表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界筋肉〜筋トレがしたいだけなのに異世界が放っておいてくれない〜  作者: プロテイン長田
第24章「国境へ」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
113/144

第113話「隣国アスレイド聖統国3」

## 第113話「隣国アスレイド聖統国3」


### 【あらすじ】


 グラシオン王国からの亡命者が訪れたアスレイド聖統国の聖座宮。


 王国がモンスター襲撃事件を乗り越え、国力を増大させていることを知った翌朝。聖座宮に“女神教教皇が暗殺された”と言う知らせが届く。


### 【本文】


「全く正気とは思えないね」


 王国に送った密偵から信じがたい王国の現状を知った翌朝、聖座宮に届いた教皇暗殺の知らせ。その驚愕の出来事が起きたタイミングを考えると、この王国からの亡命者が用意したと言う“素敵なイベント”であることは明白だった。


「君、女神教の人じゃなかったっけ?教皇を殺して、何のメリットが――」


 ユウマは跪拝する亡命者の女性に淡々と聞く。


「これで、女神教は聖統国のものです」


「……なにバカなこと言ってんだ」


 “三神の間”に据えられた三つの玉座、ユウマの横に座るコウキが呆れた様子で言う。


「教皇が殺されたってことは、後を継ぐ人が王国から出るのが自然よね?」


 コウキの反対側にはレイナが座っている。


「いえ、もはや王国には女神教を支えようという人間は残っておりません。この私、“セラフィア”を除いて――」


「ふーん」


 ユウマは興味深そうにセラフィアを見る。


「君、ただものじゃないね」


 セラフィアは黙って跪拝を続ける。


「おいおい!ユウマ、まさかこいつの言うこと信じるってワケはねえよな?」


「どうだろうね。でも現に教皇は死んだ。僕たちの国の密偵が確認したんだ。これは間違いないよね」


「で、でもよ――」


「とりあえずさ、君は何がしたいんだい?」


 ユウマは依然、淡々とセラフィアに尋ねる。


「…………信仰を守るためです」


 三神は黙ってセラフィアの言葉を待つ。


「王国での信仰は、先日お伝えした“筋肉の賢者”によって奪われました。


「……利害は一致してるってことね」


「それじゃ、君は何をしてくれるのかな?誠意は伝わったよ。なんせ教皇を殺したんだから」


「ご慈悲に感謝します。誠に勝手ながら――これを暗殺の現場に残させました」


 セラフィアは聖統国の三神を崇めるものたちが持つ“三神の紋章”を差し出した。


「な、なんと横暴な!」


 それをみた国営補佐官の男が叫ぶ。


「うるさいなぁ……少し静かにして」


 ユウマは厄介そうに手でなだめる仕草を飛ばす。


「……僕たちが王国と戦争したがってるの、知ってるんだ」


 セラフィアは静かに頷く。


「どこから漏れたんだろうね?このことはほとんどの人が知らないはずなんだけど」


 ユウマの目つきが変わる。恐ろしく冷たい、支配者の目だ。


「まあいいや、協力的な人が知ってる分には、ね」


「おいユウマ、これって――」


「王国は怒ってるだろうね。今すぐにでも宣戦布告が飛んできてもおかしくない」


「そうはなりません」


 セラフィアはそう言ってみせる。


「……どうして?」


「“筋肉の賢者”がいるからです。あの男は戦争を止めるために動くはず」


「へえ。変な名前だけど賢者っていうだけのことはあるね。立派じゃないか」


 ユウマは少し考えた後続ける。


「それで、昨日の話につながるってわけかな?」


「ご明察でございます」


 セラフィアは再び深々と頭を下げる。


「……『筋肉の賢者とその一行を消せば、聖統国が王国に遅れをとることはない』って話だったよね」


「……相手はSSランクモンスターも物ともしないやつらよユウマ。冷静に考えてね」


「そうだね……そんな奴らが軍を従えて来るなら、こちらも相応のお出迎えをしないとだ」


 ユウマは国営補佐官の男に手で合図を送る。


「国境の警備を強化しておいて。それっぽいのが来たら教えてよ」


「はっ。それで……この女性は――」


「もしこれで王国との戦争が始まって僕らが勝てるようなことがあれば、セラフィアは勝利の“女神”だ。聖座宮のいい部屋をあてがってあげてよ」


「し、しかし――」


「僕もバカじゃない。監視はつけてね。今日の話に少しでも嘘があったり妙な真似をしたらすぐ殺しちゃっていいから」


 ユウマはサラッと言った。


「は、はい。承知いたしました」


「ユウマ様のご慧眼とそのお慈悲に感謝を」


 セラフィアが国営補佐官の男に連れられ、“三神の間”を退出する。


「……ユウマ」


 レイナは心配そうにユウマを見る。


「大丈夫だよ、レイナ。遅かれ早かれ、僕らは戦争をしないとこの世界に閉じ込められたままだ」


 ユウマはまっすぐ前を見たまま続ける。


「筋肉の賢者ね、上等じゃないか。ほんとにそんな奴らが現れたら、まずはコウキに任せるよ」


「あ、ああ。もちろんだ。異世界人如き、俺の“処刑の剣”でぶった斬ってやる」


「レイナもついていってあげてね」


「……うん」


「おいユウマ!だから前のは異常事態だったって――」


 三人はまだ、来るべき脅威に気づいていない。


 これは国家間だけではなく、“神々の代理戦争”であるということも。


 運命は、静かに動き出している。


◇◇◇◇◇◇


「あ〜もう!なんで私が人間なんかにペコペコしなきゃなんないわけ!?」


 聖座宮の一室、上等な調度品が揃えられた絢爛な部屋に案内されたセラフィアは盛大に愚痴っている。


「おっと……監視はされてるんだった静かにしないとって言っても――」


「ちょーっと爺さん使って筋肉ダルマを殺そうとしただけじゃん!なんで追放なんて……厳しすぎなんですけど!」


 セラフィアは豪華なベッドの上でジタバタしている。


「あのジジイが失敗したおかげで王国は使い物になんなくなっちゃったし……これって普通に激ヤバなんですけど」


「……ってことで、次は転生勇者ちゃんってわけ」


「私を差し置いて“神”を名乗ったのは万死に値するけど……いまは利用価値があるから許してあげようね」


「それにしてもあのユウマって子、ちょろかったな〜」


「これでいい感じに筋肉バカを誘い出して、殺してくれたら用済みだからね!あとは入り込むなり始末するなりでこの聖統国で信仰を集め直せばオールオッケー!」


「戦争に勝てば“勝利の女神”だってさwちょろすぎ!なんか可愛く思えてきたかも!」


 セラフィア、もとい女神は考える。


 筋肉の賢者を殺し、女神教を再建する。この采配は天才的だと。


 しかし、この女神の行動こそが奇妙にユージを聖統国に引き寄せ、誰も予想しなかった結末を迎えることとなる。

毎日20:00更新中!ブックマーク・評価いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ