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 大学の春休みはとても長い。二月から始まり、丸二ヶ月ほどある。


 エーイチは第一志望に大学に合格したそうだ。

おめでたい事である。


「ミチさん、記念受験した国公立まで受かってた……。」


 エーイチは息を切らして報告に来てくれた。

頑張らせすぎたか、それにしても良いことである。


「おー、じゃあ国公立行くしかないね。」


「悩んでたんだけど……やっぱりそう思う?」


「そりゃ、そう思うよ。頑張ったね。エーイチ。」


 エーイチはリラックスした表情で、ミチホのほうを向いた。


「ありがとう。たぶん、ミチさんと会ってなかったら合格してなかった。ゲームやってチャットやって遊んで、現実逃避して終わってたと思う。」


「いやいや、エーイチの実力だと思うよ。」


「ミチさんちで勉強したらすごいはかどるし、ミチさんのために頑張ってると思うと楽しかった。」


「邪魔になってるぐらいかと思ってたけど、役に立って良かった。」


 ミチホはちょっと照れながら、エーイチを誇らしげに見つめた。


「本当に、ミチさんのおかげだと思う。ありがとう。」


「わたしも楽しかったし。エーイチに会えてよかったよ。ありがとう。」


 ミチホのセリフはまるで別れ話のようだ。

なんとなく、ミチホは約束を果たしたら終わりと思ってしまっていた。

つまり、期間限定な気分だった。


 エーイチはミチホの手を触り、ちょっと緊張しながら切り出した。


「最初の約束、覚えてる?」


「う、うん。」


 ミチホも緊張が移ってしまう。


「これから、ミチさんが春休みの間、ずっと泊まっていい?」


 ミチホは驚いた。ロングステイとは、終わりじゃないのかと。

もちろん、エーイチは期間限定なつもりはまったく無いから当然だ。

自分が思い違いをしていたことにミチホはようやく気づいた。


「うーん、まぁ、合格したご褒美だ。いいよ。」


「やった。ミチさん大好き。」


 無邪気に喜んでるエーイチもかわいい。

たまに、こういう少年のような態度をされるとまたムラムラしてしまいそうになる。

いやでも、これからはムラムラしても良いんだった。

ミチホは頭がくらくらした。


「いつから泊まるの?」


「今からって言いたい所だけど、着替え持ってくる。」


「えーと、つまりそれって今日から?」


「うん。ダメ?」


 エーイチが首を傾げる。

かわいすぎて思わず押し倒してやりたくなってしまう。

もう「合格してから」という制限が外れているので、押し倒してもいいのだろう。

それでも、エーイチにとっては初めてのことなのだから、ぐっと我慢する。

いちおう雰囲気というのも大切にしなければならない。

ミチホは年上としての余裕を見せなければと思った。


「エーイチのご両親が良ければ、まぁいいよ。あと、入学手続きもちゃんとやるんだよ。」


 なんだかミチホがお母さんのようである。

なぜかミチホの中のオカンが目覚めた記念すべき日になった。


「もち。あ、そうだ。」


 エーイチがまた色っぽい目でミチホを見つめた。

よくぞここまでエロかわいくなったものだ。

なんだろうとミチホが身構えていると、エーイチは言った。


「ミチさんのこと、ミチホって呼んでいい?」


 エーイチは悪戯っぽく笑った。

ミチホはもう惚れてしまいそうだった。覚悟を決めなくてはいけないかもしれない。

とりあえず、大人の余裕、余裕と心の中で唱えていた。


「ん、いいよ。」


エーイチはミチホの耳元で、囁いた。


「ミチホ、愛してる。」


 ミチホは顔が火照ってくるのを感じた。

ダメだ、これは惚れてしまう。ピュアなエーイチが小悪魔みたいになっている。

たぶんそうしてしまったのはミチホだ。

あの素直でかわいかったエーイチはどこへ行ってしまったのか。

ミチホはドキドキしながらも、少し残念に思った。


「じゃ、ちょっと帰って準備してくる。待っててね、ミチホ。」


「うぃー、いってらっしゃい。」


 エーイチが出て行って、一息ついてミチホは座り込んだ。

焦らしに焦らしたぶん、二ヶ月間もいったいどうなるのか検討もつかない。

体が持つかどうか、ちょっと心配になるミチホであった。

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