↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
25/42

全ての鍵を

カロンって元は歴代最高にヤバい奴にしようと思ってたんですが、なんか当初の予定より悪人に出来てないなと…

街道を走る風は心地よかった

 

空は高く、雲はゆっくり流れ、旅路は続いている。

 

だが――

以前とは少しだけ違っているのは人数が増えたのだ

 

笑い声も、会話も、面倒事も

確実に増えている

 

先頭を走るのは、いつも通りカロンのバイク

エンジン音を響かせながら道を駆け抜けていく

 

その後ろ、スタオンヌはカロンの背中に身体を預けながら小さく微笑んだ。

「にぎやかになりましたね、カロン様」

 

風に髪が揺れる


カロンも少し笑う。

「そうだな」

 

前を見たまま答える。

「面倒も四人分増えたけどな」

 

スタオンヌがくすっと笑う。

「それでも受け入れてしまうのがカロン様です♡」

 

カロンは否定はしなかった。

 

 

旅とは不思議なもの、最初は二人だった道が

気づけば四人になり、五人になり、十人を超えている。

そして、その賑やかさが少しずつ“当たり前”になっていく。

 

 

一方、ガーディアン90

軍用車両らしい頑丈な車体が街道を走っていた。

 

運転席にはレオン。

 

助手席にはリバティーナ。

 

後部座席にはルーナ、エルナ、ミラ。

 

 

ミラが窓の外を眺めながら感嘆する。

「車で移動……初めてですわ……」

 

景色が流れていく

馬車とは比べ物にならない速度

身体も揺れない、快適だった。

 

エルナも珍しく感心している。

「今までが徒歩や馬車ばかりだったからな……これは凄い」

 

 

ルーナも頷く

「レオンさんもありがとうございます」

少し頭を下げる

 

レオンは少し照れ臭そうに笑った。

「気にするなよ」

ハンドルを握りながら答える。

「君達も苦労してたんだな」

 

ルーナが苦笑する。

「まあ……色々と」

 

ミラが小さく呟く。

「主にジーク様が原因ですけれど」

 

全員が頷いた

 

レオンまで頷いた。

「だよな」

 

車内に小さな笑いが起きる。

 

その様子を助手席のリバティーナは見ていた。

「……」

 

少しだけ、ほんの少しだけ頬が膨らむ。

(やっぱり……)

視線がちらりとレオンへ向く。

(レオンさんが他の女性と喋ってるの……)

面白くない。

 

もちろん分かっている、レオンが優しいだけだと

ルーナ達に下心なんて無いと。

でも


(なんか……)

 

胸の奥が、もやっとする

恋人になって初めて知った感情だった。


レオンは当然気づいていない

後ろの三人と普通に話している。

 

リバティーナの頬は、さらに少しだけ膨らんだ

今まで知らなかった感情を知る

 

当のレオンは…

「なんでリバティー機嫌悪いんだ……?」

 

全く理解していなかった。



ククリRPV。

 

車内には、妙な疲労感が漂っていた。

 

原因は一人しかいない。

 

助手席。

 

ジークが腕を組み、窓の外を眺めながら偉そうに頷いていた。

 

「ふむ……」

 

無駄に深刻そうな顔。

 

「中々の乗り心地だ」

 

誰も聞いていない。

 

「やはり勇者たる俺に相応しい乗り物だな」

 

 

沈黙…リリーナは窓の外を見ながら呟く

「はぁ……」

 

深いため息。

「スタオンヌちゃん、たまには替わってくんないかな……」

 

沙耶も真顔で頷く。

「最悪、荷台に縛っておくでござる」

 

「それ良いわね♡」


二人とも本気だった。


世の中には“同じ空間にいるだけで疲れる人間”と

いうものが存在する。

 

しかし当の本人は気付いていない。

ジークは運転席のエマへ向き直り

髪をかき上げる、相変わらず無駄にキメ顔

 

「それにしても」

ニヤリ

「君も助手席に乗れだなんて……」


エマは何を言い出すかと言うような視線を向ける

「?」


そんな冷めた視線を勘違いしたのかジークは続けた

「僕を隣に置きたいのかい?」

 

車内の空気が凍る。

 

エマは数秒考えた。

 

そして、本当に真面目な顔で答える。

 

「そうですね」

 

「ほう♡」

 

エマは笑いながらも蔑むような表情で言い放った

「事故った時、その席が一番危険なので」

 

後部座席で二人が吹き出す。

「アハハハハハ!!」


「エマ殿、切れ味が増してるでござる!!」

 

 

「貴様らーーー!!」

 

 

ククリRPVの車内は今日も平和だった。

少なくともジーク以外にとっては


一行は次の宿泊予定地を目指し走る

そして街道を抜けた先、そこにあったのは、

小さな村だった。

 

石造りの家々、畑、井戸

どこにでもありそうな、素朴な村。

だが――

 

「……」

 

カロンはバイクを停めながら周囲を見渡した。

何かがおかしい…人はいる、生活の気配もある

なのに活気が無い

 

まるで村全体が重たい空気に包まれているようだった。

 

後続のガーディアン90とククリRPVも到着する。

 

エンジンが止まり。

静寂が戻る。

 

カロンはヘルメットを外した。

 

「今日はここで休もう」

 

魔王軍も目立った動きも最近は無い、特に急ぐ理由も無かった、一行はそれぞれ荷物を降ろし始める。

 

その横でジークが村を見回しながら鼻を鳴らした。

 

「ふん」

 

腕を組む。

 

「田舎だな」

 

 

リリーナが即座に反応した。

「アンタさぁ……その口、いつか本当に縫われると思うよ?」

 

しかし当の本人は全く気にしていない。

やがて一行は自由行動となった。

 

レオンとリバティーナは村の市場へ

 

ルーナ達も久しぶりの自由時間を楽しみに歩いていく

 

カロンは自然とスタオンヌと並んで歩いていた。

 

指先が触れ、そしていつの間にか手を繋いでいる。

それがもう当たり前だった。

 

村の道をゆっくり歩いていると

風が吹き、遠くで子供達の声が聞こえてくる。

 

「静かだな……」

 

カロンが呟く

スタオンヌも周囲を見渡した。

 

「そうですね……」

 

しかし、2人は少し考える

「なんだか……」

 

スタオンヌの表情が曇った

「村の皆さん、沈んでいるような……」

 

確かにそうだった

畑仕事をしている男も、水汲みをする女性も。

皆どこか暗い、笑顔が見当たらない。

 

長く旅をしていると分かる。

人の表情には、その土地の事情が映る。

そして今、この村には――

明らかな“不安”があった。


一方その頃

レオンとリバティーナも村の中を歩いていた。

 

小さな市場に畑仕事をする農夫達

一見すると平和な村、人がいない訳でも貧しく訳でもなさそうだか…

 

しかしレオンは周囲を見回しながら首を傾げる。

 

「……なんだかおかしいな」

 

風が吹きそれに合わせて洗濯物が揺れる

子供達もいる

生活の音も聞こえる

なのにどこか静か過ぎた

 

リバティーナも同じ事を感じていた

「何かあったんですかね……?」

 

道行く村人を見る。

視線を合わせると慌てて逸らす者。

俯きながら歩く者

 

井戸端で話していた女性達も、どこか不安そうな顔をしていた

 

今この村を覆っているのは――

平穏ではなく、怯えだった。

 

レオンは小さく頷く

「何かあるな」

 

腰の拳銃に軽く触れる。

「出来れば俺の勘が外れて欲しいけど」

 

リバティーナも頷いた

「そうですね……」

 

 

だが二人の願いは数分後、

広場から響き渡る聞き慣れた大声によって打ち砕かれる。

 

「なんだとぉぉぉ!!!?」

聞き覚えしかないナルシストボイス。

 

カロンとスタオンヌにも聞こえた

「……あっ」

「あっ……」

 

二人同時だった、嫌な予感しかしない。

 

声の方向へ向かう、すると案の定。

村人を捕まえて話しているジークの姿があった。

 

村人は困り果てた様子で説明している。

 

「は、はい……巨大な魔物が村を襲い……娘を生贄に要求するのです……」

 

その瞬間、ジークがマントを翻した

「良かろう!!」

 

誰も頼んでいない。

「この真の勇者!!」

 

やっぱり言った。

「ジーク・バルサローザが!!」

 

 

さらに言う

「忌まわしき魔物を討伐して来てやろう!!」

 

「えっ」

村人も若干引いている。

 

 

その後ろでルーナが頭を抱えた。

「おい!!勝手に引き受けんなって!!」

 

エルナも深いため息を吐く。

「また余計な事に首を突っ込んで……」

 

ミラは天を仰いだ。

「カロン様達にまた迷惑を……」


村の中央広場、いつの間にか人が集まり始めていた。

 

巨大な魔物

生贄

討伐

 

そんな物騒な単語が飛び交えば、この男が食い付くのも無理はない…

村の危機をジークは待っていましたと言わんばかりにチャンスとして盛り上がっていた

 

マントを翻し無駄に風を受け、誰も求めていないポーズを決めた

「と言う訳だ!!これぞ英雄の誉れ!!」

 

ルーナ達三人は既にぐったりしていた。

「誰も頼んでないんだよなぁ……」


「聞いてるだけで疲れる……」


「まだ加入初日ですのに……」

 

そして少し離れた場所

カロン達も状況を見守っている。

 

レオンが腕を組む。

「どうすんだカロン?」

 

カロンは頭を掻いた。

 

目の前ではジークが絶好調である、

「征くぞ!!我が勇者隊よ!!悪を討ち滅ぼし!!伝説を刻むのだ!!」

 

村人達は冷静だった

 

「勇者隊?」

 

「いつ結成されたんだ……?」

 

「ていうか後ろの人達嫌そうじゃない?」


カロンは深いため息を吐き、少し空を見上げる

「まあ……出した手引っ込めるのは好きじゃないし……」

仲間にした以上は最低限の面倒は見る

それがカロンだった

 

「まったく……」

 

「ハハハハハハ!!震えて待っていろ魔物よ!!

真の勇者が来たぞぉぉぉ!!」

 

森へ向かって叫んでいた。

ジークはどんどん先へ進む

「遅いぞ貴様ら!!勇者隊の出撃だ!!」

 

誰も返事しない、しかし気付けば

カロン達も歩き出していた。

 

村人達の不安そうな表情

生贄という言葉

そして何よりこのまま放置すると

間違いなくジークが何かやらかす

 

人助けをしようとしている訳ではない

世界を救おうとしている訳でもない

ただ――放っておけないだけだった

 

こうして一行はまたしても厄介事の中心へ向かうのだった。


村を出た一行は、案内役の村人に教えられた方角へと進んでいた。

 

舗装などされていない山道

両脇には深い森が広がり、木漏れ日が地面へ斑模様を描いている

 

風が吹く度に葉が揺れ、

鳥の鳴き声が遠くから聞こえてくる。

一見すれば穏やかな景色だった。

 

だがその先には人を喰らう魔物がいる

そして村人達はそれに怯えながら暮らしている

そんな現実がこの美しい景色に不思議な不気味さを与えていた。

 

先頭を歩くカロンは周囲を見渡す

 

獣道

折れた木

 

踏み荒らされた痕跡

注意深く観察していた

 

 

その隣を歩くスタオンヌが小さく微笑む

「どんな魔物でしょうね?」

 

カロンは肩を竦めた。

「さあな…面倒くさくないといいけど……」

 

スタオンヌはくすりと笑う。

「カロン様らしいです♡」

 

 

世界を救うだの

英雄だの

そんな事はどうでもいい

面倒はこれ以上御免だ

 

その後ろでは一人だけテンションが違う男がいた

「フハハハハ!!」

森に響く高笑い、鳥達が一斉に飛び立った。

「生贄に怯える村を救う!!これぞまさに勇者の名誉!!」

マントを翻しながら歩く。

「後世に語り継がれる英雄譚の始まりだ!!」

張り切っている、もの凄く張り切っている。

 

ルーナが頭を押さえた。

「始まった……」

エルナも深いため息を吐く。

「静かに歩けないのか……」

ミラは遠い目をした。

「魔物より先に居場所を教えてどうするんですの……」

 

一方、レオンはガーディアン90から降ろした双眼鏡で周囲を警戒していた。

「敵がいるなら今頃あいつの声で気付いてるだろうな」

 

リバティーナが小さく頷く。

「確実に……」

 

エマは笑いを堪えている。

「でも…言う事だけは妙に勇者っぽいですよね」

 

リリーナも苦笑した。

「中身が伴えば格好良いんだけどねぇ♡」

 

沙耶も真顔で頷く。

「九割九分伴ってないでござる」

 

十一人になった旅路は賑やかだった


その時…森の奥から――

 

ズシン……

 

何か巨大なものが動く音が響いた

森を進むこと数十分

木々は次第に減りやがて開けた空間へと辿り着く

そこは古びた祠だった。

苔むした石壁と崩れかけた石段、そして中央には、高さ五メートルを超える巨大な扉が鎮座している


村人達の話によれば、この祠から定期的に魔物が現れ、村を襲っているという

重い空気だけが周囲を包んでいた

 

「おおおおお!!」

そんな空気をぶち壊したのはジークだった

「これぞ冒険!!これぞ勇者譚!!」

子供のように目を輝かせながら扉へ駆け寄る

 

ルーナは既に嫌そうな顔をしていた

エルナは額を押さえ、ミラは静かに天を仰ぐ

 

嫌な予感しかしない。

 

ジークは扉を見上げながら顎に手を当てた。

「まずは鍵を探すぞ!」

 

ビシッと指を立てる。

「辺りを散策し、古代の謎を解き、知恵と勇気でこの扉を開くのだ!!」

 

完全に勇者ごっこだった。

 

リリーナが小声で呟く。

 

「始まったわね……」

 

「始まったでござる……」

 

沙耶も遠い目で頷く。

 

その時だった。

 

カロンが無言で扉の前へ出る

何も言わずショットガンを構えた。

 

ジークがまだ何か語っている。

 

「だからまずは鍵を――」

 

ドォォォン!!!

 

ドアにショットガンの銃口を密着させ発砲した

蝶番が吹き飛ぶ。

 

続けて二発目。

 

ドォォォン!!!

 

扉下側も粉砕された。

巨大な扉はゆっくり傾き――

 

ズドォォォォン!!!

 

地響きと共に地面へ倒れた

 

一瞬の静寂の間、鳥達が一斉に飛び立つ

 

カロンはショットガンを肩に担いだ。

「開いたぞ」

 

エマが言う。

「早い」

 

レオンも頷く。

「早いな」

 


ジークだけが納得していなかった。

 

「いや!!雰囲気とかあるだろう!!」

 

カロンは首を傾げる。

 

「魔物倒すのが目的だろ?」


地面に倒れた巨大な扉、その先には暗闇。

まるで巨大な獣が口を開けているようだった。

 

中からは冷たい風が流れ出ている。

 

カロンは中を覗き込み、

「エマとリリーナはククリで待機だ」

振り返りながら言う。

「入口守ってくれ」

 

万が一の退路。

そして後方支援。

 

誰かがやらなければならない役目だった。

エマはすぐに頷く。

「了解」

そしてリリーナを見る

「社長、銃座着いて貰っていいですか?」

 

リリーナは笑った。

「わかったわ!」

 

少し残念そうではある、だが役割の重要性は理解していた。

 

「派手なの来たら蜂の巣にしてあげる♡」

 

沙耶が苦笑する。

 

「一番安全な場所に危険人物を置いた気がするでござる」

 

 

軽い笑いが起こる、だがそれも束の間。

洞窟の奥から吹く風は冷たい

自然と空気が引き締まる

 

カロンはショットガンを肩に担ぎ直した。

「行くぞ」

 

短い一言。

 

それだけで全員の表情が変わる。

 

レオンはライフルを確認する。

 

ルーナ達三人も顔を見合わせる。

 

昨日までなら。

 

ジークの後ろを歩いていた。

 

だが今は違う。

 

自然とカロンの後ろへ集まっている。

 

誰が先頭を歩くべきか。

 

もう答えは出ていた。

 

 

しかしその空気を壊す声、ジークだった。

 

「……お、おい!俺が先頭だ!」

 

胸を張るも、いつもより少しだけ声が弱い

カロン達は立ち止まり、レオンが言う。

「じゃあどうぞ」


ルーナ達も道を開ける。

「ほら」

「先頭」

「どうぞですわ」

 

 

「………」

 

誰も止めない、誰も反対しない。

むしろ譲ってくれる

それが逆に怖かった。

 

洞窟の奥は真っ暗である。

ジークは一歩踏み出す。

 

二歩目が少し遅い。

 

三歩目はもっと遅い。

 

 

その後ろで。

 

カロン達は静かに見守っていた。

 

 

人は口では何とでも言える。

だが先頭に立つという事は、

本当に危険と向き合うという事だった。

 

闇の中へ足を踏み入れた。


ショットガンって一部ではマスターキーって呼ばれてるらしいですよ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。