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異世界筋肉〜筋トレがしたいだけなのに異世界が放っておいてくれない〜  作者: プロテイン長田
第23章「戦いの始まり」

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第105話「筋肉と伝説の片割れ」

## 第105話「筋肉と伝説の片割れ」


### 【あらすじ】


 パンデム商会の接触を見事“プロテイン”でかわしたユージ。


 こちらが知りたい情報というのも近く届くとのこと。


 口止め料としてギルデスからもらった大剣の訓練にいそしむユージだったが……。


### 【本文】


 パンデム商会本部での攻防からしばらく経った。


 今となっては王都のどの店に行っても“パンデム商会のプロテイン”が買えるようになっていた。とんでもない商品展開能力だな……。


 幸い、監修の甲斐あって自然由来の健康的なフレーバー展開が実現している。


「ノエラ、どうだ?」


「う〜ん、やっぱり“左右均等に”っていうのが難しいですね……」


 拠点の大広間に設置した筋トレ器具に座った私と、その横で杖を構えるノエラ。


 ギルデスからもらった大剣“グラヴィス・ブレイド”の本領を発揮させるために始めたノエラの重力魔術“グラビティ”の特訓。


 ノエラは見事ものにしてみせたが、筋トレに流用するための、左右ダンベルを均等に重くするというのは難しいようだ。


「単一の物質に対してなら、左右のバランス取る必要ないんですけどね……」


 ノエラのその一言であることに気づく。


「そうか、バーベルがあれば解決するのか」


「よ、よくわからないですけど、今は単純に“同一魔術を同時かつ複数の対象に”かけている状態ですからね……自分でもなんでできているのかわからないです」


 やはり“マッスルメモリー”と“賢者の合トレ”の効果でノエラの魔術はメキメキ上達しているらしい。


「とりあえず、今日はこの辺にしておこうか」


「は、はい。お疲れ様です!」


 最近はめっきりノエラとのトレーニングが日課になっていた。


「あ、そうだ。プロテイン切れてたんだったな」


 トレーニングを終えて気づく。


「え!?あの定期的に送られてくるやつ、無くなっちゃったんですか?結構量ありますよね?」


 考案者ということで定期的に拠点に送られてくるプロテインの袋。まあまあな量があったが、リネア、リディア、最近ではルノアも飲んでいるので次の定期便が来る前に無くなってしまったのだ。


「ちょっとユージ?プロテインが無くなってるみたいなんだけど――」


 そんなことを話していたら、ちょうどリネアも同じことを思っていたようだ。


◇◇◇◇◇◇


『入荷!ストロベリー味』

『筋肉の賢者おすすめ!柑橘フレーバー登場!!』

『賢者の椅子、設置店舗』

『全フレーバー、飲み比べやってます』


「……改めて見るとすごいわね」


 トレーニング後のお昼下がり、リネアと一緒にプロテインを買いに来ていた。


 王都の商業区の多くの店が、プロテインの取り扱いとトレーニング設備を店先で宣伝している。


「賢者様!ぜひうちでトレーニングしていってくれよ!」


 とある店から声が聞こえる。


「すみません、今日はもうトレーニングしてしまったんですよ」


「そうか〜!そりゃ残念だ!夫婦水入らずのところ悪いな!」


 こんなやりとりも珍しくない。


「……で?どこで買うのよ?」


 リネアは恥ずかしそうに言う。


「ここまで有名になっちゃうと逆に気軽に店に入りづらいよな……ちょっと外れまで行くか」


 そんなこんなで大通りではなく、少し離れた場所にあるやや寂れた店舗に到着した。


「……ここにするか?」


「いいんじゃない?いい感じに人気なさそうで」


 ということで、やってるんだかやってないんだかわからない店の戸に手をかける。


「それにしても、『雑貨屋』ってだけの看板って……シンプルすぎない?」


「そうだな。なんかどっかで見たような――」


 扉を開けながら言う。そして思い出した。この既視感は――


「おや、お客さんとは珍しいですね――」


 店の中にいた男と目が合う。


 いや、厳密にはその男、サングラスをかけているので目があったかはわからないが――


「……これはこれは筋肉の賢者様」


「お前、グラートか……?」


 今、一番事情を聞きたい男が、そこにはいた。


◇◇◇◇◇◇


「遅かれ早かれ再会するとは思っていましたが、まさかこのような形とは……いやはや運命とは数奇なものですね」


 グラートは慣れた手つきで「本日休業」の看板を出すと、我々に簡単な飲み物を振る舞った。


「私はこの“マッチャ味”がお気に入りでしてね。苦味の中にある上品な味わいがクセに――」


(プロテインが出てきた……)


 客人に出す飲料にまで進出しているのは些かやりすぎな気もするが――


 しかし“マッチャ味”か……渋いところを出してきたな。これは“隠鱗亭”のレヴィンさんと共同開発したフレーバーだが……相変わらず日本文化に詳しいレヴィンさんのおかげで実現した味だ。


「それで……今日はどのような用向きで?」


「いや……本当はプロテインを買いに来ただけだったんだが」


「なるほど、目立つのを避けてこんな辺鄙なところまで」


 グラートに焦った様子はない。


「感動の再会とはいきませんが……リネアさん――」


 グラートに呼ばれてリネアがビクリと反応する。


 セリオと同じくグラートにはトレヴィルでお世話になったであろうリネア。彼もまた、彼女に偽りの姿を見せていた可能性が高い。それを恐れているのだろう。


「お元気そうで何よりです。ルノアさんもお元気ですか?」


「……え?」


 予想外の声掛けだったのか、リネアは顔を上げる。


「そのご様子ですと、セリオに会ったのですね」


「は、はい……」


「何を言われたのかはあえて聞きませんが……やはり賛同しかねますね。目的のためとはいえこのように無関係のものまで巻き込むのは……」


 な、なんだ?予想とは全く違う反応だ。グラートはセリオたちのやり方に反対なのか?


「な、なあ。めちゃくちゃ聞きたいことがたくさんあるんだが……」


「そうでしょうね。お答えできる範囲でお答えしますよ」


 ――期せずして、ものすごい情報収集のチャンスが訪れた。


◇◇◇◇◇◇


「改めて……このグラート、伝説の勇者パーティーの剣士。何なりとご質問ください」


 逃げも隠れもしないと言う様子のグラート。雑貨屋のカウンターを挟んで、リネアと私が対峙する。


「じゃあまず……どうしてあんたたちは生きながら“伝説”として扱われてるんだ?まるでもうこの世には存在しないみたいに――」


「そうですね……もう惜しいところまで予想できていると思っておりますが」


「……魔術とかで出来事それ自体を捻じ曲げたんじゃないかって予想はした。だがそれは不可能だと――」


「“魔術”では無理ですね」


「あとは……コウキとレイナとかいう“転生勇者”が持っているらしい“チートスキル”なんかも疑ったが――」


 そう言うと、グラートは「フフフ……」と不敵に笑った。


「もうほとんど正解に辿り着いてるじゃないですか?」


「いや、その二人ともそんな離れ技ができるスキルじゃ――」


「どうして、転生勇者は“二人だけ”だと?」


「「……え?」」


 グラートの言葉に、リネアも反応する。


「聖統国の転生勇者……国内で“三神”と崇められる彼らはコウキ、レイナと――」


 グラートのサングラスが店内の照明を反射してきらりと光った。


「ユウマの三人です」

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