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ランキング最下位の俺だけが、世界の本当の順位を見られる件――カースト底辺の陰キャ、万象ランキングで人生を逆転する――  作者: ビッグサム


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第12話 消えた証拠(2/2)

 真冬が身を乗り出す。


「このアカウント」


「何」


「前にも反応してる」


 俺は画面を戻した。


 最初の裏アカ投稿。


 反応欄。


 そこに、同じアイコンがあった。


 黒に赤い点。


 名前は違う。


 でも、アイコンの作りが似ている。


 いや、よく見ると完全に同じではない。


 赤い点の位置が少し違う。


 同じ人物か。


 似せているだけか。


 分からない。


 でも、つながっている可能性はある。


 視界に文字が浮かんだ。


【中庭投稿と最初の晒し投稿をつなぐ手がかり】

第1位 同系統のアイコン

第2位 反応した時間帯

第3位 使用している語尾

第4位 酉宮秋人の既読タイミング

第5位 午堂周辺の反応順


 同系統のアイコン。


 反応時間。


 語尾。


 見れば見るほど、嫌になる。


 でも、見なければ分からない。


「同じ人?」


 春乃が聞く。


「まだ分からない」


 俺は答えた。


 断定しない。


 断定すれば、また俺の形になる。


「でも、同じグループかもしれない。少なくとも、同じ投稿に反応してる」


 未原がスマホを開いた。


「私、このアイコン見たことあるかも」


 全員が未原を見る。


 未原は少し慌てたように指を動かす。


「隣のクラスの、加瀬くんかもしれない。本人の公開アカとは違うけど、似たアイコンを使ってた気がする」


 加瀬。


 知らない名前だ。


 でも、その名前を聞いた瞬間、未原の表情が少し曇った。


「昨日の中庭にも、いたかもしれない」


「中庭?」


 俺が聞くと、未原は頷いた。


「ちゃんと見たわけじゃない。でも、校舎側に立ってた男子。加瀬くんに似てた気がする」


 中庭でスマホを下げた男子。


 名前は知らなかった。


 もしかして。


「酉宮と関係あるのか」


「たまに話してる。午堂くんたちとも、完全に仲間って感じじゃないけど……近い」


 線が伸びた。


 酉宮本人ではない。


 でも、酉宮の周り。


 中庭で撮ったかもしれない男子。


 裏アカに反応するアカウント。


 春乃と俺の会話を「密談」と呼んだ投稿。


 視界に文字が浮かぶ。


【現在、最も確認すべき人物】

第1位 加瀬凌太


 名前が出た。


 加瀬凌太。


 俺はその名前をノートに書いた。


『加瀬凌太?』

『隣クラス』

『酉宮と接点』

『同系統アイコン』

『中庭撮影の可能性』

『元画像・元動画を持っている可能性』


 字が少し強くなった。


 未原が不安そうに言う。


「でも、違ったら……」


「違ったら、消す」


 俺は言った。


 それから、自分の言い方が強すぎたと思った。


「いや、断定しない。確認するだけ」


 未原は小さく頷いた。


 春乃も画面を見つめている。


 真冬は、俺のノートをちらりと見た。


「今の書き方」


「何」


「疑問符をつけている」


「断定できないから」


「それはいい」


 また採点された。


 少し腹が立つ。


 でも、今回はそこまで嫌ではなかった。


 正しいから。


 いや、そう考える自分がまた嫌だ。


 その時、春乃のスマホが震えた。


 春乃の顔が強張る。


 画面を見る。


「先生から」


 担任。


 春乃はメッセージを読み上げた。


『裏アカについては学校側で確認できないため、現時点では指導対象にできません。確認できる範囲で対応します』


 確認できる範囲。


 まただ。


 俺は拳を握った。


 春乃の顔から色が引いていく。


 未原が震えた声で言う。


「確認できないって……消えてたから?」


 春乃は頷いた。


「たぶん」


 担任は嘘をついていないのかもしれない。


 学校側で確認できない。


 だから指導できない。


 規則としてはそうなのかもしれない。


 でも。


 消されたら終わりなのか。


 消したやつが勝つのか。


 俺はスマホを握った。


 見せるしかない。


 俺のスクショを。


 でも、どう見せる。


 俺が一人で集めたものとして出すのか。


 それとも、春乃と未原が確認したものとして整理するのか。


 視界に文字が浮かぶ。


【学校へ提出する際に最も危険な形】

第1位 四季零司だけが証拠を集めていた形

第2位 卯月春乃の感情的訴えだけに見える形

第3位 未原沙耶の伝聞だけに見える形

第4位 真冬が主導した形

第5位 加瀬凌太を断定する形


 四季零司だけが証拠を集めていた形。


 やっぱり。


 俺が全部出せば、また俺が中心になる。


 気持ち悪い。


 執着している。


 春乃を使っている。


 そう見られる可能性がある。


 でも、出さなければ消える。


 どうする。


 真冬が言った。


「一覧にすればいい」


「一覧?」


「誰が見ても同じ形で」


 俺は顔を上げた。


 真冬は続ける。


「投稿本文。投稿時刻。確認した人。保存した人。関係しそうな反応。断定と推測を分ける」


 淡々としていた。


 でも、今回は助言としてありがたかった。


「四季くんだけの資料にしない」


 春乃が言った。


 未原も頷く。


「私も確認したって書く」


 真冬が少しだけ視線を動かした。


「私は、形式を見る」


「形式?」


「内容の判断はしない。表の作り方を見るだけ」


 そう言って、真冬は俺を見た。


「それなら、私が主導した形にはならない」


 どこまで考えているんだ、この人は。


 怖い。


 でも、今はその怖さに助けられている。


 俺はノートを開いた。


 ページの上に書く。


『提出用整理表』


 一、番号。

 二、投稿日時。

 三、本文。

 四、投稿者アカウント。

 五、反応アカウント。

 六、保存者。

 七、確認者。

 八、推測。

 九、断定できないこと。


 最後の項目を書いた時、春乃が小さく言った。


「断定できないことも書くの?」


「書く」


 俺は答えた。


「そこを書かないと、たぶんこっちが決めつけたことにされる」


 春乃は頷いた。


 未原も頷く。


 真冬は何も言わなかった。


 ただ、少しだけ目を伏せた。


 俺たちは、スクショを一つずつ確認した。


 投稿本文。


 時刻。


 反応。


 消えているかどうか。


 誰が見たか。


 誰が保存したか。


 春乃が見たもの。


 未原が見たもの。


 俺が保存したもの。


 それぞれを分けて書く。


 途中で春乃の顔色が悪くなった。


「休む?」


 俺が聞くと、春乃は少し迷ったあと、頷いた。


「少しだけ」


 俺は画面を伏せた。


 未原が春乃の横に座る。


 真冬は窓を少し開けた。


 風が入る。


 教室の外の声が少しだけ遠くなる。


 俺は、その様子を見ていた。


 前なら、ここで早く続けようと思っていたかもしれない。


 証拠が消える前に。


 学校に出す前に。


 酉宮が動く前に。


 でも、今は画面を伏せた。


 春乃がこれ以上見られないなら、止める。


 それは戦術的には遅れかもしれない。


 でも。


 遅れたとしても、壊れたら意味がない。


 視界に文字が浮かぶ。


【今、作業を止めたことで失うもの】

第1位 提出準備の速度


【今、作業を止めたことで守れるもの】

第1位 卯月春乃が自分で続ける余力


 俺は、目を閉じた。


 順位は見える。


 損も見える。


 でも、前より少しだけ、選ぶ基準が変わっている気がした。


 その時、廊下から声がした。


「加瀬、今日来てる?」


 知らない声。


 俺は目を開けた。


 未原も顔を上げる。


 廊下にいた男子が、別の生徒に話していた。


「来てるけど、さっき酉宮とどっか行った」


 酉宮と。


 俺たちは、ほとんど同時に顔を見合わせた。


 視界に文字が浮かぶ。


【今、加瀬凌太が酉宮秋人と接触している理由】

第1位 中庭投稿についての確認

第2位 裏アカ投稿の削除相談

第3位 学校側への対応合わせ

第4位 新しい投稿材料の共有

第5位 偶然


 第5位 偶然。


 一番下。


 俺は立ち上がりかけた。


 でも、止まった。


 追えば、また撮られる。


 詰めれば、また材料になる。


 どうする。


 真冬が俺を見る。


「行かない方がいい」


「分かってる」


「でも、行きたい」


 俺は黙った。


 真冬は窓の外を見た。


「なら、人を使う」


「人を?」


 その時、未原が言った。


「私、見てくる」


 春乃が顔を上げる。


「未原さん」


「話しかけない。ただ、どこにいるか見るだけ」


 未原の顔は青い。


 でも、目は逃げていなかった。


「私なら、四季くんより目立たない」


 それは正しい。


 でも、危ない。


 未原まで巻き込む。


 もう巻き込まれている。


 いや、違う。


 未原自身が選ぼうとしている。


 俺が止める権利はあるのか。


 視界に文字が浮かぶ。


【未原沙耶が確認に行く場合の危険】

第1位 未原沙耶が次の標的になる

第2位 酉宮秋人に気づかれる

第3位 加瀬凌太が逃げる

第4位 四季零司が指示した形にされる

第5位 確認だけで終わらない


 危険だ。


 当然だ。


 でも、ゼロではない。


 選べる余地はある。


 俺は未原を見た。


「行くなら、話しかけない。近づきすぎない。見たことだけメモする。危ないと思ったら戻る」


 言ってから、また手順だと思った。


 でも、未原は真剣に頷いた。


「分かった」


 春乃が立ち上がりかける。


「私も――」


「春乃さんは残って」


 未原が言った。


 春乃が止まる。


「今、春乃が行ったら目立つ」


 未原の声は震えていた。


 でも、自分で言った。


 春乃は唇を噛んだ。


 それから、頷いた。


「分かった」


 未原は教室を出ていった。


 残された俺たちは、何も言わなかった。


 数分が、異常に長かった。


 春乃は机の端を握っている。


 真冬は廊下側を見ている。


 俺はスマホの画面をつけたり消したりしていた。


 未原からメッセージが来た。


『二階の非常階段近く。酉宮くん、加瀬くんと話してる』


 続けて、もう一つ。


『加瀬くん、「消したから大丈夫」って言った』


 俺は息を止めた。


 消した。


 何を。


 中庭投稿か。


 裏アカか。


 画像か。


 すぐに次のメッセージ。


『酉宮くん、「スクショ取られてたら面倒」って』


 手が震えた。


 来た。


 つながった。


 完全ではない。


 まだ録音もない。


 動画もない。


 未原の聞き取りだけだ。


 でも、酉宮は知っている。


 消した投稿があること。


 スクショを警戒していること。


 視界に文字が浮かぶ。


【現在、酉宮秋人と加瀬凌太を結びつける最も強い材料】

第1位 未原沙耶の目撃証言


 弱い。


 でも、初めてだ。


 裏アカの向こう側に、現実の名前がつながった。


 その瞬間、未原から三つ目のメッセージが来た。


『見つかったかも』


 春乃が息を呑む。


 俺は立ち上がった。


 今度は、ランキングを見る前に。


 体が先に動いていた。

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