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冬休みは、高校も大学も期間は同じだ。
そしてすぐにクリスマスがやってくる。
ミチホとエーイチが付き合い始めて、ようやくイベントらしいイベントだが、
センター試験も近いので、浮かれてキャッキャウフフとはしていられない。
エーイチにも、クリスマスも勉強だと伝えてある。
しかし、クリスマスというのに何も無しも寂しいので、
プレゼントとケーキぐらいは用意するつもりである。
エーイチへのクリスマスプレゼント、なんにしようか。
まず、ミチホは予算五千円ほどと決めた。
受験生だからシャーペンは外せない。
どうせならロットリングの製図用シャーペンがいいだろう。実用性抜群である。
でもちょっと寂しいかな。マグカップとかもつけようか。
ふと、エーイチにはヘッドホンが似合いそうに思った。
オンイヤーのカッコイイやつをつけてもらいたい。
性能には詳しくないから、とにかく見た目のいいものがいい。
完全に予算オーバーである。
エーイチに負担にならない程度の金額と思って予算を決めたものの、
プレゼントとなると暴走しそうになる。
まず、シャーペンだけで五千円だ。予算を全力で使いきっている。
ネットで調べて少しグレードの落ちたものにし、ついでに芯の太さも〇.三ミリのものを選んだ。
それでも二千円ほどするので高級なシャーペンである。
きっと持っていないだろうし、細い線はノートを取る時に便利だ。ハズレではないだろう。
あと三千円ぐらいで、見た目がいいヘッドホンを探す。
マグカップはやめておいた。好みもわからないし、予算が足らなくなりそうである。
たくさん見ていると、違いがわからなくなってきた。
いわゆるゲシュタルト崩壊である。
もうだめだ。ミチホはそれ以上見るのを諦めた。
ブラックとグリーンのなかなか良さそうに思えたのヘッドホンに決定した。
ケーキもいちおう予約しておいた。
もう決定してしまったあとだが、冬だしマフラーとかでも定番だったかもしれない。
ミチホはもう少し考えれば良かったかもしれないと悩んだ。
プレゼントは相手が喜んでくれないと意味がないと思う。
そして、貰って喜べるものというのは、ほぼ実用品に間違いない。
雑貨屋の謎の贈答品をプレゼントして自己満足に浸っていられるのは、中学生までじゃないだろうか。
もう少し大人になったら、プレゼントは消え物になっていくだろう。
消え物というのは消耗品のことだ。
残るものが重たく邪魔になっていくのが大人である。
クリスマス・イブになった。
ミチホとエーイチは二人で手をつないでケーキを取りに行った。
手をつないで歩くのに慣れなくて、ミチホはちょっと恥ずかしかったが、
クリスマスだから仕方ないと思いチャレンジした。
ケーキはブッシュ・ド・ノエルだ。
たぶん食べきれないだろうが、ミチホは残ったケーキを朝ごはんにするのが好きだから問題ない。
「コンビニでチキンでも買っていく?」
「いいね。そうしよっか。」
手をつないだままコンビニに寄って、チキンと飲み物を買った。
お金を払って、荷物もあるしもう手を繋ぐのは終わりと思っていたのだが、
エーイチはまだ手を繋いで歩きたいようだ。
「ミチさんこれ持って。」
ミチホにケーキを渡し、エーイチが重いほうの荷物を持って手を繋ぎ直した。
うーん、なんかラブラブだなぁ。ミチホはこそばゆい思いをした。
ミチホの家に戻ってチキンやケーキなどを食べ、プレゼントを渡した。
すると、エーイチもミチホにプレゼントを用意していた。
嬉しい気持ちと勉強に集中しなさいという気持ちが半々ぐらいあった。
複雑である。
開けてみると、かわいいネックレスが入っていた。
「うわぁ、かわいい!ありがとう。つけてもいい?」
ミチホはあまり装飾品をつける性質ではなかったが、女の子扱いしてもらったのと気持ちが嬉しかった。
淡白な喜び方に見えないように、大げさなぐらいに喜んでみせ、ネックレスをつけた。
エーイチもミチホのプレゼントを喜んでくれたようだ。
「このシャーペン重っ。高そう。」
「高いよー。大事に使ってね。」
「お、こっちはヘッドホンだ。ありがと。」
「ちょっと付けてみて。」
エーイチにヘッドホンを付けさせ、ミチホは満足した。
すっげーかわいいぞ。ちょっと自己満かなと思ったけど買ってよかった。
ミチホは思わずエーイチにキスしてしまった。
黒縁メガネも似合いそうだと、エーイチを見ながらミチホが妄想していると、
エーイチがふわっとミチホを抱きしめた。
「ちょっとだけ、触ってもいい?」
エーイチは遠慮がちにミチホの胸に触れた。
「ダメ。」
ミチホは、にべもなく断った。
エーイチは、またかわいくお願いをしてくる。
「ちょっとだけだから。」
「ダメ。絶対にちょっとだけじゃ済まなくなるから。」
男性のちょっとだけほど信じられないものはない。
スタートしてから、途中でゴールせずに引き返せる男性は稀有な存在だ。
いや、実は不能かもしれない。それぐらいに有り得ないことだ。
「絶対やめるから。たまにならいいって言ってたじゃん。いいでしょ?」
もともと押しに弱いミチホである。
そこまで言われてしまうともう断れなくなってくる。
エーイチも今日こそはと期待していたのだろう。あまり我慢させるのも可哀想だ。
「うー。じゃあ、三十秒だけ。」
ミチホは服の下にエーイチの手をいざなった。
エーイチはすごく嬉しそうにしている。
直に触られているので、ミチホは声を出さないように口を手で覆い、頑張った。
どうしても体は少し反応してしまうが、変な声を出したら誘っているみたいになるからだ。
「……んうっ、も、もう三十秒だから、終わり!」
時計を見てミチホは終わりを告げた。
そして無理やり体を引き剥がそうとしたが、エーイチにしっかり押さえられて動かない。
やはりそうなったか、とミチホは自分の予想の通りだったことを実感した。
エーイチは更に刺激を加えようと手を動かしている。
このままではまずい。
あまり奥の手は使いたくなかったが、背に腹は変えられない。
こういう時には、相手が萎えるような事を言えばいい。
嫌われてもいいなら、相手をけなすような事でもいいだろう。
現状維持を考えるなら、相手の良心を揺さぶりつつ、今後の不利益をチラつかせるのがいい。
「やっぱりちょっとじゃなくなったー!もう二度としないからね!」
止めないとヤバイと思ったミチホが怒ったように言うと、ようやくエーイチはぱっと手を離した。
「ごめん。ミチさんが気持ちよさそうにしてるとこ、もっと見たくてさ。許して。」
怒られなきゃ止めないんじゃ遅いんだぞ、とミチホは思ったが、
せっかくのクリスマスなのだ。怒ったままいるのもつまらない。
ちょっとアヒル口のかわいく怒った顔をして、すごく怒ってないように見せながら言った。
「仕方ないなあ。最初だから許してあげよう。ただし、次はないぞ!」
「はーい。気をつけます。」
怒られて素直に反省しているエーイチがかわいい。
こんな関係も、あと数ヶ月ぐらいしか続かないんだなあ。
ミチホはエーイチを失いたくないと思い始めていた。




