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ラストサムライとなる

初期構想のカロンの沙耶に対する印象は

「顔は100点だけどチンチクリンはなぁ…」でした

朝の宿屋

ロビーには穏やかな空気が流れていた。

階段を降りてくるカロンとスタオンヌの2人

いつも通り自然に並んでいる


カロンは軽く伸びをしながら仲間達に言う

「明後日にはこの街出るからさ、今日と明日は好きに遊んでこいよ」

一応この旅のリーダーのはずだが、

非常に軽いノリ、しかし全員分かっている


“自由時間”という名の放任


スタオンヌは嬉しそうに頷く。

「はい、カロン様♡」

そのまま朝食を済ませ、何の迷いもなく外へ


残されたメンバーはそれぞれ過ごす

リバティーナは小さくため息をついた。

「まったく……姉さんは完全に毒されてるし……カロンさんも……もっとこう……魔族に対して危機感とか無いんですかね……」

真っ当な意見だしかし、レオンはコーヒーを一口飲みながら静かに答える

「俺は……出来れば、あいつはこのままマイペースでいてほしいな」


ぼそりとした回答、リバティーナはそれに驚いて顔を上げる。

「え!?なんでですかレオンさん……?」


それは当然の疑問、レオンは少しだけ考えてから

ゆっくり口を開く。

「あいつがな……魔王に恨みとか、戦う理由なんてもん持ったら……」

嫌な想像をしている顔

「多分、正面から戦わない」


リバティーナが首を傾げる

「……どういう意味ですか?」


レオンは真顔で続ける、カロンのやりそうな事は大体想像が着く。

「あいつはまず毒盛る、その後鎖で雁字搦めにして、全員でタコ殴りにするくらいはする…」

一切冗談を言っていない顔


リバティーナは一瞬、言葉を失った


レオンは肩をすくめる。

「だからだよ…流石に俺はそこまではしたくない」

ぼそりと呟く。

「今くらいの温度でちょうどいい」


リバティーナは少しだけ考え――

小さく息を吐いた。

「……確かに……それは……ちょっと嫌ですね……」

妙な納得、その場に微妙な空気が流れる


――そんな中。

一人、黙っていた沙耶。

カロンが去っていった方向をじっと見つめていた。

(……今日こそは……)

小さく拳を握る。

(拙者は……いや……私は……)


夜。

宿の廊下。

灯りは落ち着き、音もほとんど無い。


いつも通り、沙耶はカロンの部屋の前に座り込んでいた。

壁に背を預け、刀を抱えるようにして護衛任務

それが故郷を救った英雄、アクア、敬愛する上司、紫苑から承った役目。

それは、変わらないはずだった

「……」

無言、だが――

その空気は、もう“いつも”ではない。

扉の向こう

微かに気配を感じるだけで、胸がざわつく。

耳を澄ませば、何かが聞こえてしまいそうで――

意識的に遮る、聞くのが辛い…


浅葱色の羽織、その袖をぎゅっと握る。

(……拙者は……)


視線を落とす。

この場所にいること自体が――

苦しい。

(……何故でござるか……)

理由は分かっている、だが認めきれない。

(このままでは……)

拳に力が入る。

(拙者は……)

頭の中なのに言葉が続かない。


そして――ゆっくりと立ち上がる。

迷いが残っている、それでも

一歩、後ろへ下がる。

「……」

視線だけが、扉に残る。


だが――

やがて背を向けた。

足音を立てずにその場を離れる。

――護衛を離れた


それは。

沙耶にとって、小さくない選択だった。

(……一度……離れるでござる……)

夜の廊下を、静かに歩いていく


胸のざわつきを抱えたまま――

だがその一歩は確実に、“いつも”から外れていた。


宿の外へ出ると、夜風がひんやりと頬を撫でる。

人気はなく灯りもまばら

沙耶は一人で軒先に立っていた

「……」


胸の奥のざわつきが消えない

静かなはずの夜が、自分の心音と動悸で妙に騒がしく感じる

浅葱色の羽織の裾が風に揺れる

それを、そっと押さえる

(……このままでは……)

ぽつりと、言葉が零れる。

「……拙者は……」

喉が詰まる。

「……逃げるのが武士か……?」


自分への問い

だが、答えは出ない、これは武士としての問題でない事に薄々気付き初めていた…


(武士としての務めか……それとも……)

胸に手を当てる。

確かに、そこにある感情。


言い切れない。

その時、ふと――

一つの名前が浮かぶ。

「……紫苑様なら……」

遠くを見るような目。

「……どうしていただろうか……」

静かな尊敬そして、わずかな憧れ。


夜風が吹き抜ける。

――その中で。

沙耶は、ゆっくりと顔を上げた。

迷いはまだある、だが

(……いや……拙者は……)

一歩、踏み出す。


「……拙者は……拙者でござる」

誰でもない、自分の選択、深く息を吸う。

そして――宿の入口へ振り返る


戻るべき場所

足取りは先程よりも迷いがない。

廊下へと入る、その中で――

沙耶は、まっすぐに歩いていった。


コンコン。

静かな夜の廊下に、控えめなノックの音が響く。

「……カロン殿」

扉の向こう、少しの間

「……沙耶?」

中から声

「どうした?」

短いやり取りの後――扉が開く

部屋の中ではカロンと、スタオンヌ

二人とも、自然な様子で沙耶を迎える


スタオンヌは一瞬だけ驚き、すぐに微笑んだ。

「どうしました、沙耶さん?」


沙耶は、一歩だけ中へ踏み込む

「……少し、お時間を頂きたいでござる」

真剣な声だった


カロンは肩をすくめる。

「いいけど、どうした急に」

軽い調子だが、その目はちゃんと見ている


沙耶は一度目を伏せる

浅葱色の羽織を、そっと握る。

「拙者は……アクア様と紫苑様の御命により、貴殿の護衛を任されている身でござる」

ゆっくりと言葉を選びながら


「日ノ本救国の英雄をお慕いし、その志に殉ずる覚悟で参った……それが、拙者の役目でござる」

沙耶らしい真っ直ぐな言葉

だが凛とした佇まいは、どこか揺れている

「ゆえに……」

続けようとして言葉が詰まる


(違う)


心の中で、何かが引っかかる

(それだけでは……)


握る手に、力が入る

カロンは何も言わずただ待つ

スタオンヌも静かに見守っている


そして――

沙耶が、顔を上げる。

「……でも」

小さく、だが確かに変わった声

「……でも……」


もう一度言い直すように、振り絞る

「カロン殿といると……」

視線が揺れ、抑えていたものが溢れる

「ただの武士なんて……嫌でござる……!!」

言い切る部屋の空気が一瞬止まる


「任も、誇りも、大切でござる……だが……」

一歩、踏み出す。

「それ以上に……あの時から…カロン殿の側に居たいと思ってしまう自分がいるのでござる」

呼吸が荒くなる


もう止められない、ただの用心棒には戻りたくない

「拙者は……いや……私は……」

言い直したその一言に、全てを乗せる。

「……カロン殿が……好きでござる」

静かに、だがはっきりと本音が、そこにあった


その中で、スタオンヌがふっと柔らかく笑う。

「……やっと、言えましたね」

優しい声、それは受け入れる側の余裕


カロンは、少しだけ頭をかきながら言う。

「……そうか」

いつも通り軽い、だが否定はしない。

沙耶の心臓が、強く打つ

次の一言を待つ、ドキドキ


カロンの言葉は、あまりにもあっさりしていた。

「……そうか、ありがとな」

ただ、それだけ

拒絶も驚きも特別な反応もない


――それが逆に、沙耶の思考を止めた

「……え……」

小さく漏れる声。

拍子抜けしたような、呆然とした表情。

(……それだけで……)

理解が追いつかない。

だが次の瞬間


隣にいたスタオンヌが、柔らかく微笑んだ。

「沙耶さん、悪く思う必要なんてありませんよ」

自然体、一切の動揺がない、いつものおっとりした表情。


沙耶は思わず視線を向ける

「スタオンヌ殿……」

わずかに震える声、自分がやっている事はスタオンヌを裏切ったのではないか?

「悪く……思わないでござるか……?」


スタオンヌはゆっくりと首を横に振る。

「はい、沙耶さんも大事な仲間ですから……それに…」

ほんの少しだけ、カロンを見る。

「カロン様が望むなら」

受け入れる側の強さ


カロンは肩をすくめて笑う。

「それに、クレイン《ウチ》で純愛貫いてるのなんてアクアくらいだしな」

軽い冗談、だが――それで十分だった。


沙耶の目に、涙が滲む

(……受け入れられた……?)

信じられないような感覚

そのまま、言葉を失う。

カロンが一歩近づく。

そして――そのまま、自然に沙耶を抱き寄せた。


「……っ……」

身体が強張る。

だが、すぐに力が抜ける、胸に触れる体温

安心するような、落ち着くような感覚


沙耶は小さく呟く。

「……カロン殿の香り……」

目を閉じる

「……金木犀の香り……」

ほのかに甘い、記憶に残る匂い

ゆっくりと顔を上げる。

視線が重なる、逃げ場はない


そして――

そっと短く唇が触れる。


「ん…♡」


だが確かなキス。

沙耶の頬が熱を帯びる

カロンはそのまま、軽く笑う。

「これからお前は、俺の侍だ」

軽いようで重い言葉

役目ではない、“選ばれた立場”


沙耶は一瞬だけ目を見開き――

すぐに、柔らかく微笑んだ。

涙を残したまま小さく頷く

「はい……我が“殿”……♡」

その言葉には、もう迷いはなかった。


翌朝。

まだ陽が昇りきる前

静かな空気の中――

沙耶は、早めに目を覚ましていた。

音もなく起き上がり、淡々と身支度を整える。

帯を締める。

刀を差す。

いつも通り。

変わらない動作


そして――

最後に浅葱色の羽織に視線が止まる。

そこに置かれていた

「………」

手に取り指先でそっとなぞる

何度も着てきた誇りと役目


自分を支えてきた誠の信念

(……拙者は……)

一瞬だけ、迷いがよぎる、だがゆっくりと息を吐く


皺一つ作らぬように静かに丁寧に畳む

そしてそれを鞄の中へと収めそのまま、

手を離す、――もう、着ることはなかった


沙耶は立ち上がり背筋を伸ばす


その姿は昨日までと同じようで――

確かに違っていた。

やがて他の仲間も起き始める。

ロビーでエマが軽くあくびをしながら姿を見せた

「沙耶さん、おはようございます……」

ふと、視線が止まる。

「あれ?今日は羽織、着てないんですか?」



いつもと違う。

沙耶は、静かに振り向く。

迷いのない目、エマに一歩近づく

「エマ殿……買って欲しい物があるでござる」

その言葉は短い

だが――

その意味は、重かった


エマは一瞬だけ目を細め――すぐにやりと笑った

「……いいですね」

商人の顔そして仲間としての顔

「どんなものがいいです?」


沙耶は、ほんのわずかに息を吸い――

新しい自分を、選ぼうとしていた。


宿の前

朝の光の中、カロン達の前に一人の影が静かに歩いてくる

その足音は、昨日までと同じはずなのに違った

「……」


誰もが、一瞬言葉を失った

「お、おぉ……」

思わず漏れる声

それほどまでに変わっていた


昨日までの和装

スカートと浅葱色の羽織、その面影はもう無い


黒のチョッキ

身体に沿うフロックコート

動きを阻害しないズボン

実戦的なブーツ

胸元には懐中時計の鎖が揺れ

腰には変わらず愛刀。

そしてもう一方には仕込み杖


和と近代が融合した――

新しい“戦う姿”。

カロンが少しだけ目を細める

「……一皮剥けたな」

率直な感想


そしてふと問う

「でも沙耶、大事な羽織じゃなかったのか?」

軽いよう、核心。

沙耶は一瞬だけ視線を落とす

そして――

静かに顔を上げた、いよいよ持って迷いは無かった

「あの羽織は……仲間との絆、主君への誠の誓い……」

過去を否定しない、そのまま一歩前へ進む

迷いの無い足取りで


「ですが――」

まっすぐとカロンを見る

「今、拙者の主君は……殿でござる」

ほんの僅かに、柔らかくなる表情。


スタオンヌが、嬉しそうに微笑む。

「……似合ってますよ、沙耶さん♡」

受け入れる声


レオンは腕を組みながら頷く

「動きやすそうでいいな」

実用面評価も


リバティーナは少し目を細める。

「……雰囲気、変わりましたね」

本質を見ている


エマはニヤリと笑う。

「いい買い物でしたね」

満足げだった


そして――

カロンは、軽く笑った。

「いいじゃん」

それだけ。

だが、その一言で十分だった


沙耶は、小さく頷く。

「……はい」

その声は昨日までの“武士”ではなく

自分で選んだ“今”だった。

沙耶の新衣装はpixivで↓

沙耶・ヒジカタ ver2 | 福島ナガト #pixiv https://www.pixiv.net/artworks/146675969

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