↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
13/42

誇りより命

リバティーナの弁護士設定が活かしにくい問題

ある日の昼下がり。

カロン達はとある街のカフェで休憩を取っていた。

テラス席、穏やかな陽射しと行き交う人々

その中で――


ひときわ異質な光景

カロン、レオン、エマの三人がテーブルの上に拳銃を並べて手入れをしていた。


分解されたパーツ

オイル

クロス

まるで高級な革製品でも磨いているかのような丁寧さ


カロンが銃身を覗き込みながら呟く

「……よし、こんなもんか」


レオンも無言で作業を続ける


エマはくすりと笑った

「いい状態ですね」


その様子を見ていた沙耶は腕を組んで首を傾げる

「しかし……三人は随分と念入りでござるな……」

不思議そうな顔


カロンは手を止めずに答える。

「使っては手入れ、その繰り返しだ」


当たり前のようにレオンも頷く

「銃は身体の一部だな」

迷いのない言葉


エマは軽く銃を撫でながら言った。

「古い友人みたいな関係ですね」

自然すぎる感覚


沙耶は、ぽかんとしたままそれを見ていた。

(……奇妙でござるな……)

小さく呟く

「ピストルが身近とは……」

理解が追いつかない


その時リバティーナが横から口を挟んだ

「クレイン王国ではですね」

淡々とした説明口調

「最大9ミリ口径まで、装弾数10発以下の拳銃と――セミオート機構の無い猟銃に分類されるライフル、及び散弾銃の所持は認められています」

流石は弁護士と言った、具体的な説明だった


沙耶はさらに困惑する。

「……それが、日常でござるか……」


リバティーナは頷く

「ええ、管理は厳格ですが」


エマが軽く笑う

「まあ、慣れると便利ですよ?」

さらっと言う。


沙耶はしばらく黙り込む。

そして――

ぽつり。

「……鉄の塊に、そこまでの信頼を寄せるとは……」

どこか納得できない様子


カロンは肩をすくめた

「刀もそうじゃないか?他人に触られるのも嫌なんだろ?」


その言葉に、沙耶はわずかに反応する。

(……まあ、確かに)


しばらくして。

テーブルの上に並んでいた部品がひとつずつ元の形へと戻っていく


カロンが最後のパーツを組み込み、軽く手の中で重さを確かめた。

「……よし、これでいいかな」

満足げな声


レオンも同じように、自分の拳銃を確認する。

スライドを引く

カチッ、と乾いた音

「スライドとハンマー……薬室の煤……問題なしだ」

無駄のない確認

そのまま二人は、自然な流れでセミオートの動作確認を終える


手に馴染む感覚、使い慣れた重み

――違和感はない


エマは静かにリボルバーのシリンダーを回していた。


カラ……と軽やかな音が滑らかに回転する

「回転よし……うん、綺麗になった」

満足そうに微笑む


三人の表情は、どこかすっきりとしていた。

掃除を終えた後のあの独特の爽やかさ

小さな達成感


言葉にしなくても分かる空気

カロンは銃をホルスターに収める。

レオンも同じように腰へ

エマは丁寧にスーツの内側へとしまった。

――静かに整う


スタオンヌがその様子を見て、楽しそうに呟く。

「私も買ってみようかしら……♡」

軽い興味


だがその瞬間、リバティーナが即座に反応した

「姉さんは止めてください!」

真剣、一切の迷いなし、もしも姉が拳銃なんて持ったら…と容易に予想が着いた。


エマがくすっと笑う

「良ければ初心者にオススメのモデルがいくつかあるんですが」


リバティーナは頭を抱える。

「絶対にダメです……!」


カロンはそのやり取りを横目に見て、軽く笑った。

「似合いそうではあるな」


スタオンヌは嬉しそうに頷く

「ふふ♡検討しますね♡」


「しないでください!」

――穏やかな時間。

さっきまでの奇妙な光景は、もう日常の一部のように馴染んでいた


手入れを終えた三人。

どこか空気が軽くなる


沙耶は腕を組みながら、小さくため息をついた。

「クレイン王国とは……同盟国でありながら、得てして奇妙な国でござるな……」

率直な感想だった、日ノ本では民間人は猟銃以外の所持は認められていない。


エマが肩をすくめる。

「まあ、拳銃を持ち歩いてるのは王都とその近郊くらいですよ」


スタオンヌも頷いた。

「私達の田舎では、あまり見かけませんでしたね」


沙耶は「ふむ」と頷きながらもまだどこか納得していない様子


そんな中だった

カロンが何気なく口を開いた。

「そういえば沙耶、出身は?」


唐突だが自然な流れ

沙耶は少しだけ目を瞬かせた


「多摩でござるが……」

その一言にカロンの反応が変わった


少し身を乗り出す

「マジで?俺、昔行ったわ!あの動物公園ってまだある?」


空気が変わり、沙耶の表情もわずかに緩んだ

「知ってるで……ござるか?」

少しだけ語尾が揺れる

「そうでござる……!拙者もよく行ったでござる!」


一気に距離が縮まる。

カロンも笑う。

「あとさ高幡不動尊とか!あそこ雰囲気いいよな」


沙耶の目が少し輝く。

「そうでござるな……拙者も小さい頃に初詣で…」


完全に地元の話、意外な事に沙耶が乗っている、

スタオンヌとリバティーナが少し驚いたようにその様子を見る

(……こんな顔、するんですね)


そんな空気カロンはそのまま続ける。

「でさ〜、俺あの時アクア達と逸れて焦ったわ……」

思い出し笑い。


沙耶も即座に食いつく

「拙者も迷った事あるでござる、祭りの時は人が多くて……あれは中々厄介でござる!」

声が少し大きくなる


珍しく感情が乗っている。

カロンが笑う。

「だよな!なんか変なとこ出ちゃってさ」


沙耶もつられて笑う。

「あるでござる……!」

――自然と会話が続く

無理なく気負いなく

“普通の会話”、“自分の故郷の話”


しばらくしてふと、沙耶が一瞬だけ黙る

(……なんだ……これは……)

胸の奥に、妙な感覚

(……楽しい……?)

すぐに首を振る

(いや……何を考えているでござるか……)

昨日まで不誠実と蔑んでた相手だ



休憩を終えたカロン達は、街外れの古びた建物の前に立っていた。

人気のない半ば廃墟のような施設


だが――

中からは、明らかに“生き物の気配”がする。

カロンが顎で示す

「……ここか?」


エマがまとめた資料を確認

「最近の魔物の目撃範囲から絞ると、隠れ家に使えそうなのはここだけだね」


的確な判断だった、レオンが銃に手をかける

「よし、行くぞ」


全員が頷き――

カロンが扉を蹴り開けた


中は暗いうえに埃っぽい空気


「ギャアアア!!」

「侵入者だ!!」

エマの情報は正しかった、建物内は案の定魔族の巣窟、次々と襲いかかってくる異形の影。


肉薄する敵に対して、沙耶が一歩前へ出る

「レオン殿!先陣は拙者が頂き申す!」

言い切る同時に構える

天然理心流 平正眼の構え、静かにしかし鋭く

次の瞬間――

踏み込む

一閃、さらに二閃

無駄のない連撃だった


最前列の魔族が為す術もなく倒れる

「な、なんだこいつは!?」

「速い!!」

動揺が広がる

だが沙耶は止まらない

間合いに入ると同時に斬り伏せる

敵が反撃する時には既に離れていた

「甘いでござる」

淡々とした声

次々と敵を斬り伏せていく

まさに“処理”


レオンが後方から感心したように呟く。

「相変わらずキレがいいな……」


カロンも軽く笑う。

「まあ、任せとけば片付くだろ」

確かな勝機を感じていた


――だがその時、奥の闇の中で低く、ねっとりとした声が…

「……ほう中々の剣技だ……」

空気が変わった

沙耶の動きがほんの一瞬だけ止まる


今まで切り捨てて来た魔物とは違った、違和感

視線を向ける、闇の奥

そこに――“何か”がいる


「だが――」


その気配の主はゆっくりと姿を現した

額に、異様な“第三の眼”を持つ魔族

「見えるぞ……貴様の“終わり”がな……」


不気味な声だった

沙耶の背筋に、わずかな寒気が走った。


(……この気配は……)

ただの雑魚ではないのが剣士の感でわかった

空気がわずかに張り詰める

戦闘の流れが――変わり始めていた


奥の闇から、ゆっくりと姿を現す。

魔族部隊指揮官――

ヴァル・トリニティアイ。

額に刻まれた第三の眼が不気味に光を帯びている。

「フフ……ようやく“視える”者が現れたか……」


芝居がかった口調

どこか酔っている

「我が名はヴァル・トリニティアイ……三界を見通す者……」


「貴様の終焉は、既にこの眼に刻まれている……」


完全に乗っている。

――対する沙耶。

わずかに目を細める

「……ふざけた輩、だが手強そうでござる……」

そう言って――ゆっくりと打刀を鞘へと戻した


カチン、鞘に納まる小さな音


しかしスタオンヌが首を傾げる

「沙耶さん……?なぜ納刀を……?」 


沙耶は答えない。

代わりに――

手にしたのは普段使っている杖だった

だが、その持ち方が変わる

上部を握る、空気が張り詰めた


ヴァルが笑う

「ほう……武器を変えるか……無駄だ」

第三の眼が、わずかに輝く

「既に視えている……貴様の動きは――」

その瞬間、言い終える前だった


沙耶が消えた


音すらない。

次の瞬間

「……っ!?」 


ヴァルの身体が、わずかに傾く。

遅れて――斬撃音


右腕が宙を舞った、血が遅れて噴き出す

沙耶は既に背後に立っている


杖の中から抜き放たれた細身の刃

逆手のまま、静かに構えている

完全な不意打ち、驚異的な速さの抜刀術

そしてそれを“技”として成立させる身体能力


ヴァルは、落ちた腕を見下ろし――

ゆっくりと笑った

「……フフ」

痛がる素振りも無く、肩を震わせる

「右腕が……疼く……やるな……」


むしろ喜んでいる。

沙耶は一歩だけ間合いを取る。

「血の気が多い故……本来は好まぬでござるがな……」


静かな構え。

無駄がない。

対するヴァルは、残った腕を広げた、その姿は狂気と誇張に満ちている。

「良い……実に良い……!!その刃……その速さ……」


空気が変わった第三の眼が更に強く輝く

「だが――見えるぞ……!!次は……その技ごと、断ち切る未来がなぁ!!」 


――厨二の極致

対して沙耶は、何も言わない。

ただ――静かに、間合いを詰める

“無駄な言葉”と、“研ぎ澄まされた一太刀”。

対極の二人が――

再び、ぶつかろうとしていた。


噴き出した血が――止まる

いや、止まったのではない

“固まった”。


ヴァルの肩口から流れた血が、空中で凝固し――

そのまま右腕の形を取り戻す

だが、完成したそれは“腕”ではない

刃、歪で禍々しい、血で出来た剣


ヴァルが恍惚とした表情で掲げる

「――イーコール・ファルシオン……

《血の首刈り刀》」



「プッ……」

その横でカロンが思わず吹き出した。

堪えきれてない


レオンが小声で言う

「笑うなって……」


エマは肩を震わせている。

「ネーミングセンスが……」


沙耶は、一切反応しない。

ただ静かに仕込み杖を逆手に構える


その刃は細く、打刀と違い直線的で、どこか頼りなく見える


ヴァルが踏み込む。

「見えるぞォ!!」

血の刃を振り下ろし。

横薙ぎ、連続の斬撃が沙耶を襲う


だが――当たらない

沙耶の姿が、ぶれる

いや、消える

理心流の型とは明らかに違う

構えも、運びも――読めない

だが、異常なほどに速い


「……なに……?」

ヴァルの第三の眼が、わずかに揺らぐ。

「見えているはずだ……この眼は……未来を――」


その瞬間。

――キィン

かすかな音。

ヴァルの血の刃が、弾かれる。


斬撃。

肩口に浅いが確かな傷

「……っ!?」

ヴァルが距離を取る

沙耶は既に元の位置に戻っていた。

逆手のまま


まるで何もしていないかのように

「……型が無い……だと……?」

ヴァルが低く呟く


沙耶は短く答える

「型に囚われては……」

一歩踏み出す。

「斬れぬものもあるでござる」

その言葉と同時にまた消える


ヴァルの第三の眼が、強く輝く。

「見える……見えるぞ……!!」

必死に捉えようとする。

だが――

“見えても、間に合わない”。


気がつけば背後

「――っ!!」

振り向く頃には遅い


背中に、二本目の傷。

ヴァルの顔に、初めて“焦り”が浮かぶ

(速い……違う……これは……予測ではなく

――“届かない”)

対して沙耶は無言だった


ただ距離を詰める余計な言葉は不要

必要なのは――一太刀だけ

これが沙耶の裏の奥義、神速の逆手抜刀術


厨二の誇張と実戦の極致

その差が、徐々に露わになっていた。


ヴァルの口元が、歪む

「これ程とは……褒めてやろう!!だがな……!!」

肩で息をしながらも、まだ余裕を装う

第三の眼が、ぎらりと光る


沙耶がわずかに眉をひそめる

「……?」


ヴァルはゆっくりと額の第三の目を指を差す

「見ろ……!!この――第三の眼を!!」


妖しく、粘つくような光

空気が重くなる


だが――沙耶は迷わない

「ならば――」


一歩踏み込むみ、仕込み杖を順手に持ち替える

狙いは一点

「逆に刺し貫いてくれる!!」

一直線で最短の迷いのない突き


――しかしだった、

その瞬間ピタッと止まる

「……っ!?」

沙耶の身体が完全に静止する。

指先一つ動かない

「……な……」


視線だけが揺れる

(う……動かぬ……!?)

全身が拘束されたかのような感覚


「フフ……」

ヴァルがゆっくりと笑う

「かかったな……」

第三の眼が強く脈打ち、声は低く響いた

「《支配眼(ドミネーション・アイ)》、貴様の動きは……既に“止まった”」


沙耶の瞳が見開かれる。

(術……!?いや……これは……)


“視られた”瞬間に――動きを封じられた。

ヴァルがゆっくりと歩み寄る

血の刃を引きずりながら囁いた

「見えるぞ……そのまま貫かれる未来がな……」

沙耶の目前刃が、振り上げられる


(……しまった……!)

焦っても身体は動かない。


「この眼を見た瞬間、貴様の負けだったのだ!!」

ヴァルが刃を振り上げる


動けない沙耶、完全な詰みかと思われた

――その瞬間


「おい、何ボーっとしてんだよ」

カロンの声。


次の瞬間

「エマ」

「はい!」

エマが即座に何かの容器を放る

カロンはそれを受け取ると――


そのまま一直線に踏み込んだ


「俺の眼を見ろォ!!」

ヴァルが叫ぶ

第三の眼が強く光る


だがカロンは一向に意に介さないように

「うるさい」


――バシャッ!!

容器の中身を、真正面からぶちまけた。

第三の眼に直撃


「無駄だ……」

言いかけて


「……!?」

違和感。

確かにその目はカロンを捕らえている

なのに――

“止まらない”。

「な……なんだこれは!?」


ヴァルが後ずさり、目を押さえる。

「見えぬ……!?俺の未来が……!」


レオンが冷静に呟く。

「第三の眼、失明してんじゃん」


スタオンヌがにこっと笑う。

「タンパク質はアルカリ性の方が溶けるんですよね♡」


さらっと恐ろしいことを言う

カロンがかけたのは強アルカリ性洗剤

ヴァルは完全にパニックになる

「ば、馬鹿な……俺の“力”が……!」


その隙にカロンはもう目の前

「はい終了」


――ドゴッ!!

顔面に一発、メリケンサックがめり込む。

続けて。


ドンッ!!

腹に二発目

「ぐあっ……!!」


体が折れる。さらに――

バキッ!!


とどめの一撃。

ヴァルの身体が宙を舞い、壁に叩きつけられた。

ズドンッ!!


ゆっくりと崩れ落ちる

完全沈黙

カロンは軽く手を払う

「……弱」


沙耶の拘束も、いつの間にか解けていた。

その場に、妙な静けさが戻る。

レオンがぼそり。

「……解決の仕方が雑すぎるだろ」


エマは満足そうに頷く。

「効きましたね」


スタオンヌは嬉しそう。

「流石です、カロン様♡」

そして――

沙耶は、その場に立ち尽くしていた。

(……今のは……拙者……助けられた……?)

混乱と、わずかな安堵


そして――

理解できない感情が、胸の奥に残っていた。


拘束が解け身体に力が戻る

沙耶は一瞬だけその場に立ち尽くし――

すぐに動いた。

「カロン殿……!!」


そして――

そのまま、深く頭を垂れた。

「申し訳ありませぬ!!」


はっきりとした声。

だが、その奥に揺れがある。

「……あの様な邪法……」

拳を握る。

「拙者がどうこう出来る次元では無かったでござる……」

言葉を選ぶように。


だが確実に――

“自分以外”に理由を置いている。


わずかに声が落ちる。

「……それでも…動けなかったのは……事実でござるが……」


完全に言い切れない、言い訳と自責の狭間

頭を下げたまま動けず、言葉に詰まる

(なんという……)


内心が軋む。


(自らの油断を……咄嗟に……敵のせいになど……武士の恥で……ござる……!!)

強く歯を食いしばる。


その時。

カロンが、ふっと笑った。

「それだよ」


沙耶の肩が、わずかに揺れる。

「……え?」

その意外過ぎる言葉に顔を上げる


カロンは気にした様子もなく続ける。

「それでいいんだよ、沙耶」

あまりにあっさりと、そして納得いったように、

否定しない、むしろ――肯定する。

「アクアや紫苑や、俺の為じゃない」

一歩だけ近づく。


「自分の為に謝れるんだ」

真っ直ぐな言葉。

「ちゃんと“自分の失敗”って分かってる証拠だろ」


沙耶の目が揺れる。

「……しかし……それは……武士として……」

言い淀む。


否定しようとするがカロンは遮る。

「俺の前じゃ、武士とかどうでもいい」


沙耶は理解が追い付かなかった


「他人の為にヘコヘコする奴はみっともねえ…、頭下げんのは自分の為だけにしろよ」


シンプルすぎる価値観。

「さっきのは、どうにもならねぇ」

事実を言う。

「だったら“あれは無理だった”でいい、悪い事じゃない」


「その上で生きてりゃ、次やり返せるだろ」


沙耶は、言葉を失う。

(……咎められぬ……それどころか……肯定……されている……?)


沙耶は自らの失敗と自己弁護を恥じている…


しかしカロンはもう背を向けていた。

「ほら、終わったし行くぞ」


いつも通り何も特別扱いしない


スタオンヌがくすっと笑う。

「優しいですね、カロン様♡」 


レオンは肩をすくめる。

「優しいっていうか…思想?」


エマは静かに呟く。

「合理的ですよ」

沙耶は、その場に立ったまま。

ただ、カロンの背中を見ていた。

(……分からぬ……)

だが――

胸の奥に残るものは。

さっきまでとは、確実に違っていた。


一息ついた、その時だった。

カロンがふと足を止める。

「……あ」

振り返る。

「情報吐かせるの忘れた」

一同が固まる


レオンが即座にツッコむ。

「お前!!」

額を押さえる。


リバティーナも冷静に追撃。

「なんの為に来たんでしたっけ?」

真顔。

エマはくすっと笑う。

「ロンくんは熱くなると、周り見えなくなりますからね」


カロンは頭をかきながら笑う。

「あはは、ゴメンゴメン!」

全く悪びれていない。


スタオンヌが楽しそうに言う。

「でも、解決はしましたし♡」

あまりにポジティブ、

沙耶は少しだけ間を置いてから、ぽつりと呟く。

「……それで良いのでござるか……」


半分の安堵、半分は納得できていない顔。

レオンはため息をついた

「まあ……こいつらしいっちゃ、こいつらしいか」

エマが頷く。


「ですね」

その空気の中で。

カロンはもう気にしていなかった。

「じゃ、次行くか」

軽い、あまりにも軽い。

――だがその軽さが、このパーティの“らしさ”でもあった。


その日の夜、宿の廊下。

薄暗い灯りの中――

いつも通り沙耶は座り込んでいた。

壁に背を預け、刀を抱えるようにして


カロンの部屋の前。

それはアクアと紫苑から賜った護衛任務

それだけのはずだった。


――だが。

中からかすかに聞こえる声

楽しげで熱のこもったやり取り

スタオンヌの甘い声と、

それに応じるカロンの声。

「あ…んっ♡カロン様…♡」

途切れ途切れに、耳に入ってくる。


沙耶は目を閉じる。

(……またでござるか……)

いつものこと、あの二人は相思相愛

そう、割り切るはずだった。


だがろ胸の奥がわずかにざわつく。

(……なぜ……)

理由が、分からない。

任務に支障はない。

むしろいつも通り。

それなのに。

(気にする必要など……無いはずでござる……)

拳に、わずかに力が入る。

耳に入る声が、妙に引っかかる。

(拙者は……ただの用心棒……)

そう言い聞かせる。


だが消えない

胸の奥に残る妙な感覚。

(……この感情……)

言葉が続かない。

そして――ゆっくりと、目を開ける。

(拙者は……)

心の中で一瞬迷う

(……カロン殿を……)

――答えは、まだ出ない。

ただ確かに、何かが変わり始めていた。

アルカリ性洗剤が目に入るとガチで失明の危険があります。邪眼師を倒す意外では絶対真似しないで下さい

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。