魔族の隠れ里
正義にも色々あるんですよね、前回pixivに投稿したエリシアのイラストが閲覧数がびっくりするくらい伸びないように
ユリウス率いる勇者一行を退けたカロン達
一行はラヴィアを乗せ、再び目的地へ向けて走り始めていた。
先頭を走るのはレオンが運転するガーディアン90
助手席にはラヴィア
その後方をカロンのバイク、さらにククリRPVが続く
勝利したはずなのに車内には重苦しい空気が漂っていた
ラヴィアは窓の外を見つめながら、小さく口を開く
「……もう少しです、あの道を進めば、私の村があります……」
ハンドルを握るレオンは静かに頷く
「分かった」
後部座席のリバティーナも息を整えながら前方を見据えた
「いよいよですね……」
風を切りながらスタオンヌが少しだけ不安そうな表情を浮かべた。
「カロン様……」
カロンは前を見据えたまま答える。
「一応、魔族の住む所だしな……警戒だけはしておく」
さらに後方
ククリRPVの車内では、エマが窓越しに周囲を見渡していた。
「まさか、ここまで来るとは……ですね」
運転席のリリーナも苦笑する。
「入った瞬間、『人間だ!』って撃たれたりしないといいけど……」
「縁起でもない事を言わないでくださいよ」
エマが苦笑すると、後部座席から勢いよく窓が開いた
沙耶が身を乗り出し、前方のカロンへ向かって大声を張り上げる。
「殿ーーっ!何かあったら車体の背後へ隠れるでござる!」
カロンは片手を上げ、軽く応えた。
「そうだな、最悪車を盾にすりゃ何とかなる」
その言葉にレオンがすぐさまツッコミを入れる
「おい、俺の車を消耗品みたいに言うな」
車内に小さな笑いが生まれる
だが、その笑いも長くは続かなかった。
ラヴィアの視線が前方へ向く。
遠く、森の奥。
木々の隙間から、小さな集落の屋根がゆっくりと姿を現し始めていた。
そこは――魔族の隠れ里。
五十四年前
伝説の勇者ノーザン・クレインが先代魔王を討ち滅ぼして以降、かつて魔族が支配していた広大な領土は、人類の開拓によって急速に姿を変えていった
今ではその約九割を人類が統治している
故郷を失った魔族達は各地へ散り散りとなり、生き残った者達は人目を避けるように、この深い森へ身を寄せ合って暮らしていた
人里から遠く離れたこの場所は、人間から身を隠して生きるには最適な土地だった
ガーディアン90を先頭に、三台の車両がゆっくりと里へ入る
その瞬間だった。
「人間だ!!」
見張りの魔族が叫ぶ
次々と家の扉が開き、魔族達が飛び出してきた。
緊張が一気に走る
だが、その視線はすぐに助手席へ向けられた。
「ラヴィア様!?」
「ラヴィア様がお戻りになったぞ!」
「ラヴィア嬢!? ご無事でしたか!」
安堵の声が里中へ広がっていく。
一方で、カロンはバイクを降りると、周囲を見渡しながらぶっきらぼうに言い放った。
「勘違いすんな、討伐しに来たんじゃねぇぞ」
少し口角を上げる。
「……まあ、やりたいってんなら容赦はしないけどな。」
その一言だけで、里の空気が再び張り詰める。
ラヴィアは慌てて車から降り、両手を広げた。
「違います!この人達は敵ではありません!私を助けてくださった恩人です!どうか、手を出さないでください!」
ラヴィアの必死な声に、武器を構えかけていた魔族達は互いの顔を見合わせる
やがて一人、また一人と武器を下ろしていった。
緊迫した空気は少しずつ和らいでいく
ラヴィアはほっと胸を撫で下ろし、カロン達へ振り返った。
「こちらです、私の家へご案内します」
カロン達は警戒を解かないまま、ラヴィアの後を追って里の奥へと歩き始めた
里の奥へ進むにつれ、周囲の家々より一回り大きな屋敷が姿を現した。
木々に囲まれながらも手入れの行き届いた立派な屋敷。
ラヴィアは立ち止まり、小さく微笑んだ。
「……ここです。」
リバティーナは思わず屋敷を見上げる
「森の中に、こんな立派な屋敷が……」
リリーナも目を丸くした
「ラヴィアちゃん、結構お金持ち?」
ラヴィアは少し照れ臭そうに笑う
「昔はもう少し栄えていたそうですが……今は昔の名残です」
そう言って静かに扉を開けた。
ギィ……
開いた扉の音が屋敷に響く
その音に気付いた一組の男女が、廊下の奥から振り返った
長く尖った耳と額には一本の角
ラヴィアと同じ特徴を持つ魔族だった。
父親は目を見開き、言葉を失う
「……ラヴィア?」
母親も震える声で娘の名を呼ぶ。
「ラヴィアなの……!?」
次の瞬間
二人は駆け寄り、ラヴィアを強く抱き締めた。
「ラヴィア……!よかった……本当に……!」
ラヴィアも両親の温もりを抱き返し、目を潤ませる。
「ただいま帰りました…ご心配をおかけして申し訳ありません…お父様……お母様……」
母親は首を横に振り、涙を流しながら娘の頬を優しく撫でた。
「いいの…こうして無事に帰って来てくれた…それだけで十分です…」
父親も安堵したように目を閉じ、大きく息を吐く。
「事故で行方不明になったと聞いた時は……もう二度と会えないのではないかと……」
言葉を詰まらせる父の姿に、屋敷の中は静かな涙と安堵に包まれた。
その様子を見守っていたカロン達も誰一人として口を挟まず、ただ家族の再会を静かに見届けていた。
ラヴィアは両親からゆっくりと離れると、後ろに立つカロン達へ振り返った。
「お父様、お母様、こちらの方々が私を助けてくださり、この里まで送り届けてくださった恩人す……」
両親は改めてカロン達へ視線を向ける
父親は一歩前へ出ると、深く一礼した。
「そうでしたか……娘を助けていただき、本当にありがとうございます」
「私は現在、この里の長を務めております、グスタフ・メメントモリと申します。」
隣に立つ母も優しく頭を下げる。
「妻のオリヴィアです、娘の命を救ってくださり、心より感謝申し上げます」
カロンは軽く手を挙げるだけだった。
「カロン・クレイン、こっちは俺の仲間です」
レオン達も順に軽く会釈する。
グスタフはその名を聞き、少しだけ考え込むように眉をひそめた。
「クレイン……どこかで聞いた覚えが……」
カロンは苦笑しながら肩をすくめる。
「家族はちょっと有名なだけで、俺はただの旅人だから」
レオンが小さく苦笑する。
「その"ただの旅人"が問題ばっか起こすんですけどね」
「うるせぇ」
カロンは即座にツッコミを返す
そのやり取りを見たオリヴィアは、思わず小さく笑みを浮かべた
先程まで張り詰めていた屋敷の空気が、ほんの少しだけ和らいでいく
グスタフは改めて一同を見渡すと、里長としての表情に戻った。
「立ち話も何です、どうか中へ、皆様には改めてお礼をさせてください」
カロン達は顔を見合わせ、小さく頷くとグスタフの案内で屋敷の応接間へと足を運んだ。
応接間に静かな空気が流れる
温かい茶が運ばれ、一同は席へ着いた
グスタフは湯気の立つ茶器を見つめながらゆっくりと口を開く
「この里は、魔族が隠れ住む集落です、そして……」
少しだけ懐かしそうに目を細める。
「新たな魔王となったグラン……あの男の故郷でもあります」
レオンが僅かに眉を上げた。
「魔王も……」
グスタフは静かに頷く。
「そうです、グランと私は幼い頃からの友人でした」
その言葉に、ラヴィアも静かに耳を傾ける。
「しかし、あの日を境に……グランは先代魔王様の遺志を継ぎ、魔族の復権を果たすと言ってこの里を飛び出して行きました」
カロンは腕を組み、短く尋ねる
「飛び出して行ったと?」
「はい」
答えたのはオリヴィアだった。
「私達は…せめて家族や仲間が安全に暮らせるなら、それで十分だったのです」
「争いよりも、静かな暮らしを望んでいました」
少し微笑みながら続ける
「グラン様は……先代魔王様以上の力を持ちながらも、とてもお優しい方でした…里を出る時も、私達にこう仰ったのです」
オリヴィアは、その時の言葉を思い出すように目を閉じた。
「『必ず魔族が胸を張って生きられる国を取り戻す、お前達に不自由はさせない。』……と」
部屋に沈黙が落ちる。
カロンは黙って話を聞いていた
グスタフは静かに息を吐く
「だから私は…グランが魔王になったこと自体を責めるつもりはありません」
「彼は彼なりに、魔族の未来を考えている…それだけは、今でも信じています」
しかし、その表情は次第に曇っていく
「……問題はグランの思想を利用し、自らが実権を握ろうとする者達です」
その一言で、部屋の空気が再び張り詰めた。
カロンは腕を組み、静かに呟いた。
「……過激派の連中か」
グスタフは重々しく頷く
「はい…あの者達はグランに賛同しているようでいて、その実、自分達のやり方を押し通そうとしております」
「魔族の未来ではなく、自らが力を握ることしか考えておりません」
オリヴィアも苦しそうに目を伏せる
「それでもグラン様は……全てをご存知です…
過激派が暴走していることも、罪のない者達が巻き込まれていることも……」
部屋が静まり返る。
「ですが『魔族の為に立ち上がった者達も同胞だ』と……一切、処罰なさいませんでした」
レオンは険しい表情を浮かべる。
「甘いな……」
リバティーナも静かに頷く。
「敵に情けを掛けるのは美徳ですが……それで犠牲が増えるなら、本末転倒です。」
グスタフは拳を強く握り締めた。
「グランは優し過ぎるのです…だからこそ、利用される、過激派はその優しさを盾に好き勝手している……」
そしてグスタフはゆっくりと立ち上がる
カロンの前まで歩み寄ると、深く頭を下げた。
「カロン殿、これは里長としてではありません……
グランの友としての頼みです」
部屋の空気が張り詰める
「グランは、この願いを知れば必ず怒るでしょう、自分の問題に他人を巻き込むな、と…」
「ですが……」
グスタフは顔を上げ、真っ直ぐカロンを見据えた。
「どうか…どうか、グランを止めてください……!」
その言葉には、魔王討伐を願う者の憎しみではなく、大切な友人を救いたいという切実な願いが込められていた
カロンはしばらく黙っていた。
やがて一つ息を吐き、静かに口を開く。
「……分かった、その頼み引き受ける」
グスタフの表情が僅かに和らぐ
「ありがとうございます……やはり、娘を助けてくださった方達なら――」
「ただ」
カロンの一言で、部屋の空気が止まった。
「一つだけ、言っとかなきゃいけない」
全員の視線がカロンへ集まる。
「俺はカロン・クレイン…
勇者ノーザン・クレインの孫で――開拓時代の"冒険王"と呼ばれたワイアット・クレインの息子だ」
静寂
グスタフもオリヴィアも何も言わない
驚きはしなかった
薄々気付いていたのか、どこか覚悟していたような表情だった
カロンは二人の様子を見ながら続ける。
「魔族が今みたいな生活を強いられてるのも、次の魔王が生まれたのも、ある意味俺の家族が原因だ」
少しだけ目を伏せる。
「……恨んではいないのか?」
グスタフは静かに目を閉じた。
そして、ゆっくりと首を横へ振る。
「……構いません。」
その声に迷いはなかった。
「私は先代魔王様にも、大変お世話になりました。そして同じように、勇者ノーザン殿の話も耳にしております」
グスタフは穏やかな笑みを浮かべた。
「私はもう、誰かを恨んで生きる歳ではありません、今の私の願いは、ただ一つ。」
隣に立つオリヴィアの手をそっと握る
「友が無事であること。」
そしてラヴィアへ視線を向ける
「家族が笑って暮らせること……それだけで十分なのです」
その言葉に、ラヴィアは小さく頷き、目尻に涙を浮かべた
カロンは静かに笑う
「……そういう事なら…分かった」
その一言で、グスタフもようやく肩の力を抜き、小さく笑みを返した
ラヴィアは俯いたまま、小さく息を吸った。
「カロンさん……お父様……お母様……」
その震えた声に、一同の視線が集まる
カロンは静かに尋ねた。
「どうした?」
ラヴィアは覚悟を決めるように拳を握った。
「……皆さんに、まだお話ししていないことがあります。」
部屋の空気が張り詰める。
ラヴィアは事故の日を思い返すように、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「あの日……巡礼の旅をしていた私を襲ったのは…人間ではありませんでした」
一拍置いて、静かに告げる。
「……過激派の魔族でした」
「!!」
その場にいた全員が息を呑む。
グスタフも立ち上がりかける。
「な……そんな馬鹿な……」
ラヴィアは小さく頷いた。
「彼らは…私を魔王様との交渉材料にするつもりだったのです。」
オリヴィアは思わず口元を押さえた。
「人質に……?」
「はい……」
ラヴィアの声は震えていた。
「私は運良く逃げることができました…ですが、森を彷徨っているうちに今度は、人間の皆さんに見つかってしまいました」
レオンが険しい表情で腕を組む。
「つまり……最初から狙われてたのか」
ラヴィアは静かに頷く。
「はい……私を捕らえれば、グラン様も動かざるを得ないと……」
部屋は重苦しい沈黙に包まれた
グスタフは拳を震わせながら呟く。
「そこまで……そこまで堕ちていたのか……」
カロンだけは表情を変えない
しかし、その瞳だけが静かに細められていた。
「……なるほど、ようやく全部繋がった」
それからしばらく話し合いは続いた
今、優先すべきことは明確だった
過激派の掃討
隠れ里に暮らす魔族達の保護
そして――
魔王グラン・ネフェルを止めること
それぞれが決意を胸に秘める中、カロンはふとエマへ視線を向けた。
「エマ」
名前を呼ばれたエマが首を傾げる
「ロンくん……?」
カロンは少し考えるように顎へ手を当てる。
「今から頼むモン、用意できるか?」
「……?」
エマは不思議そうな顔をする
「何をです?」
カロンはニヤリと笑った。
「過激派の度肝抜くヤツ、できれば二度とフザケた真似しようと思わないくらい派手なの」
エマは数秒固まる
そして、いつもの営業スマイルを浮かべた。
「……予算は?」
「青天井」
「了解です♪」
その笑顔を見たレオンは嫌な予感しかしなかった。
「おい、その返事の速さが一番怖いんだけど」
リリーナも苦笑する。
「また何か、とんでもないこと考えてるね……」
スタオンヌは慣れたように微笑む。
「カロン様ですから♡」
沙耶は腕を組み、空を見上げた。
「敵が少し気の毒になってきたでござる……。」
カロンは椅子から立ち上がる
その目は、先程までの軽い雰囲気とは違っていた。
「さて、過激派には――ちょっと派手に退場してもらおうか」
その言葉だけを残し、部屋を後にする
残された仲間達は顔を見合わせる
誰もまだ知らない
カロンが思い描く"作戦"が、過激派だけでなく、魔王グラン・ネフェルまでも驚愕させるものになることを。
次回、最終章突入!やり過ぎ上等の大乱闘!




