第15話、『ナ○スは嫌いなのです!』(後編)
「──ええっ、皇族であられながら、現在軍籍におられるですって⁉」
てっきりブリトン連合王国首相のチャッチルの『付き人』程度であろうと高をくくっていた、鬼人族の貧相な若者が、実は旭光帝国の現皇帝の実の弟君であられることを聞き及んで、びっくり仰天したところ、更なる追い打ちの言葉に、もはや完全に思考が追いつかなくなってしまう、ガリア大陸の魔族国家スワスチカ第三帝国の、中東アジア産油国亜蘭赴任中の駐在武官殿であった。
「外交官のくせに、知らなかったのかい、うちの国では皇子が軍の先頭に立って戦うのは、古くからの伝統なんだぜ? ……まあ、一応現在のところ『参謀長』として、作戦立案や他国との交渉なんかが、主な仕事だけどな」
「……ああ、参謀ですか。だったら、安全ですね」
「──おいおい、まさか貴殿はこのお方を、単なる『お飾り』とでも思っているんじゃないだろうな?」
「チャッチル首相?」
「話を戻すが、どうして我々ブリトンやシロクマが、本来はスワスチカ同様に敵対関係にある旭光と、同盟を結ぶことになったと思うのだ?」
「……そ、それはもちろん、旭光が我々スワスチカと戦うことを選んだからだろうが?」
「結果的にはそうだが、問題は、そこに至るまでの、『理由』のほうなのだよ」
「理由って……」
「ただ単にスワスチカと宣戦布告したくらいでは、我々が旭光を味方に引き入れるメリットは、それほど大きくは無い。何せすでに我がブリトンとシロクマが手を結んでいるんだ、現時点においても我々だけで十分に、スワスチカを倒すことができるだろう」
「むっ、残念ながら、いかな我が第三帝国といえども、ブリテンとシロクマとの両方に戦線を設けるのは、かなり厳しいことであるのは、認めざるを得ないな」
「しかし偽殿は、我々に更なるメリットをもたらしてくださることを、こちらとしても納得のいく非常に適切なる方策でもって、約束してくだされたのだ」
「ブリトンやエスカルゴの植民地解放に、熊猫民国への侵出が、貴君らにもメリットがある、的確な方策だと?」
「ガリア大陸で君たちスワスチカと全力で闘っている最中にあって、グレート・イースト・エイジアにおける、我が国を始め、すでにスワスチカに敗れてしまっているエスカルゴ共和国やオレンジ王国等の、植民地の面倒まで見切れない状態において、旭光に『進駐』していただいて、第三帝国シンパの反乱分子を抑えてもらったら、非常に助かるのだよ」
「──なっ、自らの植民地を、旭光に明け渡すというのか⁉」
「おいおい、聞いていなかったのかね? あくまでも『進駐』だよ」
「しかし、事実上、旭光の支配下になってしまうのではないのか⁉」
「それも致し方ないことだ。何せすでにエスカルゴの植民地においては、スワスチカ側の『美人政府』勢力が主流派となっているしね。ここは是非とも旭光軍に、『秩序を回復』していただこうという次第なのさ」
「そんなことを言っていて、『民族独立』を掲げる旭光軍の策略で、原住民が武装蜂起することによって、支配権を奪われてしまうんじゃないのか⁉」
「──ああ、別にそれでも、構わないさ」
「……………………へ? ちょ、ちょっと、そんな馬鹿な⁉」
「君たちのように、『何が何でも☆魔族が一番』で、他の民族を弾圧し、他国を侵略し、世界そのものを支配しようとしている、レイシストかつ軍国主義者にはわからないと思うが、我々が望んでいるのはあくまでも、『安定』なのだよ? グレート・イースト・エイジアにおいても、旭光だろうが熊猫民国だろうが、その領域の情勢を安定させてくれさえすれば、どこの勢力が支配しようとも、構いやしないのさ。我々ガリアの宗主国だって、これからも植民地で圧政をし続けて、反目されて武装蜂起されるよりも、後々まで友好的な関係を維持したまま、穏便に独立してもらったほうが、よほど利益があるのだよ。これはエイジア大陸東部においても同様で、そもそも熊猫民国自体がしっかりしてくれていたら、何も問題は無かったのだが、あそこはすでに『腐敗』し過ぎている。このままではいつまでたっても、泥沼の内戦を続けるばかりだろう。そこで一時的にも、旭光に『管理』してもらうと、非常に助かるのさ」
「自国で『支配』するよりも、他国に『安定』してもらったほうが、結局は都合がいいだと⁉」
「まあ、本国以外にろくに植民地を持たないスワスチカにはわからんだろうが、植民地支配においても、『コスト』というものはかかるのだよ。しかも、莫大にな? それよりも、ちゃんと友好的な交易が可能で、必要なものが手には入ると言うのなら、他の国に管理してもらうのも、十分メリットがあるわけだよ」
「だったら、君たちの代わりにコストを背負うことになる、旭光のメリットは、一体何なのだ⁉」
「そりゃあ、現在の植民地の原住民たちを独立させて、己がリーダーになることさ。──そもそも、旭光の『グレート・イースト・エイジア共栄圏』のお題目は、『民族自決』と『万民平等』だからな」
「……あ」
「それに忘れてもらっちゃ困るが、現在の熊猫民国の『軍事的後ろ盾』は、他ならぬ君たちスワスチカ第三帝国だろうが? 旭光軍が、懲戒石総統が支配する熊猫民国に、『侵出』する大義名分は、十分あるわけなのさ」
「あ、あれ、こうして一から十まで詳しく理由を聞いてみれば、確かに今回の旭光の我が国への宣戦布告は、あらゆる面で理に適っているではないか⁉」
「どうだ、大したものだろう? それこそが、我らブリトンとシロクマの両国が、参謀長殿に惚れ込んだ、最大の理由だからな」
「──ぐう、まさか旭光の皇族が、これほどまでに知謀に長けたお方であられたとは⁉ なぜ我らスワスチカとは、同盟を結んでくだされなかったのですか⁉」
「それは何度も言うようにどう考えても、あんたらの国と組むのは、『負けフラグ』に他ならないからだよ」
「そんなことは、ありますまい! たとえ敵軍が、どんなに優秀で物量が豊富であろうとも、我が国の超高度な科学力と、参謀長殿の卓越した策略があれば、けして勝利も不可能では無いはずです!」
「……うう〜ん、そうは言っても、『うちの世界』では、ドイツが敗北するのは、お約束だしなあ」
「は? うちの世界とは? それに、ドイツって……」
「ああ、実は僕ちんは、『現代日本』というところから来た、『異世界転生者』なんだよ」
「──はあっ⁉」
「僕ちんは現代日本では、いわゆる『ミリオタ』と呼ばれるオタクの一人であるものの、ほんと他の奴らって馬鹿みたいでさあ、史実としてはアメリカに負けたものだから、ドイツと組んでソビエトと戦争すれば勝てるとか、アメリカに宣戦布告をせずに、イギリスだけを叩けば良かったなんて、言っている低脳ばかりなんだけど、『正解』は何度も言っているように、別に積極的に『勝ち』を取りに行かず、要は『負けなければいい』んだし、アメリカともソビエトともイギリスとも、『戦争をしない』ことなのであり、もしどうしても参戦せざるを得ない場合には、まさにとるべき手段はただ一つ──すなわち、『ナチスドイツに宣戦布告をする』の一択なのであって、いくらドイツが強かろうが、あんな『人種差別主義』で『侵略主義』のクソ国家なんか、当然のごとく世界中から袋だたきに遭って敗北間違いなしだから、文字通り『勝ち馬に乗る』や『長いものに巻かれろ』精神に則って、情け無用に敵に回っておけば、絶対に勝ち残れるってわけなのさ」
ビスマルク「……あれ、軍艦擬人化美少女は? 結局最後まで、一人も出てこなかったではありませんか⁉」
ナデシコ「諸事情により、内容を大幅に変更しましたので、今回は登場いたしません」
ビスマルク「──タイトル詐欺じゃん!」
ナデシコ「詳しくは第13話において、詳細にご説明しておりますので、ご参照なさってください」




