道化師登場
過去作品に似たような奴いたけど、ただのそっくりさんの別人です
王都を後にした一行
一日の休息で体力を回復し、再び旅路へと戻る
舗装された街道を、三台の車両が走る。
先頭を走るのはカロンのバイク
後方にはガーディアン90とククリRPV
風を切りながら、カロンが振り返るように言った。
「次の国は、最近魔物の出現が急増してるらしいな」
軽い口調、だが内容は穏やかではない。
ガーディアンの運転席で、レオンが目を細める。
「何か分かればいいが……」
助手席では、リバティーナが地図を広げていた。
細かく距離を測りながら口を開く。
「この距離ですと……到着は明日になりそうですね」
レオンは頷く。
「途中に街でもあれば、早めに宿を取った方がいいかもな」
長距離移動とは言え無理は禁物だ
視界の先に、小さな街が見えてきた
石壁に囲まれた、こぢんまりとした町
「お、丁度いいな」
カロンがバイクを減速させる。
「今日はここで止まるか」
異論はない
三台はそのまま街へと入っていく
――だが…
門をくぐった瞬間、どこか妙な空気が漂っていた。
人はいる、店も開いている
だが――
どこか落ち着かない
レオンが小さく呟く。
「……なんか変だな」
リバティーナも周囲を見渡す。
「ええ……人の動きが……」
街の大通り。
三台はそのまま人混みの中を進んでいた
だが――
どこか様子がおかしい
「……なんか皆ソワソワしてないか?」
視線を流す。
人々は道の端へと寄り、何かを避けるように距離を取っている
スタオンヌも周囲を見渡す
「なにか事件か事故でしょうか……?」
その時だった
ドォン――!!
遠くから爆発音
同時に、炎が一瞬だけ空へと噴き上がる
人々がざわめく
「広場の方だ!」
そんな声が飛び交う
カロンは面倒くさそうにため息をついた。
「……あー、なんかいるな……」
三台はそのまま広場の方へと進む。
やがて視界が開ける。
街の中央広場。
――その中心に。
ひときわ“浮いている”男が立っていた。
「待たせたな――!!」
無駄に響く声。
周囲の空気を無理やり支配するような、
濃厚なナルシストボイス。
「我こそは選ばれし勇者!」
バサァッ――!
派手なマントを翻す。
金刺繍が過剰に施された、将校風の軍服。
無駄にキラキラしている。
「この国の未来は――この私が導くのだッ!!」
片手を高く掲げ決めポーズ。
無駄に長い溜め。
完全に“やっている”。
肝心の周囲の反応は――微妙
拍手も歓声もない
ただ、距離を取って見ているだけ
その男の背後には三人の女性
一人は炎を纏った魔法使い
腕を組み呆れたようにため息をついている
もう一人は青髪の剣士
無言で立っているが、目が冷たい
三人目に妖艶な笑みを浮かべる紫髪の女
楽しそうにその様子を眺めていた
男は気にせず、さらに声を張る。
「私はジーク・バルサローザ!!」
ビシッと指を突きつける
「魔族から民を守る者だ!………
さあ!!歓声を上げたまえッ!!」
風だけが吹く
カロン達の前でその光景が広がっていた
カロンはぽつりと呟く
「……なんだあれ」
完全に呆れた声だった
レオンが小さくため息をつく。
「……よく分からんけど、放っておこう」
正論だった、三台はそのまま広場を横目に通り過ぎようとした
しかしその時
「おおっ!!」
広場にいた少年の声がカロン達に向けられた
「すげー!!なんだあの車!!」
一人の声が、あっという間に広がる
ざわっ――
周囲の視線も連鎖するように一斉にカロン達へと向いた
ガーディアン90とククリRPVの装甲車、しかも二台
さらに先頭にはバイク
この国では明らかに異質な存在
人々が次々と集まってくる
「なんだあれ……」
「見たことないぞ……!」
「すげぇ……」
一気に“主役交代”、人々の興味はクレイン王国の技術の結晶へと集中した
カロンは苦笑混じりにぼやく
「おいおい……モーターフェスじゃねえぞ」
面倒そう、だが視線は止まらない
――そして
それを、面白く思わない男が一人
ジーク・バルサローザ。
「……なんだ、貴様ら!!」
声を張り上げる
さっきよりも明らかに苛立っている。
「今は私が民衆を説いている最中だぞ!!」
指を突きつける、完全に怒っていた
だが――それに対する民衆の反応は冷静だった
「いや……」
「なんか騒いでる奴がいるから見に来ただけで……」
「特に何か用があったわけじゃ……」
温度差
ジークの顔がわずかに引きつる
その間にも、カロン達は速度を落とさず進む
リバティーナが淡々と呟く。
「……早めに休みましょう」
少しだけ疲れた声
「なんか、考える気が起きません」
正直すぎる感想だ
レオンも苦笑する。
「同感だな……」
――だが背後から、地面を蹴る音。
「待てぇぇぇぇぇぇ!!!」
ジークが走る、無駄に全力疾走だ。
カロンがミラー越しにちらりと見る
「……あ、来た」
完全に他人事
スタオンヌが楽しそうに微笑む。
「あら♡元気な方ですね♡」
――次の瞬間。
ジークは車列の前へと飛び出した。
そして――
ジークは、ドヤ顔でマントを翻した。
「貴様ら!!勇者たるこの私を無視するとは……無礼にも程があるッ!!」
――完全に絡んできた。
カロンは、ため息をついた。
「……めんどくせぇ」
次の瞬間――
ブォンッ!!
アクセルを吹かす。
バイクが先頭で一気に加速
続くガーディアン、そして最後尾のククリRPVも間髪入れずに発進した
「待てぇぇぇ!!」
ジークが叫ぶが、もう遅い
三台はそのまま突っ切る
――だが最後尾、エマの運転するククリRPVが、わずかに進路をずらした。
「沙耶さん、ちょっと掴まってて下さい」
淡々とした声
沙耶は即座にシートを掴む。
「承知」
エマはハンドルを切る
ジークのすぐ横を、かすめるように通過――
その瞬間ククリの車輪が、水溜りを正確に捉えた
バシャァッ!!
見事な角度。
完璧なタイミング
泥水が、一直線にジークへと降りかかる
「うおっ!?冷たっ!!」
全身ずぶ濡れ。
キラキラの軍服が一瞬で台無しになる
後ろで見ていた三人の女性が、同時にため息をついた。
「……あーもう」
「だから誰彼構わず絡むなって言ったのに……」
「なにがしたいんですのジーク様……」
完全に慣れた光景らしい
一方ガーディアンの車内ではリバティーナが静かに呟いていた
「……エマさん、道交法違反ですよ……」
弁護士の冷静なツッコミだった
レオンは苦笑しながら前を見たまま答える。
「まあ……見逃してやりなよ、ここはクレイン王国じゃないしな」
ククリRPVの中で、エマは楽しそうに笑った。
「ちゃんと避けましたよ?」
悪びれない。
沙耶は窓の外を見ながら小さく呟いた
「……見事な技術でござるな……」
感心している
――遠ざかる車列。
取り残されたジークは泥だらけのまま震えていた。
「……き、貴様らぁ……!!」
拳を握りしめる
そして――
「お、覚えてろぉぉぉぉぉぉ!!」
お約束の絶叫が、虚しく響いた
その声は、もう誰にも届いていなかった。
街の外れ、カロン達は早めに宿を見つけて足を止めていた。
石造りのそこそこ大きな宿屋で派手さはないが、清潔で落ち着いた雰囲気
長旅の途中で休むには、十分すぎる場所だった。
各々が荷を下ろしひとまずロビーに集まる
カロンは軽く背伸びをしながらソファに腰を下ろした。
「……変な奴もいるモンだな」
さっきの出来事を思い出しぽつりと呟く
その口調は、妙に冷静だった
リバティーナも隣で頷く。
「ええ……少々、変わった悪徳商法にも見えましたね」
完全に“そういうもの”として処理している。
レオンが苦笑する
「勇者が商法ってどうなんだよ……」
エマは壁にもたれながら、腕を組んだ。
「まあ、“勇者”ですか……」
少しだけ考える素振りの後、淡々と説明を始める
「一応、昨今の魔族の増加を受けて…、一部の国や地域では、廃れかけていた冒険者制度を復活させる動きもあるみたいですよ」
現実的な話、実際そうだった。
カロン達は一応は秘密裏に魔王の居場所を調べ、討伐を目指しているが、昨今の魔族の増加は各国も周知の事実
リバティーナが小さく頷く。
「なるほど……だからあのような“自称勇者”も……」
エマは肩をすくめた
「制度はあっても、中身はピンキリですからね」
沙耶は少しだけ考え込む。
「……では、あれも一応は……」
言いかけて止まる。
(……いや、あれは違うでござるな)
沙耶からすれば現状の全てが“異国の文化”たが、
それにしたってあれは可笑しいと分かった
スタオンヌはくすっと笑う。
「でも、元気な方でしたね♡」
平和な感想だった
レオンが頭を押さえる。
「元気で済ませていいのか……」
カロンはそのやり取りを聞きながら、軽く手を振った。
「どうでもいいだろ、関わらなきゃ問題ねぇ」
実にシンプルな結論だった
全員、なんとなく納得してしまう
翌朝。
宿の外が、やけに騒がしい。
ざわざわと人の声が響いている。
カロンは寝癖のまま外に出て眉をひそめた
「……なんの集まりだ?」
通りの先。
集会所の前に町の人々が集まっている
不安そうな顔とざわめき
ただ事ではない空気だった。
近くにいた町民が、カロン達に気づく
「あ、昨日の旅の方……!」
少し安堵したような表情。
「実は……町長へ……魔族から脅迫文が届いたんです」
一同の空気が引き締まる
リバティーナがすぐに反応する
「……見せていただけますか?」
町民は頷き、紙を差し出した
そこには、乱雑だがはっきりとした文字
――我々は新魔王の覚醒と魔族の復権を目指す者
この町の土地および設備の明け渡しを要求する。
従えば命までは奪わない。
だが逆らえば、武力による略奪も辞さない。
静かな脅し
だが、どこか理性的にも見える文面
カロンはそれを見て、鼻で笑った。
「最近の魔族って、なんか人道的だよな…
逆に気持ち悪りぃ〜」
だが、違和感は確かにある。
レオンは腕を組んで、町の様子を見渡す。
「……放っとくわけにもいかねぇだろ」
カロンを見る。
「助けてやろうぜ?」
まっすぐな言葉。
カロンは少しだけ考えて――
「まあ…そうだな」
軽く首を鳴らす。
その時だった、集会所の奥からざわめきが一段と大きくなった
誰かが前に出る気配。
そして――
聞き覚えのある、やたらと濃い声が響く
「フッ……なるほど」
嫌な予感しかしない
次の瞬間――
“あの男”が、再び前に出ようとしていた。
背後から、やたらと響く声。
「民よ!!恐れる必要は無ーーい!!」
一同が一斉に振り向く。
そこに立っていたのは昨日の男
ジーク・バルサローザだった
無駄に決めポーズ、無駄にドヤ顔。
「その話――」
マントをバサッと翻す。
「この勇者ジーク・バルサローザに任せて貰おう!!」
堂々たる宣言に空気が止まる
カロン「……」
町民「……」
誰もリアクションできない。
その後ろには、三人の女性。
昨日と同じ顔ぶれ。
一人は、茶髪の炎使い――ルーナ・リージェ。
腕を組み、完全に呆れた目でジークを見ている。
「……また始まった」
小さくため息
その隣。
青髪の剣士――エルナ・シュヴァルツ。
無言で立つが、視線は冷たい。
(止めても無駄だな)
とでも言いたげだ
そして最後に――
紫髪の魔女、ミラ・ナージュ。
優雅に微笑みながら、面白そうに眺めている。
「うふふ♡今回はどうなりますのかしら」
完全に観客
ジークはそんな仲間達を従え、さらに声を張る。
「既に魔族のアジトは突き止めてある!」
ビシッと指を立てる
「我々が討伐に向かおう!!」
自信満々の宣言だった
町民達は顔を見合わせ――
「あ、そうですか……助かります……」
とりあえず把握の返事だ
ジークは満足げに頷いた。
「うむ!」
そしてくるりと背を向ける。
「まあ、謝礼でも用意して待っていろ!!」
カッコつけながら何を話すかと思えば、厚かましく要求して行った
レオンが即ツッコむ。
「いや金取んのかよ」
だがジークは気にしない。
「行くぞ!」
「はいはい……」
「……了解」
「楽しみですわ♡」
三者三様の反応
そのまま、ジーク達は勢いよく出発していった。
残されたのは…なんとも言えない空気
カロンがぽつりと呟く。
「……本当になんなんだあいつら」
町民も小さく頷く。
「……分かりません…なんなんでしょうね……」
街から数キロ離れた森の中
木々の間に、不自然に開けた空間
そこに陣取る魔族達、既に武装し静かに構えている
その前へ――
一人の男が、堂々と歩み出た。
ジーク・バルサローザがマントを翻し空を仰ぐ
「……これが回答か」
魔族の一人が低く呟く
その瞬間。
ジークがビシッと指を突きつけ、無駄に声が響く。
「聞け、魔族ども!!その企み――俺が阻止する!!」
ここから始まる――
長い、とにかく長い。
「この世界にはな――光がある!!人の想い!希望!そして未来!!」
手を広げる。
「貴様らはそれを踏みにじろうとしている!!だが!!それを許さぬ存在がいる!!」
自分を指差す。
「そう!!それがこの俺!!勇者!!ジーク・バルサローザであるッ!!!」
まだ終わらない。
「闇に堕ちた者よ、聞け!!貴様らにもかつては心があったはずだ!!」
魔族に向かって語り始めた、勝手な前提だ…
「それを捨て、力に溺れ、世界を歪める道を選んだ!!だが俺は違う!!俺は選ばれし者!!光を背負い、闇を断ち、正義を貫く存在!!」
剣を掲げる
「見せてやろう!!この剣は――ただの刃ではない!!人々の願いが宿る希望の象徴!!」
本人意外は最初の方の話を忘れ出した
「その一振りで、貴様らの野望を断ち切る!!覚悟しろ!!魔族よ!!貴様らは終わりだ!!」
決めポーズ後、周囲が沈黙した
風が吹く、葉が揺れる…
魔族達は…ぽかんとしていた、先程の闘争心は無い
「……なんだお前?」
後ろで。
ルーナが顔を覆う
「……長いよ……」
エルナが腕を組む
「……早く戦え……」
ミラはくすくす笑っていた
「うふふ……ギャグとしては面白いですわ♡」
――ジークはまだドヤ顔だった。
「行くぞォォ!!」
ジークが叫ぶ。
剣を抜き放つ。
無駄に綺麗な音。
それに続く三人。
ルーナはため息混じりに構え、
エルナは静かに剣を抜き、
ミラは楽しそうに指先で魔力を弄ぶ。
魔族達も武器を構え――
その瞬間。
――ダダダダダダダダダッ!!
轟音が森の空気を裂く異質な音。
魔族達の背後の木々の隙間から、火花が散る。
次の瞬間――
「ぐあああああ!!」
「な、なんだこれは!!」
「銃撃だと!?」
50口径の圧倒的な火力。
逃げる間もなく魔族達が次々と倒れ伏していく
ジーク達は――完全に固まっていた
「……は?」
視界の先、木々の向こうに見えるのは――
ククリRPV
無骨な装甲車
その運転席には、エマ
冷静な表情でハンドルを握っている。
そして――
上部の銃座。
そこに立つ男
カロン
無表情で引き金を引き続ける
そして最後の一体が倒れる。
訪れる静寂と、何とも言い難い空気
そして、カロンが軽く銃身を下げた
「……よし、殲滅完了」
エマも何事もなかったかのように頷く
「了解」
エンジン音が唸る
ククリRPVはそのまま向きを変えあっさりと
その場を離脱する
取り残されたのは剣を構えたままのジークと、
その後ろで固まる三人
そして――
何もできなかった戦場、50口径の威力
ジークがゆっくりと口を開く、言いたい事は色々あるようだが、今は言葉に出来ない
「……え?」
完全に、出番を奪われていた。
しばらくして街の広場
カロンとエマは何事もなかったかのように戻ってきていた
町民達がざわめく。
「もう……終わったのか……?」
「早すぎないか……?」
そんな町民に対してカロンが落ち着いて語りかける
「てな訳で倒してきたから、謝礼は要らないぞ」
魔族の集団と戦った割には軽すぎる報告、
町民達は一瞬固まり――
「……え?」
「ええ!?」
安堵半分と困惑半分と言った感覚だ。
リバティーナが一歩前に出て、淡々と補足する。
「先ほどの方々は、押し売りに近い商法でしたので」
沙耶も腕を組んで頷く。
「頼まれてもおらぬのに、カタギから金をせびるとは……けしからんでござる」
町民達は顔を見合わせ――
やがて一斉に頭を下げた。
「ありがとうございます!!」
「助かりました!!」
一気に感謝の空気
――だが
それをぶち壊す声
「待てコラーーー!!」
振り向く一同
そこにいたのは――
全力疾走で戻ってきたジーク
泥は落ちているが怒りは増している
「勝手なことをするなァ!!」
ビシッと指を突きつける。
「貴様らのせいで、我々は無駄足になったではないか!!」
完全に逆ギレだった
カロンは面倒くさそうに目を細める
「……知らねぇよ」
一言。
後ろで、ミラがくすっと笑う。
「まあまあ♡流石にタダ働きはごめんですわ」
本音。
ルーナは額を押さえる。
「……だから先に行くなって言ったのに……」
エルナは静かに一歩前へ出る
状況を見ている
広場の空気がぴりつく
町民達が距離を取る
レオンが小さく呟く
「……おい、これ」
一触即発の嫌な予感
沙耶も刀に手をかける
「揉め事でござるな……」
カロンはため息をついた。
「はぁ……」
そして、ジークを見る
「で?どうすんだよ」
挑発でもなくただの確認
ジークの目がギラつく、怒りとプライドが滲み出ている、そして――完全に引けない空気
「決闘だ!!」
ジークが叫び、カロンを指差す。
「私に恥をかかせたこと……後悔させてやるッ!!」
完全に怒りモード
周囲の空気も張り詰める
町民達が距離を取り、広場が一気に“舞台”になる
――その中で。
カロンは欠伸混じりに答えた。
「面倒くさいけど……まあいいや」
軽い、あまりにも軽い
「よろしく」
そう言って、一歩前へ
だが、カロンが向かったのはジークではなかった
すっと横へ…
紫髪の女――ミラの前に立つ。
ミラが目を細める。
「……あら?」
最低限の礼儀か、自然すぎる動作で手を差し伸べる
ミラは一瞬だけ警戒しながらも余裕の笑みを崩さない。
「ふふ……ご丁寧ですわね♡」
ミラはその手を取った、軽く、優雅に握手。
決闘前の挨拶のつもりだった
――次の瞬間。
ぐんっ!!
「――!?」
ミラの身体が一気に沈む
膝が抜ける…そのまま、ストンと落ちるように崩れた
完全に“垂直落下”、握手をしただけのはずなねに、
地面に膝をつく、何が起きたか分からない
「な……っ……!?」
ミラが目を見開く。
手を離すカロン。
何事もなかったように肩を回す。
レオンが思わず呟く。
(どこで覚えたんだ……?)
「ミラ!?」
ルーナが叫ぶ
突然崩れ落ちた仲間に、完全に動揺する
「お前!!ミラに何を――!?」
怒りのまま、手をかざす。
炎の魔力が集まる。
「焼き払ってやる――!」
火球を放とうとした、その瞬間
――バサッ!
スタオンヌの声。
「所詮は人間ですね♡」
スタオンヌはマグネシウムの粉末をルーナに投げつけた
ボッ!!
閃光続いて、灼熱
ルーナの視界が真っ白に染まる。
「熱っっっう!!!???」
ルーナが悲鳴を上げる。
火球どころではない。
自分の周囲が一気に燃え上がったような感覚。
慌てて後ろに跳び退く
「なにこれ!?なにこれ!?!?」
完全パニック状態
スタオンヌはにこにこと説明する
「マグネシウムの粉末です♡火に触れると一気に燃焼しますので♡」
さらっと言う、因みにマグネシウムの燃焼温度は、瞬間で3000度だ
ルーナは半泣きで転がる。
「ちょっ……待って熱い!!目が……!!」
視界がチカチカする。
完全に戦闘不能。
「この……貴様!」
エルナが低く吐き捨てる
青い魔力が刀身に宿る
氷が一瞬で形成され、剣が完成する。
キィン――
冷たい音が響いた
そのまま、一歩踏み込む。
無駄のない構え、一端の剣士のようだ
だが――それより速く
沙耶が一歩、前へ出た
「たかが氷…その程度では――」
低い声。
「刃とは呼べぬでござる」
次の瞬間、沙耶がエルナの視界から消えた
――キンッ!!
一閃、いや、二閃
ほぼ同時の2連撃
エルナの視界に残ったのは、残像だけ
「……っ!?」
気づいた時には――手応えがない
次の瞬間
パキッ――
エルナの氷剣に、亀裂が走る。
そして――
バキンッ!!
刀身が、綺麗に三つに分かれた。
刃、中腹、柄
まるで豆腐を切ったかのような断面
氷塊となって地面へと崩れ落ちる
コトン、コトン……
静かな音。
エルナは、その光景を見下ろしたまま呆気に取られ動けなかった。
「……なんだ……と……」
理解が追いつかない。
沙耶は既に元の位置に戻り、刀を収めていた。
「未熟」
「くそがァァァ!!」
ジークが叫ぶ、完全にヤケクソだ
剣を振り上げ、そのまま一直線に突っ込んで来る
動きは大振り、隙だらけだ。
――その時
レオンが一歩、前へ出た
無言
「………」
一切の無駄がない。
タイミングを合わせる。
踏み込むジークの足元へ――
低い動き、足払い
「うお!?」
ジークの体勢が一瞬で崩れる
ドサッ!!
そのまま前のめりに倒れ込む。
剣が手から離れ、地面を転がる。
レオンはそのまま歩み寄る
ジークに逃げ場はない
「終わりだ」
短く告げる
そして――
ドンッ!!
胴体に一発、容赦のない踏みつけ。
急所は外しているが、十分に重い
「ぐあぁぁぁぁ!!」
ジークの悲鳴が響く。
さらに――
ドンッ!!
もう一発。
意識を刈り取るための一撃。
「……っ」
ジークの目が白くなる。
そのままぐったりと力が抜けた。
完全に気絶してしまった
レオンは軽く息を吐く。
「……手間取らせんなよ」
ぼそりと呟く。
後ろでは。
ルーナは転がったままヒーヒー言い、
エルナは折れた剣を見つめ、
ミラは座り込んだまま笑っていた。
「……ふふ」
どこか楽しそうに
カロンはその光景を見て、肩をすくめる。
「はい、終わり」
あまりにも軽い締めだった、
こうして決闘は、あっさりと幕を閉じた。
「じゃあ、俺らは行くわ」
カロンが軽く手を振る。
あまりにもあっさり。
それぞれがそれぞれの車両へと乗り込む。
エンジン音が重なり、三台がゆっくりと動き出す。
町民達が、我に返ったように声を上げた
「カロンさーん!!」
「ありがとう!!」
「助かりました!!」
一斉の歓声
だがカロンは振り返らない。
軽く片手を上げるだけ。
それで十分
三台はそのまま、街を抜けていく。
まるで最初から、ここに用はなかったかのように。
飛ぶ鳥跡を濁さず
ただ通り過ぎただけ
――静けさが戻る広場
そこに残されたのは
倒れたままのジークと、その仲間達。
ルーナがようやく起き上がり、ため息をつく。
「……なんだったの、あいつら……」
エルナは無言で剣の残骸を見下ろす
ミラはくすくすと笑った。
「ふふ……面白い方達でしたわね♡」
その横で。
ジークは――
白目を剥いたまま、ぴくりとも動かない。
しばらくして
ようやく、誰かがぽつりと呟いた。
「……勇者、だったんだよな……?」
誰も答えない
風だけが、静かに吹き抜ける。
――果たして。
あのジーク・バルサローザとは、何者だったのか。
少なくともこの日、この街において。
彼はただの“道化”でしかなかった。
M2マシンガン強し
ルーナ、エルナ、ミラの見た目はpixivへ↓
いかにも脇役なヒロイン達、過去作のそっくりさんは散々だったが、今回はどうなるか…
宿を探して寄った村になんか居た人達 | 福島ナガト #pixiv https://www.pixiv.net/artworks/146479612




