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37/42

勇者嫌いな勇者の孫

この辺から段々と「やり過ぎ上等!」みたいなスタンスで書いてました。最終回までにどんなやり過ぎがあるかは予想してみて下さい

戦闘は、一気に激しさを増していた。


パンッ!

乾いた銃声が街道に響く

エマのリボルバーから放たれた.45口径弾が一直線にイリスへ迫る


しかし、イリスは慌てる素振りすら見せない。

「無駄よ!」

彼女が杖を軽く掲げる

キィィン――


半透明の魔法障壁が瞬時に展開され、飛来した弾丸を受け止めた。

弾丸は火花を散らすと、そのまま地面へ転がり落ちる。

「くっ……!」

エマが舌打ちした、その瞬間


「エマさん!下がってください!」

スタオンヌが白衣のポケットから小瓶を取り出し、迷うことなく投げ放ち、瓶は空中で砕け散った


中から飛び散るのは、淡く煙を上げる無色透明の液体、フルオロアンチモン酸

硫酸を遥かに凌ぐ、世界最強クラスの超酸だった。

「っ!」


だが、その軌道へ一つの巨体が割り込む

アルベルトが大盾を構えイリスの前へ立ちはだかった。


ジュゥゥゥッ――!!


超酸が盾と鎧を覆い、白煙を立ち昇らせる

周囲の地面は瞬く間に焼け焦げていく

しかし、煙が晴れるとアルベルトは一歩も退いていなかった


鎧も肉体も、大きな損傷は見当たらない。

アルベルトは低く言い放つ。

「俺には、毒も酸も効かない……」


スタオンヌは思わず目を見開いた。

「あり得ません……世界最強の酸が……」


エマも額に汗を浮かべながら苦笑する

「.45口径も止められるし……パラディンっていうのは厄介ですねぇ……」


イリスは障壁を維持したまま、不敵な笑みを浮かべる。

「分かったかしら?私達は、生半可な相手に負けるために旅をしてきたんじゃないのよ。」


四人は互いを睨み合う。

銃

科学


魔法

鉄壁の守護


誰一人として譲る気配はなく、街道の一角では激しい攻防が続いていた。


ガギィン!!

金属音が連続して響く

レオンと沙耶は、ユリウスの猛攻に翻弄されていた


槍を受け流せば、間髪入れず剣が襲う

剣を弾けば、今度は射程外から槍の穂先が伸びてくる

近距離と中距離

二つの間合いを自在に切り替える戦法は、二人の連携をも容易く崩していく


「ちっ!」

沙耶は一度距離を取り、腰の打刀を納める

代わりに背中の仕込み杖を握った

「一撃で……!」

居合の構え、次の瞬間――

「疾ッ!!」

視界から消えるほどの逆手超速抜刀

だが


キィィン!!

ユリウスは迷いなく剣を合わせ、その一閃を真正面から受け止めた、火花が散る

「なっ……!」


そこへレオンが懐へ飛び込む

「もらった!」


狙いは槍そのもの鉄の三倍の強度を誇る超高強度警棒を、全力で槍の柄へ叩きつける


ガァン!!

鈍い衝撃が響く。

しかし槍は僅かに震えただけで、折れる気配すらなかった


レオンは目を丸くする。

「おいおい…どんな槍だよそれ……」


沙耶も冷や汗を流す。

「こやつ……腕は一級でござる……。」


その頃――

当のカロンは。

「だからさ…賢者ってのは、三歳くらいで悟っちゃってその後の人生、暇すぎて遊び呆けてる奴のことだろ?」


真顔だった。

エリシアは困ったように微笑み、小さく首を横へ振る。

「誤解されているようです…賢者とは善悪を正しく見抜く者…力でも魔力でもありません、智慧なのです」


カロンは腕を組んだまま「うーん」と唸る。

「いやでも、酒は?」

「飲みません」


「覗きは?」

「しません」


「盗聴は?」

「いたしません」


「ショタは?」

「不健全です」


レオンはユリウスの槍を必死に受け流しながら叫んだ。

「なんでディベート対決!?」

あちこちで激しい戦闘が繰り広げられる中。

カロンとエリシアの周囲だけは、不思議なほど

平和?な空気が流れていた。


「戦いに集中しないか!!」

ユリウスの一喝が戦場に響いた。

次の瞬間


レオンが「しまっ――」と気付くより早く、ユリウスの鋭い蹴りが腹部へ深々と突き刺さる。

ドゴォッ!!


「ぐっ……!」

衝撃でレオンの身体が数メートル吹き飛ぶ

地面を二度、三度と転がる

しかし

「まだだ……!」

片膝をついたまま警棒を支えに立ち上がり、即座に構えを取り直した。


その姿を見た沙耶が叫ぶ

「レオン殿!」

ユリウスは一切追撃を焦らない

剣と槍を静かに構え直し、二人を同時に見据えた。

「その程度の連携では、私には届かない。」


一方――

エマ達の戦況も芳しくなかった。

「いい加減、降参したら!!」

イリスが放つ無数の魔弾が雨のように降り注ぐ


「っ!」

エマは地面を転がりながら弾幕をかわす


その着地点には、すでにアルベルトが待ち構えていた。

「貴様らは勝てぬ……」

重厚な拳が唸りを上げる


エマは紙一重で身をひねり、その一撃を回避した。

拳が地面へ叩きつけられた瞬間、周囲の地面が砕け散る


魔弾そして肉弾戦。

二人の波状攻撃は一切隙がない


スタオンヌは悔しそうに唇を噛んだ。

「壁役さえいなければ……」

エマも苦笑しながら銃へ新たな弾を込める。

「ホント…それなら魔道士くらい、粉々にしてやれるんですがねぇ……」


イリスは思わず顔を引きつらせた。

「な、なに怖いこと言ってんの!?」

そのやり取りすら、攻撃の手は止まらない


後方では、リバティーナ達を護衛する三人も固唾を呑んで戦況を見守っていた

エルナが思わず一歩踏み出す

「スタオンヌ殿……!」


だが、スタオンヌは振り返ることなく小さく手を上げた

「大丈夫です……!」

その瞳には焦りがあっても、決して諦めはない。

「リバティー達を守っていて下さい……!」

エマも三人を制止する

「ここは、私達で何とかします!」


一方。

激しい戦闘が続く街道の片隅で、カロンとエリシアはまるで別種の戦いを繰り広げていた。

「え?」

カロンは心底不思議そうに首を傾げる。

「じゃあ普通の賢者って、時間停止とか未来視とか世界線創造とか出来ないの?」


エリシアは目を瞬かせた。

「なんですか、それ……?」

少し考えた後、困惑したまま答える。

「普通は……出来ません。」


「マジかよ……。」

カロンの中で賢者という存在の格が音を立てて崩れていく


その会話を聞いていたアルベルトが、イリスを庇いながら声を張り上げた。

「エリシア……!」

飛来する弾丸を盾で弾き返す。

「そいつのペースに乗らされるな……!」


カロンは露骨に眉をひそめた

「うるさいな……。」

胸の前で両腕を交差させ、軍荼利印を形作った

「黙ってろ。」

次の瞬間、アルベルトの身体が大きく跳ねた

「……ッ!!」


盾が手から滑り落ちる。

「ぐああああぁぁぁっ!!?」


巨体が地面へ崩れ落ち、全身を掻きむしるように藻掻き始めた…

毒も効かない、酸にも侵されない、銃弾すら通さない


これまでありとあらゆる殺人級の技を防ぎ切ってきたパラディンが、今まで経験したことのない耐え難い激痛に絶叫していた


まるで神経の一本一本へ焼けた針を突き刺され、内臓を内側から食い破られているかのような苦痛

「アルベルト!?」

イリスが慌てて駆け寄る


エリシアも初めて明確な動揺を見せた

「なんですか、その技!?」

カロンは印を維持したまま、平然と答える。

「殻が硬いなら、内部だろ、安心しろ幻痛だ……ちょっと腎臓と尿管と膀胱に石が詰まったような感じにしたけど」


指一本動かさず、アルベルトを見下ろす。

「内臓も神経も無傷だ。死にはしねぇよ。」


「ぐああぁ……貴様……!」

アルベルトは震える腕で、どうにかカロンを睨みつける


だが、それ以上に恐ろしい視線が、別の方向から向けられていた。

エマとスタオンヌが、同時にアルベルトを見る。

二人の口元が、ゆっくりと吊り上がった。

「…………。」

「…………♡」

アルベルトの顔から、苦痛とは別の意味で血の気が引く。

「……あ。」

エマがリボルバーの撃鉄を起こす

スタオンヌも白衣の内側から、新たな薬瓶を取り出した

「あ、ちょ……」

二人は無言のまま歩み寄る

「やめ……」

「ユリウス…助け…」

アルベルトとイリスの懇願は、誰にも聞き入れられなかった


その頃。

「なんか……あっちは片付いたようだな……。」

レオンはちらりと横目でカロン達を見る

遠目にも、アルベルトが地面を転げ回っているのが見えた

沙耶も小さく頷く。

「流石は殿でござる。」


その声に、ユリウスの表情が変わる。

「アルベルト!イリス!!」

視線の先には、苦痛に呻く仲間


勇者としてではない。

仲間を案じる、一人の青年としての叫びだった。

だが、その前へ二つの影が立ちはだかる


レオンが警棒を向け不敵に笑う

「行かせねーぞ!」

沙耶も仕込み杖を構え直し、静かに踏み込む

「貴殿の相手は、拙者達でござる!」


ユリウスは悔しげに歯を食いしばる

「おのれ……!」

仲間を助けたい。

しかし、目の前の二人も決して突破できる相手ではない


数瞬の葛藤の後。

ユリウスはゆっくりと息を整え

右手に剣

左手に槍

二つの武器を静かに構え直す


その瞳に宿る決意は、少しも揺らいでいなかった。

「……しかし、勇者の誇りに賭けて!私は、ここを退かぬ!」

その宣言と同時に、剣先と槍の穂先が僅かに揺れる。


再び緊張が張り詰めた


ところで…ユリウスはなぜここまで徹底して高潔な生き方を貫くのか

それには理由があった


幼い頃

学校の図書室で、一冊の本と出会った。

そこに記されていたのは、授業でも何度も習った

"伝説の勇者"と呼ばれる男

ノーザン・クレイン


魔族から人々を守り

困っている者へ迷わず手を差し伸べ

己の名誉より誰かの笑顔を選び続け

僅かな仲間と共に世界を救った英雄

ページをめくる度に胸が熱くなった

何度読み返したか、もう覚えていない

本は擦り切れ、角は丸くなり、それでも読み続けた。


(これほどまでに……全人類の希望となった男が、他にいるのか…)


あの日から決めていた

自分も、誰かを救う人間になると

だから学問に励んだ

剣を学んだ

槍を磨いた

私欲を捨てた

誰かを押しのけるためではない

誰かを守るために…

やがて衛兵となり

そして今、再び世界へ広がろうとする魔王の闇へ立ち向かっている

それが、自分の使命だと信じて


……………だが


胸の奥には、たった一つだけ。

誰にも話していない願いがあった


旅に出る前、ユリウスは静かに隣を見る

「エリシア……」


名を呼ばれたエリシアが優しく微笑む

「はい、ユリウス様?」


ユリウスは少しだけ視線を逸らした。

「無事に魔王を倒し……この旅が終わったら……」

一度、言葉を切る。

「君に伝えたいことがある。」

その横顔は、勇者ではなく一人の青年だった


「その時は……隣で聞いてくれるかい……?」

エリシアは一瞬だけ目を丸くした。

だが、その意味を深く尋ねることはしない

静かに胸へ手を当て、真っ直ぐ頷いた

「……はい。」


その瞳には、一片の迷いもない。

「誓います…賢者の誇りに賭けて」

そして、小さく微笑む。

「必ず共に生き延びて帰りましょう。」

その約束だけを胸に……


勇者は再び戦場へ視線を戻した


(勇者の使命を果たす……)

ユリウスは剣を握る手に力を込める

(必ず魔王を倒し……そして、この旅が終わったら、好きと伝える……だから今は――"仲間"でいてくれ……エリシア……!)

決意を胸に、そっと彼女へ視線を向ける


だが…

その瞬間…

ユリウスは自分の目を疑った


ルーナが真っ先に一歩踏み出し、満面の笑みで胸を張る

「そうっすよ!賢者さん!カロンさんはアタシ達を助けて、生きる道まで用意してくれたんですよ!」


エルナも静かに続ける。

「カロン殿を、ただのギャングと一緒にするのは御門違いにも程がある……」


ミラは優雅に微笑み、胸へ手を当てた。

「ご主人様には、命を賭けても構わないくらいの信頼がありますわ♡」


「その通り!」

聞き覚えのある低く響くイケボ

白いタキシードを身にまとい、飄々とした態度、

いつの間にかテラが腕を組み、堂々と立っていた

「カロン様は迷惑な輩を、誰にも迷惑を掛けず密かに、しかし華麗に片付けてくれた!私達もスタッフも救ってくれたのさ!それを平然とやって退けるくらいの力と知恵を持っている!」


さらに

杖をついた狐鞠が、いつの間にか隣に現れる。

「おぬし達は、この男の"本質"を知って絡んでおるのかのぉ?」


レオンは思わず二人を見て思った

(テラと狐鞠、いつ来たんだよ……。)


一方エリシアは静かにカロンを見つめていた

その瞳は、先程までとは違う色を帯びている


「カロンさん……」

ぽつりと呟く。

「私の知らない世界をたくさん知っている…

そして、粗暴に見えて……」


周囲を見渡す、彼を信じる仲間達、命を預ける者達

その誰もが、迷いなくカロンを慕っていた


エリシアは胸へ手を当て、小さく微笑む。

「こんなにも慕われて……」

頬がほんのり赤く染まる。

「……素敵な御方♡」

そして…花が咲くような笑顔で言った

「私、感銘を受けました♡」


その一言は、魔王軍の一撃でも、ドラゴンの咆哮でも

どんな攻撃よりも深く――

勇者ユリウスの心へ突き刺さった



「貴様ァァァァァァァッ!!」

街道に怒号が轟いた

先程まで冷静沈着だった勇者の姿はどこへやら…

怒りに任せ、ユリウスは一直線にカロンへ突撃した。


「ユリウス殿!?」

「無視かよ!」

レオンと沙耶を完全に無視して駆け抜ける。

振り下ろされた剣を――


ガキィィン!!


カロンは金属バット一本で受け止めた。

「なんだよ急に。」

まるで近所の知り合いに話しかけるような口調だった。

慌てたエリシアが駆け寄る。

「ユリウス様!落ち着いてください!カロンさんと争う理由は――」


「黙れ!!」

ユリウスは怒りに震える声で叫ぶ。

「許さない……!ノーザン・クレイン様を冒涜し!挙げ句の果てには、エリシアを悪の道へそそのかすとは!!」


「……あー、そういう感じか…」

カロンは何かを察したように頬を掻いた。

「察したわ…アンタ、じいちゃんのファンなんだっけ、なんでそんな真面目過ぎんだよ?じいちゃんでももう少しは抜くとこは抜いてたぞ?」


「それが――!」

ユリウスは一歩踏み込み、剣先を突き付ける。

「それが、あの人の生き様だ!」

誰よりも高潔で!誰よりも誠実で!

誰よりも民を想い!私が見た英雄の姿だ!!」


カロンは鼻で小さく笑った。

「……中途半端にしか調べて無いな。」


「なんだと?」

ユリウスの額に青筋が浮かぶ


カロンは肩の力を抜き語る

「じいちゃんもさ、魔王を倒す前には…

ばあちゃんとヴィヴィ婆さんの二人抱いてたぞ?」


「…………。」

戦場全体が静まり返る


「同時に迫られてたから、『明日死ぬかもしれない…だったら二人の気持ちを受け止める』ってな、

結果、二人とも幸せにした」


今度はカロンが“ユリウス”と“ノーザ”を比較した

「それをアンタ、自分はあの人に…とか言いながら、賢者が見た事無い笑顔で笑ったらブチギレかよ?」


ユリウスの額の青筋が更に濃くなる

しかしカロンは構わない

「禁欲で強くなれるのかよ?少なくともじいちゃんは禁欲は途中で辞めたぞ?」


レオンは思わず額を押さえる。

「いや、情報量……」


沙耶も目を丸くした。

「勇者殿が……二股……?」


エリシアも固まる。

「え……?」


ユリウスだけは首を横へ振り続けていた。

「違う……そんなはずがない……

貴様……!どこまで勇者を馬鹿にする気だ!!」


だがカロンは少しも悪びれない。

むしろ穏やかな目で答えた

「別にいいだろ、俺にとってノーザン・クレインは、勇者じゃない」


少しだけ笑う


「ただの優しいじいちゃんだ。」


その一言は、英雄を神格化していたユリウスと、家族として見てきたカロンの決定的な価値観の違いを、何よりも雄弁に物語っていた。


「貴様のような……!」

ユリウスの肩が震える。

「学も!」

「実力も!」

「信念も無い男が……!」


剣先をカロンへ突き付け叫んだ

「あの人の家族を騙るなぁぁぁぁぁぁ!!」

その声には怒りだけではない

憧れを穢されたと思い込んだ悲しみと

見た事の無いエリシアの笑顔、それを向けられたのが自分ではない、カロンだった事への悔しさが滲んでいた


しかし――今の発言

学、実力、信念

ユリウスは、カロンという男を知らな過ぎた。


カロンは何も言わない。

ただ静かに、ユリウスを見つめている。

やがてユリウスの剣が淡い黄金色の光を帯び始めた


それは五十四年前

伝説の勇者ノーザン・クレインが聖剣ニルヴァーナで魔王の首を刎ねた究極の一撃


子供の頃から私利私欲を捨て、必死に鍛え、そして

やっとの思いで体得した奥義

ユリウスは全身全霊を込めて叫ぶ

「セラフィックスラッシュ!!」

剣を振り抜いた

轟音と共に、黄金の斬撃が街道を一直線に駆け抜けた


誰もが息を呑む

だがその正面でカロンは静かに金属バットを構えた

「……」

バットもまた、淡く黄金色に輝き始める


ユリウスの目が見開かれた。

「なっ……!」


カロンは軽く肩を回すように構える

そして

「セラフィックスラッシュ。」

一拍置いて、小さく付け足した。

「(殴打)」


ブォンッ!!

黄金の打撃が放たれる。

斬撃ではない、ただの一振り

しかし、その一撃は真正面からユリウスの光刃へ

ぶつかり――

ドォォォン!!


黄金の斬撃を粉々に打ち砕いた。

「!!?」


砕け散った光の向こうからなおも、勢いを失わない打撃が迫る。

「ぐああぁぁっ!!」

ユリウスは咄嗟に剣を盾にしたものの防ぎ切れない

衝撃に吹き飛ばされ、地面を大きく滑ってようやく止まった


誰も言葉を発せない。

膝をついたユリウスは震える声で呟く。

「なぜ……」

息を切らしながら顔を上げる。

「なぜ勇者の奥義を……貴様のような……」


カロンは金属バットを肩へ担ぎ直しあっさり答えた

「じいちゃんの教え方が上手いからかな」

その一言に


ユリウスは完全に言葉を失った

憧れ続けた英雄

本でしか知らない勇者の技、自分が鍛錬以外の全てを捨てて会得した技を…


家族として隣で教わった少年がごく当たり前の

ように使ってみせたのだった


カロンはため息混じりに言った

「どうする?まだやる?」


ユリウスは何も答えない

ゆっくりと立ち上がる

震える足と傷だらけの身体

それでも、その瞳だけは決して折れていなかった。

「私は……!」

剣を握り直す

「負ける訳にはいかない!!」


雄叫びと共に駆ける

狙うはカロンの首

鋭い斬撃が一直線に走る


しかし、カロンは静かに呟いた

「セラフィックバースト(殴打)」


――消えた

「!?」

ユリウスの視界からカロンの姿が完全に消失する


次の瞬間背後から声が聞こえた

「後ろ。」


ドゴォォン!!

黄金の光を纏った金属バットが、ユリウスの背中へ叩き込まれる。

「ぐはっ……!?」

そのまま地面を大きく跳ね、数メートル吹き飛んだ


これもノーザン・クレインの窮地を幾度となく覆した切り札、敵の背後への瞬間移動斬り


セラフィックバースト

それを――金属バットで再現してみせた


スタオンヌは思わず頬へ手を添える。

「カロン様……♡」

沙耶も目を見開いた。

「英雄の奥義を……あんなにも軽々と……」

リリーナは満面の笑みで拳を握る。

「流石、カロンくん!」


だが

「まだだ……」

ユリウスは再び立ち上がった

膝は震え、呼吸は乱れ

全身が悲鳴を上げている

それでも認めない、認められない

ここで倒れる事は今日までの自分の全てを否定する事になる


その精神力だけが彼の身体を動かしていた

カロンは静かに、そして少し困ったように笑う

「そろそろ帰ってくれないかな?」


次の瞬間

カロンの構えが変わる

その型を見た沙耶の表情が凍りついた。

「あれは……!まさか……!」


カロンは静かに告げる


六道斬り 五ノ型 餓鬼道 千手観音


二刀流を極めたノーザン・クレインが

日ノ本より託された一振りの刀と放つ、

ノーザのもう一つの奥義



千手二十八部蓮華王



だがカロンの手にあるのは刀ではない

一本の金属バット


「え」


ユリウスが目を見開いた、その瞬間

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!



斬撃ではない、超高速の多重打撃

まるで千本の腕が一斉に打ち据えているかのようだった

「ぐあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

ユリウスは怒涛の打撃に飲み込まれ、最後には大きく宙を舞う


そして――

ドサッ

街道へ仰向けに倒れ込み、ついに動かなくなった。

静寂が訪れる。

レオンは頭を掻きながら苦笑した。

「あーあ……ノーザ様の奥義を、バットでやりやがった」


エマも肩をすくめて笑う。

「久しぶりに見たよね、相変わらず原型が残ってるようで残ってないね……」


街道に静寂が戻る

剣は折れ

盾は傷付き

鎧は砕け

エリシアを除く全員が、満身創痍だった。

エリシアは静かにカロンの前まで歩み寄り、

深く頭を下げる

「カロンさん……ご迷惑をおかけしました……」


カロンはバットを肩へ担いだまま、小さく肩をすくめる。

「別にいいよ、とりあえずラヴィアは家まで送り届ける」


ラヴィアへ一瞬だけ視線を向ける

「追跡はしないでもらうと助かるんだけど……」


エリシアは迷いなく頷いた

「はい、約束致します」

その返事には、もう疑いはない。

そして少し照れたように微笑む

「カロンさん……私、あなた方を勘違いしていました……」


ほんのり頬を赤らめながら続ける

「……また、お会いしたいです♡」


カロンは苦笑しながら後頭部を掻く

「まあ、その内な」


その一言だけを残し、背を向けた。

一同が車へ戻ろうとした、その時だった

街道の真ん中には、待ち伏せに使われた巨大な倒木がそのまま横たわっている


レオンがため息をつく

「で、これどうする?」


カロンは倒木を見上げる。

「しゃあない……引火しないように気を付けて……」


胸の前で印を結ぶ

烏枢沙摩身印

「プロメテウス」


次の瞬間

轟音と共に、巨大な炎塊が倒木を包み込んだ。

炎は周囲へ燃え移ることなく、狙い澄ましたように巨木だけを焼き尽くしていく


やがて炎が収まる頃には、そこに残っていたのは僅かな灰だけだった


風が吹き、白い灰は空高く舞い上がり、空へと溶けていく。カロンは満足そうに頷いた。

「よし、行くか」


バイク、ガーディアン90、ククリRPVがゆっくりと走り出す

開かれた街道を、三台は一直線に進んでいった

後方では、エリシアが静かに手を振っている


こうして――

勇者と勇者の孫の邂逅は幕を閉じた。

今見返してみたらノーザってセラフィックバースト滅茶苦茶多用してたなと…


一応エリシアの見た目作りました、多分コイツは愛人枠にはならないと思います↓

オリキャラ エリシア | 福島ナガト #pixiv https://www.pixiv.net/artworks/147917942

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