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39/42

魔族の晩餐会に響き渡る祝砲

※中ボス戦です

深い森。その奥深くに人知れず佇む巨大な古城があった…

ここは魔王軍本拠地を除けば最大規模を誇る前線拠点

今宵――この城では狂気の宴が催されていた


重厚な扉の向こう

巨大な晩餐会場には魔族達の歓声が響き渡る

「ガハハハハハ!!」

酒を片手に踊り狂うスケルトン達

骨だけの身体を軋ませながら不気味な円舞を披露する


その中央では、亡者の楽団が重苦しい旋律を奏でていた。

骨笛

皮太鼓

錆びた金管

人間なら耳を塞ぎたくなるような不協和音も、魔族達にとっては最高の宴曲だった。


巨大な焚き火の前では、丸焼きにされた魔獣へ群がるオーガ達。

「それは俺の肉だァ!!」

「勝った奴が食うんだよ!!」

怒号と共に豪快な奪い合いが始まる


片隅では、リザードマン達が骨を賽代わりに賭博へ興じていた。

「四本骨だ!」

「チッ、全部持っていきやがった!」


別の場所では、腕相撲へ熱中するトロール達

「ぬぉぉぉぉぉ!!」

「まだまだァァ!!」

メキメキ……

次の瞬間

ドゴォン!!

腕相撲台ごと石床が砕け、周囲から歓声が上がる


ゴブリン達は人骨を木琴のように並べ、陽気に打ち鳴らして笑っていた。

「ヒャハハハ!」

「いい音だ!」


さらに宴会場の中央では、デュラハン達が自らの首を互いへ投げつけ合って爆笑する。

「おっと!」

「外したぞ!」

「ガハハハハ!」


そして最奥

豪奢な長机では、ヴァンパイア達が深紅の酒杯を掲げていた

「乾杯」

満たされているのは葡萄酒ではな

血酒

芳醇な香りを楽しむように杯を傾ける


常人なら悪夢としか思えない光景

だが――ここではそれが至高の晩餐会だ

彼らは皆、魔王軍の兵士


しかし

現在の魔王グラン・ネフェルの掲げる理想に不満を抱く者達でもあった。

「甘い」

「甘過ぎる」

「魔族が復権するというのに、人間へ情けなど不要」

「我らは力で全てを奪い返す」

そんな思想を掲げる者達

魔王軍の中でも最も危険な一派

――過激派


今宵、この狂気の宴にはその中枢を担う幹部達が集結していた


狂気の宴は最高潮を迎えていた

笑い声

怒号

全てを見下ろすように、宴会場中央には巨大な円卓が置かれている。


そこだけは喧騒とは別世界だった。

円卓へ座る魔族達

誰もが宴に興じる兵達とは比較にならない魔力と闘気を纏っていた

一目見ただけで分かる…


幹部

そして――

怪物


円卓の一角

全身を漆黒の鎧で包み、深く被ったフードの奥から一切表情を見せない男、しかし素人ですらわかる、そこにいるだけで「達人」と分かる異様な威圧感


魔族百人隊長――ヴォルグ


低く響く声だけが静寂を裂いた。

「……機は熟した、カロン・クレインの首を狙う時だ」

その言葉だけで、周囲の空気が重く沈む



向かいの席

まるで刃物のような冷気を漂わせる女

青白い肌、透き通る銀髪

その瞳には一切の慈悲がない


氷の魔女――フリジア


冷笑を浮かべる

「密偵の目を掻い潜り、旅を続けているつもりなのでしょう…ですが、所詮はこそこそ逃げ回る臆病者」

その一言で室温が下がったかのようだった



さらに隣

漆黒のスーツへ身を包み、異様に細長い手足を優雅に組む男、手には一本の指揮棒。


死霊楽団長――レクイエム


亡者の演奏へ合わせ愉快そうに指揮棒を揺らす

「カロン・クレインの首を穫ればぁぁ~♪」

「魔王軍における我々の地位も権限もぉぉ~♪」

「実質トップとなるでしょうねぇぇ~♪」

甲高い笑い声が響く



その隣では、椅子が悲鳴を上げるほどの巨体を預ける大男

全身へ無数の傷跡

首には人骨の首飾り


奈落の処刑人――ダンテ


豪快に笑った

「いっそカロン・クレインを生け捕りにした奴は俺が買い取ってやる!グラン様にも現実を理解してもらわねぇとなァ!人類の希望が終わる瞬間……最高の見世物を用意してやるぜ!!」

その言葉に宴会場が沸く



そして唯一の紅一点

小柄な少女が足をぶらぶらさせながら頬杖をついていた

見た目だけなら十代前半

しかし、その無邪気な笑顔の奥には、誰よりも底知れぬ悪意が潜んでいる


悪戯姫――リリス


くすくすと笑う

「おもしろそぉ~♡グランおじさんの悔しがる顔もぉ♡早く見たいかもぉ~♡」

その愛らしい笑顔に反して、周囲の魔族達は誰一人として彼女へ近寄ろうとしない。


そして最後に円卓最奥

誰よりも巨大な玉座へ腰掛ける、一体の魔族

黒き龍角

岩のような体躯

静かに座っているだけで、他の幹部達の魔力さえ霞む圧倒的な存在感


魔王軍序列第二位

過激派を束ねるトップ


龍王――ヴェルゴーニャ


ゆっくりと目を開き、低く呟く。

「……グランのやり方はまるで分かっていない」

まるで退屈かのように

「力、勝利、支配それだけの話だろ」

巨大な拳を握り締める

「我らこそ真の魔族だ」


ヴェルゴーニャはゆっくりと立ち上がる。

巨大な腕を高く掲げ、玉座の間全体へ轟く声で叫んだ

「魔族に栄光を!!」

一拍置いて、拳を握り締める

「人類に――」

「残虐なる滅亡を!!」

「ウォォォォォォォォォ!!!!」


晩餐会会場を埋め尽くす過激派魔族達が一斉に雄叫びを上げた

「魔族に栄光を!!」

「魔族に栄光を!!」

「人類を滅ぼせぇぇぇ!!」


亡者の楽団は演奏を激しくし、

スケルトン達は狂ったように踊り、

酒杯が何度も打ち鳴らされる。

円卓では幹部達も愉快そうに笑っていた。


ダンテは豪快に酒樽を掲げる

「ガハハハハハ!!」

レクイエムは指揮棒を振り回しながら拍手する

「素晴らしいぃぃ~♪」

フリジアも薄く笑みを浮かべた

「ようやく始まりますね。」

リリスは椅子の上でぱちぱちと拍手する

「たのしみぃ~♡」

宴の熱狂は、最高潮へ達していた


――その時だった。

ゴォォォォォ……

「……ん?」

一人の魔族兵が耳を澄ませる

「なんか聞こえないか?」


別の魔族も顔を上げる

「……なんか、近付いてくるような……。」

ゴォォォォォォ……


音は急速に大きくなる

ヴェルゴーニャが眉をひそめた、その瞬間――

チュドォォォォン!!!

ドゴォォォォン!!!


凄まじい爆発が古城全体を揺るがした。

壁が吹き飛び、天井が崩れ、

爆炎が宴会場を飲み込む


「キャアアアアァァァ!!」


魔族達の悲鳴が響き渡る

爆風が収まり…その先には――

ヴォルグ

フリジア

レクイエム

三人の幹部が、黒焦げになって並んでいた

「…………」


チーン……


まるで糸が切れた人形のように、そのまま前へ倒れる


リリスは目を見開き、絶叫した。

「イヤァァァァァァァ!!」


ダンテも思わず席を蹴飛ばし立ち上がる。

「ヴォルグーーー!!皆ーーーー!!」

突然の惨劇に、狂気の宴は一瞬で阿鼻叫喚へと変わった


だがこの場にいる誰一人として――

まだ、自分達を襲った"敵"の姿を見てはいなかった


爆発の正体それは――

古城より約二十キロ離れた丘陵地帯


そこには、夜の闇を埋め尽くす鋼鉄の軍勢が展開していた

「全弾!着弾確認!!」

観測兵の報告が響く


それを聞き、一人の男が静かに口元を緩めた。

「よし次弾装填、急げ」

その笑みは穏やかでありながら、どこか悪戯を思いついた少年のようでもあった

「飛行種の魔族も警戒、対空部隊は監視を継続」

落ち着いた声で命令を飛ばす男


クレイン王国軍元帥

カロンの実兄

アズール・クレイン


「了解!装填完了まで三十秒!」


「MLRS、第二斉射準備!」


アズールの指揮の下、一糸乱れぬ陣形を敷く鋼鉄の軍勢

そこに集結していたのは――


クレイン王国軍

主力戦車 ノワールMk4 40両

次世代主力戦車 レオノール2A4 40両

ドラグーン4E装輪装甲車 120両

一五五ミリ自走榴弾砲 サジタリウス 48両。

MLRS多連装ロケット砲 16両


さらに魔族討伐支援のため海を渡ってきた、


日ノ本派遣群

七四型戦車 36両

八九型装甲戦闘車 24両

八七型自走高射機関砲 12両

九九型自走一五五ミリ榴弾砲 12両


合計――

約400両


鋼鉄の砲列が、夜の大地を埋め尽くしていた。

アズールは双眼鏡越しに古城の方向を見据える。

「カロン、お前の依頼通りだ」

口元に僅かな笑みを浮かべる


その瞬間。

「全車!第二斉射、用意!!」

砲兵達が一斉に叫ぶ


巨大な砲塔が再び古城へ向きを合わせる。

闇夜に、400両のエンジン音が重低音となって響き渡る。

次の瞬間。

ドォォォォォン!!

ドォォォォォン!!

無数の火炎が砲口から噴き上がった


――過激派掃討作戦。

その本当の始まりであった。


古城へ砲弾の雨が降り注ぐ中――

鋼鉄の軍勢は止まらない

ノワールMk4

レオノール2A4

七四型戦車


それに随伴する支援戦闘車

ドラグーン4E装輪装甲車

八九型装甲戦闘車


2カ国の主力戦車部隊はその機動力を活かし、一斉に古城へ向け前進を開始した


砲撃で混乱した敵へ間髪入れず肉薄する

まさに教科書通りの制圧戦だった


一方、その後方、同盟軍陣地では

双眼鏡を覗き込んでいたカロンが、豪快に笑う。

「流石アズ兄!楽しそうにしてんじゃん!」


その隣で、リリーナも双眼鏡を覗きながら高笑する。

「この作戦ざっと一兆ダストくらい掛かったけど……」

口元を緩めた

「最高に見応えあるわね♡」


エマもニコニコしながら前線を眺める。

「魔族さん達の阿鼻叫喚……♡」

そのまま隣のレオンへカメラを差し出した

「レオくん♡中の様子、撮影してきてくれない?」


レオンは即座に突っ返す

「いや!!俺が死ぬだろ!!」

「えー」

「えー、じゃない。」

そんなやり取りをよそに


さらに後方では、一人の美女が優雅に椅子へ腰掛け、ビールを飲んでいた。

まるで戦場を観劇でもするような余裕を浮かべる


大賢者を騙る世界の管理者  メグ・クレイン

「あはは、いや~、みんなを転送するの大変だったね」


その隣には、一人の青年が静かに紅茶を口へ運ぶ

クレイン王国王宮魔導士

ハーデス・クレイン

「お疲れ様だな」


メグは嬉しそうに微笑む

「ありがとう♡ハーデスさん♡」

ハーデスも小さく笑い返した。

「君が一番働いている」


その穏やかな空気とは対照的に

「アクア様!紫苑様!」

沙耶が嬉しそうに駆け出した

そこには二人の男女が立っていた


かつて人生に迷い、自分を探していた少年の気配は無く、今は落ち着いた風格を漂わせている。

前作主人公、日ノ本救国の英雄

アクア・スメラギ


その隣には、変わらぬ凛とした佇まい

前作ヒロイン、アクアの妻

紫苑・スメラギ

紫苑は優しく微笑み、沙耶の頭へそっと手を乗せる。

「沙耶……立派になりましたね」


沙耶は少し照れ臭そうに笑う

「紫苑様にそう言っていただけるなんて……光栄でござる」


アクアも穏やかな笑みを浮かべた。

「君に頼んで良かったよ、カロンを支えてくれて、本当にありがとう。」


沙耶は背筋を伸ばえ、力強く頷く。

「はい!殿は拙者が必ずお守りいたします!」


その言葉に、アクアと紫苑は満足そうに顔を見合わせた

歴代の伝説たちが集う戦場

クレイン家と、その仲間たち全員による総力戦

過激派にとっては――

まさしく悪夢の始まりだった


その様子を少し離れた場所から見守るスタオンヌとリバティーナ

「すごいですね……ここまで大規模になるなんて……」


すると

「スタオンヌ!リバティー!」

二人に取っては聞き覚えのある声が響いた。

同時に振り向く

「えっ……」

「兄さん!?」

軍服姿の一人の青年が、小走りで駆け寄ってきた。

肩には中尉の階級章


クレイン王国陸軍 ティトル・ドゥラメリア中尉

ティトルは二人の前で立ち止まると、満面の笑みを浮かべた

「お前達が旅してるって聞いたから!まさか本当に最前線で会うとは思わなかったぞ!」


スタオンヌも嬉しそうに笑う

「兄さんも来ていたんですね!」


リバティーナも思わず駆け寄る

「全然聞いてませんでした!」


ティトルは豪快に笑いながら、妹二人の頭をぽんぽんと撫でた。

「二人とも立派になったな!無事で本当に良かった」

そう言って優しく抱き寄せる。

「兄さん……」

「えへへ……」

久しぶりの兄妹の再会に、二人も自然と笑顔になる


その時だった

「あら、その子達が妹さん?」

艶のある落ち着いた声

振り向くと、一人の女性将校がゆっくり歩いてくる

美しく整えられたブロンズ色の髪

軍服の上からでも分かる凛とした立ち姿

どこか大人の色気を漂わせる美女だった。


ティトルは照れくさそうに頭を掻く

「ああ!そうなんだよ!俺の自慢の妹達!」


女性は二人へ優しく微笑む

リバティーナは少し緊張しながら頭を下げた。

「あの……はじめまして、兄の上官の方ですか?」


ティトルは即答した

「違う違う。」

胸を張る。

「俺の婚約者!マリリンだ!」

一瞬、時が止まる


マリリンは柔らかく会釈した。

「初めまして、マリリン・ヴァーズ大尉です、よろしくね」


優しい笑顔

しかし

スタオンヌとリバティーナの思考は完全に停止していた。


数秒後

「「エエエエエエエーーーーーー!!!!????」」

二人の絶叫が前線に響き渡る。

「婚約者!!?」

「兄さんいつの間に!!?」


ティトルは苦笑する

「いや、ちゃんと手紙送ったんだけど……届いてないの!?」


「旅してましたから!」

「読む暇ありませんでした!」


その横でマリリンはクスクスと笑いながらティトルの腕にそっと寄り添う。

「ふふっ本当に仲の良い兄妹なのね。」

ティトルも照れ笑いを浮かべる。

「ああ、俺の一番の自慢だからな」


その様子にスタオンヌとリバティーナは驚きながらも顔を見合わせる

「……兄さん…幸せそうですね」


「うん…そうね」


数キロ先では古城が砲撃で吹き飛び、魔族達が阿鼻叫喚となっていたが――

ドゥラメリア家だけは、そんなことなどお構いなしに、久しぶりの家族団欒で盛り上がっていた。


そんな一方的な掃討戦

しかし古城内部はさらに凄惨な光景と化していた

瓦礫が降り注ぎ、炎が燃え広がり、魔族達は逃げ惑う


奈落の処刑人ダンテは血を流しながら立ち上がる。

「おい!!飛べる奴らは空から反撃しろ!!」

その怒号に応え

翼竜

飛行型魔神

有翼の悪魔達が次々と夜空へ飛び立つ


リリスも青ざめた表情で叫ぶ。

「てか!!早く逃げないと!!」


ダンテが振り返る

「分かってい――」

ドゴォォォォン!!


再び砲弾が直撃した、爆炎がダンテを飲み込む


煙が晴れる

「…………。」

チーン……


黒焦げになったダンテは、そのまま後ろへ倒れた


リリスは絶叫する。

「ダンテーーーーーー!!!」

悲鳴と爆発音だけが古城へ響き渡る


その頃――

同盟軍陣地。

「古城より飛来する影を確認!数四十!!」

日ノ本自衛群隊員の報告が飛ぶ


紫苑は即座に指示を出した。

「対空射撃開始でお願いします!」


「了解!」

次の瞬間。

八七型自走高射機関砲が一斉に火を噴く

曳光弾が夜空を切り裂き、

飛翔する魔族達を次々と撃ち落としていく


しかし、それでも突破する個体がいる


アクアは静かに前へ、トライデントを構える

「よし……。」

静かに息を吐く。

「トライデント…ゲイボルグ…天逆鉾……」

三つの神槍の力が一つへ重なろうとした、

その時


「アクアきゅん!ちょい待ち!」

メグが慌てて割って入る


アクアは苦笑した。

「なんだよ、メグ?」


メグは悪戯っぽく笑う。

「せっかくならさぁ……久しぶりに、あれやろうよ!!」

そう言うと、トライデントへそっと手を添える


黄金の魔法陣が幾重にも展開され、

槍全体が眩い光へ包まれていく


七年前――

黄泉津大神イザナミとの最終決戦

日ノ本を救った一撃

メグ曰く、

アクア専用 愛と希望と友情を、ぜーんぶ詰め込んだ最強のチート。


メグは満面の笑みで叫んだ

「七年ぶりの出番だよ!

ティターノトライデント!!」


轟音と共に三叉槍は山すら霞むほど巨大化する

その姿はもはや槍ではない、神話そのものだった。


アクアは懐かしそうに目を細める。


そして、巨大な神槍を両手で握り締め深く息を吸い込む

「ティターノ……トライデントォォォォォ!!!!!!」

振り下ろされた瞬間、轟音が走る


アクアの叫びに応えるように巨大な津波が押し寄せ


天空には三千の光の矢尻が現れ、必中の雨となって飛翔する魔族を貫く


さらに大地そのものが隆起し、古城から迫る全てを飲み込んだ。


空からの反撃は――わずか一瞬で完全に消滅した。


戦場に残ったのは、

静まり返った夜空と、

「あれが…救国の英雄…海神の力」

同盟軍兵士達の、畏敬の眼差しだけだった。


アクアの一撃を見届けたハーデスは、小さく微笑んだ。

「……流石だな、アクア」

弟の頼もしさを兄として誇らしく思っていた

そう思い、静かに見守るつもりだった。

――しかし


「なーに言ってんの!」

メグがハーデスの腕をぐいっと引っ張る。

「ほら!ハーデスさんも!」


ハーデスは少し困ったように眉を下げる。

「私はそこまでは……」


メグはぷくっと頬を膨らませた。

「むぅ~~……せっかく考えて来たのにぃ……。」


その顔を見たハーデスは、小さくため息をつく。

「……分かった、まったく…」


優しくメグの頭を撫でる

「我が妻は……本当に愛おしいな。」


メグの表情が一瞬で花開く

「きゃ♡ハーデスさん大好き~~♡」


メグは笑顔でハーデスのバイデントへ手をかざした

莫大なチート魔力が奔流となって槍へ流れ込み、

漆黒だった二叉の刃は黄金と黒を混ぜ合わせたような輝きを放つ。


バチッ!!

金黒色の雷光が暴れ狂い、

周囲の兵士達が思わず息を呑む

「な、なんだあの魔力……」

「大賢者様がまた何かやったぞ……」


ハーデスは静かにバイデントを構えた。

漆黒のロングコートが風になびく。

その瞳だけが、冥府の王のような静かな威厳を宿していた。

「その魂を――」

ゆっくりと槍を前へ突き出す。

「喰い破れ…ヘルヘイムバイデント」



次の刹那――

冥界の瘴気が黒い濁流となって溢れ出す。

それは無数の刃へと姿を変え、

遥か彼方で逃げ惑う魔族達を容赦なく飲み込んだ

断末魔すら許さない

黒き刃は魂ごと貫き、

魔族達は次々と灰となって崩れ落ちる。

瘴気が通り過ぎた後には、

ただ静寂だけが残っていた


メグは満足そうに胸を張る

「どう!?ヘルヘイムバイデント♡」


ハーデスは苦笑しながら槍を肩へ担ぐ

「名前は……もう少し考えてくれ。」

「えぇ~~!似合うと思ったのに~~!」

そんな夫婦漫才が繰り広げられる一方で、

前線ではなおも砲撃と進軍が続いていた。


過激派魔族にとって、この夜は――

歴代最強クラスの英雄たちが、一夜限りで再び集結した悪夢そのもの

魔族過激派は、完全に統制を失っていた。

「に、逃げろ!!」

「こんな所にいられるか!!」


生き残った魔族達は我先に古城の奥へ走り出す

しかし――

「うわぁぁぁっ!?」

先頭を走っていた魔族が突然悲鳴を上げた。

「なんだ!? 通路が塞がってる!!」


逃げ道だったはずの回廊

そこには巨大な炎の壁が立ち塞がっていた。

別方向へ走った魔族も叫ぶ

「毒だ!!」

「げほっ……げほっ!!」

紫色の瘴気が廊下いっぱいに滞留し、吸い込んだ魔族が次々と倒れていく


さらに奥では

「こっちも炎だ!!」

「退路が全部潰されてるぞ!!」

逃げ場は、どこにもなかった



――それは砲撃が始まる約一時間前



晩餐会会場

宴はまだ始まったばかりだった。

「ガハハハ!」

「飲め飲め!」


魔族達が騒ぐ中、一人の魔族兵が首を傾げる。

「……おい、あんな奴いたっけ?」

隣の魔族も目を向ける。

「あ?……確かに。」


しかし次の瞬間

「でも…」

「……美しい」

思わず見惚れてしまう

会場を自然な足取りで歩く、一人の女性

仮面舞踏会用の白いマスクで素顔は隠されている

それでも隠しきれない圧倒的な存在感


世界的トップスター テラ・アドミーヤ


テラは物珍しそうに周囲を見回し、小さく笑った。

「凄いねー、まるで異世界だよ。」


すぐ近くでは…

『座標を送るえ……しくじるでないぞ?』

遠く離れた場所から妖術で通信を繋ぐ狐鞠


同時に、城内の詳細な座標情報がメグへ送られる。

メグも通信越しに笑った。

『はいよ~♡ありがとね、こまりん♡』


その情報を元にすでに別働隊は動いていた


古城一階、ルーナが通路という通路をくまなく確認

「炎壁魔法設置、よし!」

ゴォォォ……

複数の通路へ炎の障壁が静かに埋め込まれていく



少し離れた場所では。

ミラが優雅に小瓶を傾ける。

「滞留毒トラップ……散布完了ですわ♡」

紫色の霧が床や壁へ染み込むように広がり、普段は無色透明のまま潜伏していく


最後に

エルナが城内の見取り図を確認しながら頷いた。

「よし、下準備は完了か」

三人は互いに目を合わせ、小さく笑う。

ルーナが肩を竦める。

「これで逃げ道は全部塞いだな!」


ミラもくすりと笑った。

「砲撃で外へ出れば戦車…中へ逃げれば毒と炎…♡」


エルナは短く締めくくる。

「……詰みだな。」

三人は音もなくその場を離れる。


テラは周囲を見回し、小さく頷いた。

「皆、作戦は完了かい?」


ミラが優雅に一礼する

「ええ♡滞留毒、退路封鎖、全て完璧ですわ♡」


エルナも腕を組みながら答える。

「砲撃開始までには全部終わった、後は撤収だ」


その時だった。

「見事じゃな」

静かな声が響く

狐鞠は相変わらず扇子で口元を隠したまま、

穏やかに笑っていた。

「では、おぬし達は脱出するのじゃ。」


ルーナは首を傾げる。

「え?狐鞠さんは逃げないんすか?」


狐鞠は少しだけ空を見上げる

そして、どこか懐かしそうに笑った。

「……久しぶりに…暴れとうなったでのぉ……」


テラは苦笑する。

「でも、もうすぐ砲撃が始まるよ?」


狐鞠は何も答えない。

ゆっくりと左手を持ち上げた。

「よいから、おぬし達はさっさと逃げよ」


その瞬間、足元に巨大な妖術の波が展開される

「えっ──」

「狐鞠さん!」


眩い光が四人を包み込み、

テラ

ルーナ

ミラ

エルナ

四人の姿は一瞬で消え去った


静寂が支配する、誰もいなくなった廊下で

狐鞠はゆっくりと扇子を閉じる

「さて……」

口元が妖しく歪む。

「何百年ぶりかのぉ……♡わちきを、ここまで昂らせたのは……♡」


その瞬間

結い上げていた紫色の髪が、さらりとほどける

長い髪は月光を浴びながら純白へと染まり、

頭上には白銀の狐耳


背後には一本、二本……

九本の巨大な尾がゆっくりと花開くように現れた


一本一本が生き物のように揺れ、

古城全体を覆うほどの妖気が溢れ空気が震える


遠くにいた魔族達が、その場で凍り付いた。

「な……なんだ……この妖気は……」


狐鞠は真紅の瞳で魔族達を見渡し、妖艶に微笑む。

「大妖怪九尾の力……見られたこと…

誇ってよいぞ……♡」

そっと扇子を一振りする


ふわり

舞い上がった紫炎は狐の姿へ変わった

二匹、十匹、百匹

数え切れぬ紫の狐火が意思を持つように城内を駆け巡る


「ぎゃあああっ!!」

「炎が追ってくる!!」

「消えない!!」


狐火は獲物を見つけた獣のように魔族へ飛び付き、

焦熱と共に鋭い牙が肉に食い込む熱と肉を抉られる2つの激痛を与える

そして最後には魂そのものを焼き尽くしていく

逃げても振り払っても

紫の狐火は執拗に追い続けた


狐鞠はその光景を眺めながら、くすりと笑う


「これじゃ♡これじゃ♡喰われ焼かれる苦痛の悲鳴…♡末喜の時、初めて絹を裂く音を聞いた時を思い出すのぉ………♡」


そう呟く姿は、味方から見れば頼もしい守護者。

だが魔族から見れば――

砲撃すら霞む、本物の"災厄"そのものだった。


魔族過激派の反撃能力はほぼ壊滅していた

空を飛べば高射砲

城外へ出れば砲撃

城内を逃げれば毒と炎

そして九尾の妖火

追い撃ちを掛けるように神槍

完全なる包囲殲滅


同盟軍陣地。

カロンは古城を見据え小さく頷いた。

「……そろそろだな。」

軽く肩を鳴らし仲間達を振り返る

「よし!行ってくる!」


アクアは静かに笑う

「気を付けてな、カロン」


紫苑も優しく微笑む。

「ご武運を」


スタオンヌは胸の前で両手を組み、嬉しそうに微笑んだ。

「待ってますから、カロン様♡」


リバティーナも呆れながら笑う

「ちゃんと帰って来て下さいよ」


カロンはニヤリと笑う。

「当然!手柄は貰ったぜ!」


そう言うと、腕を交差させ軍荼利印を結ぶ

「転移魔法」


景色が揺らぎ、

カロンの姿はその場から消えた。



砲撃によって半壊した古城

天井は崩れ、壁は焼け落ち、

悲鳴だけが響いている。


その中心で魔族過激派の頂点

龍王ヴェルゴーニャは怒鳴り散らしていた

「立て!!まだ終わっておらん!!」


そんな混乱の中、空間が歪む

ヴェルゴーニャが振り向く

「!?」


そこには、一人の少年が冷やかな目をして立いる

カロン・クレイン。


カロンは小指を結ぶ  降三世印

「タケミカヅチ!」


瞬間、轟音が世界を裂いた

ゴォォォォォォォン!!!!

天井を貫き黄金の雷撃が一直線に

ヴェルゴーニャへ叩き落とされる

「ぐああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


龍王の巨体が雷に呑まれ、

床を砕きながら吹き飛んだ。

ヴェルゴーニャは歯を食いしばって立ち上がる。

「おのれ……!カロン・クレイン!!」

怒りで肩を震わせる


「そこまでして我らへ仇なすか!!忌々しい勇者の孫が!!」

しかしカロンは、きょとんとした顔になった

「……いや?」

首を傾げる

「勇者とか、関係ないよ」


ヴェルゴーニャの表情が固まる

「……なんだと?」


カロンはあっさりと言い放った。

「俺はメグ姉に報酬チラつかされて、ここまで来たんだ!」

肩を竦める。

「別に魔族がどうなろうとか人類の平和がどうとかそんなもん知らない!」


瓦礫へ腰掛けながら笑う

「俺は正義の味方じゃねぇし、じいちゃんみたいな勇者でもない」


「でも欲しいもんがある、それだけだ」

ヴェルゴーニャは絶句した。


今まで相対した勇者達は、皆、世界を救うため。

人々を守るため

正義を掲げて剣を振るってきた

だが、目の前の少年は違う


自分の欲望を隠そうともしない、

それなのに――その背後には、

王国軍

日ノ本軍

そして仲間達が揃っている


ヴェルゴーニャは初めて理解した

「……理解出来ぬ…報酬の為…貴様の旅は何もかも異常だ…我ら魔族と仇なしながら、人間も踏み倒し…」


「まあ、魔族より人間のほうがムカつく奴は多かったのは間違い無いな」

カロンは肩を竦め、一瞬だけ表情が真面目になる。

「ただまあ……ラヴィアの件もある」

ゆっくりとピストルを持ち上げた

銃口は、満身創痍のヴェルゴーニャを真っ直ぐ捉える

「お前はムカつくからここでぶっ殺すけど」


ヴェルゴーニャは全身から血を流しながらも、なお立ち上がる。

「このまま……!」

巨大な拳を握り締める

「やすやすと……!」

咆哮が廃墟へ響く

「やられてたまるかぁぁぁぁぁ!!!!」

最後の力を振り絞り、一歩踏み出した


その瞬間――

「させぬぞ!!」

どこからともなく凛とした声が響く


ヴォッ!!

紫の狐火が一斉に飛来する

意思を持つようにヴェルゴーニャへ喰らい付き、次々とその巨体へ絡みついた。

「ぐあぁぁぁっ!!」

狐火達は獲物に群がり牙を立てるように龍王を床に組み伏せる


カロンが視線を向ける。

「……狐鞠?」

瓦礫の上、月明かりを背負って立つ一人の妖狐、

純白の長髪、白銀の狐耳

そして、ゆったりと揺れる九本の尾

大妖怪 九尾


狐鞠は扇子で口元を隠し、妖艶に微笑んだ。

「どうじゃ?わちきの真の姿…怖いかえ?」


カロンは数秒じっと見つめると、

何のためらいもなく一本の尻尾へ手を伸ばした。


もふっ…♡

「……うわ…」

目を丸くする。

「ふわふわ」

さらに何度か撫でる

「てか、初めて会った時より可愛いじゃん」


「…………」

狐鞠の頬が、ほんのり赤く染まる。

やがて肩を震わせ、小さく笑った。

「……ふふっ♡この期に及んで……本当に馬鹿な男じゃ……♡」

九本の尾が、どこか嬉しそうにふわりと揺れた


そんな二人の空気を遮るように、

拘束されたヴェルゴーニャが苦しげに声を絞り出す。

「お、おい……まだ……話は終わって――」


カロンはゆっくりと視線だけを向ける

「いや、俺が言いたいことは以上だ!くたばれ!」


ヴェルゴーニャは目を見開く。

「ま、待て!」


パンッ


乾いた銃声が静かに響いた

銃弾は寸分違わず龍王の眉間を撃ち抜く


ズゥン……

廃墟に重い音だけが残った

カロンは拳銃を軽く振り、ホルスターへ戻す

「終わりだ」


狐鞠は倒れた龍王を一瞥すると、くすりと笑う

「情けを掛けぬか」


カロンは肩を竦めた。

「俺、長話嫌いだし」


狐鞠は声を上げて笑った。

「くくっ……まことに、おぬしらしいのう」


そんな言葉を他所にカロンは周囲を一度見回す

崩れ落ちた古城、遠くには静まり返った戦場

そして、不意に視線を壁際へ向けた


「おい、そこのお前」

低い声が響く


瓦礫の陰。

そこには小柄な少女が身を縮こませていた

悪戯姫――リリス

「!!」


全身が震える

息を殺し、見つかっていないことを必死に祈っていた…

しかし返事はできない、返事などした瞬間、

次は自分の番だ。

そんな恐怖で身体が動かなかった。


カロンは返事など期待せず、そのまま続ける。

「魔王様に伝えとけ」

少しだけ笑いながら

「テメェの部下も躾けられねえような奴に同胞は救えねぇーよって」


「魔族の為に一人立ち上がる俺かっこいいー!……とか酔ってないで友達の話しくらい聞いてやんなよ……ってな。」


リリスは涙目のまま何度も頷いた

「ひぃぃぃぃぃぃ!!!」

飛び起きるように立ち上がり、転びそうになりながら全力で走り去る


その姿をカロンは追わない

やがて足音も聞こえなくなると、

大きく伸びをした。

「よし、終わったな」


九本の尾を揺らす狐鞠も、穏やかに微笑む

「そうじゃの……」

崩れゆく古城を一瞥し、

扇子を開いた。

「さて、わちき達も出るかのう。」

二人は並んで歩き始める


その背後では、魔族過激派最大の拠点が、

最後の轟音と共に崩れ落ちていった。

こうして――

魔王軍過激派は、一夜にして壊滅した

ノワールMk4→メルカバ、レオノール2A4→レオパルト、七四型戦車→74式戦車です。


もうディアドラ以外のアクア編とカロン編の来れるキャラ全員参戦のオールスターでした。


狐鞠の真の姿

↓↓↓

真 狐鞠 | 福島ナガト #pixiv https://www.pixiv.net/artworks/148004767


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