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22/42

休日

前半が仲間集めに集中し過ぎた気がしたんですが、やっとこの作品のタイトルらしい回になってきたと思います

今後はこういう回も増やして行きたいです。

朝は静かに始まる

昨日までの喧騒が嘘のように、

窓の外には穏やかな光が差し込んでいた


レオンはゆっくりと目を覚ます

まだ意識がはっきりしないまま、

ぼんやりと天井を見つめ――

「……!」

次の瞬間、完全に覚醒した

腕の中の温もり

そして、柔らかく寄り添う感触

視線を落とすと――

そこにはパジャマ姿のリバティーナがいた

規則正しい呼吸

少しだけ乱れた髪

そして、近すぎる距離

「……っ」

声にならない

心臓が、一気にうるさくなる。

 

その気配に気づいたのか。

リバティーナがゆっくりと目を開ける。

まどろみの中でレオンを見上げる。

「……あ……」

ほんの少し、頬が赤くなる。

「レオンさん……おはようございます……」

小さな声そしていつもより少しだけ柔らかい

レオンは一瞬言葉に詰まりながらも、なんとか返す

「お……おはよう、リバティー……」

明らかにぎこちない

 

だが。

離れようとしない。

離せない

 

気まずい沈黙

でも、嫌じゃない。

 

そして――

昨夜の事が、ゆっくりと思い出される。

ロイの話、壊れた関係、戻らなかった想い…

もし自分達が同じ立場にあったら…

 

レオンは、ほんの少しだけ視線を逸らす

(……そうだ)

思い出す

リバティーナが、不安そうにしていたこと。

“失う事”への恐怖。

それを埋めるように――

二人で過ごした夜。

 

リバティーナもまた、同じ事を思い出していた。

ほんの少しだけ腕に力が入る

レオンの胸にそっと寄り添う。

 

失う事を知った2人は少しだけ臆病になっていた

だから――確かめるように温もりを求めてしまう。

 

レオンはゆっくりと息を吐く

そしてほんの少しだけ、腕の力を強めた。

逃がさないように

安心させるように

 

「……大丈夫だ」

小さく、呟く。

誰に向けた言葉かも分からないまま。

 

リバティーナは、その胸の中で目を閉じる。

「……はい」

短い返事。

だがその声には、確かな安堵があった。

 

朝の光は、優しく部屋を照らしている。

何も起きない一日が、これから始まる。

――それはきっと、

今の二人にとって、一番必要な時間だった。


朝の光が、街をやわらかく照らしていた。

昨日までの重たい空気が、少しだけ薄れている。

すべてが終わったわけじゃない。

けれど――確実に、一区切りはついていた。

 

宿屋の前。

荷物をまとめたカロン達の前にロイが立っている

顔色はまだ万全じゃない

けれどその目には、もう“迷い”はなかった。

 

「カロン……皆……」

一歩、踏み出す。

「本当にありがとう……」

まっすぐに頭を下げる。

「カロン達がいなかったら……俺は、ずっと弱いままだった」

その言葉は、飾り気がない。

だからこそ、重かった。

 

カロンは、そんなロイを見て――

あっさりと肩をすくめる。

「気にすんなよ」

軽く笑う。

「まあこっちも、ムカつく奴を女の子にしてやるのは中々楽しかったぜ」

最低だった


レオンが即座にツッコむ。

「お前なぁ……」


リバティーも苦笑する

「もう少し……言い方が……」

だが、ロイは少しだけ笑った

その“軽さ”に救われたように

 

その時、リリーナが一歩前に出る

手には名刺と書類が、

それをすっとロイに差し出し笑った

「はい、これ」


ロイが受け取り、一瞬フリーズした

「………大企業…!?」


リリーナはいつもの余裕ある笑みを浮かべる

「仕事とか生活に困ったら、ここに連絡して」

軽く顎を上げる

「君、中々真面目で優秀そうだから♪」

少しだけ楽しそうに

「アタシ推薦で、即採用できるわ」

さらっと、とんでもない事を言う


エマが横でぼそっと呟く

「社長権限フル活用ですね」


リリーナは悪びれもしない。

「当然でしょ♡」

 

ロイは、しばらくその名刺を見つめる。

それは――

“これから”に繋がるものだった。

 

「……ありがとう」

小さく呟き、そして顔を上げる。

「本当に……」

その目には、もう“過去”は映っていない。

 

誰かに救われて強くなるんじゃない。

“前を向くきっかけ”を得て、自分で歩き出せる

 

カロンはバイクにまたがる。

「じゃあな、ロイ」

それだけだ、振り返らない。

 

レオン達もそれぞれ車に乗り込む

準備はもう終わっていた。

 

ロイは、その場に立ったまま。

走り出す一行の背中を見送る。

 

もう、追いかけない。

 

ただ。

少しだけ笑って――

自分の足で、歩き出した。

 

別れは終わりじゃない。

それぞれの道が、

そこから始まるだけだ。

 

そして。

カロン達の“何も起きない一日”が、幕を開ける。


街は、穏やかだった。

昨日までの濁った空気とは違う、

人の営みがきちんと流れている場所


行き交う人々の笑い声。

――ようやく“普通の街”に辿り着いた、そんな感覚だった。

 

沙耶が周囲を見渡す。

「前よりは落ち着きのある街でござるな」

どこか安心したように呟く


レオンも軽く頷く。

「だな……」

そして、すぐに現実へ戻る。

「今日はどうするんだ?できる限り先に進んだ方がいいかとは思うが……」

旅はまだ続く

目的も、変わっていない。

 

その問いに。

カロンは、少しだけ空を見上げて――

「……今日は何もやらない」

あっさり言った

 

「は?」

理解が追いつかない。

カロンはそのまま続ける。

「働き過ぎだろ、俺ら」

真顔だった。

 

レオンは即座にツッコむ。

「いやいや!!働いて無いだろ!?」

間髪入れない。

「チンピラ一人に一週間かけて嫌がらせしまくってただけだよな!?」

完全に事実だった。

 

だが。

カロンは聞いていない。

腕を組み、堂々と宣言する。

「今日は休みだ!」

絶対だった。

 

リリーナがくすっと笑う。

「いいじゃない♡たまにはそういうのも」


エマも頷く

「賛成〜」

完全に乗り気

 

リバティーは少し戸惑いながらも、レオンの方を見る。

「……どうします?」


レオンはため息をつく

「……決まってるだろ」

カロンを見て諦めた顔

「どうせ言っても聞かない」

 

カロンは満足そうに笑う。

「よし、決まりだ!好きに遊べ!」

 

何も起きない一日。

それは、退屈ではなく――

“余裕のある者だけが持てる時間”だ。

 

その頃――

遥か遠く、魔王城

薄暗い玉座の間

グランが、静かに呟く

「……来ない……」

ぽつり。

誰にも聞かれない声。

 

世界は、動いている

だがカロン達は今日は動かない

ただそれだけだ。

 

市場のざわめきの中

“休み”という言葉に、誰よりも静かに反応していたのは――実はリバティーナだった

ほんの少しだけ視線を泳がせる


そして勇気を出すようにレオンの袖を軽く引いた

「あの……レオンさん……」 


レオンが振り返る。

「どうした?」


リバティーナは周囲を気にするように一度見渡して

こっそり距離を詰める

そして小さな声で

「実は……」

少しだけ、頬を染める。

「もうすぐ……暑くなってきますよね……?」


レオンは何の話だ?という顔。

「……ああ、そうだな…?」


だが次の一言で――

「水着……一緒に買いに行ってくれませんか?」

空気が止まった。

 


「み……!?」

理解が追いつかない。

「リバティー!?」

完全に動揺


リバティーナはさらに顔を赤くしながらも、目を逸らさない。

「レオンさんの……好みの物を……♡」

 

レオンの顔が、一気に真っ赤になる。

(無理だろそれは……!!)

だが。

断れるはずもない。

 

「……い、行く」

絞り出すように言う


リバティーナは、ほっとしたように微笑む。

「ありがとうございます……♡」

 

二人は、周囲にバレないように。

ほんの少しだけ距離を取りながら、そっとその場を離れようとする。

完全に“こそこそ”していた。

 

その時。

カロンの声が飛ぶ。

「あ、そうだ二人ともさ……」

同時に固まる

 


「な、なんだ?」「な、なんですか……?」

完全に怪しい

 

カロンは特に気にした様子もなく、軽く手を挙げる。

「お金ある?無いなら配るけど?」

 

レオンは一瞬ぽかんとしてから、即答する。

「あるよ!」

ちょっとムキになる。

「1億ずつ分けたからな!」

リバティーナも頷く

「使い切れる訳ないじゃないですか!」

 

現在の所持金――

レオン:99,875,100ダスト

リバティーナ:99,946,400ダスト

ほぼ減っていない。

 

カロンは肩をすくめる。

「そんなキレなくても……」

 

レオンは咳払いをして、話を戻す。

「……じゃあ、行ってくる」

リバティーナもぺこりと頭を下げる。

「行ってきます……」

 

二人はそのまま少し早足で去っていく

背中が妙にぎこちない。

 

カロンはその様子を見送りながら、にやりと笑う。

「青春だなぁ」

完全に他人事

 

恋は静かに始まる事もある

いつだって少しだけ――ぎこちない。

 

そして。

二人の“普通の休日”が、始まる。


市場の喧騒から、ほんの少し離れた場所。

取り残されたような静けさの中で――

カロン達は立ち止まっていた。

 

リリーナが腕を組みながら少し楽しそうに覗き込む

「カロンくん!どうする?どこ行く?」

期待に満ちた声。

 

沙耶も周囲を見渡しながら首を傾げる。

「急に休みとなると、どうすべきでござる?」

 

スタオンヌは、もう答えが決まっているように微笑む。

「私はカロン様となら……♡」

完全にブレない。

 

エマは指折り数えながら、現実的な事を言う。

「結構やりたい事とか山積みで……」

 

全員、どこか落ち着かない。

“何かしなきゃ”という焦り。

せっかくの休みを無駄にしたくないという感覚。

 

その空気を見て。

カロンは、ふっと息を吐いた。

「まあ待て」

全員の視線が集まる。

 

カロンは、ゆっくりと口を開く。

「休日で一番やっちゃならないのは――時間を惜しんで慌てる事だ」

 

静かな言葉だった。

だが、不思議と全員の動きが止まる。

 

そして。

カロンが向かったのは――

 

早朝のカフェだった。

 

 

木の扉を開けると、柔らかなベルの音。

静かな空間。

窓から差し込む朝の光。

コーヒーの香り。

 

あまりにも“普通”だった。

 

リリーナが少しだけ戸惑う。

「……ここ?」

沙耶も小声で呟く

「もっとこう……休日しか出来ないような事を……」

エマも腕を組む

「効率は……あんまり良くないかも?」

 

だが。

カロンは気にしない。

適当に席に座り、コーヒーを注文

「いいんだよ」

 

 

――しばらくして。

 

気づけば。

空気は、完全に変わっていた。

 

カロンは競馬新聞を広げている。

ペンをくるくる回しながら静かに目を走らせる

 

スタオンヌはスケッチブックを開き、

思いつくままに鉛筆を走らせていた。

窓の外

人の流れ

それらを、紙の上に切り取っていく。

 

エマは、静かな雰囲気の中で帳簿を記入している。

カリカリとペンの音。

普段とは違う落ち着いた軽作業

 

リリーナは、コーヒーを片手に小説を読んでいた。

ページをめくるたびに、表情が少しずつ変わる。

さっきまでの“派手さ”は、どこにもない。

 

そして。

沙耶は――

甘味を口に運びながら、ほっと息をついていた。

「……美味いでござる……」

何もしない、小さく落ち着いて幸せそうに呟く。

 

 

急いでいない、焦っていない。

ただそれぞれの時間を過ごしている

何かをする事だけが、休みじゃない


リリーナは、ふと本から目を離す。

周囲を見渡す。

誰もがそれぞれの“静けさ”を楽しんでいる。

 

そして。

小さく、呟いた。

「……こういうのも……アリね……」

 

その声は、少しだけ柔らかかった。


カフェを出た後。

朝の空気はまだ柔らかく、

街の喧騒もどこか穏やかに感じられた。

さっきまでの静かな時間が、

全員の中に“余裕”を残している。

 

店の前。

自然と足を止めた一行。

スタオンヌが、穏やかに問いかける。

「次はどちらに行きましょうか?」

 

カロンは少しだけ考えて――

ふっと口元を緩める。

「……そうだ!」

軽く手を叩く

「久しぶりに打ちっ放しでも行くか」

 

エマがすぐに反応する。

「あ、いいね」

ノリがいい。

 

一方で。

沙耶は首を傾げる。

「やった事無いでござる」

スタオンヌも興味深そうに頷く。

「気になりますね」

 

その時。

一歩前に出る影。

 

「ふっふっふ………」

 

リリーナだった。

なぜか自信満々。

 

 

――数十分後。

 

打ちっ放し場

 

広い空

開けた視界

乾いた音が気持ちよく響く

 

カキィンッ!!

 

綺麗な放物線。

ボールは遠くへ飛んでいく

 

沙耶が思わず声を上げる。

「凄い飛んだでござる……!」

目を丸くしている。

 

スタオンヌも感心したように拍手する。

「リリーナさん、凄いですね……!」

 

エマが横でニヤニヤしながら聞く。

「社長、スコアどのくらいですか?」

 

リリーナはクラブを肩に担ぎ、軽く髪をかき上げる。

「いつもは82くらいかな?」

さらっと言う。

「たまに70台になるくらい〜?」

 

完全にガチ勢だった。

 

カロンが思わず笑う。

「凄えな」

素直に感心する。

「俺も良くて89くらいなのに」

 

リリーナが少し得意げに笑う。

「でしょ?」

 

エマが茶化す。

「社長、こういう“普通の遊び”は強いんですね」

 

リリーナは少しだけ考えて――

ふっと笑う。

「……まあね」

軽くボールをセットする。

「お金使わなくても、楽しい事ってあるのね」

 

その言葉は、さっきよりも自然だった。

 

そしてもう一度――

カキィンッ!!

 

気持ちのいい音が空に響く


スタオンヌはクラブを構えたまま、少し困ったように首を傾げる。

「……結構難しいですね……」

思ったよりも力の入れ方が分からない。

振っているつもりでも、ボールは思った方向へ飛ばない。

 

その様子を見て。

リリーナが、にやっと笑う。

「スタオンヌちゃん、ちょっと貸してみて」

自然に後ろへ回り込み、軽く姿勢を整える。

「それ、こう……」

腕の位置を軽く直して、

「腋を締めて――」

少しだけ身体の軸を意識させる。

そして、さらっと一言。

「こういうのはね、体のライン意識した方がいいのよ、ぺぇがデカい人は腋締めにくいから…」

軽くクラブを振る。

 

カキィンッ!!

 

綺麗な音と共に、ボールが真っ直ぐ飛んでいく。

 


「……!」

スタオンヌが目を見開く。

そのまま同じように構えて、振る

 

カキィン!!

 

今度はしっかり当たった。

ボールが気持ちよく空へ伸びていく。

 

「飛びました……!」

少し嬉しそうに微笑む。

 

その様子を横で見ていたエマと沙耶。

 

「………」

「………」

 

なぜか、無言。

 

ほんの少しだけ、同じような構えをしようとする。

 

カロンがすぐにツッコむ。

「おーい?」

呆れた顔。

「お前らは真似しなくても大丈夫だろ?」

 


「え、でも理論的には……」

「拙者も試してみたく……」

 

リリーナはそんなやり取りを見て、くすっと笑う。

「いいじゃない、フォームなんて人それぞれよ♡」

 

上手くなる方法は、一つじゃない。

けれど――

誰かに教わる時間もまた、楽しいものだ。

 

もう一度。

 

カキィンッ!!

 

乾いた音が、空に心地よく響いた。




一方その頃、街の一角。

季節の移ろいはこういう場所に一番分かりやすく現れる

店内の一角には色とりどりの布地が並んでいた

軽やかで、鮮やかで――

“夏”を先取りするような空間。

 

リバティーナは、その前でレオンに寄り添い、

視線が泳ぐ

手に取っては戻しまた別のものを見る。

そして――

小さく、レオンの方を振り返る。

「あの……」

声が少しだけ小さい。

「レオンさんは……どんなのがお好きですか……?」

 

「え……」

完全に予想外、目の置き場に困る。

「いや……その……!」

慌てて言葉を探す。

「リバティーの好みを……選んだほうが……」

完全に逃げに入る。

 

だが。

リバティーナは、ほんの少しだけ首を振る。

視線は逸らしたまま。

それでも、ちゃんと伝える。

「……じゃあ……」

少しだけ間を置いて。

「どれを着て欲しいとかは……///」

最後の方は、ほとんど聞こえないくらい小さかった。

 

レオンの顔が一気に赤くなる。

(無理だろこれ……!!)

だがここで逃げたら終わりな気がした

 

意を決する。

ゆっくりと視線を向ける。

並ぶ水着の中から一つ

 

指を伸ばす

 

純白のビキニ。

シンプルで飾り気がなくて

でも、どこか“特別”に見えた。

 

「……こ、これ……」

声がかすれる。

 

リバティーナは、その指先を見て。

一瞬だけ、息を止める。

 

そして――

ゆっくりと、微笑んだ。

「……はい♡」

 

その一言に、すべてが詰まっていた。

 

言葉は少ない。

でも、距離は確かに近づいている。


街の灯りが、少しずつ色を変えていく。

昼の喧騒が落ち着き、

人の流れが“楽しむ為のもの”へと変わる時間。

 

その頃――

カロン達は、次の目的を決めようとしていた。

 

リリーナが腕を組み、楽しそうに言い放つ。

「今日は貸し切りで高級店行くわよ♡」

完全にいつもの流れ。

 

だが。

カロンは即答だった。

「いや、却下だ」

 


「えー」

露骨に不満。

 

カロンはそれ以上説明せず、歩き出す。

ゆっくりと。

周囲を見ながら。

 

ネオン

店の看板、客の入り

匂い、空気


ただ歩いているだけに見えて――

ちゃんと“選んでいる”。

 

やがて。

一軒の店の前で、足を止めた。

 

外観は、年季が入っている。

派手さはない。

むしろ少し古びて見える。

 

カロンは看板を見て。

窓ガラスの汚れ具合を見て。

ドアの取っ手に目をやる。

 

そして。

「……ここだな」

短く言った。

 

スタオンヌが少し驚いたように微笑む。

「意外ですね、カロン様……」

 

エマは納得したように頷く。

「でも……ロンくん、美味しいお店は見れば分かるんですよね」

 

リリーナは半信半疑のまま、腕を組む。

「ほんとに大丈夫なの……?」

 

 

――中へ入る。

 

扉を開けた瞬間。

空気が変わった。

 

外の古びた印象とは打って変わって、

中は広く清潔感がある

落ち着いた照明

仕切られた半個室

 

沙耶が思わず周囲を見回す。

「内と外で大分変わるでござるな……」

 

リリーナも少しだけ目を見開く。

「……へぇ」

予想外だった。

 

席に通され、メニューを開く。

 

リリーナの表情が、少しずつ変わる。

「メニュー多いわね……」

ページをめくる。

まためくる。

 「なんか……選ぶのが楽しくなる!」

 

さっきまでの“高級店”の気分じゃない

純粋に楽しんでいる顔だった


沙耶も目を輝かせた

「一回じゃあ味わい尽くせないでござるな」

 

カロンはそれを横目で見て、軽く笑う

何も言わない

 

本当にいい店は、扉を開けた瞬間に分かる


店を出た直後。

夜の空気は、少しだけ涼しくなっていた。

街の灯りが、ゆっくりと色を濃くしていく。

 

カロンも、スタオンヌ達も――

“どこに行くか”なんて考えなかった。

ただ。

「食べたい」

「寄りたい」

「面白そう」

その直感だけで動いた一日

 

無計画、それでも

全部がちゃんと“楽しかった”

 

カロンは夜空を見上げる。

「おいおい……まだ19時かよ……」

軽く笑う

 

やりきった感覚

でも、まだ夜はこれから



 

そのすぐ近く、卓を囲む音が響いていた。

 

カチッ。

パシッ。


 

スタオンヌが、柔らかく微笑む。

「皆さん……今日は楽しかったですね♡」

 

沙耶が牌を整えながら頷く。

「殿は一日の楽しみ方を熟知してるでござる」


「――ポン」

 

リリーナがくすっと笑う。

「本当♡」

牌を切る手が軽い。

「無計画なのに全部上手くいってるとか、最高♡」

 

エマは静かに手牌を見つめ――

すっと牌を引く。

「昔から、ロンくんについていけば大正解でしたよ……」

そして。

牌を倒す。

「――はい、ツモ」

 

リーチ・タンヤオ・三色、ドラ3。

 

場が一瞬、静まる。

 

「強いでござるな……」

「やるじゃない♡」

「お見事です」

 

エマは、ふっと笑う。

満足そうに。

 

無理に特別な事をしなくてもいい。

ただ“楽しかった”と感じられる一日があれば、

それだけで十分なのかもしれない。

 

四人は、卓を囲みながら。

確かな満足感を感じていた。

 

そして――

その少し外で。

カロンは、静かに笑っていた。

「……悪くねぇな」

 

何も起きない一日。

だがそれは確かに、価値のある時間だった。

レオリバは尊いけど、他はほぼハンチョウです。

まあ私の頭はジョジョとハンチョウと終末のワルキューレで出来てます

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