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10/42

仕入れや管理より…

メグが2話で危惧していた事

沙耶の歓迎会の翌朝

酒場兼宿の廊下

まだ静かな空気の中、部屋の扉が開いた

カロンが欠伸をしながら出てくる。

その腕には、自然な流れでスタオンヌの肩が抱かれ、スタオンヌもどこか満足げな表情

「ふふ……♡今日も良い1日を…、カロン様」

「ん……」

気の抜けた返事。



――その直後

「……一晩中騒がしいでござるな……」

低い声


カロンとスタオンヌが同時に視線を向ける。

「……沙耶さん!?」


スタオンヌが目を見開く


ドアのすぐ横、そこには――

壁に背を預けるように床に座り込む沙耶の姿。

刀を抱え、微動だにせず、完全に“待機”していた


カロンは眉をひそめる。

「何してんだ?」


沙耶はゆっくりと顔を上げる

「アクア様からの御命でござる、不本意ではあるが……貴様のような輩でも、お守り致す」


ブレない、不満そうだが一歩も引かない


カロンは少しだけ笑った

「これが侍か?」

呆れ半分、興味半分


スタオンヌはしゃがみ込む。

「大丈夫ですか?寝不足では……?」

心配そうな声音


沙耶は首を横に振る

「心配無用、慣れているでござる」


カロンはそれ以上は突っ込まず、肩をすくめた。

「勝手にしろ」

そして歩き出す

スタオンヌも立ち上がり、その後に続く

「無理はなさらないでくださいね?♡」

優しい一言


沙耶はそれに答えず――

静かに立ち上がり、刀を帯に収める

視線はただ一人、前を歩く男へ

(……見極める)


それだけを胸に、

その朝もまた――少し騒がしく始まっていく


ククリRPVの車内。

レオンが地図を広げていた。

「ここらの周辺国で……魔物の出没が頻発してる国を目指そう」

指でいくつかの地点をなぞる

「そこで魔王に繋がる情報を探る」

現実的で、軍人らしい判断


カロンは助手席からちらりと地図を覗き込む。

「でだ」

軽く顎で示す

「遠回りするか、直線で行くか」

一拍置いて、少しだけ笑う。

「直線ルートはな……一個だけ問題がある」


レオンが顔を上げる。

「なんだ?」

カロンは肩をすくめた。

「通り道に、ちょっとした“土地”がある」

言い方が軽いだが、目は笑っていない

「治安が悪い。かなりな」


車内の空気が少しだけ変わる

リバティーナが眉を寄せる

「……具体的には?」

カロンは短く答えた

「搾取、暴力、格差、全部揃ってる」


沙耶の目が細くなる

「……見過ごせる話ではないでござるな」


レオンは腕を組む。

「だが、寄り道してる余裕もない」

悩みどころ…その空気を、あっさりと切り裂いたのはエマだった

「まあ、通り抜けるだけですよね?」

淡々とした声、全員の視線が向く


エマは地図を軽く指で叩いた。

「だったら最短ルートでいいんじゃないですか?」

あまりにも軽い。

だが――その目は、ほんのわずかに細められている


「……」

カロンがニヤリと笑った。

「だな」


レオンは小さくため息をつく

「……やっぱりそうなるか」


リバティーナは嫌な予感しかしない顔

「絶対、何かやる気ですよね……」


スタオンヌは楽しそうに微笑む。

「面白そうです♡」


沙耶は静かに刀に手を置く

「……もし民が苦しんでいるなら」

低く

「見過ごすことは出来ぬでござる」

その言葉に、カロンは横目で一瞥する。

そして一言。


決まった。

行き先は――

“治安の悪い土地”。

だがそれは、ただの通過点では終わらない。

誰もが、薄々それを理解していた。


国境を越えた途端、空気が変わった。

空は同じはずなのにどこか重い

街道沿いの畑は荒れ収穫された形跡はあるのに

豊かさがまるで感じられない

道を行き交う人々は俯き、目を合わせようとしない


門番は無言で通行料を要求し、その額は“通るだけ”とは思えないほど高額だった


街に入ればその異様さはさらに際立つ

店は開いているが活気はない。


笑い声はなく、ただ生活音だけが淡々と流れている


そして何より――

兵士の視線

通りを歩く者すべてを監視するような、

威圧的で冷たい目


この国は、豊かではない。

だが貧しいわけでもない。

ただ――搾取され尽くしている


数百年続く貴族の家系

その領主が、この土地を支配していた。

重税は当たり前、払えなければ財産没収


それでも足りなければ、人権剥奪

男は奴隷として酷使され、

女は……言うまでもない


逆らえば、消える

それが、この国の日常だった

――車を降りた一行


沙耶は周囲を一瞥し、吐き捨てるように言った。

「……不愉快な国でござる」

その声音には、明確な嫌悪が混じっている


リバティーナも静かに頷く

「領主は……数百年続く貴族の家系らしいですね」

冷静な口調

だが、その目は鋭い


「長く続いた権力ほど、歪みやすいものです」

エマは何も言わず、街の様子を観察している。

人の動き、流通、兵の配置

すでに“仕事モード”に入っていた


カロンはポケットに手を突っ込みながら、

ぼそりと呟く

「……なるほどな」

一言、それだけで十分だった。


スタオンヌは小さく微笑む。

「これは……少し“面白い”ことになりそうですね♡」


レオンは額に手を当てる。

「……頼むから、やり過ぎるなよ……」

誰も返事はしなかった。

この国は――ただ通り過ぎるには、あまりにも“都合が良すぎた”



路地、兵士の怒号が響いていた

そこには貧しい身なりの夫婦…

「どうか…ご勘弁を…!!」

この地では珍しくない、兵士の横暴…


そこに一人、ゆっくりと歩み出る影

カロンだった。

兵士が気付く

「なんだ貴様?」

振り向いた瞬間


カロンは、にこりと笑った。

「通行人だよ」

――次の瞬間

ゴッ。

鈍い音

金属バットが、容赦なく兵士の側頭部を打ち抜いた。

「がっ……!?」

一撃、兵士はその場に崩れ落ちる


リバティーナが小さく息を吐く

「あーあ……やっちゃいましたね……」

呆れ半分、予想通り半分。


カロンは気にもせず、倒れた兵士を見下ろす。

「リバティーナ」

軽く振り返る。

「鑑識ってどこ見るんだっけ?」

突然の質問


リバティーナは一瞬だけ固まる。

「え……顔と指紋と歯……ですが……?」

カロンは頷いた。

「そっか」

それだけ言って、兵士の足を掴む。

ズルズルと引きずり、路地の奥へ消えていく。

その先で、何かが行われている気配だけが――微かに伝わる。


レオンは目を逸らした。

「……聞かなかったことにしよう」

エマは淡々と呟く。

「証拠対策は大事ですからね」

怖い。

しばらくして。

カロンが何事もなかったかのように戻ってきた。

「待たせたな」

手を軽く払う。


そして、地面に倒れていた男へ視線を落とす

「大丈夫か?」

差し出される手


男は呆然としながら、それを掴む。

「あ……ああ……ありがとうございます……」

震える声。


妻も、まだ怯えたまま言う。

「ですが……なんてことを……」

この国では、それは“やってはいけない行為”。

だが


カロンは肩をすくめた。

「大丈夫、気にすんな」

軽い一言

だがその裏には――“責任は取る”という

妙な自信があった


沙耶はそのやり取りを黙って見ていた。

(……この男……)

理解できない

だが――見過ごさなかった

その事実だけが、静かに残っていた。


路地の奥から戻ってきた頃には周囲の空気が変わっていた。

先ほどの騒ぎを見ていた民衆が恐る恐る近づいてくる。



最初は一人。

やがて、二人、三人と増えていく。

誰もが疲れた顔をしていた。

「……助けてくれて、ありがとうございます……」

先ほどの男が、頭を下げる。

その声をきっかけに、抑えていたものが溢れ出すように――

「今の領主になってから……搾取がひどくて……」

「税が払えなければ、全部持っていかれるんです……」

「働けなくなれば……財産没収で……そのまま……」

言葉が詰まる。

「……消えます」

別の女が、小さく続ける。

「逆らった人は……帰ってきません……」



次々と出てくる声。

怒りというより、諦めに近い。

長く続いた圧政が心まで削っていた。


カロンはポケットに手を突っ込み、ぼそりと呟く

「……ひっでえ話だな」


軽い言い方

だが目は、完全に冷えていた。


沙耶が一歩前に出る

「……どうするでござる?」

迷いはない


すぐにでも斬りに行く目だ。

カロンは少しだけ考え――

鼻で笑った。

「通り抜けるのに金取られんのも癪だしな、

……………ぶっ潰すか」

軽い決断


だが、その一言で流れが決まる。

沙耶はすぐに頷く。

「では拙者が、不届きな輩を――」

刀に手をかける


――その動きを、カロンが止めた。

「待て、早まるんじゃねえ」

短い一言、それに沙耶が止まる

「それは必要ねぇ」

静かに言い切る


沙耶の眉が寄る、沙耶にとっては疑問だった。

「……なぜでござる?」


正面から討つ、沙耶の価値観だとそれが当然だと思っている


カロンは、にやりと笑った。

「もっと効率いい方法がある」

その笑みは――

明らかに“何か企んでいる顔”


沙耶の背筋に、ぞくりとしたものが走る。

カロンは振り返る。

「エマ」


呼ばれたエマは、すでに理解していた。

「いいね、面白くなりそう」

口元が歪む


その笑みは、静かに狂っている。

カロンはさらに視線をずらす。

「スタオンヌ」

「はい♡」


いつもの柔らかい返事。

だがその目も、どこか楽しそうだった

三人の間で、言葉は多くない

それでも――

“作戦”は成立していた


レオンが頭を押さえる

「……またロクでもねぇことする気だな……」


リバティーナは小さく呟く。

「今回は……かなり危険な気がします……」

沙耶は、その三人を見つめる


理解できないだが、感じる

「……何をする気でござるか……」


その問いに、カロンは肩をすくめた

「簡単だ、“合法っぽく”全部奪う」

その瞬間――この国の領主の運命は、

静かに決まった。


領主の間

重厚な扉の向こう、豪奢だがどこか品のない空間

無駄に大きい椅子にふんぞり返る男――

領主ガギルス


肥えた体に指には宝石の指輪がいくつも

はめられている


目だけがいやにぎらついていた。

「領主様、行商の者が来ております、通行許可を頂きたいそうです」


控える兵が報告する。

ガギルスは鼻で笑った。

「通せ」


現れたのは――エマ。

仕立ての良いスーツに身を包み、微笑みを浮かべている


その立ち振る舞いは、明らかにただの行商人ではない。

ガギルスはじろりと見下ろす

「……分かっているんだろうな?何を持ってきた?」

当然のように要求する


エマは軽く頭を下げた。

「申し訳ありません。めぼしい品はご用意できませんでした」


一瞬、空気が凍る、ガギルスの顔が歪む

「何だと?」


ゆっくりと立ち上がる。

「ふざけているのか?この場がどういう場所か分かって――」

その視線が、エマの全身をなぞる。

いやらしい笑み。

「……まあ、女なら」

空気が濁る、分かっていた事だがこの領主、完全に女だからと舐め腐っている。


カロンもエマも特に気に入らないタイプの外道…

だがエマは、一切表情を変えなかった。


むしろ――

ほんの少しだけ、笑みを深める。

「ですが」

静かに言葉を差し込む。

「領主様にとって、“より価値のある情報”をお持ちしました」


ガギルスの動きが止まる

「……ほう?」

興味が勝った

エマは一歩だけ前に出る

距離を詰める

「実は近々、クレイン王国において武器輸出の規制緩和が予定されております」

当然、嘘


だがその口調は、あまりにも自然だった。

ガギルスの目が細まる。

「続けろ」


エマは頷く

「それに伴い――鉄鋼や貴金属、既存兵器の市場価値は、下落する見込みです」


ゆっくりと、言葉を置いていく

「特に、従来の鋼材や黒色火薬は“旧式”となり……価値が急落する可能性が高いかと」


ガギルスの指がわずかに動く

考えている…エマはその変化を見逃さない

「ですが」

柔らかく微笑む

「その前に“処分”してしまえば……むしろ利益を得られます」


一拍置く、ガギルスもしっかり食い付く


「そして、その資金でクレインの新型兵装を押さえる」

静かに言い切る

「これが……“勝つ側の選択”ではないでしょうか?」

完全な誘導



ガギルスの口元が、ゆっくりと歪む。

「……くくっ……」

喉の奥で笑う。

「面白い話だな……」

完全に食いついた。

エマは一礼する。

「光栄です」

その目は――、一切笑っていなかった。

作戦はすでに始まっている


エマは一歩だけ距離を詰め、声のトーンをほんの少し落とした。

「“あの”日ノ本やサウスダムといった、一部の同盟国としか取引しない――クレイン王国の兵器ですよ?」


わずかに間を置く。

ガギルスの目が、完全に“金の匂い”を追い始めている

エマは柔らかく微笑んだ

「仮にそれを手にされた場合……この領土に留まる必要は、ありますか?」


静かな一撃。

ガギルスの口元が歪む。

「……ほう」


エマは続ける

「今のうちに、鋼材や金銀、そして従来の黒色火薬は“民間に売却”する」

指で軽く机をなぞる


「価値が落ちる前に現金化し、その資金で次の時代へ移行する」

一拍

「これからは――無煙火薬の時代です」

言い切った

完全に“未来を知っている者”の口調



ガギルスの呼吸が荒くなる

頭の中ではすでに――

金、兵器、支配。

その全てが繋がっていた

「……くく……」

笑いが漏れる

「なるほどな……なるほど……」

椅子から身を乗り出す

「つまりワシは……この国の領主などに収まらず――」


言葉が濁る。

だが、その目ははっきりと語っていた。

“もっと上に行ける”と。

エマは静かに頷く。

「ええ、今の判断一つで、未来は大きく変わります」


完全に背中を押した。

ガギルスは、迷わなかった。

机を叩く。

「よし!!」

声が響く

「買った!!」

――落ちた

完全に落ちた


エマは一礼する

「ご決断、誠に賢明にございます」

その顔は丁寧で、完璧な営業の笑顔。

だが――

その裏では

すでに“全てを奪う準備”が整っていた。


領内は、わずか数日で様相を変えていた。

これまで城の中で眠っていた金銀が、次々と市場へと流れ出る


装飾品や調度としてしか使われてこなかったそれらは、民間商人や企業に払い下げられ――

街に、わずかながら“金の流れ”が生まれていた。

「本当に……いいんですか?」


戸惑う商人に対し、エマはにこやかに頷く。

「ええ。むしろこちらとしても助かります」

柔らかな営業スマイル


「金銀ならクレイン王国が買い取りますよ、精密機器に使えますので」

嘘ではない。


だが――全て計算済み。

「ありがとうございます!こんな機会、二度と……!」

商人は何度も頭を下げる。


その裏で

黒色火薬は、まとめて本国へと売却された。

市場価格を無視した“安値”で。

誰も気づかない。

それが――どれほどの損失か。

そして、城の中

ガギルスは高笑いを上げていた

「くくく……はははは!!」


机の上に積まれた金貨の山。

帳簿には、信じられない数字が並ぶ

「100億ダスト……!」


震える手で札束を掴む。

「これだけあれば……この国どころか……!」

完全に舞い上がっている。

未来を手に入れた気になっていた。

――その頃、城の外

エマは静かに腕時計を確認していた。

全て、予定通りと言わんばかりに視線を横へ向ける。


そこには――

壁にもたれかかるカロン、

そしてその隣に立つスタオンヌ


エマはふっと微笑んだ。

「後はよろしくね、ロンくん、スタオンヌさん」

短い一言、だが、それで十分だった。


カロンが口元を歪める

「任せとけ」

スタオンヌも柔らかく頷く。

「はい♡」

その笑顔は、優しいまま。


だが――

次に行われることは、決して優しくはない。

領主ガギルスの“夢”は。

今、この瞬間にも――音を立てて崩れ始めていた


領主の間。

先ほどまでの空気とは打って変わり、ガギルスは完全に“勝者”の顔をしていた。

机の上には積み上がった大金、


その輝きに酔いしれるように、口元が緩んでいる。

「この度はありがとうございます」

丁寧に頭を下げるカロン


その隣で、スタオンヌも優雅に微笑む。

「素晴らしいご決断でしたわ♡」


完璧な“使者”の振る舞い、完全に取り引きのバイヤーになり切っていた。

だが――その正体を知る者はいない


ガギルスは鼻で笑った

「ふん……容易い話だ」

指で金貨を弾く

乾いた音が響く

「所詮、時代を読めぬ愚民どもよ」

完全に優越感に浸っている

「価値が落ちる前に売り抜ける――当然の判断だ」

自分の判断を疑っていない

むしろ、誇っている。

カロンは内心で笑いながら、表情は崩さない

「お見事でございます」


棒にもならない賛辞

スタオンヌも続ける

「このご英断、後世に語り継がれることでしょう♡」


過剰なまでの持ち上げ。

だがガギルスは、それを疑うどころか満足そうに頷いた。

「当然だ」

顎を上げる。

「では武器選びは後だ」


すでに次の“夢”を見ている。

「他国に知られる前に、用意を急げ」

命令口調。

完全に立場が上だと思い込んでいる。

――だが。

その足元は、すでに崩れている。

カロンはわずかに目を細めた。

心の中で呟く。

(……いいねぇ、最高に“落ちる顔”してやがる)


スタオンヌも、ほんの一瞬だけ。

楽しそうに目を細めた

その瞬間を、誰も見ていなかった。

――次の一手で。

この男の世界は、完全に終わる。


領主の間。

ガギルスは上機嫌でワインをあおる。

「ふん……これで次は――」


その言葉は、途中で途切れた。

「ぐ……!?」

手が止まる。

グラスが床に落ち、割れる。

胸を押さえる。

息が浅くなる。

「が……は……っ……!」

激しい腹痛、胸の締め付け…

視界が揺れる

立っていられず、膝をついた。


意識が――遠のく。

「な……なにが……」


その様子を見て、カロンが駆け寄る。

「大丈夫ですか!?」

わざとらしい声


スタオンヌは割れたグラスの残りを覗き込む。

「……酸性の反応がありますね」

静かに分析する。

「この症状……恐らく過酸化水素によるものです♡」

カロンが目を見開く。

「暗殺か……!?」

芝居、そもそも過酸化水素を盛ったのはスタオンヌだ。


ガギルスは震える手を伸ばす。

「た……助け……ろ……」

その時、待ってましたとスタオンヌが、

ぱっと顔を上げる。

「あ!私、解毒酵素を持ってます♡」


救いの言葉。

ガギルスの目に光が戻る、冷静に考えるとこの状況で解毒薬があるのもおかしいが、考える余裕も冷静さも残っていない。

「は……や……く……!」


カロンは、その瞬間を見逃さなかった。

にやりと笑い、懐から一枚の書類を取り出す

「100億ダスト」


ガギルスの思考が止まる。

「……え……?」


カロンは淡々と続ける。

「これは兵器じゃねぇ」

冷たい声。

「売値、100億だ」

理解が追いつかない。

カロンはしゃがみ込み、目線を合わせる。

「選べよ」

一言。

「兵器買って死ぬか」

一拍。

「薬買って、生き延びるか」

静かな脅し


逃げ場はない、ガギルスの顔が歪む。

「き……さ……ま……」

絞り出す声。

「この……ゲス……が……」


カロンは煽り散らかすように笑った

「なに?ゲス?自己紹介か?」


やがて――

震える手で、ペンを掴む。

書類に署名その瞬間、全てが終わった

スタオンヌが穏やかに微笑む

「カタラーゼです♡」


小瓶を取り出す。

「過酸化水素を、水と酸素に分解しますので安心してください♡」


ガギルスの口に流し込む。

呼吸が、ゆっくりと戻っていく。

だが――

その目には、もう何も残っていなかった。

金も、力も、未来もすべて奪われた

カロンは立ち上がる


書類を軽く振る。

「取引成立だな」

スタオンヌも立ち上がる。

「ありがとうございました♡」

優雅な一礼。


そのまま、二人は背を向ける。

扉へと向かう。

後ろで、ガギルスが崩れ落ちる音がした

誰も振り返らない。

――廊下に出て、カロンは肩で笑った。

「いい商売だったな」

スタオンヌはくすりと笑う。

「ええ、とても♡」

その手には100億ダスト

そしてこの国を縛っていた“鎖”の鍵が握られていた


数日後。

同じ通りとは思えないほど、空気が変わっていた。

かつては俯いていた人々が、顔を上げて歩いている。


市場には声が戻り、物のやり取りが活発に行われていた。

金銀や資源が民間へと流れたことで、止まっていた経済が動き出したのだ

「これで……やっと商売ができる……」

「今まで全部持っていかれてたからな……」

小さな店にも、人が集まる。

笑顔が、少しずつ戻ってきていた。


――一方で。

城の奥。

かつて“領主”だった男、ガギルス。

豪奢な衣装は消え、指輪もない。

粗末な服を着て、黙々と荷を運んでいた。

重い木箱を持ち上げる手は震えている。

「……くっ……」

誰も助けない。

誰も敬わない。


ただの“労働者”それが今の立場だった。

――失ったのは金だけではない。

地位も、権力も、誇りも。

全てが、地に落ちた。

だが。

命だけは、残っている。

それだけで十分だった。


――街の外れ


カロン達は、変わらぬ様子で立っていた。

カロンが大きく伸びをする

「ふう、100億儲かった!」

満足そうな顔


エマは頬に手を当て、うっとりとした表情。

「あー、やっぱり人の唖然顔って…最高♡」

性格が悪い。


スタオンヌはにこやかに続ける。

「胃に穴が空いて食べれる量がごく少量になる程度の後遺症にしましたから、働くのは問題ないでしょう♡」

完全に管理済み


リバティーナは深くため息をついた。

「……姉さんさぁ……」

言葉にならない


レオンも同じく、頭を抱える。

「……恐ろしい奴らだ……」

その評価は、正しい


沙耶は少し離れた場所から、その光景を見ていた。

(……民は救われた、だが……)

視線が、カロン達へ向く

(やり方が……)


理解できない、受け入れられない

――それでも否定しきれない


その矛盾が、静かに胸の中に残っていた。

現在の仲間のヤバい奴順

エマ>カロン>>スタオンヌ>>>レオン≧沙耶≧リバティーナ

ですね。


沙耶の見た目投稿しました

新作オリキャラ 沙耶・ヒジカタ | 福島ナガト #pixiv https://www.pixiv.net/artworks/146356439


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