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 年末が近くなった日。

エーイチがまたミチホの作ったご飯を食べたいという。

二回目にご馳走したのは親子丼だ。

手の込んだ料理は危険なので、お手軽なメニューである。


 タマネギ半分をスライスし、鶏モモ肉を一口サイズに切る。

みりんを百ミリリットル入れて煮切り、醤油は五十ミリリットル、砂糖は大さじ一杯、

讃岐うどんつゆ(ストレート)を五十ミリリットル入れる。

タマネギと鶏もも肉を入れて火を通す。


 卵は三個。黄身を潰し三回ほど軽く混ぜる。しっかり混ぜるとおいしくない。

火を強火にして、卵を入れて蓋をする。二十秒ほどしたら火を止め、卵に適当に火が通るのを待つ。


 そして最後に三つ葉を少し。

ミチホは三つ葉がけっこう好きだ。


 みりんはちゃんと本みりんを使っている。

ミチホはあまり料理が上手ではないので、調味料はいいものをと思っている。

無難な味なので、エーイチにも好評だった。



 そして正月になった。

年末から一日までミチホは実家に帰っていたが、二日にエーイチと一緒に初詣に行くことにしていた。


「ミチさんは着物とか着るの?」


「着ない予定だけど、見たいの?」


「見れるなら見たいかな。」


「着物はあるけど、成人式用だからなぁ。また来週ぐらいに成人式あるから、その時にでも。」


 ミチホは自力では着物は着られない。

着物を着るとなると、美容院なども予約して、朝から着付けてもらわないといけなくなってしまう。

また、成人式用なのに、本番前に汚れては困る。初詣は私服しかありえない。


「そっか、ミチさんは成人式があるのかぁ。」


「エーイチは来週にはセンター試験のカウントダウン始まってるから、見られないかな?」


「行くよ。成人式でミチさんが変な男に連れて行かれないようにしないと。」


「あはは、それはないって。」


 実は成人式の後に同級生の飲み会に誘われていたが、ミチホは断っておこうと思った。

エーイチから疑われるようなことはしたくない。誠実でありたい。

なんて事を考えている自分が大好きというミチホであった。



 初詣の日が来た。

さすがに三日ともなると、神社の境内もさほど混雑していない。

お参りもスムーズに行けた。


 ミチホはとくに自分の願い事もないので、エーイチが大学に合格するようにと祈った。

エーイチもきっと大学合格を祈っていることだろう。


 ミチホはエーイチに合格祈願のお守りを買ってあげた。

これがメインの目的のようなものである。

受験生にお守りをプレゼントって定番だよね!とミチホは満足した。


「おみくじ引こうよ。」


 ミチホがおみくじを引くと、小吉だった。

微妙である。

大凶が出る人もたまにいるそうなので、まあ良いほうなのだろうけど。


 小吉の恋愛の所には、「この人を逃すな」と書いてあった。

スピリチュアルなことはまったく信じてはいないが、気持ちが動きそうになる。


「小吉だったよー。エーイチは?」


エーイチはとってもかわいい子供のような笑顔でおみくじを見せてくれた。


「見て。大吉だった。」


 大吉の願事の所には、「油断しなければ首尾よく叶う」と書いてある。

学問は「安心して勉学せよ」

恋愛は……「愛情を信じなさい」


「おお、これは合格間違いなしだねっ。さすがエーイチだよ。」


「うん。良かったー。」


「おみくじは持って帰ろうね。」


「そうだね。ミチさんのもちょっと見せて。」


「ほい。エーイチを逃すなって書いてあるよー。」


 恥ずかしいのでちょっと冗談めかして、笑いながらおみくじを渡した。

エーイチはミチホのおみくじを少し読んだあと、笑いをこらえながら言った。


「出産は安産だって。」


「なるほど、既成事実を作って逃すなってことですね。」


「そうかも。」


 しかしまだ学生の二人である。

そんな事は、あってはならない事だ。


「子作りはしたいだろうけど、まだ子供は欲しくないでしょ?」


「まあ、収入がないとね。将来的にはミチさんはどんな子が欲しい?」


 いくらなんでも、エーイチもミチホも、まだ将来を本気で考えているわけではない。

ミチホに至っては、あと数ヶ月かもと思っているぐらいである。


「うーん、エーイチに似たかわゆい女の子が欲しいかも。」


「俺に似た女の子って……。かわいいかぁ?」


「絶対かわいいと思う。」


 ミチホは力強くそう言った。

エーイチは苦笑している。


「男の子のがいいんじゃない?」


「もし男の子だったら、隠してあるエロ本を見つけて、机の上に揃えて置いといてみたいなぁ。憧れるよねー。」


 半分冗談、半分本気のミチホだったが、エーイチは真面目な顔で言った。


「それだけは止めてあげて。ホントに。」


「ちぇー。残念。エーイチはやられたことあるの?」


「いや無いけど。やられたらグレるよ多分。」


「まぁ、エロ本を隠すような子になってくれたらいいか。隠さない人も多いからね。」


 恥ずかしげもなく、エロ本を床にばら撒いている人は少なからず存在している。

性癖を他人に公開して何が楽しいのかわからないが、羞恥心があまりないのであろう。


「エーイチの家行ったら探していい?」


「だめ。っていうか無いし。」


「そうか、パソコンの中か。検索かけてあげよう。」


 最近は紙媒体よりも、データ化が進んでいる。ネットなら無料だからということもある。

.jpg、.avi、.mpg、.wmvあたりをファイル検索かければ一発だ。


「こら。だめだってば。」


「犯罪系のがあったら別れるかも……。」


 犯罪系というのは、ロリペド、痴漢、レイプ、盗撮など。

いくらフィクションとは言え、そういうものが好きと女性に思われたら終わりだ。

それから、やたら顔にぶっかけたがるのはAV好きがバレるだけなので要注意である。


「そーいうのは無いよ。」


「そうなんだ。また見せてね。」


「いや、だめだってば。」


 エーイチは必死に否定している。

そういう所を見ると、絶対に見たくなってしまう。

ミチホは、そのうちチェックしてやる、と心の中でほくそ笑んだ。


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