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なぜ俺はコイツの護衛をするのか?

ディアドラが出ると刃牙ネタに走りがち

イラスト化してみた↓

なろうで新連載はじめました | 福島ナガト #pixiv https://www.pixiv.net/artworks/145909192

カロンが旅立った日の夜。

王城の酒場……


扉の向こうは城の静けさとは少し違う落ち着いた空気に包まれていた。


柔らかな灯り、磨き上げられたカウンター。

そして世界中から集められた酒瓶が棚に並んでいる。


そのカウンター席に、二人の女性が並んで座っていた。


メグが肘をつきながら、軽い調子で声を上げる。

「モンキーショルダー!ロックでね!」


カウンターの向こうのバーテンダーが静かに頷いた。

「かしこまりました」

氷の音が軽く鳴る。


メグはぐいっと伸びをして笑う。

「いや〜、やっぱ酒止めらんないねぇ……ほら、

お義姉ちゃんも、なんか飲んだら」


隣に座るディアドラは、しばらく黙ったままグラス棚を見つめていた。


その表情は、昼間の女王の顔とは少し違う。

姉としての寂しさと、王としての責任が入り混じったような静かな顔だった。


バーテンダーが丁寧に問いかける。

「陛下は……どうなさいますか?」


ディアドラはゆっくりと口を開いた。

「マッカラン……シェリーオーク十八年……」

バーテンダーが一瞬だけ目を丸くする。

王城の酒場でも、かなり上等な一本だ。


「はい……あの……飲み方は?ロック?ストレートですか?」


ディアドラは少しだけ間を置いた。

そして静かに言った。

「ボトルとジョッキを……」

カウンターの向こうで、バーテンダーの手が止まった。


バーテンダーが恐る恐る差し出した大きなジョッキ。


ディアドラはそれを静かに受け取ると、カウンターに置かれたボトル――

マッカラン・シェリーオーク十八年を手に取った。

琥珀色の液体がゆっくりとジョッキに満たされていく。

普通ならグラスに数センチ。

それを香りながら飲む酒だ。


だが、ディアドラは何の迷いもなく――

ジョッキの縁までスコッチを満たした。

そのまま、静かに持ち上げ…


それを一気に飲み干した。


喉を鳴らす音すらない。

ただ、ゆっくりとジョッキがカウンターに戻る。

バーテンダーの目がわずかに見開かれる。

(スコッチを……ジョッキで……!!)


メグが隣でグラスを揺らしながらにやっと笑った。

「お義姉ちゃんがそんなに飲むなんて……よっぽど応えたね〜」


ディアドラは、顔色一つ変えなかった。

ジョッキを軽く回しながら、静かに言う。

「ええ……世界の為とは言え……弟に辛い旅を強いるなんて……」


ほんの少しだけ視線を落とす。

「やはりあの時……無理にでも私が行くべきだった……」


メグは肩は否定とも肯定とも言えない表情だった

「まあ〜……カロンきゅんは……死にはしないと思うけど……」


軽い調子で言いながら、もう一口モンキーショルダーを飲む。


ディアドラを気遣うような口調ではあるが――

メグの内心は、少し違う方向を向いていた。

(どっちかと言えば……損害が魔王以上にならないかが心配だな〜……)



そうだ、あの男は勇者というより災害に近い。

酒場の空気は静かだ。

だが遠くの地平線ではすでに嵐が走り出している。



夜が更け、王都から遠く離れた荒野。

月明かりの下を二つのエンジン音が響いていた。

低く唸るクルーザータイプのバイク。

その後ろを追う無骨な軍用車両

――ガーディアン90。


土煙を巻き上げながら二台は並んで走っている。

ガーディアンの窓が開き、レオンが身を乗り出して叫んだ。

「カロン!とにかくどうすんだ?必要な物資の購入や情報を――」


風に声がかき消されそうになりながらも、必死に問いかける。

すると前を走るカロンが、振り向きもせずに答えた。

「取り敢えずナンパだろ!女いないとやってられんわ!」


レオンが思わずハンドルを揺らした。

「正気か!?他にもっと必要なのあるだろ!?」

カロンはちらりと横目でレオンを見た。

その視線は妙に冷たいジト目だった。


「まあ…なら別に良いけど…そう言えばレオン、お前…初期設定女だったよな?」


レオンは一瞬黙り込む

数秒後。

「……わかったよ!たく……」

深くため息をつく。


「最初の町で情報収集だな、酒場だ」

レオンは窓を閉め、アクセルを踏み込んだ。

カロンはそれを見て、にやりと笑う。

結局――

この二人の旅は、いつもこんな調子だった。


王都を出て一昼夜。

荒野を抜け、やがて視界の先に街が見えてくる。

石造りの外壁に囲まれたその街は王都ほどの華やかさはないが――人と物資が絶えず行き交う、活気のある場所だった。

ここは国境の街。


クレイン王国領、ローズスターズ。

門の前には行商の荷馬車や軍の車両が並び、入国審査を待っている。

異国の言葉が飛び交い、見慣れない服装の人間も多い。


だが、その賑わいの奥にはどこか張り詰めた空気もあった。

武装した兵士の数が多い。


酒場の前では荒くれ者同士が睨み合い、裏路地には妙な視線が潜んでいる。

国境――つまり、秩序の外側がすぐ隣にある街だ。


カロンはエンジンを止め、軽く伸びをした。

「着いたな」


ガーディアン90が横に並び、レオンが外を見渡す。

「ここを出たら国外か……」

短く息を吐く。


カロンは周囲をぐるりと見回し――ふっと口元を緩めた。

「悪くねぇな」

視線の先には賑わう通り、酒場の看板。

そして、ちらほらと歩く女性たち。


レオンはその視線に気付きすぐにため息をついた。

「……先に言っておくが、任務を忘れるなよ」


カロンは白々しく

「情報収集だろ?任せとけって」

まったく信用できない声音だった。


だが――

二人は同時に歩き出す。

向かう先は、当然のように。

街の中心にある、最も騒がしい場所。

酒場だった。


酒場の扉をくぐった瞬間、空気が一変した。

煙と酒の匂い。


笑い声と怒号が入り混じる、いかにも国境の街らしい騒がしさ。


その中心で――

カロンはすでに主役になっていた。

カウンターに肘をつき豪快に声を張る。

「ジョニーの青!ボトル入れちゃうぞ〜!」

一瞬、店内が静まり返る。


そして次の瞬間どっと歓声が上がった。

「おお!?マジかよ!」 「気前いいねぇ兄ちゃん!」


バーテンダーが慌ててボトルを取り出す。

高級酒――それもボトルで頼む客など、そうそういない。

カロンはさらに、無造作に札を取り出してカウンターに叩きつけた。

「ほらよ、釣りはいらねぇ」

チップが飛び交う。 


それを合図にしたかのように、周囲にいた女性たちが一斉に集まってきた。

「お兄さん太っ腹!」 「あら……いい男」 「素敵な人……どっかの大富豪?」


カロンはニヤリと笑う。

「まあな」

グラスを掲げ、一口飲む。

その隣では、女たちが腕に絡みつき、笑い声が絶えない。


まるでこの場が、自分のために用意されたかのような振る舞いだった。

少し離れた席で、その様子を眺めていたレオンが額を押さえる。

「全く……アイツは……」

ため息を一つ。

だが、視線はしっかりと周囲を警戒している。

ここは国境の街。


いつ何が起きてもおかしくない場所だ。

――そしてその中心で一番危険そうな男が楽しそうに酒を飲んでいた。


喧騒に包まれた酒場。

笑い声と音楽、グラスのぶつかる音が響く中で――

その奥に、かすかな違和感が混じっていた。

カウンターの端。

酔いの回った客たちが、声を潜めて話している。

「……聞いたか?国境沿いで魔物が……」

「ああ……最近やたら出るらしいな……」

「兵も出てるって話だが……」


ひそひそとした声は、すぐに雑音にかき消される。

だが――

聞くべき人間には、しっかり届いていた。


少し離れた席で、グラスを傾けていたレオンが、視線をカロンに向ける。

「なあ……」


カロンは女に囲まれたまま、軽く肩をすくめた。

「そうだな」

それだけで十分だった。

その後もカロンは笑い、飲み、騒ぎ続ける。


酒も、女も、金も惜しみなく使いながら――

だがその目はどこか冷めていた。

必要な情報はもう拾っている。


やがてグラスが空になり、騒ぎも一段落した頃。

カロンはゆっくりと立ち上がる。

「んじゃ、行くか」


女たちが名残惜しそうに声を上げる中、軽く手を振る。


店の外に出ると夜風が頬を撫でた。

少し遅れてレオンも外へ出る。

「……しっかし遊んだな」

呆れたように言う。


カロンは笑った。

「効率いいだろ?」

街の灯りの向こう。

国境の先に広がる闇を見据える。

――次の目的地は、もう決まっていた。


酒場を出た二人はそのまま夜の通りを歩いていた。

賑やかな表通りから少し外れた路地。

灯りは少なく、人通りもまばらだ。


レオンが周囲を警戒しながら歩く。

「さっきの話、本当なら国境沿いは危険だな」

カロンはポケットに手を突っ込み、気楽な調子で答える。


「だから行くんだろ?」


そのときだった。

少し先の暗がりで、揉めるような声が聞こえた。

「こんな時間に何してんの?」

「かわいいじゃん」

下卑た笑い声。


二人の男が、通りの端に立つ一人の女性を囲んでいる。


女性は一歩後ずさり小さく息を呑んだ。

「……!」


逃げ場はない。

背後は壁、前には男たち。

カロンの足が止まる。

レオンも同時に状況を把握しわずかに眉をひそめた。


レオンは小さく舌打ちしながら、視線を前に向けた。

「どうすんだ?」

カロンは腕を組んだまま、じっと女性の方を見つめる。

「スタイル良さそう……」

一瞬、間が空く。


レオンは額に手を当てた。

「助ける事考えろ!」

カロンは軽く肩をすくめると、にやりと笑った。

「両方だろ?」

そう言って、迷いなく歩き出す。


路地の空気が一気に冷えた。

女が一歩後ずさり、震える声を漏らす。

「や……やめて下さい」


チンピラの一人が、にやりと笑いながら懐から刃物を取り出した。

「ほら〜、無視すると刺しちゃうよ?」

もう一人も同じようにナイフをちらつかせる。

その瞬間だった。


――ふっと、風が動いた。

チンピラの手元から、刃物が消える。

「!?」

男が目を見開く。

手にあったはずのナイフがいつの間にか――無い。


その背後で、カロンが軽くナイフを回していた。

母親譲りのスリ技。


触れたとすら気付かせない、鮮やかな盗み。

「落としたぞ?」

わざとらしく言う。


チンピラが振り向いた。

「なんだ!?おま――」

言い終わる前に…

「グボッ!」


鈍い音と共に、体がくの字に折れた。

レオンの蹴りが、正確に腹にめり込んでいる。

そのまま男は地面に崩れ落ちた。

もう一人が慌てて距離を取る。

「て、てめぇら――!」


カロンはかすめ取ったナイフを指でくるくると回しながら、楽しそうに笑った。


地面に転がるチンピラたちをよそに、路地は一気に静まり返った。


カロンは手にしていたナイフを軽く放り、ひらりと受け止めると、そのまま女性の方へ歩み寄る。

「大丈夫?」


女はまだ少し怯えた様子のまま、小さく頷いた。

「あ……ありがとうございます……」

その声と同時に、顔がはっきりと見えた。


――次の瞬間。

「……ッ!!」

カロンの中で何かが弾けた。

まるで電流が走ったかのように、全身が一瞬だけ硬直する。


夜の灯りに照らされたその姿。

整った顔立ち、透き通るような肌、そしてどこか知的な雰囲気。


見た瞬間、理屈ではなく“本能”が理解した。

(か、可愛い……)


奇しくもそれはかつてワイアットが初めてカレンを見たときに抱いた感情と、全く同じものだった。

カロンはしばらく言葉を失ったままその場に立ち尽くす。


その様子を少し離れた位置で見ていたレオンが、小さくため息をついた。

「……始まったな」


路地に静けさが戻る。

倒れたチンピラたちを一瞥したあと、カロンはすっと姿勢を整えた。


さっきまでの軽薄な雰囲気は消え、どこか妙に落ち着いた立ち振る舞いになる。

一歩近づき、柔らかく声をかけた。

「怪我は無いようで……良かった、こんな時間に1人で歩くのは危険ですよ?え……っと」


ほんの一瞬だけ言葉を探すように間を置く。

その様子を見ていたレオンが、横で小さく呟いた。

(もはや誰だよお前……)


女は少し頬を赤らめ、視線を伏せる。

「///……ありがとうございます……素敵な方……」

そして、ゆっくりと顔を上げた。


「私、スタオンヌ・ドゥラメリアと申します……あの、せめてお名前だけでも……」


カロンの目がわずかに細くなる。

一瞬の沈黙。

そして、自然な仕草で軽く胸に手を当てた。

「カロン……、カロン・マリアライトです」

どこか作ったような名乗りだったが、その声には妙な自信があった。


レオンがすかさず小声で突っ込む。

「……おい、苗字違うぞ」

カロンは無視した。


カロンはふっと視線を外し、わずかに距離を取った。

「それより……貴女のような人がこんな所で出歩くなんて……何かあったんですか?もしかして……いや!失礼しました!」


途中で言葉を切り、軽く頭を下げる。

あえて踏み込まない。


それが紳士だと言わんばかりに。

そのまま背を向け、静かに立ち去ろうとした。

レオンがその様子を横目で見て呆れたように目を細める。

(さっきまでの奴と同一人物とは思えんな……)



「あ……あの……!」

背後から、震える声が届く。

カロンの足が止まった。


振り返らないまま、わずかに耳を傾ける。

スタオンヌはぎゅっと手を握りしめ、勇気を振り絞るように顔を上げた。

「た……助けて下さい……」


その一言に、夜の空気が静かに張り詰める。

カロンはゆっくりと目を閉じ――

そして…にやりと笑った。

レオンは準主人公的な存在です


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