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リリーナが仲間になってからは旅の資金は実質無限です
早朝…宿の一室
分厚いカーテンの隙間から柔らかな朝日が差し込んでいた
静かだった
窓の外では町が既に動き始めているというのに――この部屋だけは、不思議なほど穏やかな空気に包まれていた
広いベットの中央
カロン・クレインは、完全に美女達に挟まれていた。
右腕には安心しきったように身体を預けるスタオンヌ。
左には昨夜の余韻を残したまま幸せそうに眠るリリーナ。
そして胸元には抱き着くように丸くなっている沙耶。
カロンは薄く目を開け、小さく息を吐く。
「……朝か」
眠たげな声、その動きでリリーナがもぞりと擦り寄ってくる。
「んぅ……カロンくん……♡」
完全に骨抜きだった。
一方、沙耶は寝ぼけながらも離れない。
「とのぉ……♡」
忠犬のように小さな身体で抱き着く
スタオンヌは比較的落ち着いていた。
「ふふ……♡おはようございます、カロン様」
正妻の余裕である
あまりにも平和。
戦争も魔族も世界の危機も
この部屋には存在していなかった
――この時はまだ、誰も知らない
今日、とてつもなく面倒臭い男が再び現れる事を
宿を出発したカロン達は、その日の昼前――新たな国の首都へ到着していた
石畳の大通り、古い時計塔がそびえ立ち
歴史を感じさせる白壁の建築
だがその一方で車両用道路や路面鉄道、高層建築も整備されている
中世と近代、二つの時代が違和感なく混ざり合った不思議な都市だった
ククリRPVの車内
重装甲車両の窓から街並みを眺めながら、沙耶が静かに呟く。
「大きな街でござる……」
感心したような声
隣ではリリーナが脚を組み、街を見渡していた。
「レトロな感じね」
都会育ちには逆にノスタルジックらしい
「一部の先進国が異常過ぎるんですよ」
エマも頷く
「未来都市って感じでは無いですね」
だが、嫌いではない
この国には、“人の営み”の温度が残っていた。
市場の声や大道芸人、広場の音楽
ただ発展しただけではない、穏やかな豊かさがあった。
一方。
ガーディアン90の車内。
リバティーナは窓越しに街並みを見つめ、小さく息を漏らす。
「中世と近代が調和して……綺麗ですね」
教会の鐘が遠くで鳴る
その横を路面電車が通り過ぎていく
不思議な光景だった
レオンも静かに周囲を眺めていた。
「栄えてるけど、穏やかだな」
魔族の気配も無く、人々の顔にも余裕がある
それだけで、この国がどれほど安定しているか分かった
その時――
広場の大きなポスターが、視界へ飛び込んできた。
《白銀歌劇団 世界巡回公演》
そこに描かれていたのは、一人の“男装の麗人”。
白い衣装
鋭く美しい眼差し
そして、舞台に立つ者だけが持つ圧倒的存在感
テラ・アドミーヤ
街の人々が口々に語っていた。
「今日の公演、絶対行く!」
「テラ様の舞台、半年待ちだったのよ!」
「白銀歌劇団がこの国に来るなんて……!」
この国にとって。
彼女達は、ただの劇団ではなかった。
――“文化”そのものだった。
カロン達は車両を置き、徒歩で町を散策した
街の至る所に貼られた白銀歌劇団のポスター
華やかな宣伝旗
劇場へ向かう人々の笑顔
この国にとって、彼女達の公演は一種の祭りなのだろう
その光景を見ながら、カロンがふと呟いた。
少し懐かしそうな声。
「白銀歌劇団か……たしか、ウチの国にも来た事あったな」
スタオンヌが興味深そうに振り向く。
「実際に見られたんですか?カロン様」
カロンは苦笑した。
「あの時は見れなかった」
少し肩をすくめる
「でも舞台は昔から好きでね」
その言葉に、リリーナが目を丸くする。
「え、意外」
完全に本音
カロンはポスターを見ながら続けた
「役者ってさ、たった数時間で“別の人生”見せるだろ?」
少し静かな声。
「なんか、好きなんだよな」
その横顔はいつもの軽薄さとは少し違っていた
リバティーナは小さく瞬きをする。
そして隣のレオンへ、そっと囁いた。
「……レオンさん」
「ん?」
「カロンさんって、なんかギャングらしくない所ありますよね……?」
レオンは苦笑する
「まあ、一応王族だからな」
納得半分、諦め半分
「結構文化的な趣味してるんだよ、昔はエトラ様やミレイナ様に文化の勉強教えて貰って劇とか音楽も普通に好きだぞ」
リバティーナは少し驚いたようにカロンを見る。
普段は…
盗み。
ギャンブル。
女。
そんな印象ばかり強い
だが時折、不意に“王家の教育”が顔を出す
リリーナはそんなカロンを見ながら、どこか楽しそうに笑った。
「ほんと、知れば知るほど変な男ね……」
その言葉にカロンはいつもの調子で笑う。
「惚れ直した?」
「もう惚れてる♡」
即答だった。
中央広場を抜けた辺りでカロンは満足そうに腕を組んだ。
周囲では白銀歌劇団の宣伝馬車が走り回っている。
街全体がどこか浮き足立っていた
カロンはニヤッと笑う
「よし!」
突然の宣言。
「今日は白銀歌劇団の公演を見るぞ!早速行こう!」
完全に観光気分。
スタオンヌは楽しそうに微笑む。
「ふふ……♡賛成です」
沙耶も頷いた。
「拙者も少し興味あるでござる」
リリーナは既にその気だった。
「いいじゃない♡たまには文化に触れないとね」
だが。
一人だけ現実に戻ろうとする者がいた。
リバティーナ。
「いや……旅……」
しかし誰も聞いていない
レオンは苦笑しながらポスターを見る。
「しかし……さっきの人、“半年待ち”とか言ってただろ?」
劇場の前には既に長蛇の列
貴族らしき客まで並んでいる
それを見たカロン
「入れるのか?」
その瞬間、リリーナが不敵に笑った
「任せて♡」
数十分後
白銀歌劇団・中央劇場
巨大な赤絨毯。
煌びやかなシャンデリア。
歴史ある大劇場だった。
受付へ向かったリリーナを見た瞬間、支配人らしき男の顔色が変わる
「こ、これは……!」
突然の出来事に直立不動となる
「リリーナ会長……!!」
どうやら本当に大物らしい
リリーナは慣れた様子でサングラスを外した。
「友達と見に来たの、どこでもいいから空きある?」
さらっと言う
「はい!!直ちに!!」
支配人は秒でスタッフを呼び寄せ対応を急いだ
周囲の客達がざわつく
「ジョウリッサ会長だ……!」
「本物……!?」
「なんでこんな所に……!」
リリーナは満足そうに胸を張る。
「ふふん♡」
その横で。
カロンが感心したように呟く。
「リリーナって結構すげぇんだな」
「“結構”じゃないわよ♡」
完全に調子に乗る
レオンは小さくため息を吐いた。
「……便利な仲間入ったな」
リリーナの一声によりカロン達はそのまま劇場最前列――VIP席へ通されていた
豪華な赤い座席
黄金の装飾
天井には巨大なシャンデリア
ここはもはや、“舞台を見る場所”ではない。
芸術そのものを浴びる空間だった
観客席は既に満席
熱気に満ちている
誰もが、この瞬間を待っていた
カロンは静かに舞台を見つめる
「……始まるな」
その声と同時
劇場全体の照明が、ゆっくり落ちた。
ざわめきが消える。
数秒の静寂の後…
次の瞬間――
幕が上がり、光と音楽が観客席を包み込む
そして舞台中央へ、一人の“美男子”が現れた
白いタキシード
長い脚に流れるような所作、鋭く整った顔立ち
だが、その声は澄み切った女性のものだった
白銀歌劇団 テラ・アドミーヤ
『――ようこそ』
その瞬間。
空気が変わる。
背後から劇団員達が現れる。
『白銀歌劇へ!』
歌声が劇場全体へ広がった。
まるで幻想の中へ引き込まれるような感覚
『夢と幻想の舞台へ』
テラはゆっくり観客席へ手を伸ばす。
その仕草一つで、数千人の視線を奪っていた。
『今宵、貴方様をお連れしましょう』
歓声が爆発する
「テラ様ぁぁぁぁ!!」
「こっち見てぇぇ!!」
「今日も美しい!!」
劇場が揺れるほどの熱狂。
リリーナですら感心していた。
「凄いわね……」
本物だった、ただ美しいだけではない。
空気を支配している
舞台に立った瞬間、“世界の中心”になっていた。
カロンは目を輝かせる
「すげぇな!」
純粋な感動。
その横で、レオンも小さく息を漏らした。
「……これは人気出るな」
リバティーナは完全に見入っていた。
沙耶ですら呟く。
「まるで将軍のような覇気でござる……」
スタオンヌは静かに微笑む
「これが“世界一の舞台”なんですね♡」
舞台の上。
テラは笑っていた。
観客を魅了し。
夢を見せ。
世界を演じる。
その姿は、まさに――“舞台の王”だった。
世界的トップスター
テラ・アドミーヤの舞台はまさに“幻想”だった
優雅な歌声
観客を惹き込む視線
剣を振るえば英雄となり、微笑めば恋人になる
その一瞬ごとに、“別人”へ変わっていく
演じているのか
本当にその人物になっているのか
もはや誰にも分からない程だった
劇場全体が、完全に彼女の世界へ飲み込まれていた
リバティーナは、目を輝かせながら呟く。
「凄い……これが、白銀歌劇団……」
沙耶も息を呑んでいる
「見事でござる……」
スタオンヌも静かに見入っていた。
「芸術って、本当に人を変えるんですね……♡」
そして
拍手喝采の中、いよいよメイン演目へ移ろうとした
――その時だった
♪~~~♫
「……?」
劇場に、不自然なギター音が響く
これまでの演目の流れとは明らかに場違いだった
舞台や音楽の未経験者でも違和感を感じる……
白銀歌劇団の優雅なオーケストラとはまるで噛み合っていない
観客達がざわつき始める。
「え?」
「なに今の?」
「演出……?」
しかし次の瞬間舞台上へ、一人の男が現れた
黒コート
無駄に長いファッションマフラー
そして、謎にキメたポーズ
ジーク・バルサローザ
彼はギターを鳴らしながら、堂々と言い放つ。
「素晴らしい舞台だ」
「……!?」
テラ・アドミーヤ、流石の彼女も一瞬素で驚いている…
舞台上、観客席は共に混乱
「え?誰!?」
「あれ演出なの!?」
「いやでもなんか場違いじゃない!?」
「怖い怖い怖い!!」
劇団員達も明らかに動揺している。
音響担当などは裏で軽くパニックだった
リリーナは完全に困惑していた
「なに……あれ?」
様々な場面を知るリリーナでも人生で見た事のない奇妙な状況
レオンは嫌そうな顔で額を押さえる
「あー……」
嫌な予感しかしない
「カロン……アイツ、なんだっけ?」
カロンは静かに頭を抱えていた。
「……ジーク」
心底面倒臭そう。
「ジーク・バルサローザ」
その頃…舞台上のジークは完全に自分の世界へ入っていた。
「だが――」
ギュイィィン!!
またギターを鳴らす。
「真の“芸術”とは、魂の衝突!!」
「誰ぇぇぇぇ!?」
劇場は完全にカオスになり始めていた。
観客席はざわつき続けていた。
「誰なのあの人!?」
「舞台止まってるんだけど!?」
「え、これ演出じゃないの!?」
完全に空気が崩れ始めている。
リリーナも困惑気味にカロンを見る。
「カロンくん知り合い?なんかヤバい事になってない?」
しかしカロンは妙に落ち着いていた
「……沙耶」
その一言
沙耶は静かに目を閉じた。
「居眠り斬りでござる……」
カチッ――
打刀が、数センチだけ抜かれる。
そして即座に納刀
鍔と鞘が触れる小さな音だけが響いた
次の瞬間
堂々とギターを構えていたジークが――
「ぐっ……!?」
突然その場へ崩れ落ちた
ドサッ!!
「えっ!?」
「倒れた!?」
「なに今!?」
ジークは、まるで正面から逆袈裟斬りを受けたかのように胴体を押さえ込み、そのまま気絶している
完全に戦闘不能
しかも誰も“斬った瞬間”を見ていない。
劇場スタッフが慌てて走り出す。
「警備員!!」
「早く!!一旦幕を下ろせ!!」
舞台裏も軽く修羅場だった。
一方でVIP席
スタオンヌは驚いた顔で沙耶を見る
「今の……どうやったんですか……?」
沙耶は静かに刀へ手を添えた。
「斬らぬ斬撃……」
淡々と語る
「敵の脳に、“斬られた”と錯覚させる剣でござる」
訳が分からない、全く非科学的だが脳を騙す剣らしい
リリーナも困惑
「なにその怖い技!?」
沙耶は少し肩をすくめる。
「まあ、格下にしか効かぬでござるが」
さらっと言う。
カロンは小さく息を吐く
「よし、最小限で済んだな」
一般客への被害ゼロ
劇場設備も無傷。
だが幕が閉じる直前、舞台上から
テラ・アドミーヤだけが、VIP席を真っ直ぐ見ていた。
まるで――
“今、何が起きたか”を理解しているような目で。
結局――
白銀歌劇団の公演は、そのまま中止となった。
突然謎の男の乱入
観客の混乱
安全確認
世界的劇団ともなれば、無理に続行する訳にもいかなかった。
劇場ロビーにはどこか気まずい空気が漂っている。
スタッフ達は慌ただしく走り回り、観客達も残念そうに帰り始めていた
その片隅
VIPラウンジで休んでいたカロン達は、妙に疲れた顔をしていた
カロンはソファに深く座り込み、ため息を吐く。
「……なにがしたかったんだろうな、アイツ」
心底分からない
レオンも呆れ顔だった。
「本人だけはカッコいい登場だと思ってるんだろ」
リリーナはまだ混乱している。
「え?本当に知り合いなの?あのギター男」
「いや全く、ちょっと前に寄った村でなんか騒いでた奴」
カロンがそう答えた時だった
「あ、あの……!」
控えめな声が聴こえ、全員が振り向く。
そこに立っていたのは――
三人の美女だった。
勝気そうな少女
長い青髪のクール系
妖艶な雰囲気を纏う美女
ルーナ、エルナ、ミラ
以前ジークと共にいた、“あの三人”だった。
カロンは少し驚き、レオンや沙耶は警戒体勢をとる
「あれ、お前らは確か……」
ルーナは深々と頭を下げた。
「せっかくの舞台をウチのリーダーがすみませんでした……」
意外な事にめちゃくちゃ常識人だった
カロン達も若干戸惑う
沙耶が小声で呟く
「思ったより礼儀正しいでござる……」
スタオンヌも頷く
「しっかりした方達なんですね……♡」
カロンは普通に疑問を口にする。
「アイツ、なんであんな事したの?」
するとエルナが疲れ切った顔で答えた。
「実は……」
もう既に頭痛そう
「“世界のトップスターとの共演こそ俺に相応しい!”とか言い出して、急に飛び出していったんだ……」
「うわぁ……」
全員納得、確かにあいつならやりそう…と
ミラも額を押さえる
「警察から連絡があって来てみたら、このザマですわ……」
完全に保護者だった。
リリーナはぽかんとしている。
「え……?つまりあの人、本気で乱入したの?」
ルーナ達は同時に頷いた
カロンは静かに天を仰ぐ
「……マジかぁ」
ロビーの喧騒が少しずつ遠ざかっていく。
観客達も帰り始め劇場には後片付けの空気が漂っていた
そんな中、ルーナ達はどこか覚悟を決めたような顔でカロンを見る
ルーナが小さく息を吸った
「……それで、なんです」
少し言いづらそうな声
「カロンさん。顔見知り程度の私達が、こんな事頼むのおかしいとは思ってます」
その表情には、本気の申し訳なさが滲んでいた
「でも……カロンさん達の噂、各地で聞いてます」
エルナも続ける
「劇団への迷惑料……二千万ダスト」
「うわ」
エルナは苦い顔をした。
「払えなければ、正式に被害届を出される……しかし我々は貧弱パーティだ……どうか、金を貸して頂きたい……!」
その横で、ミラも静かに頭を下げる
「旅先で頼る当てがありませんの……」
悔しそうに唇を噛む。
「必ず返しますわ」
三人は深々と頭を下げた
初対面時のクセ強そうな印象とは違う
ただ、“仲間を見捨てられない女達”だった
その姿を見てカロンは少し黙り、
そして小さくため息を吐いた
「まあ、君達も苦労してんだね」
優しい声だった
「とりあえず顔上げなよ」
ルーナ達がゆっくり顔を上げる。
どこか、少し安心したような表情。
ルーナが小さく呟く。
「あんなのでも……逮捕されたら……」
レオンは苦笑した。
「……やっぱり仲間なんだな」
少し感心したような声
しかしミラが真顔で言った。
「いえ、私達の食扶持が無くなるので、このままではマズいのですわ」
現実的だった。
関心しかけていたリリーナは思わず
「アンタ結構最低ね!?」
ミラは扇子を開き、涼しい顔をする
「生活は大事ですもの」
やっぱり若干悪女だった
その空気に、少しだけ笑いが戻る
カロンはそんな三人を見ながら静かに目を細めた。
――仲間というのは
案外、こういうものなのかもしれない
ロビーの空気は、少しだけ静かになっていた。
ルーナ達はまだ困った表情を浮かべている
そんな三人を見ながらカロンはゆっくり口を開く
「……わかったよ」
その一言に三人が顔が僅かに緩んだ
カロンは椅子へ深く座り直し、少し笑った。
「あの馬鹿の為じゃなくて、“自分らの為に”って理由も嫌いじゃない」
真っ直ぐ三人を見る
ルーナ達は一瞬言葉を失った
エルナが小さく息を吐く
「カロンさん……」
カロンは軽く手を振った。
「リリーナ、貸してやってよ」
その瞬間
リリーナは完全に“仕事モード”へ切り替わる。
鞄から書類ケースを取り出し、机へ広げた。
「はいはーい♡」
切り替えが早い。
「じゃあこれ、ウチの系列でやってる金融機関の借用書ね」
サラサラとペンを走らせる。
「名前と、今日の日付。あと借りる額を書いて」
ルーナ達は驚いていた。
まさか本当に貸してくれるとは思っていなかったのだろう
その横でカロンが静かに付け加える
「利息は付けてやるなよ」
リリーナが即反応する
「えー」
そこは大企業の社長であり、グループの会長
「でもカロンくん、ビジネスに情けは――」
その時カロンが、そっとリリーナの耳元へ顔を寄せた。
「優しくしてやれよ……」
近い低い声
リリーナの肩がビクッと跳ねる
「ひゃぁい……♡」
即陥落、顔真っ赤で崩れ落ちる
レオンは頭を抱える
「毎回それ効くのかよ……」
こうして
ルーナ、エルナ、ミラの三人へ。
二千万ダストが無利子・無担保で貸与された。
後日、白銀歌劇団側も“迅速かつ誠意ある対応”として正式な被害届は提出しなかったという
なおジーク本人だけは、まだ病院で寝ていた
トラブル対応が一通り終わった頃には、既に夜になっていた
観客達も帰り
騒がしかった劇場には、静かな後片付けの音だけが残っている。
カロンはロビーを出ながら、小さく肩を回した。
「……なんか不完全燃焼だけど、帰るか」
ジークは倒れた、
事件も片付いた。
だが、肝心の舞台が途中で終わってしまったせいかどこか物足りない。
スタオンヌも少し残念そうに微笑む
「そうですね……少し残念ですが」
沙耶も頷いた。
「途中までは見事だったでござる」
リリーナは未だに興奮気味だった。
「テラ様…生で見ると本当に凄かったわね……」
その時だった
「――待って!」
聞き慣れない声。
だが一度聞けば忘れない。
どこか中性的で
舞台の上で響いていたあの独特の声
全員が振り返る。
そこに立っていたのは――テラ・アドミーヤ
舞台衣装のではない
少しラフな白いジャケット姿。
だが、それでもなお“人目を引く存在感”があった。
カロンは少し目を細める
「アンタは……」
テラは軽く笑った
「全部見てたよ貴方がたが、裏で動いてくれていたの」
落ち着いた声
その言葉に、沙耶が目を見開く
「居たでござるか!?」
全員が本気で驚いていた。
「全く気づかなかった……」
テラはどこか楽しそうに肩をすくめる。
「私は役者だよ」
飄々とした笑み
「そのくらい簡単さ」
風が吹き込み、劇場裏の灯りが彼女の白緑色の髪を静かに照らしていた
舞台の上では“完璧な王子様”
だが今はどこか掴みどころのない空気を纏っている
リバティーナが少し警戒気味に尋ねる
「それで……私達になにか?」
テラは数秒だけ沈黙した後静かに笑った。
その笑みには、舞台上とは違う“素”の気配があった。
「お時間があれば――」
ゆっくりと劇場の奥へ視線を向ける。
「貴方がただけに、“特別公演”をお見せしたいんだ」
再び開かれた劇場
だが今度は――観客が違った
広大な客席
無数の赤い座席
煌びやかな照明
その最前列VIP席に座っているのはたった七人だけ
カロン達だけの為の舞台だった。
静かに幕が上がる
光が劇場を包み込んだ
白銀歌劇団、その本気だった
巨大な舞台装置と幻想的な照明
幾重にも重なる歌声。
そして中心に立つのは――テラ・アドミーヤ。
舞台へ立った瞬間
彼女は再び、“別人”になる
鋭い眼差しに優雅な所作
その一歩だけで空気が変わる
歌い踊り笑う
時に剣を振るい。
時に恋人を演じ。
たった一人で、幾つもの人生を見せていく。
リリーナは思わず息を漏らした。
「……凄く、綺麗」
社会の光と闇、
色々なものを見てきた彼女ですら見惚れていた
エマも静かに見入っている。
「これが……世界一……」
リバティーナはもはや言葉も出ない
沙耶も呟く
「これ程の舞台……初めて見たでござる……」
そして最後の曲が終わる。
劇場に静寂が落ちた
その中央に白銀歌劇団の団員達が整列する
劇団員一同
『皆様、本日は――』
テラが一歩前へ出る。
スポットライトが、彼女だけを照らした。
「ありがとうございました!」
低く澄んだ、“完璧な王子様”の声
そしてどこか優しく微笑む
「またどこかで、必ず」
その瞬間
カロン達七人だけの拍手と歓声が、劇場へ響いた。
「うおおおおお!!」
「テラ様ぁぁ!!」
「最高でござる!!」
「ブラボー!!」
人数など関係無かった
それほどの舞台だった
テラはその歓声を静かに受け止めながら、
ほんの少しだけ目を細める
舞台の上誰にも見えない位置で
彼女はそっと、カロンを見る
――ありがとう
カロン様
その想いだけを、胸の奥へ静かに隠しながら。
翌朝
白銀歌劇団・劇場前
昨日の騒動が嘘のように、街は穏やかな朝を迎えていた。
その入口で
テラ・アドミーヤは、静かにカロン達を見送っていた
今日は舞台衣装ではない。
ラフな私服姿
声も昨夜の“王子様”ではなく、年相応の少女らしい柔らかなものだった
「カロン様、本当にありがとう」
少し照れたように笑う
「また必ず、どこかでお会いしましょう」
舞台の上とは違う
今の彼女は、“テラ・アドミーヤ本人”だった。
カロンも軽く笑う
「そうだな」
差し出された手を握る。
「スターの君を応援しているよ」
テラは少しだけ目を丸くして――
嬉しそうに微笑んだ
その時だった。
「待てコラーーー!!」
「あっ」
聞き覚えある声
劇場前の空気が、一瞬で台無しになる
レオンは心底嫌そうな顔をした。
「うわ、来た……」
そこに立っていたのは。
幻痛に苦しみながら包帯まみれ
だが無駄に元気な男
ジーク・バルサローザ
彼はビシィッ!!とカロンを指差した
朝っぱらから声がデカい
「貴様のせいで!!我が芸術は阻まれた!!」
「いや、お前がしてんの営業妨害だろ」
正論、しかしジークは聞かない
すると後ろからルーナ達が慌てて飛び出してきた。
「おい!!カロンさん達に失礼すんな!!」
「我々がどれだけ頭下げたと思ってるんだ!!」
「恥知らずってレベルじゃありませんわ!!」
まさかの味方ゼロ。
三人はそのまま、カロン達へ深々と頭を下げた。
「本当にすみません!!」
完全に保護者だった
しかしジークは逆ギレした。
「うるせぇぇぇ!!」
ギュイイイイン!!
なぜかギターを鳴らす。
「カロン!!決着だ!!」
勢いよく飛び掛かる。
その瞬間
沙耶が一歩前へ出た。
「居眠り斬りでござる」
カチッ――
納刀音。
次の瞬間
「ぐはぁっ!!」
また倒れた。
完全に同じ流れ。
テラは呆然としている。
リリーナは真顔だった。
「……この人、ほんとになんなの?」
ルーナ達は頭を抱えていた。
エマはそんな光景を見ながら、小さくため息を吐く。
「……やっぱりこの人、馬鹿ですね」
テラの見た目↓
新オリキャラ テラ・アドミーヤ | 福島ナガト #pixiv https://www.pixiv.net/artworks/147004161
因みに考えた理由はサクラ大戦味のあるキャラが欲しかったのど、カロンとアイドルを絡ませたかったからです




