方、とある酒場で我々は作戦会議を行なっている。


「ああ。おそらく、俺たちの目的に関係しているはずだ……いや、はっきり言って――」


「ユージさんの予想、私も同じことを考えていると思います」


「おさかな、おいしい」


「ノエラ、説明してくれ。ルノアは足りなかったら追加で頼んで良いからな」


「ご主人様、ふとっぱら」


「……あの人の治療、回復魔術じゃなかったんです」


「…………やっぱりそうか」


「それって――」


「はい。ユージさんから聞いた“転生勇者”レイナさんのスキル、回復系ですよね?それもとびきり強力な」


「ああ。そのはずだ」


「――限りなく、それに近いものだと思います」


「そ、それじゃ、あの女が転生勇者だってわけ?どうしてそんな奴がこんな街で――」


「何か事情がありそうだな。それに、素性は隠してるみたいだった」


「もぐもぐもぐもぐ」


「ルノア、食べながら喋るのはやめなさい」


「もぐもぐ」(わかった)


「とにかく、その線で捜査をしよう。ここで出会えたとしたらかなり大きい。ルノア、食べ終わったらその女の人について調べられるか?まだ近くにいると思うんだが……」


「もぐもぐ」(りょうかい)


「おう。助かる」


「な、なんでわかるのよ……」


「それで、私たちはどうしましょうか?」


「引き続きパンデム商会として情報収集しよう。“三神”、転生勇者たちと聖座宮について、なるべく多くのことを知っておきたい」


 その後、ルノアと二手に分かれて調査に向かう。


 ルノアが戻ってきたのは夜になってからだった。


 街を出たというその女性。人目につかないところまで移動してから、“転移魔術”でどこかに消えたそうだ。


 やはり、それもこちらが持っている転生勇者の情報と合致する。


 リディアが目撃した転生勇者の“転移”。


 私の予想が正しければ、彼女はまずい状況にあるかもしれない。


 少なくともあの女神が聖統国についているのは確実。


 その国で、国民から“女神”のつく名前で呼ばれる彼女は――


◇◇◇◇◇◇


 我々の調査の結果、“癒しの女神”はこの聖統国の様々な村、街、集落に現れる。


 無償で病を治し、傷を癒す。


 時には高級な回復薬や調合された薬草も配っているらしい。


 そんな彼女についた異名が“癒しの女神”。


 “三神”が遣わせた使者であるという説が主流らしいが、誰もその正体は知らない。


 その信仰にも似た彼女の名声を、女神はどう捉えているのだろうか。


 もし、王国での筋肉の賢者に対するような対抗心があるなら――


 もし、彼女が転生勇者“レイナ”本人だとしたら――


 急がなくては、手遅れになるかもしれない。


 少し休んで、すぐに出発しなくては。

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